2021/10/07

ソーシャルリスク対策

企業のSNSアカウントが炎上する理由とリスク回避の対策とは

多くの企業がSNSアカウントを運用し、マーケティングに生かしています。商品やサービスを紹介するだけでなく、利用者の反応を調査したり、企業イメージを向上させたりするのにも欠かせないツールです。しかし、一旦SNSが炎上してしまうと、企業のブランドイメージは著しく低下し、最悪の場合、企業の倒産に至ってしまうこともあります。この記事では、企業SNSの炎上実例やリスク回避の方法などについて紹介していきます。

回避したい!企業SNSアカウントの炎上とは

SNSの利用者は年々増加しており、今や、生活に欠かせないツールと言っても過言ではありません。総務省の「平成30年通信利用動向調査」によるとSNSを利用している個人は全体の60%に上り、特に20代(78.5%)、13~19歳(75%)、30代(74.8%)、40代(70.6%)で突出しています。この状況は、スマホやPCを使いこなす若い世代だけの流行ではありません。50代(59.8%)でも半数以上が利用しており、60代(38.6%)の3人に1人以上が使っている計算になります。

こうした消費者の行動に沿うように、企業によるSNS活用も盛んになっています。同調査によると、SNSを活用している企業は全体の36.7%で、前年から7.8%増えました。業種別にみると不動産業(58.7%)、金融・保険業(51.7%)なので割合が高く、半数を超えています。活用の目的や用途は「商品や催物の紹介、宣伝」が最多の68.7%を占め、「定期的な情報の提供」(53.6%)、「会社案内、人材募集」(40.6%)と続きます。企業によっては、X (旧Twitter)、facebook、Instagramなど複数のSNSアカウントを持ち、用途や対象によって使い分けているケースも珍しくありません。

一方で、せっかくアカウントを作っても数多くの投稿の中に発信が埋もれてしまうようでは意味がありません。各企業は工夫を凝らし、多くの人の目に触れる、いわゆる「バズる」投稿を狙います。この過程で注意しておきたいのが「SNS炎上」です。SNSにおける「炎上」とは、SNSの投稿や企業自体の問題をきっかけとして、SNSアカウントに非難が殺到し、誹謗中傷が拡散していく状況を、燃え盛る炎に例えた言葉です。SNSは1つの投稿を多くの人が共有することで一気に拡散できる点が魅力ですが、悪い方向へ拡散してしまうと収拾がつかない事態になってしまいます。

SNSの炎上はSNSの世界だけに留まらず、実際の企業活動にも大きく影響します。それまでにSNSで効果を上げていたマーケティングが台無しになるだけでなく、大規模な不買運動や取引停止、株価の下落、返金やクレーム対応、退職者の増加、倒産などが連鎖して起きるケースも決して少なくありません。企業、個人を問わずSNSでの炎上は増加傾向にあり、リアルでの企業の問題が個人によってSNSに投稿されるなどして、アカウントを持っていない企業であっても巻き込まれる可能性は十分あります。他人事だと思わず、炎上を回避するための対策を取っておきましょう。

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企業SNSアカウントはなぜ炎上する?代表的な原因と実例

企業のSNSが炎上する原因にはいくつかのパターンがあります。代表的な原因を実例と共に紹介していきます。

企業SNSアカウント自体の投稿が原因

企業のSNSアカウントが投稿した内容が、読んだ人を不快な気分にさせたとして炎上することがあります。例えば、自社商品をPRする目的で投稿したイラストが「女性を性的に消費している」と批判された例や、「盗んだことがあるもの」をハッシュタグのテーマとして選び、公式アカウントとして不適切だと指摘された例、キャンペーンを紹介する投稿のコメントが性犯罪を想起させるとして猛反発にあった例など、数え上げればきりがありません。

特徴的なのは、女性や子どもを対象としている企業が、女性の性的な消費や性犯罪を想起させるとして批判を浴び、小売りチェーンを展開している企業が「盗み」をテーマにしたハッシュタグを使って炎上した点です。「女性を尊重する」「万引きを批判する」という本来あるべき姿勢と真逆の内容を発信したと消費者に捉えられたため、大きな話題になりました。投稿した担当者は、ユーモアを交えたネタとして投稿したつもりでも、消費者に伝わらなければ意味がなく、マイナスのイメージで伝わってしまえば逆効果だといえるでしょう。このような「ネタ」の投稿はバズることも多いですが、一歩間違うと炎上する危険性もあります。

従業員のSNSアカウント投稿が原因

「バイトテロ」という言葉を覚えている人もいるかもしれません。アルバイトの学生などが自分の勤務する飲食店で不衛生な行動をし、その様子をSNSに投稿。あっという間に炎上して、企業が謝罪する事態に追い込まれました。2013年ごろに多発した、従業員のSNSアカウント投稿が原因のケースです。バイトテロを行った人は、その後、企業から多額の損害賠償を請求されるなど社会的な制裁を受けたため、このような事件を聞くことは少なくなりました。

2020年頃から多く見られるようになったのは、個人が意見などを自らのアカウントに投稿して炎上し、その個人の勤務先が特定されて勤務先に批判が殺到するというケースです。勤務先が分かるような投稿を日ごろからしていたり、プロフィール欄に勤務先が分かる情報を掲載していたりすると、批判の矛先が勤務先に向かうことがあります。個人のアカウントで転売を容認するような意見を書き込んだ結果、その言葉が勤務する企業の考えのようにとらえられてしまい、企業が謝罪した事例などがあります。この場合も、勤務先が転売禁止を訴えてしかるべき企業だったことから、大きな反発を招きました。

企業や経営陣の不祥事が原因

企業や経営陣が起こした不祥事をきっかけとしてSNSの企業アカウントが炎上するケースです。この場合、テレビや新聞、週刊誌などで最初に取り上げられることが多く、視聴した人がSNSに投稿して拡散が起きます。同時に、インターネットメディアの記事として配信された記事を引用する形でも拡散していくのが特徴です。炎上した経緯は、まとめサイトなどにまとめられ、デジタルタトゥーとして残り、ことあるごとに検索される可能性もあります。

SNS炎上のリスクを避けるための対策

「炎上したら怖いから、SNSアカウントは開設しな方がいいかもしれない」と考える企業もあるかもしれません。しかし、幅広い世代の多くの人が日常的に使っている情報収集ツールを、自社商品やサービスのPRに使わないのは、とてももったいないことです。多額の費用が必要なメディア広告と異なり、SNSでは無料で世界中の人に情報を届けることができます。企業の規模や地域を問わず、消費者に直接情報を提供することが可能なのです。SNSアカウントの炎上は、多くの場合、対策を取っておけば防ぐことができます。ここからは、企業が取るべき対策について紹介していきます。

投稿のガイドラインを策定しておく

SNSアカウントを運用する際の統一したルールを作成しておくと、大勢でアカウントを運用する場合に投稿内容にばらつきが出ません。企業として「このような発信はしない」「このような書き方はしない」とあらかじめ決めておけば、炎上を防ぐこともできます。自社で行うキャンペーンについて投稿して炎上した事例などから考えても、投稿する担当者だけが炎上のリスクについて理解していればいいわけではなく、キャンペーンに関わる人も含めた全社的に意識の統一が必要だと分かります。投稿の文体やテイスト、写真やイラストの使い方などについてもガイドラインで定めておくと、担当者が変わった場合にもスムーズな運営が可能です。

X (旧Twitter)、Instagram、Facebookなど複数のアカウントを運営する場合は、それぞれの利用者の傾向や、マナーなどを理解しておくとよいでしょう。明らかなマナー違反は炎上の火種となることがあります。また、SNSの特徴を知っておくと、より効果的に自社商品を売り込めるため、知っておいて損はないでしょう。

注意が必要な話題を理解しておく

人々の間で活発に議論が交わされやすいテーマは、炎上のリスクをはらんでいるとも言えます。SNSで炎上しやすい話題をリストアップしておき、企業のSNSアカウントでは取り上げないようにしましょう。代表的なテーマは「宗教」「戦争」「政治」「セクシャリティ」「(経済・地域などの)格差」「スキャンダル」などです。これらは人によって特に意見が異なりやすいテーマであり、企業のSNSアカウントでいずれかの立場に偏った投稿してしまうと、それがそのまま企業を代表した意見だと捉えられてしまいます。

炎上する投稿には、いわゆる「バイトテロ」のように、消費者の立場から考えると不適切だとすぐに分かるものもありますが、中には「問題だ」と考える人と「問題ない」と考える人とで賛否両論に分かれるケースも多いです。SNSで炎上しやすいテーマは、賛否両論に分かれることが多く、投稿している本人も問題だと気付きにくい傾向があります。リストアップして、一目で分かるようにしておくことが大切です。

従業員向け研修の実施

従業員の行動や従業員個人のSNSアカウントが炎上の火種となることがあります。そのため、企業のSNSアカウントを担当している人や部署だけではなく、全社的な研修を行っておくことが必要です。「芸能人の〇〇さんが来店した」など従業員だけが知っている顧客の情報や「××の新商品の発売日決定」といった社外秘の情報を流出させると、企業活動に大きなダメージがあることを浸透させましょう。これまでの例を見ても「匿名だから大丈夫」とは言えません。従業員の知識やモラルに任せるのではなく、会社として教育することが炎上を防ぐことにつながります。

SNS上の監視をしておく

自社のSNSアカウントが発信した投稿が、SNS上でどのように受け止められているかを確認することも大切です。投稿についたリツイートやコメントのチェックはもちろん、定期的に社名や商品名を検索してみるなどして、SNS上の論調を見ておきましょう。炎上の元になりそうな書き込みを早めに見つけることができれば、迅速に対応することができるからです。SNSアカウントを作ったものの確認を怠り、炎上が広がった後にようやく気付くことがないようにしておきましょう。

もし炎上してしまったら…

炎上しているという情報を得たら、一刻も早い対応が必要です。謝罪や対応の的確さによって、イメージをあげることにも下げることにもなるため、炎上を仮定した対策をあらかじめ練っておくとよいでしょう。炎上から対応への流れを紹介します。

事実確認、原因究明、世論の分析

炎上が事実だと分かった場合、なぜ炎上が起きたのか、炎上に対して世論はどのような反応をしているかを確認します。投稿の内容自体に問題があった場合と、投稿が誤解されて拡散している場合とでは対応が異なるからです。また、世論が投稿のどの部分について批判しているのかを理解せず、取り急ぎ謝罪を行ってしまうと、「何に対して反省しているのか」「批判されている意味が分かっていない」とさらなる反発を招いてしまいます。事実確認と原因の究明、世論の分析を正確、かつ、迅速に行った後、社外への対応を行いましょう。

炎上したことを社内で共有する

企業のSNSアカウントが炎上したことをほかの社員にも共有しておきましょう。場合によっては会社としての謝罪が必要な場合もありますし、取引先との間で話題に上ることもあるはずです。お客様窓口に問い合わせが殺到したり、解約や返金手続きが必要なこともあるかもしれません。炎上の事実、原因、世論と共に、今後取る予定の対応についても伝え、全社で統一した見解を持てるようにしておきましょう。

評判を回復する

炎上によって失われた評判は簡単には回復しません。インターネット上にまとめられた記事を検索すれば、誰もが炎上の事実にアクセスできます。しかし、炎上に対して的確な対応ができれば、「あの会社はリスクマネジメントがきちんとできている」「対応に誠実さを感じた」などプラスのイメージを得られる場合もあります。炎上した後は、これまで以上に注目されることを念頭に置き、同じような過ちを2度と繰り返さないようにしなければなりません。炎上を繰り返す企業は信頼を失ってしまうからです。炎上に至った経緯や原因を踏まえ、あらかじめ定めていたガイドラインが適切だったかどうかについて、再度確認をしておきましょう。

炎上を事前に避ける対策と炎上を仮定した対策を両輪で進めよう

企業はSNSアカウントの運営において、炎上を避けるように対策を取る必要があります。ガイドラインの策定や投稿時に避けるべき話題のリスト化、従業員向けの研修などは、できるだけ早く実施し、定期的に見直しておきましょう。炎上に気付いたら、事実確認、原因究明、世論の分析を行い、速やかに社内で共有するとスムーズに対応できます。炎上によるイメージの低下は避けられませんが、対応によっては挽回することも可能です。

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