2021/10/08

ソーシャルリスク対策

バイトテロの基礎知識と企業が取り組みたいバイトテロ対策

バイトテロで被害を受ける企業が増えています。他人事と考えていると、ある日突然、顧客の信用を失うことになるかもしれません。バイトテロはどの企業にとっても無視できないリスクです。したがって、万が一に備えて準備を整えておく必要があります。バイトテロが企業にもたらす悪影響や今すぐ検討したいバイトテロ対策などを解説します。

バイトテロの定義とバイトテロが引き起こされる理由

バイトテロは「アルバイトによるテロ行為」の略語です。従業員が職場でした不適切な行為をスマートフォンなどで撮影し、それをブログやSNS、動画共有サイトなどへ投稿した結果、社会的な批判を招くことを指します。具体的には、顧客に提供する食品を使って従業員が悪ふざけをする、商品を保管する什器に従業員が入るなどが該当します。

「アルバイトによるテロ行為」の略語ですが、不適切な行為の主体はアルバイトに限りません。つまり、正社員や契約社員、パート従業員などがバイトテロを行うこともあります。テロ行為とされる理由は、職場に対する破壊活動と捉えられるからでしょう。詳しくは後述しますが、バイトテロは、イメージダウン・商品交換など、職場に甚大な被害をもたらす恐れがあります。

ちなみに、従業員以外が店舗などで行う不適切な行為はバイトテロに含まれません。従業員の行為で社会的な批判を招くことをバイトテロというのです。バイトテロは、なぜ起きるのでしょうか。

バイトテロが引き起こされる3つの理由

バイトテロは、日本国内のさまざまな店舗などで起こっています。頻発する理由として以下の点が挙げられます。

第一の理由は、従業員のモラルの欠如といえるでしょう。顧客に提供する食品を衛生的に扱う、商品を保管する什器を丁寧に扱うなどは、社会で生活するうえで当然守るべきルールです。企業の多くは、いわば常識としてこれらを改めて教育しません。しかし、一部の人たちは、何かしらの理由で当然守るべきルールを共有していません。その結果、あってはならないバイトテロが引き起こされてしまうのです。

第二の理由として、想像力の欠如が挙げられます。バイトテロは、昨日今日始まったことではありません。最初のバイトテロを示すことは難しいですが、少なくとも10年以上の歴史があると考えられています。したがって、ほとんどの従業員は、バイトテロの影響を理解しています。つまり、勤務先に迷惑がかかる、損害賠償を請求される恐れがあるなどを理解しています。しかし、これらのことを自分事として捉えられない従業員もいます。自分は大丈夫だろうと考えた結果、SNSに動画などを投稿して炎上を招いてしまうのです。

第三の理由として、SNSの拡散力の大きさが挙げられます。結果的にバイトテロをすることになる従業員の多くは、仲間内で楽しむため不適切な行為を収めた動画などをSNSに投稿します。しかし、投稿した動画が仲間内だけで拡散するとは限りません。動画の内容によっては、瞬く間に全国に拡散してしまいます。ケースによってはクローズドな空間に投稿したものが、何かしらの理由で全国に拡散されるケースもあります。SNSの拡散力の大きさも、バイトテロを引き起こす要因となっています。

バイトテロは正義感で拡散される

ただし、SNSに投稿されたすべての画像や動画が、瞬く間に拡散されるわけではありません。画像や動画の内容で拡散力は異なります。バイトテロの動画は、拡散力が非常に大きいといえるでしょう。拡散力が非常に大きい理由は、画像や動画を見た人に「あってはならないことが行われている」と思わせるからです。特に、身近な店舗などで不適切行為が行われていると、このような思いは強くなる傾向があります。気づかない間に、自分もバイトテロの被害者になる恐れがあるからです。このことは、大手チェーン店で行われたバイトテロが拡散しやすいことを考えればわかります。バイトテロの画像や動画は、主に「間違いを正さなければならない」「間違いを誰かに伝えなければならない」などの正義感から拡散されると考えられます。

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バイトテロの始まりと事例

バイトテロは、日本全国で発生しています。具体的に、どのようなバイトテロが行われてきたのでしょうか。バイトテロの始まりと事例を紹介します。

バイトテロの始まり

バイトテロは、2013年頃から普及しだした言葉と考えられています。この頃からさまざまなメディアでバイトテロが使われだしました。ただし、2013年からバイトテロが始まったわけではありません。2013年より前から、バイトテロに相当する出来事は起きていました。例えば、2007年に、牛丼チェーンの従業員が本来はないメニューを作る動画を投稿し、その行為が不衛生だと批判を浴びた事例などがあげられます。バイトテロは、10年以上にわたり繰り返されている問題なのです。

ステーキチェーンの事例

有名なバイトテロとして、ステーキチェーンのアルバイト従業員が厨房の業務用冷蔵庫に入っている写真をSNSに投稿した事例が挙げられます。不衛生などの理由で大きな批判を浴びました。店舗の清掃・消毒などを行いましたが、結局は店舗閉鎖に追い込まれています。店側は、アルバイト従業員に損害賠償請求を検討中と発表しました。

回転すしチェーンの事例

同じく有名なバイトテロとして、回転すしチェーンのアルバイトがゴミ箱に捨てた魚をまな板に戻す動画をSNSに投稿した事例が挙げられます。不衛生などの理由で、店舗は大きな批判を浴びました。運営会社は法的措置をとることを発表し、アルバイト従業員は偽計業務妨害容疑などで書類送検されています。

バイトテロが企業と従業員に与える影響

バイトテロは、企業と従業員にさまざまな影響を与えます。それぞれに与える主な影響を紹介します。

企業に与える悪影響

バイトテロで最も注意するべきは、ブランド毀損や風評被害です。顧客の信用を失うと言い換えることもできます。バイトテロが発生すると、何年もかけて培った顧客の信用が一瞬で失われてしまいます。ブランド毀損や風評被害につながる理由は、食品を衛生的に扱っていない、商品を適切に管理していないなど、悪いイメージがついてしまうからです。ブランド力を失う、あるいは悪い噂が立つと、来店数や売上は減ってしまいます。ケースによっては、休業や閉店に追い込まれることもあります。バイトテロは、企業にとって非常に恐ろしい行為です。

バイトテロで、採用活動が難しくなることも少なくありません。求職者から敬遠されるケースが多くなるからです。求職者から敬遠される主な理由は、職場の人間関係をはじめとする労働環境が悪いと思われてしまうからといえます。特に、アルバイトは採用しづらくなると予想されます。商圏内で採用活動を行うため、求職者の多くがバイトテロの内容を知っていると考えられるからです。バイトテロが発生すると、計画通り従業員を集められなくなるかもしれません。採用面から考えても、バイトテロは恐ろしい行為といえます。

上場企業は、株価の値動きにも注意が必要です。過去の事例では、バイトテロ後に株価が下落している企業が少なくありません。もちろん、株価下落の要因はさまざまですが、バイトテロも要因のひとつと考えられます。ケースによっては、下落の主な要因と考えられることもあります。株価下落が企業に与える主な影響は、資金を調達しにくくなることです。株価下落の短期的な影響は軽微かもしれませんが、売上低迷などと相まって株価下落が長期化すると大きな問題になりえます。バイトテロは、企業が無視できる問題ではありません。

従業員に与える悪影響

続いて、従業員に与える影響を紹介します。バイトテロを行うと、SNSに投稿した情報などから、個人を特定されることが少なくありません。個人を特定されると、名前や住所、電話番号などの個人情報をインターネット上にさらされます。これらの情報をもとに、いたずら電話が絶え間なくかかってくることなどがあります。

バイトテロを行った従業員が学生の場合、学校を退学や停学になる恐れもあります。バイトテロは、従業員にとっても非常にリスクの高い行為です。また、バイトテロは、就職活動にも悪影響を与える恐れがあります。例えば、内定取り消しになることや採用を見送られることなどが考えられます。就職活動に悪影響を与える理由は、求職者の過去のSNSの投稿などをチェックする人事担当者が多いからです。

デジタルタトゥーとして、情報が残る点にも注意が必要です。投稿した動画や画像、個人情報などが拡散すると、インターネット上から削除しきれなくなります。不適切な動画などを投稿した従業員は、一生、同じ問題で悩まされる恐れがあります。

さらに、バイトテロで名誉棄損罪・威力業務妨害罪・器物損壊罪などで逮捕されることもあります。名誉棄損罪と威力業務妨害の刑罰は3年以下の懲役または50万円以下の罰金、器物損壊罪の刑罰は3年以下の懲役または30万円以下の罰金です。バイトテロが人生の大きな分岐点になるかもしれません。

もちろん、勤務先から解雇・損害賠償請求される恐れもあります。バイトテロは、従業員にとってもリスクの大きな行為といわざるを得ません。

今すぐ始めたいバイトテロ対策

バイトテロは、企業にとっても従業員にとっても不幸な行為です。企業は、バイトテロを防ぐ対策やバイトテロの影響を小さくする対策を講じるべきと考えられます。具体的に、どのような対策を講じればよいのでしょうか。

従業員が自分事化できる研修を実施

バイトテロは、従業員がバイトテロでもたらされる悪影響を自分事化できていないことなどで起こります。不適切な動画をSNSなどに投稿するとどうなるかわかっているにもかかわらず、自分は大丈夫と考えて投稿してしまうのです。したがって、自分も例外ではないと気づける研修を行うとバイトテロを防げる可能性があります。具体的には、過去の事例、炎上しやすい投稿、バイトテロが企業や従業員に与える影響などを理解できる研修を行うとよいでしょう。

SNSに関するルールを定める

SNSに関するルールを定めて、従業員間で共有しておくことも有効です。例えば、職場にスマートフォンを持ち込まない、店内で写真や動画を撮影しない、顧客の個人情報を勝手に持ち出さないなどが考えられます。いずれも基本的な内容ですが、徹底できればバイトテロの発生を抑えられるはずです。ルールを定めて、入社時に周知するなどの対策を講じるとよいでしょう。

クライシスコミュニケーション体制の確立

以上の対策を講じても、バイトテロを完全に防ぐことはできません。万が一に備えた対策も必要です。最初に検討したいのが、クライシスコミュニケーション体制の確立です。クライシスコミュニケーションは、企業が緊急事態に直面したときに被害を最小限に食い止めるため行うコミュニケーション活動を意味します。つまり、バイトテロが起きたときに、誰が、どのように対応するか決めておくことがクライシスコミュニケーション体制の確立といえます。事前にクライシスコミュニケーション体制を確立しておくことで、バイトテロの被害を最小限に食い止められる可能性があります。

ソーシャルモニタリングサービスの活用

ソーシャルモニタリングサービスも、バイトテロ対策に有効と考えられます。ソーシャルモニタリングサービスとは、SNSや掲示板などを監視して、自社に関連するキーワードを含む投稿を収集し、そのリスクを判定するサービスです。炎上の火種をいち早くキャッチできるため、被害が拡大する前に消火活動を行えます。危機対応コンサルタントなどから支援を受けられるソーシャルモニタリングサービスを選んでおくと安心です。

イメージ回復に向けた取り組み

炎上が落ち着いたら、イメージ回復に向けた取り組みを行わなければなりません。ポイントは、ターゲットを定めてあらゆる場面で一貫したメッセージを発信することです。粘り強く一貫したメッセージを発信することで、失った信頼を回復できます。

デジタルタトゥーは弁護士に依頼して削除することなどができますが、完全に取り除くことは難しいといえます。したがって、デジタルタトゥーの除去にこだわっても、有効なバイトテロ対策にはなりません。長期的に考えると、イメージ回復に向けた取り組みが有効なバイトテロ対策になります。

バイトテロは目の前に迫った脅威

バイトテロは、どの企業も無縁とはいえない脅威です。対策を講じておかないと、地道に築いてきた信用を失うことになるかもしれません。従業員に対し研修を実施するとともにクライシスコミュニケーション体制の確立、ソーシャルモニタリングサービスの活用などを検討してみてはいかがでしょうか。準備を整えておくことで、被害を最小限に食い止められます。

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