
2024/08/26
ソーシャルリスク対策
SNSで著作権侵害になる事例とは?企業における有効な対策方法も解説
SNSは情報拡散力やリアルタイム性に優れているので、企業のマーケティングでも積極的に活用されています。一方で、優れた情報拡散力のために、SNS上で他人の著作権を侵害してしまうと、大きな損害を与えてしまいます。SNSで情報を発信する際には、著作権に関するルールと知識をしっかり調べる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、著作権の基礎知識を踏まえつつ、SNSで著作権侵害になるケースや事例、著作権侵害に科せられる罰則の内容、企業で取るべき対応について解説します。SNSと著作権の関連性を詳しく知りたい方は、ぜひお読みください。
- 著作権とは、漫画やアニメ、小説や映画といった著作物を創作した著作者に付与される権利のこと
- 漫画やアニメのキャラクター画像などをSNSで許可なく使用した場合、著作権侵害になってしまう
- SNSで著作権侵害が発生した場合、損害賠償などの民事責任だけではなく、刑事責任を問われる可能性もある
- 企業がSNSでの著作権侵害を避けるためには、社内教育やソーシャルリスニングといった対策を講じることが大切
SNS活用において理解しておくべき著作権とは?
著作権とは、創作活動によって「著作物」を生み出した「著作者」に付与される知的財産権の一つです。著作権法によると、著作物は以下のように定義されています。
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
著作物と一口にいっても多種多様ですが、漫画・アニメ・小説・音楽・絵画・映画・写真などが代表的です。著作者の利益・権利を守りつつ、著作物の利用に関するルールを規定し、文化の発展に貢献することが著作権の目的となります。
実体のないデータ形式の文章や作品に加え、コンピューターで処理するプログラムやデジタル画像なども著作物です。SNSでも著作物を取り扱う機会は多いので、あらかじめ注意する必要があります。
二次的著作物の著作権は?
二次的著作物とは、原著作物をベースに新たな創作活動を行うことで誕生した作品等のことです。代表的な事例としては、以下のようなものがあります。
- 漫画を原作とするアニメや実写映画
- 英語で執筆された小説の日本語版
- クラシック音楽をポップ調にアレンジした楽曲
- 絵画で描かれた人物の彫刻
このような二次的著作物の著作者は、新たな創作活動が行われた部分に権利を有し、原著作物の著作者は原著作物に加えて二次的著作物にも権利を有します。
SNSで著作権侵害になるケース
SNSで以下のような行動をとった場合、著作権侵害になってしまいます。
- キャラクター画像を使用する
- アーティストが作った楽曲を使用する
- 食べ物・景色・動物などの他人が撮影した写真や制作した動画を使用する
- 他人が書いた文章を流用する
ケース別に詳細も解説します。
キャラクター画像を使用する
好きなアニメやゲームのキャラクター画像を無許可でアイコンに使ったり、SNS投稿に掲載したりすることも著作権侵害です。トレーディングカードや公式設定資料集など、自分が所有しているグッズのキャラクター画像を撮影して使用することもNGとなります。
アニメやゲームに登場するキャラクターの著作権は、その作品を創った制作会社が保有しています。元のキャラクター画像のデザインや色合いをアレンジしたり、他の画像と組み合わせたりしても、元の著作物の本質的特徴がそのまま残った状態で使用すれば、著作権侵害の可能性が生じるので要注意です。
アーティストが作った楽曲を使用する
アーティストが作った楽曲をSNSで許可なく使用すると、著作権侵害になってしまいます。例えば、YouTubeに投稿する動画のBGMとして楽曲を流すことはNGです。
また、Facebook・Instagram・TikTokなどは、音楽の著作権を管理する「JASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)」と利用許諾契約を締結していますが、著作隣接権の許諾を得る必要があります。
「歌ってみた」系の動画など、自分で歌唱・演奏することについても、各SNSのルールやJASRACのサイトをチェックするなど、著作権侵害にならないよう予め調べることが大切です。
参考:JASRAC|YouTubeなどの動画投稿(共有)サービスでの音楽利用
他人が書いた文章を流用する
書籍・新聞・ニュースサイトなどに掲載されている文章や図版類を許可なく使用すると、著作権侵害になってしまいます。文章を要約して使うことも著作権法上の「翻案」に当てはまるため、事前に許可を得なければなりません。
他人の顔写真を使用する(肖像権含む)
SNSのアイコンで顔写真が使われているケースはよく見受けられますが、他人が撮影した顔写真を許可なく使用している場合、著作権侵害にあたります。
また、人物の顔写真を無許可で使うと、肖像権侵害になってしまう可能性があります。肖像権とは、本人の許可なしで容貌・風貌を撮られたり、写真が公開されたりすることを認めない権利のことです。俳優・アイドル・スポーツ選手・作家といった有名人はもちろん、友達など一般人の顔写真であっても同様です。
なお、人物をはっきり特定できない写真、イベントの様子を撮った写真などは基本的に肖像権侵害にあたりませんが、イベントの写真にはっきりと人物が写っている場合は肖像権侵害に該当する恐れがあるので注意が必要です。
食べ物・景色・動物などの写真や動画を使用する
飲食店の料理の写真撮影や、景色のドローン撮影、ペットの利用など、著作権以外にも他人の権利(営業秘密、商標権、所有権、肖像権など)を侵害する可能性があるため、注意が必要です。
SNSで著作権侵害になった事例・判例
SNSと著作権の関連性をより深く理解するためには、実際に起こった事例・判例から学ぶことも大切です。
イラストを無断転載した事例
「壁ドン」と呼ばれるシチュエーションのイラスト3点を無断転載した結果、損害賠償請求につながった事例です。原告は自分のSNSやWebサイトで関連イラストを公開していましたが、別のWebサイトを運営していた被告がそれを許可なく転載し、原告が著作権侵害を訴えました。
被告側は「原告がSNS上でイラストの掲載を許諾していた」と主張しましたが、原告側は「SNSでの発言を恣意的に切り取っている」「無断転載を認めない意思表示もしている」と反論しています。
発売前の漫画をSNSで公開した事例
まだ発売されていない漫画の内容を公開する「早バレ」を行った結果、刑事裁判となった事例です。一部書店では発売日より早く漫画雑誌が届いていましたが、それに目を付け対象の漫画雑誌を先んじて入手し、内容を翻訳・スキャニングしてSNSやWebサイトにアップロードしていました。
「早く内容が知りたい」という読者の心理を利用した犯罪であり、公開元のSNSやWebサイトの訪問者数を増やすことで、投稿者は広告収入を得ていました。
音楽を無断使用した事例
YouTubeで大人気のメイクアップアーティストが無断で複数アーティストの楽曲を使用した結果、音楽会社から訴えられた事例です。被告は自身の動画のBGMとして楽曲50曲を使っており、原告は「楽曲の無断使用によって利益を得ることは許されない」と訴訟を起こしました。
関連記事:SNSにおける企業の炎上事例9選|炎上の対処法・事前対策を紹介
SNSで著作権侵害にならないコンテンツ
以下のような条件が当てはまるコンテンツは、SNSで使用しても著作権侵害になりません。
- ルールを守り引用している
- 著作物でないものを掲載している
- 著作者から許諾を得ている
- 著作物が保護期間を過ぎている
各コンテンツの概要もまとめました。
ルールを守り引用している
引用とは、他人が創作した著作物の一部を自身の著作物に取り入れることです。
著作権法によると、引用は以下のように定義されています。
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
しかしながら、どのような著作物も引用する際は、著作者が定めたルールを守る必要があります。主なルールとしては「商用利用不可」「引用部分や出典を明記」などがございますが、引用元の確認が必要です。
また、引用にあたって著作物の内容を加工することもNGです。表現やデザインの変更はもちろん、誤字脱字の修正であっても加工と見なされる可能性があるので、そのままの形で引用しましょう。
著作者から許諾を得ている
あらかじめ著作者に問い合わせて許諾を得ている場合、その著作者が定めた条件の範囲内であれば、著作権侵害なしで著作物を使用できるようになります。
著作権法における規定は、以下の通りです。
- 著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる。
- 前項の許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において、その許諾に係る著作物を利用することができる。
引用:著作権法 第六十三条(著作物の利用の許諾)|e-Gov法令検索
また、著作者からは許諾だけではなく、著作権の譲渡を受けることも可能です。譲渡後は著作物を使う本人が著作権を保有するので、著作権侵害も発生しないことになります。
著作物が保護期間を過ぎている
著作物は創作した時点から著作権の保護対象となりますが、効力は時限性です。一定の保護期間を過ぎると効力が消失するので、対象の著作物は誰でも自由に利用できるようになります。
著作権の保護期間は原則として「著作者の生存中および死後70年間」です。また、無名もしくは変名(ペンネームで公表など)の著作物に関しては「著作物の公表後70年間」と定められています。
なお、変名であっても著作者を特定できる場合、保護期間は生存中から死後70年間となります。
SNSにおける著作権侵害の罰則とは?
SNSで著作権侵害が発生した場合、著作権法に基づいて罰則が課されます。「民事責任」と「刑事責任」に分類されますが、それぞれ内容が異なるため、きちんと押さえておきましょう。
民事責任の内容
民事責任は大きく分けると、以下の3種類です。
- 差止請求
- 損害賠償請求
- 名誉回復措置請求
詳しく解説します。
差止請求
差止請求とは、著作権を侵害される恐れがある場合、あるいは現在進行形で侵害されている場合、その侵害行為の停止・予防を求めることです。例えば、著作権の保護下にあるイラストが他人のSNSに無断転載された際、著作者は内容証明郵便や裁判によってイラスト画像の使用停止や破棄を請求できます。
差止請求が来たら、侵害行為の加害者はその請求内容に沿って対応しなければなりません。故意・過失は無関係なので、著作権侵害の事実を認識していなくても請求に応じる必要があります。
損害賠償請求
損害賠償請求とは、著作権侵害で著作者が損害を受けた際に金銭的な補償を求めることです。損害賠償額の内訳は損害内容に応じて変動しますが、主に以下のような項目が含まれています。
- 著作物の売上に応じた逸失利益額
- 加害者が得た利益額
- 著作物の使用に伴うライセンス料
- 著作権侵害に関する調査費用
- 開示請求などの手続きにかかる費用
- 弁護士費用
基本的に侵害行為が長く続くほど損害賠償額も増加しますが、損害賠償請求を行う際は「故意・過失の有無」と「損害の発生」を証明する必要があります。
また、損害賠償額とは別に精神的苦痛に伴う慰謝料も請求可能です。
名誉回復措置請求
名誉回復措置請求とは、著作者自身の精神的利益を守る「著作者人格権」の侵害行為が認められた際、名誉回復を実現するための対応を加害者に求めることです。例えば、SNSで公開したイラストに著作権侵害が認められた場合、加害者に対して謝罪広告や訂正文の掲載、事実関係の公表といった措置を請求することができます。
これらの措置は謝罪や雑誌を通じて実施されていますが、フォロワー数や拡散状況によってはSNSでも同様の措置を講じることがあります。
刑事責任の内容
被害者の告訴によって著作権侵害が犯罪として成立すれば、民事責任のみならず刑事責任も追及されることになります。また、非親告罪の場合、告訴されなかったとしても刑事責任を問われる可能性があるため、あらかじめ注意が必要です。
著作権侵害
著作権侵害が認められた場合、加害者に対する罰則として「10年以下の懲役」「1,000万円以下の罰金」のどちらか一方、あるいは両方が課されることになります。
そして、法人の代表者や従業者が侵害行為に関わっている場合、法人に対して「3億円以下の罰金」が課される可能性があります。SNS運用に携わる企業の担当者は、特に注意すべきポイントです。
また、無断でアップロードされた有償コンテンツを違法ダウンロードした場合、使用目的を問わず「2年以下の懲役」「200万円以下の罰金」が課されます。
著作者人格権侵害
著作者人格権は大きく分けると、以下の4種類があります。
- 公表権:著作物の公表時期・方法を決める権利
- 氏名表示権:著作者の名前の表示方法を決める権利
- 同一性保持権:著作物の無断修正を禁じる権利
- 名誉声望保持権:著作者の名誉を害する使用方法を禁じる権利
これらの権利に対する侵害行為が犯罪と認められた場合、加害者には「5年以下の懲役」「500万円以下の罰金」の罰則が課されます。著作権侵害と同様、両方とも適用される可能性があるので要注意です。
SNS活用で企業が気をつけることは?著作権侵害を避けるための対策方法
企業がSNSでの著作権侵害を避けるためには、以下のような対策方法を実践することが大切です。
- 社内教育を実施する
- ガイドラインを策定する
- ソーシャルリスニングを行う
具体的なアプローチや注意点についても解説します。
社内教育を実施する
著作権侵害を防ぐ対策の第一歩は、SNS運用の担当者が著作権に関する正しい知識を学ぶことです。著作権の基礎知識を身につけるだけではなく、著作権侵害にあたる事例・判例をチェックしつつ、それを定期的な社内教育で共有すれば、従業員の著作権に対する意識を高めることができます。
また、上記と併せてSNS全体に関する教育を行うことも大切です。各SNSの性質やポリシー、マーケティングで活用する際の流れなどを周知しましょう。
ガイドラインを策定する
著作権侵害の防止対策を講じる場合、SNS運用の社内ガイドラインを策定することも重要です。使用しても問題ない画像や音源、引用する際のルールなどをガイドラインとして明確に記載しておけば、よりスムーズにSNSを活用しやすくなります。
また、発信の方向性やNGワードを決めたり、二重チェックの手順をマニュアル化したりするなど、SNS運用全体のガイドラインも一緒に策定しておくと、炎上対策にもつながります。
ソーシャルリスニングを行う
ソーシャルリスニングとは、SNS上に投稿されたユーザーのリアルな意見を収集・分析しつつ、消費者のニーズに合った施策を実施することです。ユーザーの本音に耳を傾けることで、企業や自社商品に対する評価を可視化できるので、マーケティング戦略の課題を洗い出す際に役立ちます。
また、ソーシャルリスニングに取り組めば、SNSの監視オペレーションや情報収集を半自動化できるため、業務効率化を実現できることもメリットです。さらに、商品やサービスの著作権侵害にあたりそうな消費者の投稿を早期発見しやすくなるので、トラブルの予防にもつながります。
関連記事:ソーシャルリスニングとは|意味や分析方法の解説と導入事例を紹介!
SNSにおける著作権侵害のリスクを低減する「Buzz Finder」
SNS運用にあたって著作権侵害のリスクを減らしたいなら、ソーシャルリスニングツールを導入することをおすすめします。
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導入事例|情報通信サービス業 様
ある情報通信サービス業様はマーケティングに関して、部門ごとに以下のような課題を抱えていました。
- 【広報部門】炎上騒ぎが起こった際、SNSの反応を踏まえたメディア対応がしたい
- 【顧客サービス部門】SNS上でのお客様の声をサービス改善に活かしたい
- 【お客様センター】トラブル発生時の入電影響を事前に把握したい
Buzz Finderを導入したところ、広報部門は的確かつ迅速なプレスリリース、顧客サービス部門は従業員の改善意識向上、お客様センターは定点把握による対応力向上を実現できたとのことです。
導入事例:情報通信サービス業
SNS活用には著作権侵害への理解が必須
SNSは企業のマーケティングに活用できる便利なツールですが、炎上や風評被害といったトラブルの被害も拡大しやすいデメリットもあります。特に著作権侵害は投稿者が気づかず発生しているケースも多く、なおかつ損害賠償請求や罰金といったペナルティにつながりかねないため、SNS運用の担当者は日頃から注意しなければなりません。
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