2023/03/24

BtoBマーケティングでは「ペルソナ」をどう設定すればよいのか?ポイントを解説

マーケティングの世界では、「ペルソナ」という言葉が頻繁に登場します。ペルソナとは、自社の商品・サービスを使うユーザーの“典型的な人物像”のことです。

BtoCの領域においてペルソナの設定はマーケティングに有効に働きます。あらかじめペルソナを設定したうえでマーケティングを実践することで、ユーザーに寄り添った施策が行えるようになるためです。ペルソナを活用したマーケティングは「ペルソナマーケティング」と呼ばれることもあります。

一方、BtoBの領域では、自社の商品やサービスの検討や導入に関わるステークホルダーが多くなる傾向にあり、特定の“典型的な人物像”を設定することが難しいケースがあります。BtoBマーケティングにおいてペルソナをどう設定すればよいのでしょうか? ポイントを解説します。

ペルソナは「ターゲット」とどう違う?

冒頭で触れたように、ペルソナは「商品やサービスを使うユーザーの典型的な人物像」のことですが、似たような言葉として「ターゲット」というものも存在します。この2つの言葉は、似ているようで意味が異なる言葉となります。

ターゲットとは、商品やサービスを購入する年齢や性別といった「属性」を指します。たとえば「20代女性」「40~50代の役職者」といったような、ある特徴を持った人たちを指す言葉となります。属性には年齢、性別のほかにも、職業や年収、居住地といった情報も含まれます。

一方のペルソナは、このターゲットをさらに絞り込み、あたかも実在するような具体的な1人の消費者像を設定するものです。たとえば「名前」や「実年齢」だけでなく、「学生時代のエピソード」「家族構成」「出身大学」「現在の仕事の内容」「趣味」といったことまで定義するのがペルソナとなります。

ペルソナを細かく設定することで、実在する人物がなぜ自社の商品やサービスを欲しがるのか、どういう状況で自社の商品やサービスを利用するのかという仮説がよりリアルに考えられるようになります。結果的に、戦略や具体的な施策も立てやすくなり、ビジネスの成功につながりやすくなります。

まとめると、ターゲットは「20代女性」といったようなシンプルな属性で顧客を分類するもの、ペルソナは「20代女性、名前は……、趣味は……」といったように具体的な1人の顧客像を設定するものとなります。

なぜBtoBでペルソナを設定する必要があるのか?ペルソナのメリット

ペルソナを設定することは、BtoBビジネスにおいても、いくつかのメリットがもたらされます。ここではメリットを2点に分けて紹介します。

(1)メインターゲットとなる顧客像が明確化できる

先にも触れた通り、ペルソナはターゲットとなる顧客像を1つに絞ったものとなります。そのため、チームのメンバーが思い描く顧客のイメージが統一しやすくなります。

たとえばターゲットを「40~50代の管理職」とだけ設定した場合、その人はどの役職に就いているのか、どのような業種の仕事をしているのか、部下はどのくらいいるのかがはっきりしません。チームのメンバーそれぞれが「40~50代の管理職」というイメージを思い描くことで、顧客像がずれ、商品やサービスも変わる恐れがあります。

しかし、「製造業勤務の40~50代で営業部門の管理職、部下の数は10人、〇〇業界に向けた新規顧客の獲得をミッションにしている」といったペルソナをあらかじめ設定しておけば、顧客像をチームで共有することが可能になります。特に大規模なプロジェクトで、メンバーが大人数になればなるほど、ペルソナを設定するメリットは大きいと言えるでしょう。

(2)ユーザーがなぜ商品やサービスを選択するのか、ニーズが把握しやすくなる

前項でも触れましたが、ペルソナを設定することで、なぜ自社の商品やサービスが選ばれるのか、どの場面で利用されるのか、という仮説がより具体的に考えられるようになります。「このペルソナが商品を購入する場合、どの競合と比較するのか?」「もしペルソナが商品選びに困った時、どういうプロモーションを打つことで購入に踏み切るのか」といったように、顧客の目線に立ったうえで対策を取ることができます。

BtoBのペルソナはどうやって設定すれば良いのか?

このようにBtoBにおいてもペルソナを設定は、顧客の目線でのマーケティングをしていく上で大切な役割を担います。一般的に、ペルソナは顧客像を細かく設定します。設定する際には、「デモグラフィック」「サイコグラフィック」という2つの面で考えていきます。

デモグラフィックは「人口統計学的な属性」のことで、簡単にいえば性別や年齢、収入や職業、家族構成といった情報のことです。たとえば「40歳の男性、東京都〇〇市の一戸建てで2世帯暮らし。都内の商社に在籍する会社員で、年収は〇〇万円。役職は部長」といったような情報がデモグラフィックに含まれます。

サイコグラフィックとは、性格や趣味、人生に対する考え方など、心理的な情報のことです。たとえば「性格は生真面目だがお酒が好き。休日は郊外の自宅でDIYを楽しむ。本当はもっと田舎で暮らしたい」といった情報がサイコグラフィックとなります。

ただし、BtoBでペルソナを設定する場合、「一戸建てで2世帯暮らし」「休日はDIY」といったパーソナルな情報はそこまで重要ではありません。注力すべきは、自社の商品やサービスが検討、導入される際に、どのような部門や組織が主導し、どのような流れで意思決定がされていくかについての情報をあぶりだしていくことです。

BtoBでは、商品やサービスが検討、導入される際、「営業の売上が伸び悩んでいる」「従業員の離職率が高い」といった、企業・組織全体、もしく部門・部署の課題がきっかけとなります。情報を収集して候補を選定する人と、購入の意思決定を行う人が別であることもしばしばありますし、意思決定においても、部長、事業部長、役員、社長など、いくつかの段階を経ることがあります。

そのためBtoBにおけるペルソナは、「企業や組織全体の意思決定プロセス」を可視化するためのものと捉えると、より有用なマーケティングツールとなります。

デモグラフィックな視点からは「業種」「事業内容」「従業員数や売上規模」「部門や部署」「役職」といった情報を整理し、サイコグラフィックな視点からは「業務を効率化したい」「人員が不足している」「トップダウンでタスクが下りてきている」といった定性的な情報を拾っていきます。

購買プロセスの各フェイズで意思決定に関わる人物を想定する

次にそれらの情報をもとに、購買プロセスの各フェイズの意思決定に関わる、それぞれの人物像に当てはめていきます。たとえば、商品やサービス導入の決裁者を前述した「製造業勤務の40~50代で営業部門の管理職、部下の数は10人、〇〇業界に向けた新規顧客の獲得をミッションにしている」ペルソナにした際に、意思決定に必要な情報を収集する担当者の人物像を「20代で入社3年目の営業部社員、顧客管理を効率化するための方法について各社から情報を集めている」といった形で肉付けしていきます。

それらの人物像を掛け合わせることで、「現在のビジネスや業務でどんな課題を抱えているのか、何を変えたいと考えているのか」というペルソナの全体像をまとめていきます。

まずは実際の顧客を元にペルソナを設定しよう!

ペルソナを設定する際には、まずは現時点での顧客の情報が元となります。自社の購買データを集めて分析し、“理想的”と見なせる顧客をイメージしながら設定するとよいでしょう。現実とかけ離れたペルソナを設定しても、ペルソナは機能しません。

実際に存在し、かつ「今後はこういう顧客を増やしたい」とポジティブに考えられるペルソナを想定することで、そのペルソナに近い顧客とどのように接点を持てば良いのか、どのようなアプローチをすべきかなどの筋道を作ることができるようになります。

とはいえBtoBの場合、自社の担当者が対面している部門や部署の顧客のみで意思決定が完結していないケースは多々あり、ペルソナを設定するための十分な情報が得られない場合もあります。そのような場合に効果的なペルソナ設定の手法のひとつが、デプスインタビューです。

デプスインタビューとは、対象者との対話形式で実施する調査の方法です。一人の対象者に特定のテーマについて深く掘り下げて質問をしていくことで、アンケート調査などではつかみにくい、ペルソナの思考や本音について知ることができます。

やり方としては、自社の顧客にインタビューの依頼をするケースと第三者に依頼をするケースがあります。前者の場合は、直接対面をしている自社の担当者ではなく、普段関わりのない人物が客観的な立場からインタビューをすることで本音をひきだしやすくすることが必要となります。

第三者に依頼するケースでは、デプス調査を専門に請け負っている企業に依頼をする方法があります。「業種」「事業内容」「従業員数や売上規模」「部門や部署」「役職」といった情報からインタビューの対象者を選定し、対話の場で「〇〇という商材を検討したことがあるか」「それはどんな業務においてか」「どんな背景やボトルネックがあったか」といった情報をヒアリングしていきます。このようにして得られた生の声は、ペルソナの設計、その後のマーケティング土台となる貴重な情報となります。

まとめ

BtoBでのペルソナ設定は、「企業や組織全体の意思決定プロセス」をいかに可視化していくかがポイントとなります。その有効な手法として、顧客や第三者へのデプスインタビューをご紹介しました。精度の高いペルソナの設定は、BtoB領域でのマーケティング戦略の立案、広告、サイト構築、メール配信、SEO対策などあらゆる施策の土台となります。もし社内にインタビューのノウハウやリソースがない場合は、外注することも一手です。インサイドセールスや営業部門との共通言語ともなる万能なマーケティングツールとして、設定に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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