更新日:2023/06/29(公開日:2020/11/25)
法令遵守(電子帳簿保存法、インボイス制度など)
請求書の電子化でインボイス制度対策をしよう|メリットや電子化のポイントを解説
請求書の作成は、比較的時間や手間が多くかかってしまう業務ではないでしょうか。取引先ごとに請求書を作成し、封入して送るだけでも、数時間から丸1日かかるケースもあるかもしれません。
この業務の負担を軽減する方法の1つが請求書の電子化です。2024年1月からは電子取引における請求書の電子保存が義務付けられるため、企業にとっても電子化の推進は重要な課題になっています。この記事では「請求書を電子化する」メリットやデメリットなどを詳しく解説します。
請求書の電子化とは?
請求書の電子化とは、紙を利用していた請求書をWeb上のクラウドサービスやPDFなどの電子データで作成し、取引先へのメールに添付して送信したり、Webページを介してダウンロードしてもらったりする発行方法です。
現在では、法律で電子データによる請求書のやり取りが認められており、電子化された請求書は「電子請求書」や「電子インボイス」と呼ばれます。請求書の電子化にはさまざまなメリットがあるため政府も推奨・後押ししており、今後もさらなる普及が見込まれるでしょう。
請求書を含む電子取引データの紙保存が廃止になるため電子化は必須
2022年(令和4年)1月1日から電子帳簿保存法の改正が施行され、電子取引における書類の紙保存が廃止となったため、現在の企業にとって請求書の電子化は必須事項といえます。
2021年12月に公表された「令和4年度税制改正大綱」により「電子取引における電子保存の義務化」が制定されました。今後は、電子データで発行・受領された請求書は、データとして保存が必要です。
ただ、改正大綱では、2年間の猶予期間が設定されているため、2023年12月31日までは紙での保存も認められています。しかし、期間終了後の2024年1月1日からは、電子メールやEDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)、インターネット、FAXなど電子取引における国税関係の帳簿・書類はデータのまま保存しなければなりません。電子化の推進には時間がかかるため、2024年に備え、早めの取り組みが重要となります。
「PDFで請求書を送付」は法律的に大丈夫?
結論から言えば、法律的な問題はありません。これは、請求書の電子データが保存されていれば取引先にきちんと請求をしていた証明になるからです。ただし、請求書を受け取る側は「e-文書法」と「電子帳簿保存法」の要件をクリアしたうえで保存しなければなりません。「e-文書法」は紙のデータによる保存を義務づけられていた書類を電子化保存できる法律で、意味的には「電子帳簿保存法」と同じです。しかし、「e-文書法」のほうが幅広い書類を電子化して保存できます。
請求書を電子化した場合に社印は必要?
請求書に関して、社印を押すことは法律的な義務がありません。そのため、紙・電子どちらの請求書にも社印がなくても有効です。しかし、社印がない請求書は偽造しやすいデメリットもあるため、電子化した場合も専用の社印を用意しておくほうが安心です。ちなみに、社印が押されている請求書の偽造をした場合は「有印私文書偽造罪(刑法第159条)」になり、3月以上5年以下の懲役に処せられます。
電子社印は2種類を使い分けると便利
電子社印には2種類あります。1つは「紙に押した印影をデータ化して保存したもの」です。もう1つは「使用者・日付など細かな情報も組み込まれたもの」で、前者より高い効力を期待できます。ただし、請求書を受け取る取引先が電子社印を認めているかどうかは事前に確認しなければなりません。また、印影をデータ化保存したものは簡単に複製できるので、請求書に使用する場合は情報付き電子社印を利用するほうが複製防止につなげられます。
Web請求書は3種類
請求書を電子化して送付する場合、主に3つの方法があります。
メール配信
押印したPDFタイプの請求書をメールに添付して送付します。電子帳簿保存法に未対応であるため、紙で保管する必要があります。
PDFダウンロードタイプ
クラウド上にアップロードしたPDFタイプの請求書(押印あり)を取引先にダウンロードしてもらう方法です。保存が数カ月である点やきちんとダウンロードされたかどうかを確認する必要があります。請求書を発行する側は要件を満たしていれば紙による保存は不要ですが、受け取る側は紙で保管しておく必要があります。
電子データタイプ
請求書発行用のクラウドサービスなどを利用すれば、Web上で作成した請求書の発行・送付・受け取りができます。受け取りが不明な取引先へは一括で確認の催促をすることが可能で、紙での保管に関しても、発行側・受け取る側ともに要件を満たしていれば不要です。請求書を発行する場合、押印は不要ですが、印影の登録ができます。
請求書の電子化で得ることができるメリット
電子化に伴い、「どのようなメリットやデメリットがあるのか」は気になる点の1つではないでしょうか。まずは、メリットについて見てみましょう。
請求書発行の時間や手間を大幅に軽減できる
紙の請求書の場合、作成した請求書を印刷し、封入後に切手を貼って郵便へ出すという作業の流れがあります。その際、他社宛てのものではないか、細心の注意も必要です。しかし、請求書を電子化すればメールもしくは専用ページからダウンロードして受け取ってもらう方法になるため、データ作成後に専用システムにアップロードという2つの作業で請求書が発行できます。また、発行当日に送付できるだけではなく、取引先から請求書の修正や再発行を依頼されたときにもすぐ対応可能です。
請求書発行の経費の軽減につながる
紙の請求書を発行する場合、印刷費・切手や封筒代などさまざまな経費がかかりますが、電子化をするとこれらは不要になります。切手や封筒代などは1つ1つが高額なわけではありませんが、毎月発生します。請求書発行に関する費用が削減できることは大きなメリットといえるでしょう。
受け取る側は、原則として紙に出力して請求書を保存する義務がありました。しかし、税務署へ事前申請をしておけば、Web上で保存することも可能です。申請は電子化保存を始める3カ月前までに行います。申請について「許可する」などの通知は特に届かないため、税務署から指摘がなければ問題はなかったと考えても差し支えありません。気になる場合は、税務署へ直接問い合わせてみましょう。
ファイルデータで保管できるので必要なときにすぐ見つけられる
紙の請求書は保管されている膨大な量の中から見つけるまで時間がかかりやすいですが、電子化された請求書はファイルデータとして保存できるため、検索ワードを入力すれば簡単に見つけ出すことができます。
請求書の紛失や人為的なミスを減らすことが期待できる
電子化をしても100%ミスをなくすことは難しいですが、大幅に減らすことができるようになります。また、紙の請求書の保管は年々膨大な量になり、その分、必要な書類を見つけ出すのが大変で、紛失しやすいです。電子化していれば紛失することはなくなり、税務署の確認が入ったときも簡単に必要書類を取り出せたりするので有効です。
請求書電子化のデメリット
請求書の電子化の導入前に、メリットだけではなく、デメリットについてもチェックしてみましょう。
請求書の電子化を望まない取引先もある
請求書を電子化するにあたり、取引先にもそれについて納得したうえで対応してもらう必要があります。しかし、あくまでも紙の請求書で処理している取引先も存在するので、場合によってはこれまで通り、郵送で送付しなければなりません。ただ、電子化されたデータを検索して印刷するだけなので、導入前より手間はかかりにくいです。
PCやシステムの不具合による電子データの消失
クラウドタイプであればデータのすべてはインターネット上で保存されているため、不具合があったとしても別のPCから管理することが可能です。しかし、社内でサーバーやシステムを構築するオンプレミス型の場合、管理方法によってはPCが不具合を起こしたときにデータの一部もしくはすべてが消失する可能性があるため、厳重な対策を行う必要があります。
請求書発行の負担が増える可能性があるインボイス制度とは
2023年からはインボイス制度が始まる
2023年10月、「インボイス制度」が始まることが決まっており、今後、特に中小企業の請求書関連の作業負担が増える可能性があります。2019年から日本でも軽減税率が採用されており、その証左の方法は「請求書等保存方式」です。しかし、インボイス制度は「適格請求書等保存方式」になります。適格請求書とは、決められた要件を記載した請求書のことです。
インボイス方式では6つの必須記載項目がある
必須記載項目は以下の6つです。
- 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
- 課税資産の譲渡等を行った年月日
- 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
- 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
インボイス方式ではこれらのうち1つでも記載漏れがあれば、適格請求書として認められなくなってしまいます。事業者登録番号とは、インボイス方式に対応するために税務署で登録した証の番号です。このように、インボイス制度が導入された後はこれまで以上に請求書作成業務の負担が大きくなることが考えられるのです。ちなみに、インボイス方式が導入されるまでの間は「区分記載請求書等保存方式」が採用されますが、こちらも品目ごとの消費税率を記載しなければなりません。例外として、小売業や飲食業など不特定多数に販売を行う場合は宛名のない適格請求書の発行も認められています。
適格請求書は保存義務がある
インボイス制度を導入する場合、税務署で適格請求書発行事業者の登録手続きをする必要があります。その際に提出した書類の写しは、自社で保存する義務があるので注意しましょう。また、適格請求書の控えは発行者・受領者どちらも、法人の場合は原則7年間保存しなければなりません。
デジタルインボイスに対応するためにも請求書の電子化は重要
2023年10月から導入されるデジタルインボイス(電子インボイス)に対応するためにも、企業にとって請求書の電子化は重要です。ここからは、デジタルインボイスの詳細やメリットについて解説します。
デジタルインボイスとは?
デジタルインボイスとは、「電子化された適格請求書」を指し、2023年10月1日より導入されるインボイス制度において、税額控除の適用を受けるのに必要な適格請求書を電子化したもので、登録番号などのデータがセットされています。仕入れ税の控除を受けるには、電子帳簿保存法に基づいてデジタルインボイスを保存しなければなりません。
国内のデジタルインボイス普及を目指すデジタルインボイス推進協議会(EIPA)では、導入に際して電信文書のやり取りにおける世界標準規格である「Peppol(ペポル)」の採用を発表しています。規格が統一されるため、業者ごとにシステムを調整する必要がなく、幅広い企業が活用しやすい仕組みとなるでしょう。
デジタルインボイスのメリット
デジタルインボイスの導入には、以下のようなメリットがあります。
- 業務の効率化:デジタルインボイス導入により紙とデータの混在がなくなり、データ入力や会計処理時のミスを減らせます。インボイスは全てデータとして取り込め、システムにより自動で計算が行えるため業務効率の向上が期待できるでしょう
- 管理コストの削減:インボイス制度では、発行者・受領者ともに適格請求書を7年間保存しなければならないため、紙だと保管場所の確保や書類の分類・整理に多くの時間と手間がかかります。デジタルインボイスなら、管理コストの大幅な削減が可能です
- セキュリティの向上:電子署名やアクセス履歴の保存などが行えるため、データの改ざんが難しく、紙の請求書よりもセキュリティの信頼性が向上するのもメリットです。さらに、総務省では発行事業者の情報を付与した電子署名(eシール)の導入も検討されています
- リモートワークへの対応:クラウドサービスなどの活用により、Web上で手続きが完了するため、リモートワークに対応した業務体制が構築可能です
Web請求書導入のポイントをチェック!
こちらでは、請求書を導入する際に注意すべきポイントについて紹介します。
タイムスタンプを活用する
「タイムスタンプ」とは「その電子データがいつから保存されているか」を証明するシステムです。セキュリティ面・信頼性の両方を満たすために非常に有効なものとなっています。タイムスタンプが必要なWeb請求書については税理士に相談するとわかりやすいです。タイムスタンプを導入していれば、ハッシュ値をチェックすることで請求書が改ざんされていないかどうかを確認できます。ハッシュ値は電子データの指紋のようなものであり、データそれぞれに存在しています。そのため、原本データとタイムスタンプのハッシュ値を照らし合わせて一致していれば、データは改ざんされていないことがわかるのです。
タイムスタンプは紙で受け取った請求書を電子データとして保存する場合、電子帳簿保存法の要件を満たすために必要になります。請求書を発行する側は前述したように、税理士にタイムスタンプが必要な請求書をあらかじめ確認しておくほうが無難ですが、セキュリティ面ではタイムスタンプの存在は心強いものになることが期待できます。
取引先の承諾をきちんと得る
請求書の電子化を導入する場合、取引先にも対応してもらう必要があるため、少なくとも数カ月前までには承諾を得ておきましょう。同時に、請求書送付に必要な取引先担当者のメールアドレスも確認しておかなければなりません。メールの場合、誤って迷惑メールフォルダに振り分けられるケースもあるため、連絡先に登録してもらうなどの対策を依頼しておくことも有効です。
請求書の電子化は発行する側にとって大きなメリットがありますが、受け取る側も請求書の管理を一元化できるなどメリットがあります。電子データとして簡単に確認しやすくなるため、どちらも業務の負担の軽減につながります。しかし、取引先も業務フロー変更や、税務署へ申請したりなど電子化に対応する時間が必要です。そのため、請求書の電子化をする予定日まで余裕をもった日程を組んでおくと安心です。
セキュリティ面の強化を行う
請求書を電子化するのであれば、セキュリティの強化は必須です。電子データを管理するデータセンター・サーバーの監視強化、SSL暗号を用いるなどの工夫もこれまで以上に重要になります。電子化によって請求書関連の管理を一元化できるメリットは大きいですが、その分、データの改ざんをされた場合のダメージも非常に大きいです。
システムのカスタマイズができるかどうかを確認する
また、請求書の電子化を導入する際に「システムにカスタマイズをする必要があるかどうか」もチェックポイントです。請求書の電子化をする場合、自社システム構築のオンプレミス型にするか、提供されているクラウド型にするかでカスタマイズの自由度も変わります。必要に応じて、カスタマイズ可能かどうかを事前に確認しておくほうが良いでしょう。カスタマイズの確認と同時に、ほかのシステムと連携できるかどうかも重要なチェックポイントです。たとえば、会計・販売管理システムと連携できれば、請求書の金額を自動入力することが可能になるため、時短につながります。
導入前の請求書に関しては必要なものだけ電子化する
「管理するのであれば、導入前に発行した請求書の書類なども電子化しておくほうが安心なのではないか」と悩んでしまう場合もあるのではないでしょうか。しかし、導入前に発行した請求書が膨大な量である場合、すべてを電子化しようとするとコストがかかってしまいます。導入前の請求書で「よく見る機会がある」「取引先から問い合わせされる可能性が高い」など必要最低限なものだけを電子化するほうが有効です。
請求書の電子化・インボイスへの対応には「ナビエクスプレス」
「ナビエクスプレス」は、電子帳簿保存法の改正、インボイス制度の導入による請求書の電子化、デジタルインボイスへの対応に役立つ電子帳簿ソリューションです。全ての企業にとって必須の課題となっている請求書の電子化ですが、これまで紙で行ってきた作業をいきなり電子データにするのは難しいケースも多いでしょう。そこで、おすすめなのが専用システムの導入です。
ナビエクスプレスのWeb請求書なら、請求データと宛先情報をインポートするだけで、既存のフォーマットデザインを変えずに、Web上での請求書作成・閲覧・送付が可能。PDF化された請求書はセキュリティを介して大量の宛先へと送付でき、郵送コストやリードタイムを短縮して業務効率改善に貢献します。
電子請求書、デジタルインボイスを導入したい企業にとって最適な電子帳簿ソリューションといえるでしょう。
請求書の電子化で業務を効率的に
インボイス制度が始まると請求書業務はさらに手間と時間が必要になる可能性があります。その対策として有効なのが、請求書を電子化することです。あらかじめ事前準備は必要ですが、電子化することで請求書作成の時間や手間、コストなどが大幅に削減されるなどメリットが多いです。業務の効率化につなげるために、請求書の電子化を考慮してみるのも良いのではないでしょうか。
また、スムーズな請求書の電子化を実現するには、専用のシステム導入が重要です。請求書の電子化、デジタルインボイスへの対応には、ぜひNTTデータオンラインの電子帳簿ソリューション「ナビエクスプレス」をご検討ください。
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