コンジョイント分析の事例を使ってメリットや注意点を解説

1.コンジョイント分析とは

コンジョイント分析とは、消費者の購買意思に商品のどの要素がどれくらい影響しているのか定量的に確かめることができる分析です。
コンジョイント分析により、値段や性能など複数の要素のうちどれが重視されているか、どの機能の組合せで商品化するとよいか、その傾向を数値で把握することができます。

新しい商品の開発をする際に、”値段”と”性能”などどちらかを優先しなければならない状況になることはよくあると思います。
そんな時にコンジョイント分析の結果があれば、どちらを優先すべきか知ることができます。
またコンジョイント分析の結果は単純なアンケートよりも信頼性が高く、従来の方法よりも確実性の高い商品開発の意思決定を行うことができるようになります。

コンジョイント分析の手順

簡単な例を使ってコンジョイント分析の手順を説明していきましょう。
例えば、新しいテレビを開発する際に、”値段”と”最大録画時間”、”放送対応の広さ”をどのようにするか検討することになったとします。
それぞれ以下の条件の中で、最適な組み合わせを探します。

値段:10万円、12万円、13万6千円、15万8千円、16万6千円、18万8千円
最大録画時間:140時間、180時間、200時間
放送対応の広さ:地上波アナログのみ対応、BS対応、BS/CS対応、BS/CS/地上波デジタル対応

どれもテレビを買う上で重要な要素なので良い方が購買意欲は向上するのですが、これらはトレードオフの関係にあるためどれかを優先すれば、別の何かを犠牲にしなければなりません。
そこで以下のようなテレビのスペックカードを作り、買いたいと思うテレビに順位をつけてもらいます。
ちなみにこのスペックカードは調査項目が決まれば直交表と呼ばれる表を使うことで作成することができます。

調査を受ける方は、仮想のスペックを見比べながら最も買いたいと思う商品から選んでいくことになります。
コンジョイント分析はこの結果データを元に、各要素の重要度を算出することができます。

コンジョイント分析の結果の見方

コンジョイント分析の結果は以下のようなグラフで示すことができます。

縦軸は効用値と呼ばれるもので、それぞれの要素が顧客の購買意欲に与える影響の大きさを示すものです。
効用値が大きければ大きいほど購入してもらえる確率が高くなります。
そのためここからは、効用値がなるべく高い要素の組み合わせを考える作業が必要になります。

まず値段についてみてみると、価格が15万円を超えると効用値が大きく下がることが分かります。
この傾向をみると、価格は15万円以下に抑えたほうがよさそうです。
次に最大録画時間をみてみると、他の要素と比べて効用値の増減が小さいことが分かります。
この結果から、最大録画時間は他の要素と比べて顧客の購買意欲に与える影響は比較的小さいということが分かります。
最後に放送対応の広さをみてみると、全対応(BS/CS/地上デジタル対応)以外は効用値が大きく下がってしまっており、全対応という要素は影響が比較的大きいことが考えられます。
以上の結果から考えてみると、「価格は15万以下、BS/CS/地上デジタル対応」を優先し、その上で最大録画時間がなるべく長くなるように商品を開発していくのが良さそうです。

いかがでしょうか。
コンジョイント分析によって、商品開発で優先すべき要素を明確にすることができました。
このようにコンジョイント分析を使うことによって、消費者の購買意思に商品のどの要素がどれくらい影響しているのか定量的に確かめることができます。

2.コンジョイント分析のメリット

商品の魅力を決める複数の要素に優先順位をつけることができる

コンジョイント分析のメリットの一つは、商品の魅力を決める複数の要素の中から特に重要なものに順位をつけてピックアップできる点です。
この情報があるだけでも、新商品だけでなく既存の商品の見直しを行う際に有用です。
経験と勘だけに頼ることより良いのはもちろんですが、単純なアンケート調査をみるよりも、具体的な数値としてその要素の重要度が分かるという点はコンジョイント分析の大きなメリットです。

商品の魅力を決める複数の要素の最適な組み合わせが分かる

コンジョイント分析の最大のメリットは、商品の魅力を決める要素の重要度だけでなく、最適な組み合わせまで分かってしまうことです。
重要度を数値にするだけであれば、アンケート内容を工夫して回帰分析を実行しても同様のことができます。

しかし回帰分析などの結果だけでは、「では最適な組み合わせはどれか?」という問いに答えることは出来ません。
それに対して、コンジョイント分析は最適な組み合わせを知ることができます。
なぜなら質問の際にすでに検討すべき組み合わせを提示しており、それぞれの組み合わせがどれくらい選ばれていたか分かるからです。
実際の組み合わせを提示してアンケートをとっているという点が、最適な組み合わせを知ることの役に立っているわけです。
以上の理由から、要素の重要度だけでなく最適な組み合わせまで分かることがコンジョイント分析の最大のメリットといえます。

アンケート調査と比べて信頼性が高い

コンジョイント分析で行う調査は、通常のアンケート調査と比べて信頼性が高くなる傾向があります。
なぜなら消費者の行動をより具体的に調査できる手法になっているためです。

たとえばあるスペックの商品を見せられて「いくらなら買おうと思いますか?」と質問された場合、実際に買う値段よりやや高めに回答してしまう傾向があることが知られています。
調査時は1000円なら買うと言っていた人が、実際には800円じゃないと買ってくれなかったというケースです。
このように実際の行動とアンケート結果ではどうしても誤差が生じてしまいます。

その中で、コンジョイント分析は実際の行動と調査結果の誤差が少ない傾向があります。
実際にいくつかの商品を見て選択するので、ただのアンケートよりも臨場感が出て、実際の購買時の心理に近づくからです。
以上の理由から、コンジョイント分析は通常のアンケート調査に比べて信頼性の高いデータが集められるというメリットがあります。

3.コンジョイント分析のデメリット・注意点

調査する項目をある程度絞る必要がある

コンジョイント分析を実施する際は、調査する要素と項目をある程度絞る必要があります。
コンジョイント分析の調査を行う際は、冒頭でご説明したように調査する要素を様々に組み合わせたスペックカードを作る必要があります。
そのため調査項目が多すぎるとスペックカードが膨大な数になってしまう恐れがあります。
スペックカードの数は多くても10以内には抑えた方が良いでしょう。
そのため基本的に調査するのは3要素程度で、それぞれの要素に2~3の選択肢をつけるのが望ましいです。
どうしても調査項目が絞りきれない場合は、事前に通常のアンケート調査や社内のデータ分析などを行うことで調査項目を絞るようにしましょう。
下記は理想的な調査項目の数の一例です。

価格:3パターン
要素A:2パターン
要素B:2パターン

ただしこれはあくまで一例です。
もちろん商品によって何を優先するかは様々ですので、スペックカードが増えすぎないように気をつけて最適な調査項目を検討するようにしてください。

データ収集など事前準備に手間がかかる

コンジョイント分析は少し特殊な調査方法が必要になる分析です。
既に社内にコンジョイント分析に使えるデータがあることはほとんどないでしょう。
そのため、コンジョイント分析を行う場合はデータ集めなど事前準備が必要になります。
具体的には、調査項目を決め、スペックカードを作成し、調査対象者を決め、調査を実施するという事前準備が必要になります。
もしコンジョイント分析が必要になりそうであれば、なるべく早めに動くようにしましょう。

調査は販売の対象となる人に対して行う必要がある

コンジョイント分析に限った話ではありませんが、調査は必ず販売のターゲットとなる人に対して行う必要があります。
極端な例えですが、ビジネスマンをターゲットに売り出す商品なのに大学生に調査をしても無意味です。
調査は必ず実際に購買してくれる可能性がある人たちに対して行うようにしましょう。

調査結果と実際の行動が必ずしも一致するわけではない

コンジョイント分析は通常のアンケート調査よりも結果の信頼性が高いというお話をしましたが、実際の結果との誤差が全くないわけではありません。
あくまでも比較的誤差が出にくいというだけです。
そのためコンジョイント分析の結果を鵜呑みにはせず、適度に参考にするようにしましょう。

より信頼性の高い調査を行うのであれば、地域を限定してテスト販売するなどといった手法がありますので、時間や資金に余裕がある場合は検討してみてください。
しかし実際はそこまで入念に準備が出来ないケースも多くあります。
そんな時に多少の誤差があるとはいえ、コンジョイント分析は役に立つ分析であると言えます。

4.コンジョイント分析を活用した事例

スマホの販売にコンジョイント分析を活用した事例

あるスマホ制作会社が新しいスマートフォンを制作することになりました。
5万円前後のミドルエンドのスマートフォンを制作する方向でプロジェクトは進んでいるのですが、具体的な価格や画面の大きさなど、細かいスペックに関して社内で意見が分かれており、決まっていません。
そこで一度ちゃんと調査をして、どんなスペックのスマートフォンが市場のニーズを捉えているか、検証することにしました。
スマートフォンを制作するまでにまだ時間の猶予があり、スペックの大部分はすでに確定していたため、コンジョイント分析を使って残りのスペックの最適な組み合わせを分析することにしました。

調査項目は以下の3項目です。
価格:4万5千円、5万5千円
画面サイズ:5.5インチ、6.2インチ
メモリ:4GB、6GB

次にコンジョイント分析の調査に必要なスペックカードを作成します。
本来は2×2×2=8通りのスペックカードが必要ですが、直交表を使えば以下の4通りのスペックカードだけで分析を行うことができます。

このスペックカードを使用して、対象者に購入したい順に順位をつけてもらい、その情報をデータ化しました。
このデータを元にコンジョイント分析を行うと、以下の結果が得られました。

効用値の大きさをみると、価格の重要度が一番高く、メモリの重要度が一番低いことが分かります。
このことから価格は4万5千円にすることを最優先にした方が良さそうです。
後は予算の兼ね合いで画面サイズ、メモリの順に可能な範囲で大きくしていくのが良さそうです。
この分析結果を元に社内会議をした結果、価格は4万5千円で画面サイズは6.2インチ、メモリは4GBのスマートフォンを制作することになりました。

このようにコンジョイント分析は、消費者の購買意思に商品のどの要素がどれくらい影響しているのか定量的に確かめる際に役立ちます。

5.まとめ

最後におさらいをしましょう。

  • コンジョイント分析とは、消費者の購買意思に商品のどの要素がどれくらい影響しているのか定量的に確かめることができる分析
  • コンジョイント分析は調査する項目を絞り込んだ後にスペックカードを作成し、買いたいと思う順にカードを選択してもらう
  • コンジョイント分析によって、それぞれのスペックの重要度を表す指標である効用値が算出できる。
  • コンジョイント分析は比較的信頼性が高く、商品のスペックの最適な組み合わせが分かるというメリットがある。
  • コンジョイント分析をする際は、事前準備が必要な点や実際に販売した時の結果と誤差が生じるリスクがある点に留意しておく
  • コンジョイント分析は、商品開発の場面で特に利用される

コンジョイント分析は事前準備が少し特殊ですが、非常に有用な分析手法です。
コンジョイント分析の結果をもとに商品開発を行うと成功率が上がり、社内の承認も得られやすくなるでしょう。
まだ使ったことがない方は、ぜひ一度検討してみて下さい。

最後までお読みいただきありがとうございました。