2022/11/14
近年、ユーザの購買プロセスの変化や人口減少により、エンゲージメントの向上が多くの企業にとって求められています。それに伴い、マーケティングオートメーションツール(以降、MAツール)は多くの企業に導入され、市場規模も増加している状況です。しかしながら、MAツールをどのような場面で活用すればよいのか、またどのように比較・選定すればよいのかお悩みの方も多いのではないでしょうか。そこで、本記事ではMAツールの基本的な機能の解説はもちろん、代表的なMAツールの比較・選び方を説明します。
ここでは改めて、MAツールの概要や基本的な情報についてご紹介します。
MAツールとは、「マーケティング活動の自動化・効率化」や見込み顧客の育成などを支援するツールです。主に、既存顧客の維持・活性化、見込み顧客の育成において自動化・効率化することができます。
企業のマーケティング活動は非常に幅広く、複雑です。そのため、定型的な業務はMAツールで自動化させ、非定型な仕事、イノベーション、戦略的意思決定、クリエイティブな業務に、人を専念させること、それが多くの企業がMAツールを導入する理由の一つでもあります。
また、顧客の購買行動の変化もMAツールに注目を集める理由の一つです。これまでは、企業の営業担当から情報を仕入れて、購買の意思決定をすることが一般的でした。しかしながら、インターネットの普及により、顧客自身が、情報収集を簡単に行えるようになりました。営業担当がアプローチしたときには、顧客の中では意思決定や選定が終わっているということも少なくありません。なので、いかに早く、顧客一人ひとりに適した情報を戦略的に届けることがより重要になっています。
前の項目でも触れましたが、MAツールが注目される理由の代表例を挙げると以下の2つになります。
⑴ マーケティングチャネルの増加によるマーケティングの変化
以前は、TVCMや雑誌等で認知し、店頭で商品を購入することが一般的でした。それゆえ、企業は限られた選択肢の中からマーケティングを実施することが一般的でした。しかしながら、インターネットやスマートフォンの普及により、マーケティングチャネルが増大し、企業のマーケティング活動は、適切なチャネル・ターゲット・タイミング・コンテンツ等を選択して届けることが必要となりました。
⑵ 顧客の購買プロセスの変容
従来と異なり、顧客はインターネットを介して商品やサービスを購入するために必要な情報を膨大に獲得できるようになりました。さらに、人は価格よりも体験を重要視する傾向にあります。そのため、膨大な情報の中で顧客が求めるチャネルやタイミングにて、必要なコンテンツを適切に提供する必要があります。
これらを人の手で実行していくことは不可能です。そのため、きめ細やかな1 to 1コミュニケーションを自動化・効率化できるMAツールに非常に注目が集まっています。
このように注目を集めているMAツールですが、一体どのように登場し普及していったのでしょうか。ここでは、普及するまでの道のりをご紹介いたします。
MAツールは1990年のある企業が発祥と言われております。当時はインターネットが世の中になじんでおらず、あまり日の目を浴びることはありませんでした。しかし、Eloqua(現、Oracle)が登場した1999年から活用の場が広がってきました。そして、日本では2014年あたりから急激に市場の拡大が進んでいます。また、日本においては、この年が「マーケティングオートメーション元年」と呼ばれております。
アメリカは国土が広いため顧客と遠隔コミュニケーションをとる必要性があり、デジタルマーケティングとの親和性が高かったことがMAツールの始まりであり、広まっていった理由になります。その後、日本でもMAツールの有効性に注目が集まり、近年では導入が急速に進んでいます。また、セールスフォースオートメーション(以降、SFA)を補完する役割でも活用が広がりました。SFAが有していないデータ分析やメール配信など、マーケティングに必要な機能をMAツールに含めてパッケージ化したことも普及した理由の一つになります。
ここでは、導入・比較検討する前に知りたいMAツールのメリット・デメリットについてご紹介いたします。
MAツールは自動化が得意なため、現在手動で行っている業務を自動化できる可能性が大いにあります。例えば、リスト作成の自動化やデータ入力や定期的に送っているメルマガ配信などが該当します。また、チャネルが多様化・複雑化した現代では顧客一人ひとりの意識と行動に合わせたコミュニケーションを手動で実行していくことは非常に難しいです。MAツールはそれを実現する可能性をもっており、また業務効率化で浮いた時間をより生産性・価値のあるマーケティング活動に充てることが可能になります。
全ての顧客や見込み顧客に対して手厚くフォローするのは現実的ではありません。したがって、営業の生産性・効果を向上させるためには、顧客にとって最適なタイミングで求めているコンテンツを届けることが重要です。MAツールではスコアリングという機能で顧客の行動に応じたスコアを付与し、そのスコアやwebの行動情報を活用したマーケティングが可能です。それにより、購買意欲の高い見込み顧客へ適切なタイミングでアプローチすることが可能になります。
MAツールではデータを基に高度な分析ができます。例えば、訪れたWebページやダウンロードしたホワイトペーパー、Webサイトへの訪問時間やメール閲覧状況などがわかります。そのデータをもとに自社の見込み顧客がどのようなことを求めているのか、どの施策がうまくいっているのかいないのかを把握することができます。また、CRMやSFAとも統合できるので、顧客はなにをきっかけで商談に至ったのか、またまた、受注後の顧客の行動も見ることができ、クロスセルやアップセルにも活かせます。その一連の活動を、分析していくことによりさらに営業活動を高度化できます。
システムを導入するのでもちろん利用料が発生します。さらに、導入時にもどのように活用して運用していくかの戦略を決める必要があり、それに対する導入コストもかかります。また、活用するための担当者の人件費や教育するための教育コストもかかり、導入してすぐ成果がでるものではないため、長期の運用が伴う点にも注意しましょう。
MAツールを導入しても、全てのマーケティング活動を100%自動化できない点にもご注意ください。一番大事な戦略や施策検討は人が考えることが必要ですし、ツールの運用面でもたとえば、スコアリングの設定やメール配信のタイミングといった修正や、一定期間運用後の見直しなども発生します。
運用において一定のスキルが必要な点にも注意です。MAツールは機能が豊富なために運用が複雑になります。また、ツールによって操作方法などが異なります。そのツールに精通した人材や一定のレベルまで従業員の育成が求められます。
MAツールを利用することで、名刺交換した企業の情報やWebサイトの問い合わせフォームから届いた情報、Webサイトでの行動情報、過去に取引を行った企業などを一元管理できます。
購買意欲の高い見込み顧客のみあての配信や特定の行動をした顧客だけに絞ってメール配信することができます。メール配信日時の予約設定やABテストの実施もできますし、送信後のメール開封率、メール内に記載したURLのリンククリック率なども計測可能です。
ランディングページやフォームを作成する機能があります。これらの機能を使って問合せフォームのページを作成したり、資料請求フォームのページを作成します。
見込み顧客の行動(メール閲覧・クリック、Webページ閲覧、問い合わせフォーム利用など)にあわせて各顧客に対してスコアを付けていき、営業アプローチをするときの優先順位づけなどに活用できます。
既述のとおり、メールの開封率やクリック率を確認できますし、見込み顧客のWebページ上での行動履歴などが確認できます。
MAツールには商談に繋がる見込み顧客の獲得を自動化するための各種機能が用意されています。商談数を増やすためには、見込み顧客の獲得が重要になります。MAツールを活用して戦略を練り、施策を実施することで、見込み顧客のWebサイト上での行動情報に基づき最適なアプローチが可能になり、見込み顧客の増加を狙うことができます。また、見込み顧客の購入に対する段階を定義し、それに合わせた最適なアプローチが可能になります。
SFAツールには営業効率の向上をめざすために、各種営業活動をデータベース化する機能が用意されています。SFAの導入により、営業部門全体の動きを可視化することができます。これまで属人化されていることが多かった営業活動を可視化し、営業マンごとの営業成果の平準化や質の向上が狙えます。また円滑な引継ぎや情報共有の手間を省くことが可能になります。SFAは主にBtoBの領域、またBtoCでも家や車のような高価な商材で使われることが多いです。
CRMツールには既存顧客と良好な関係を築くための機能や将来的なクロスセル・アップセルに役立つ機能が用意されています。受注後の顧客の動向などを把握し、解約率の低減・リピーターの増加などを狙うことができます。CRMの導入により、顧客と長期にわたる関係値の向上・LTVの増加を狙うことができます。このように、CRMとSFAは同じ顧客情報を扱いますが、もともとの目的は既述のとおり異なります。最近では、SFAの領域と、CRMの領域を兼ね備えたツールも登場しており、使う側も両方の目線で使うことがありますので、その境界線は曖昧になりつつあります。
MAツールはBtoB、BtoCどちらの企業でも効果を発揮することができます。ここでどのような違いがあるかをご紹介いたします。
BtoBの場合、担当者と意思決定者が異なることが多いです。そのため、担当者と意思決定者両方に納得をいただかなければなりません。BtoCの場合、意思決定者は消費者自身であることが多いです。自ら買うか買わないかを決めるので、その人自身を納得させることが重要になります。
BtoBとBtoCで検討するための期間が大きくことなることも大きなポイントです。BtoCは消費者個人が決定する商品・サービスが多いため、リードタイムが比較的短くなります。一方、BtoBは複数の意思決定者との調整や社内稟議などが発生するため、リードタイムが比較的長くなります。
BtoBは比較的高額な商品・サービスを扱うことが多く、また企業ごとにカスタマイズが必要な商品・サービスが多くなる傾向にあります。一方、BtoCはBtoBと比べて低額な商品・サービスを扱うことが多く、提供する商品・サービスも完成されたものが多い傾向にあります。
BtoBは複数の意思決定者が関わり、リードタイムも長めであることから、顧客の興味関心のフェーズにあわせたコミュニケーションが求められます。そのため、見込み顧客のWebの行動履歴やコミュニケーション履歴の可視化やニーズが顕在化した見込み客をキャッチアップする機能などを保有ツールが多い傾向にあります。
BtoCは消費者個人が決定権をもち、リードタイムが短めであることから、多くの消費者に対して効率的なマーケティングを行うことが求められます。そのため、多くのリードを管理し、集客で活用するツールとの連携ができるツールが多い傾向にあります。マルチチャネルで、メール以外でもLINEやSNS、SMSなど様々なチャネルを活用することができるのも特長の一つです。
ここでは、MAツールの導入から運用までの流れをご説明いたします。
まずは、自社の経営課題をはじめ営業・マーケティングの課題を洗い出し、MAツール導入で実現すべき目的を明確にすることが重要です。また、部門を超えて話し合う場を設けることも重要になります。MAツールの真価を発揮するには、組織全体を巻き込んだ変革のプロセスが必要になります。MAツールでどのような課題をどのように解決し、会社がどのような状態になることが理想なのかを明確化したのちに、ツールを選定していきましょう。
前項で挙げられた目的の実現を前提とし、機能や導入・運用コスト、社内ツールとの連携などさまざまな角度から導入するMAツールを決定することが重要です。事前に想定しないと予想外の費用や予想外の障害が発生してしまう可能性があります。導入後のトラブル回避のためにもさまざまな角度からMAツールを検討していきましょう。
マーケティング部門・営業部門に業務フローをヒアリングし、MAツールに落とし込んでいくことが重要です。マーケティング部門で想定したフローや営業課題が実際の現場とマッチしていないケースがあります。導入したが、営業の現場でうまく活用されないというリスクを抑えるためにも、事前に部門を超えたヒアリングや全社的なフロー構築が求めらます。
自社で解決すべき課題やMAツールを導入する目標を検討したら、MAツールを選定していきましょう。
自社課題を洗い出し、明確にした目的を実現できるかどうかが最も重要になります。目的を実現するための機能があるのか、実際にどのような活用をすれば実現できるのかを明確にしていきましょう。その際に、MAツールだけに絞らず目的を達成するための最適な方法を俯瞰して調べることが大事になります。
自社のビジネスに合わせて、どちら向けのMAツールが適切かを検討することが重要です。BtoBやBtoCで顧客とのコミュニケーションの取り方は大きく変わります。自社に適切な機能を保有しているツールを選定していきましょう。
SFAツールやCRMツールのほか、アクセス解析ツールやERPツールなど自社で導入済のツールと連携可能か調べることが重要です。MAツールはSFAツールやCRMツールなどと連携することでより効果的な運用が可能になります。自社で活用しているツールと連携ができるのか、連携した結果どのような効果がでるのかを整理していきましょう。
MAツールを導入すると初期費用や月額費用のほかに運用のための人件費などのランニングコストがかかります。とくに、BtoBの場合はリードタイムが長くなる傾向にあるため、より慎重に調べる必要があります。導入しても想定した効果が出ない等のケースはよく見受けられます。実際に導入して自社で納得が行く効果が出そうかどうか検討してから導入を決めていきましょう。
導入後にツールのサポートをしてほしいタイミングはよく発生します。その際に、自社にマッチしていないサポート体制であると、想定以上に解決に時間がかかったりします。導入後も定期的なサポートはあるのか、メールのみとなるのか、電話対応も可能なのか、追加費用は発生するのかなどを確認する必要があります。
ここでは、実際にMAツールを運用する際のポイントをご説明します。
MAツールを運用する際には、事前により多くの見込み顧客リストを獲得したほうが高い効果が期待できること、見込み顧客に提供するメールマガジンやLPといったコンテンツを多数用意しておくことが必要になります。MAツールを活用したコミュニケーションのチャネルはメールをメインに、LINEやSMSなどもあります。保有しているリード数が少ないとあまり効果が得られませんので、自社にどのくらいリードを保有しているのか、いまよりリード数を増やすためにはどのような施策をすればよいのかを検討していきましょう。また、顧客と正しいコミュニケーションをとるためには、継続的なコンテンツの作成が求められます。社内でコンテンツを用意することが不可能な場合は協力会社に依頼することも一つの手になります。
MAツールの運用には、部署間の連携は必須になります。BtoB領域では特にセールス部門とマーケティング部門との連携が重要です。セールス部門とマーケティング部門で共通認識を持ち、同じゴールを目指せるような社内調整をしていきましょう。また、必要であれば社外コンサルに依頼して社内調整をアウトソーシングすることも一つの手になります。
MAツールを運用する際は、MAに関する知見やスキル保有する人材やコンテンツ制作できる人材などが必要になります。社内に適切な人材がいない場合は、協力会社に依頼することも一つの手になります。
提供会社:株式会社セールスフォース・ジャパン
特徴:主にBtoC向け。様々な顧客データを活用し、メール、SNS、Webといったマルチチャネル・デバイスを通して、最適なタイミングで最適なコンテンツを届けコミュニケーションが行えるツール。One to Oneマーケティングを実現するプラットフォームです
提供会社:株式会社セールスフォース・ジャパン
特徴:スモールからミドルレンジビジネスを中心に、国内MA市場でシェアで高い実績を有すBtoB向けMAツール。シームレスなSalesCloud連携(SalesCloudのオプション的位置づけ)ができ、シンプルなユーザビリティなどに定評があり、導入から運用にも乗りやすい。
提供会社:アドビ株式会社
特徴:網羅的な機能実装により、BtoB、BtoC、業種業界を問わずミドルレンジを中心に広く導入されているMAツール。機能が豊富で複雑なシナリオ配信に対応。フィルタが圧倒的に豊富。広範なエコシステムにより、高度な運用が必要となった場合に機能追加できる。
提供会社:日本オラクル株式会社
特徴:大量リードの処理やきめ細かな権限管理も可能な、エンタープライズ向けBtoB向けMAツール。様々なデータへアクセスできるユーザーや、組織間でのアクセス制限など厳しい権限管理が可能。多事業部やグローバルなど、規模が大きく複雑なマーケティング戦略の実現に最適。
MAツールの導入や運用にはさまざまな部門の垣根を超えて、全社的な課題の洗い出し、それを解決するためのツール選定や運用に乗せるためのフロー構築や人材が必要になります。自社に適切なツール選定をすることがまず第一歩です。また、全てを自社でやることは難しい企業が多いです。自社のリソースですべてを解決することに固執せず、協力会社等の他社のリソースを借りることも手の一つになります。
また、弊社でもMAツールに関する様々なお悩みを解決するソリューションのご提供が可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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