MAとは、マーケティングオートメーション(Marketing Automation)の略で、
マーケティング活動を自動化するツールおよびプラットフォームを指す。
機能や期待できる効果、運用のポイントを解説。
MAとは、マーケティングオートメーション(Marketing Automation)の略で、マーケティング活動を自動化するツールおよびプラットフォームを指す言葉である。MAの概念は、1990年のアメリカのある企業が発祥といわれているが、1999年、Eloqua(現、Oracle)の登場をきっかけにアメリカ全土に広まった。日本では、2014年に急速に市場に広まったことから、この年を日本における「マーケティングオートメーション元年」と呼んでいる。
従来、営業活動の前段階となるマーケティング活動は、見込み顧客データの抽出や分類、メールや紙の資料の送付など、人手のかかるものも多く、対応に限界があった。MAは、自社のビジネスにおけるリード(見込み顧客)を開拓し、そのリードに対するマーケティング活動を可視化・自動化することで、それらを効率的に実行することができる。
MAのメインとなる機能に、顧客の管理とスコアリングがある。企業名や氏名はもちろんのこと、その顧客情報を得るに至ったルートや、自社サイトへの訪問回数といった行動履歴を細かくデータ化することにより、顧客の状況の詳細が把握できる機能である。これを使うことで、数ある見込み客の中でも、特に確度の高いものを自動的に抽出できるため、リアルタイムな顧客情報にもとづいた営業活動に貢献が可能となる。さらに、日々の営業活動の効果も見える化されるため、PDCAを効率的に回していくこともできる。
国内においてもすでに多くの企業が、MAツールを導入している。しかし、MAを運用する中では、いくつかの注意点が存在する。もし自社が以下のような状況に陥っている場合は、MAの運用法を見直す必要がある。
MAツールはリードの管理機能やメールの作成・配信、LP(ランディングページ)の作成など、非常に多くの機能を備えており、使いこなすには知見を持った人材が求められる。MAツールをどのように運用すれば良いのか、その知識や経験が無い場合は、MAツールの豊富な機能を有効に活用することができず、メールを一斉配信するためのツールに留まってしまうケースがある。
MAとカスタマージャーニーは、切っても切れない関係にある。カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを購入するまでのプロセスや行動パターンをマップ化し、言語化したり、分析するためのフレームワーク。メール配信などにおけるMAツールの活用は、このカスタマージャーニーに従って行う必要があり、カスタマージャーニーの設計が不十分であると、自社のマーケティング活動にマイナスの影響を与える恐れがある。
たとえば、自社の商品やサービスに関して、特に購入意欲が高いわけではないリードを営業のセールス対象にしてしまう恐れがある。一方で、商品・サービスの購入意欲が高いリードであるにも関わらず、セールス対象として認識されなかったことでアプローチされずに商談機会を損失することも起こり得る。
MAツールには、リードを属性や行動によって点数化し、アプローチの重要度をランクで表現するスコアリング(ランク)機能が備わっている。通常は、スコアリングの結果、ランクが高いリードを「確度が高い」と判断し、営業部門がアプローチを行う。しかし、スコアリングの設定が適切でない場合、購入意欲が高まっていないリードを「確度が高い」と判断し、成果に繋がらないアプローチが続出する恐れがある。スコアリングはMA運用のポイントの1つ。リードのどのような行動を評価し、どのように点数を付けていくのかについては、組織内で十分に議論を重ねることが大切であるとともに、スコアリングが顧客ニーズの実情と乖離している場合は、適宜見直していけるような運用体制が必要になる。
MAを運用する不可欠なのが「コンテンツ」である。ここでのコンテンツとは、自社の商品やサービスの認知や比較検討、購買意欲の醸成につながる情報を盛り込んだ、Webサイトに掲載する読み物やコンバージョンにつながるダウンロード資料、商品・サービスサイト、ウェビナーなどを指す。
MAの運用において、こうしたコンテンツは、スコアリングの際に活用できる。たとえば商品やサービスに関わる「トレンド紹介コンテンツ」にアクセスした場合に5点、「サービス紹介のホワイトペーパー」をダウンロードした場合にはより高く20点というように、コンテンツはMAのスコアリングにおいてニーズの重みづけをするために有効となる。
コンテンツの数が限られていたり、更新頻度が少ないと、リードがそれらのコンテンツにアクセスする回数も減っていく。そのためMAでスコアリングの対象とするコンテンツを安定して供給していくことも求められる。
MA運用のおけるこれらの注意点は、正しく運用すれば回避できる。以下に3点に分けてポイントを紹介する。
MAツール導入の動機として「競合が導入しているから」「他社もやっているから」といった理由で始めるケースもある。しかし、企業が抱えるマーケティング課題は各社でまちまちであり、MAが解決する問題も各社で異なる。導入前に、MAで何の課題を解決するのか、何のためにMAを使うのか、目的を明確化することが必要。特に、運用においてステークホルダーとなりうる「マーケティング部門」「インサイドセールス部門」「営業部門」「カスタマーサポート部門」が連携する形で事前に検討を行うことが望ましい。
MAツールの機能は多岐にわたり、その運用には一定の知見とスキル、経験が求められる。そのため、MA運用専任となるメンバーをプロジェクトに含めるべきである。社内にそういった人材がいない場合は、MAツールにおける資格の取得も1つの手段である。たとえば、Adobe社のMAツール「Adobe Marketo Engage」やSalesforce社の「Marketing Cloud Account Engagement(旧 Pardot)」にはそういった資格が存在する。
自社内でMAのスキルを持った人材の育成や採用が難しい場合は、MAに精通した他社に、MAの運用を外注する方法もある。社内の稼働が抑えられるうえ、メール送付先の細分化や他ツールとの連携、トラブル発生時の対応など高度なMA運用も可能となる。
前述の通りMA運用にはコンテンツも欠かせない。しかし、この場合のコンテンツは、ユーザーに対して自社の商品やサービスへの興味を喚起し、自社サイトを訪問したり、資料をダウンロードするなどの行動を取りたくなるコンテンツを用意する必要がある。コンテンツは社内のスタッフが用意することも可能だが、安定的にコンテンツを更新していくためには、外部の業者に依頼するという方法もある。
MAの導入や運用では様々な場面で問題に直面します。「事前に把握できていれば回避できたのに・・・」や「一般的にはどのように対応しているのだろうか?」等、導入や運用で直面する問題を7つのポイントに分けてご紹介しています。