2026/10/22
ビジュアルIVR
【2025年度版調査レポート】顧客がコールセンターへ電話をかけた後に出る行動
はじめに:示された「代替案」は、顧客を救えているか?
前回のコラム(顧客がコールセンターへ電話をかけて不満を感じること)では、顧客が電話をかけた後に直面する「繋がるまでの不満」、いわゆる待機時間のストレスについて深掘りしました。人材不足により「電話が繋がりにくい」状況が常態化し得る中で、多くの企業は、あふれた入電(あふれ呼)を救うための代替手段を用意しています。それが、IVR(音声自動応答)や待ち時間のガイダンスによる、Webサイトやチャットボットといったデジタルチャネルへの誘導です。
「ただいま電話が大変混み合っております。Webの問い合わせフォームもご利用ください……」
このような対応は、今やコールセンターにおける定番となりました。しかし、ここで問われるのは、企業側が示したこの代替案が、果たして顧客にとっての真の解決策として機能しているのか、という点です。
電話が繋がらない際に案内されたチャネルへ移動した顧客のうち、実際にその場所で問題を解決できた人はどのくらいいるのでしょうか。また、案内をされたにもかかわらず、そのチャネルを使わずに電話をかけ続けることを選んだ顧客は、なぜデジタルチャネルを利用しなかったのか、その背景も探ります。
単に他のチャネルへ誘導するだけでは、カスタマーエフォート(顧客努力)を強いる結果になりかねません。真のCX(顧客体験)向上を目指すには、案内するチャネルの数ではなく、その実効性(解決力)をデータから検証する必要があります。
果たして、電話が繋がらなかった際に案内される代替チャネルの実態はどうなっているのでしょうか。
NTTドコモビジネスXが実施した調査結果に基づき、今回は「電話が繋がらなかった際に案内された手段」と「実際に問題解決した手段」を対比させながら分析します。案内された手段が、いかに顧客の問題解決に結びついているのか(あるいは結びついていないのか)。リサーチ結果から見える企業の課題を確認しましょう。
このレポートはこんな方におすすめです
- 呼量削減(ディフレクション)のためにデジタルチャネルへの誘導を強化している方
- 問い合わせフォームやチャットボットを導入したものの、期待したほど電話が減らない方
- 顧客がデジタルチャネルを「あえて使わない」理由を知りたい方
- 自社の「デジタル誘導の質」を顧客の実態データと照らして検証したい方
コールセンターへ電話をかけたが繋がらなかった時に、案内された問い合わせ手段
~約4割の顧客が直面する「導線なき放置」のリスク~
コールセンターが繋がらない際、代替手段として案内された経験(複数回答)を尋ねたところ、最も多かったのは「問い合わせフォーム(40.7%)」、次いで「チャットボット(20.8%)」という結果になりました。多くの企業が、既存のWebアセットを活用して受け皿を作ろうとしている姿勢がうかがえます。

しかし、ここで最も注目すべきは、全体の38.7%が「他の手段を案内されたことはない」と答えている点です。
これは裏を返せば、せっかく困りごとを抱えて電話をかけてくれた顧客に対し、約4割のケースで「ただ繋がらない状態」のまま放置(あるいは切断)してしまっているという深刻な事実を示しています。
入電があふれた際のデジタルチャネルへの誘導の仕組み(導線設計)が、多くの企業で未整備であることがうかがえます。混雑時に適切な代替チャネルへ導くセーフティネットが機能しておらず、約4割の顧客が「ただ待たされるだけ」のCX毀損リスクに晒されている状況となっています。
実際に使ってみて問題解決した問い合わせ手段
~「案内されたが使わない」3割超の壁と、シニア層の悲鳴~
代替手段を案内された顧客は、無事に問題を解決できているのでしょうか。
案内された代替手段の中で「実際に問題解決した窓口」を尋ねると、トップは変わらず「問い合わせフォーム(38.8%)」でした。
ここで見逃せないのが、代替手段を案内された人(n=683)の34.3%が「案内されたが使っていない(離脱した)」と回答している点です。せっかく用意した「脱出口」も、3人に1人には敬遠されている計算になります。この背景には、「文字を打つのが面倒」「自分の複雑な用件はフォームやAIでは解決できないだろう」という顧客側の諦め等が影響している可能性が考えられます。



さらに分析を進めると、この「デジタルを使わない壁」はシニア層において極めて深刻であることがわかります。
60歳以上では、男女ともに約42%が「使っていない」と回答しました。なかでも60歳以上男性が「AIチャットボット」で解決できた割合は、わずか2.2%にとどまっています。
このデータが示しているのは、画一的にデジタルチャネルへ誘導するだけでは、シニア層を救うことはできないという事実です。
結果として彼らはデジタル窓口での解決を諦め、再び「繋がらない電話」の列に並び直すことになると考えられます。
年代やITリテラシーに合わせたUI/UXの改善や、ターゲットに応じた最適なチャネルへの誘導が、今後のコールセンター運営における重要なポイントと言えるでしょう。
次回は、「電話が繋がらない時、顧客は何を選ぶか」について報告します。
調査概要
- 調査テーマ:性年代別にみるコールセンターへ問い合わせた時の顧客行動
- 調査対象:20代以上の男女
- 調査実施期間:2025年9月22日~23日
- 総回答数:1,114サンプル
- 調査方法:インターネット調査
- 調査機関:NTTドコモビジネスX株式会社



