2024/02/01
ソーシャルリスク対策
10月施行のステマ規制とは?違反になるケースやリスク回避の方法
2023年10月1日からステマ(ステルスマーケティング)の規制が開始されたのをご存知の方も多いかと思います。これまでもステマは倫理上問題があるとされてきましたが、今後は法律で規定され、場合によっては罰則も適用されるようになりました。当記事では「どのようなケースはステマに当たると判断されるのか」「ステマと判断された場合、どのような罰則があるのか」などの疑問に対し、ステマ規制の内容や事例、回避する方法などについて解説します。
- 2023年10月から「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」によって、ステマが規制されるようになった
- 違反をした場合に罰則があるのは、広告を依頼した事業者
- 事業者はステマを避けるために、インフルエンサーなどに対しても投稿の際のルールを守るように指導したほうがいい
- 現在表示されている過去の広告もすべて規制対象となるので、あらためて確認し、抵触する恐れがあるものについては削除または改訂が必要
2023年10月1日に施行されたステマ規制の概要をわかりやすく解説
ステマとはステルスマーケティングの略で、消費者に広告・宣伝と分からないように商品・サービスの利用を促す発信をするというものです。これまでも度々問題になってきましたが、法律により不当表示として規制されるようになりました。ここでは、法律の概要について詳しく紹介します。
ステマ規制は消費者庁が定める景品表示法に基づくもの
ステマ規制とは一般消費者が、商品を自主的かつ合理的に選択できるようにすることを目的とした、消費者庁が定める不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)第五条第3号に基づく規制です。海外ではすでに規制されていた国もありますが、日本では2023年10月から規制がスタートしました。
景品表示法の規制対象には以下のようなものがあります。
- 新聞
- 雑誌
- テレビ・ラジオCM
- バナー広告
- アフィリエイト広告
- ポータルサイトの口コミ
- SNSの投稿
- チラシ、パンフレット
- セールストーク
ステマについては、芸能人を始めとしたインフルエンサーが、利益を得ていたことを隠してPRを発信するなどが倫理的に問題のある行為とされてきましたが、ステマ規制が施行されたことではっきりと違法行為となりました。
事業者以外はステマ規制の対象にならない
ステマ規制の対象となるのは商品やサービスを提供する事業者(広告主)です。事業者から依頼を受けた、以下のような第三者は規制の対象ではありません。
- 広告の制作を依頼された代理店
- 新聞社や出版社、放送局などの表示を掲載した媒体の運営者
- 小売店などの、商品やサービスを陳列し販売しているだけの者
- インフルエンサー、アフィリエイター
- オンラインモールなどの取り引きの場を提供している者
上記のように、事業者や広告主以外は規制の対象にならないので、PR等を依頼する際は事業主側が最新の注意を払う必要があります。
ステマが規制されるのはなぜ?
インターネットやSNSの普及に伴い、マーケティングの手法が複雑化したことが規制の背景にあります。とくに問題となったのはインフルエンサーを利用した広告です。広告と分からないように、消費者に商品・サービスをすすめるケースが増加しました。
消費者庁による「景品表示法上問題となるおそれがある」という注意喚起などがあったものの、第三者による投稿に対しては、十分な対応がなされていませんでした。
そこで、2022年に「ステルスマーケティングに関する検討会」という有識者会議を設置し、議論を重ねてステマの法規制の施行が決定しました。
ステマ規制の対象になるケース
ステマ規制の対象となる違反には「なりすまし型」「利益提供秘匿型」がありますが、さらに「広告としての表示不足」もあります。それぞれの具体的な内容について解説します。
第三者による発信と誤認させている
「なりすまし型」の典型が、事業者が第三者になりすましてSNSなどに投稿を行うというものです。
たとえば、事業者や子会社の従業員が個人アカウントのSNSを使い、関係者とは悟られないように、商品・サービスの認知度を上げるような投稿を行うケースはステマとされることがあります。また、口コミサイトに競合の商品・サービスが自社のものよりも劣っているかのように投稿した場合もステマとみなされます。
インフルエンサーに依頼した広告であることを隠している
インフルエンサーに、投稿内容を指示したマーケティング目的の依頼をした場合、広告であることを明記しなければなりません。このようなケースで広告であると明記していないものを「利益提供秘匿型」と呼び、ステマ規制の対象になります。
注意が必要なのは、金銭の授受がなくても規制の対象になる点です。事業者がインフルエンサーに商品の特徴などを伝えて、指示どおりに投稿してもらうと規制対象になります。明確に依頼していなくても、無償で商品提供したうえで、インフルエンサーが事業者の方針に沿って投稿を行った場合も規制される恐れがあります。
事業者とインフルエンサーの過去のやり取りや、関係性なども鑑みて総合的に判断されるので注意が必要です。
広告であることを分かりづらく表示させている
消費者が見て、広告だとは判断できないような表示も規制対象です。誰が見ても広告だと分かるようにしなければなりません。
事業者の表示が、場所、文字の大きさ、文言などで分かりにくいと判断されるとステマとされてしまいます。
フォントが小さかったり、動画などで認識が難しいほどに短い表示だったりした場合もNGです。SNS投稿でハッシュタグを大量に表示させ、その中に事業者名を忍ばせる方法もステマとされるケースもあります。
ステマ規制の対象になる可能性がある事例
ここからは、過去にステマ規制の対象となった事例について紹介します。似たようなケースは意外に多いので、対策の参考にしましょう。
依頼を隠して運営会社に有利な発信を行った事例
複数のタレントが依頼を受けたことを隠しながら、オークションの運営会社に有利な発信を行ったために、大きな問題となった事例です。
タレントは実際にはオークションを利用していなかったにも関わらず、あたかも高額商品を安価で落札できたような文章をブログに書き込みました。
しかし、運営会社からの金銭授受があきらかとなったほか、運営会社のオークションそのものが詐欺であったことも判明。活動自粛にいたったタレントもいました。
グルメサイトの事例
グルメサイトの運営会社が事態を公表し報道されたことで、多くの人がステマについて知るきっかけとなった事件です。
多くの方が利用するグルメレビューサイトにおいて、39の事業者がさくらを雇い、特定のお店の評価を上げるという工作を行いました。
レビューサイトはユーザーにとって、口コミや点数、ランキングなどが、お店選びをする際の大きな指標となります。ところが、評価がさくらによって操作されていたため大きな問題になりました。
ステマ規制の対象にならないケース
では、どのようにすればステマにあてはまらないのでしょうか。ステマ規制の対象にならないケースを紹介します。
第三者による自由意思に基づいた発信の場合
第三者が商品やサービスを使い、自由に口コミを発信する場合はステマにはあたりません。事業者が関与していたとしても、第三者の自由意志と認められれば規制の対象外です。
たとえば、以下のようなケースはステマにあたらないとされる傾向があります。
- 第三者がサンプルなどを受け取ったものの、あくまでも本人の自由な感想を述べた場合
- 第三者が事業者からの依頼を受けたものの、低い評価をつけた場合
- 事業者が第三者に投稿内容についての指示を行わなかった場合
- キャンペーンなどに応募するために発信したコメント
ただし、ステマかどうかは客観的な状況に基づいて判断されるので、事業者は第三者とのやり取りなどには注意が必要です。
広告であると表記している場合
ステマは、広告をあたかも広告でないように発信することが問題であるため、「広告」や「PR」であると分かるように明記されていれば問題ありません。
インフルエンサーなどの第三者に宣伝を依頼した場合でも、広告であることを表記していればステマには当たらないとされています。
ただし、表記してあっても多量のハッシュタグの中に#PRと記載するなど、一見して消費者の目につきにくい場合はステマとみなされるので、分かりやすさを心掛けて下さい。
事業者による発信であることが明確な場合
表記が無くても社会通念上、広告であると明らかであれば違反を問われません。
- テレビ・ラジオCMや新聞の広告欄、雑誌の広告ページ
- 事業者が配布するチラシ
- 公式サイトや公式アカウントでの発信
以上は、あえて表記せずとも、消費者は広告であると認識が可能なためステマ規制には抵触しません。
従業員が販売促進の目的ではない投稿を行った場合
販売促進を目的としていない発信は、事業者の従業員が行った場合でもステマ規制の対象になりません。一般的な感想や一般人でも知り得る範囲の情報発信は大丈夫です。
ただし、販売促進が目的と判断される恐れはあるので、ユーザー名や概要欄に事業者や関係者であることを表記しておくと良いでしょう。
ステマ規制を違反した際の罰則
景品表示法に違反した場合には罰則が設けられています。
違反行為とみなされた場合には社名の公表が行われたり、消費者庁による措置命令の対象になったりします。措置命令では行為の撤回や再発防止などが明示されます。
また、刑事罰の対象となる場合もあり、景品表示法第三十六条には「二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する」とされています。
ステマ規制の違反を避けるための対策法
ステマかどうかの判断は難しいところですが、違反とされると大きく企業のイメージを損なうので、以下のような点に注意してペナルティを受けないようにしましょう。
広告であることを分かるように表示する
広告だとすぐに分かるような工夫をすることが大切です。SNSやインターネットに広告を出す際には、広告やPR、宣伝などの表示を行いましょう。文字は背景と色がかぶらないように注意し、はっきりと読み取れるフォントを選ぶようにすることが大切です。
インフルエンサーなどの第三者に依頼する場合でも、以下のような対策を行うようにしましょう。
- SNSへの投稿でもカルーセルに「広告」「宣伝」「PR」であることを記載する
- ハッシュタグに「広告」「宣伝」「PR」と入れる
- ハッシュタグにプラスして、本文でもプロモーションであることが分かるようにする
Xのハッシュタグでは広告などの表記を複数の中に埋もれさせるのではなく、先頭に企業名を出し、消費者が広告であるとすぐに分かるようにしましょう。
動画の場合には一瞬だけでは気付かない場合もあるので、できれば最初から最後まで表示するのをおすすめします。
事業者との関係性を明示してもらう
事業者と第三者の関係性は常に明示しておくことが大切です。第三者には「広告」であることが分かるような表現を行ってもらうのと同時に、商品を無料提供した場合には、分かるような記載をしてもらうようにして下さい。そのような対応をすることで、うっかりステマ規制に抵触するのを避けられます。
各SNSでは独自のルールが設けられているので、それを守ることも第三者に伝えて下さい。
- X(旧Twitter)では分かりやすくPRであることを明記する
- Instagramはタイアップ投稿ラベルを使用
- YouTubeは有料プロモーションを設定
ステマに関する教育を実施する
どのようなケースがステマに該当するのか、具体的にイメージできないとリスクを高めます。とくに広報担当者・PR担当者はステマに関する十分な知識を持っていなければなりません。
社内で研修を開き、ステマの概要や定義について教育し、意識の向上につなげることが大切です。インフルエンサーを活用する場合のマーケティング方法や、インフルエンサーの行動、心理などについても知っておく必要があります。
また、起用を想定するインフルエンサーの過去の投稿をチェックし、ステマとみなされる行為がないかを確認し、教育を実施しておくと安心です。実際に、ステマとみなされ問題となった具体的な事例を交えて伝えるのが望ましいでしょう。
発信におけるルールを策定する
上記のように従業員のSNS発信がステマにつながる可能性があります。なりすましのつもりはなくても、従業員であることからステマと判断されるかもしれません。
SNS発信のルールを策定し、ステマになり得る発信をしないように注意喚起しましょう。また、個人のアカウントで自社の商品・サービスに関する投稿はしないように規定したほうが安全です。
従業員による投稿がステマ規制の対象になるかは、地位や所属部門、担当する業務なども加味して総合的に判断されます。社内でのポジションを考えたルール作りも大切です。
過去の発信をチェックする
ステマ規制は広告と認められるものすべてが対象となります。2023年9月30日以前の発信でも、インターネット上など消費者の目に触れる場所に残っている場合は対象になるので、過去にステマの可能性がある発信をしていたら、修正や削除をする必要があります。
ステマと判断されると、信頼の失墜による売上や株価の低下など、大きなレピュテーションリスクになるので、担当の部門や担当者を決めて入念に調査しましょう。
関わりのあるインフルエンサーの発信をチェックする
事業者から依頼するインフルエンサーや芸能人などの第三者に対しても教育が必要です。また、インフルエンサーや芸能人については、発信のチェックも忘れないようにしましょう。
ステマを理解していない場合、発信内容が結果的にステマになってしまう可能性があります。インフルエンサー、芸能人が行ったことでも、責任を問われるのは依頼した事業者です。問題に素早く気づき対応できる体制を整えておかなければなりません。
ステマ規制によるリスク検知に役立つ「Buzz Finder」
上述のように、社内でステマ規制のチェックを徹底することがまず必要ですが、自社で起用したインフルエンサーの投稿がステマに該当するのではないかという第三者の指摘や、従業員のステマとみなされる投稿がSNS上で発生していないかを常に把握しておくことも重要です。とはいえ、すべての発信を手作業でチェックするのは難しいものです。自社のリソースが足りない場合は、ソーシャルリスニングツール「Buzz Finder」の導入をおすすめします。
「Buzz Finder」は、X(旧Twitter)をはじめとしたSNS上の発信を自動で収集・分析できるツールです。特定の投稿が急増した際には、アラートメールでお知らせするので炎上リスクを迅速に察知し、適切な対応ができます。PRを依頼しているインフルエンサーなどによる炎上リスクを軽減できるので、ステマ規制への対応策としても効果的なツールです。
導入事例|消費財メーカー様
ある消費財メーカー様は、製品に関するSNS上のネガティブな発言を早期に把握したいという課題がありました。また、SNSやブログなどにおけるインフルエンサーの影響力や発信を把握して、顧客応対やメディア対応に活用したいと考え「Buzz Finder」を導入しました。
その結果、商品に関する投稿などから炎上につながるような事象を表面化する前に把握できます。体系的なアクションを実行できるようになりました。さらに、SNSの声を社内で共有し、各部門の意識や連携の向上につなげています。
導入事例:消費財メーカー 様
ステマ規制は社内で共有・対策をしておこう
これまでも、有名インフルエンサーや芸能人のインターネット上の投稿などで問題になってきたステマですが、2023年10月より規制がスタートしました。これにより広告・宣伝・PRを行う事業者は、十分な注意が必要となりました。過去の広告表示やインターネット上の発言も規制対象となるため、自社の関わる媒体を幅広くチェックをする必要がありますが、自社のリソースだけでは難しい場合には、SNS上の発信を監視できるシステムの導入も効果的です。
「Buzz Finder」はX(旧Twitter)の発言をほぼリアルタイムチェックし、リスクを見つけたらいち早く企業の担当者にお知らせします。「インフルエンサーマーケティンをしたいが不安がある」という企業の担当者様は、ぜひご検討下さい。
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