2021/08/20

ソーシャルリスク対策

風評被害対策とは?経済的損失を避けるための備え

一度で多くの人に情報を知ってもらうことができるSNS。しかし、それが事実無根な誤報であった場合、SNSは「風評被害」という凶器になってしまいます。きちんと対策をしなかった場合、顧客離れや売上低下、取引銀行からの融資停止、果ては経営破綻という事態にならないとはいえません。今回は、そういった経済的リスクを防ぐために、企業がどのような対策を行うべきなのかについて解説します。

そもそも風評被害とは

「風評被害」とは「根拠のない噂や憶測によって企業や団体あるいは個人に発生する悪影響」のことで、なかでも「経済的被害」について指す場合が多いです。風評被害はターゲットになってしまった企業・団体、個人だけではなく、その周囲にまで影響を及ぼす危険性もあります。大多数の人に情報が簡単に拡散されることから、風評被害の多くは報道やSNSによって起こることが少なくありません。

誹謗中傷とは別のもの

風評被害と間違えられやすいものとして「誹謗中傷」があります。誹謗中傷とは「企業・団体、個人などに関する悪口を言いふらすこと」です。風評被害は「事実無根の噂や憶測で被害を受けること」であり、この2つの意味はまったく違います。ただ、根も葉もない噂や憶測を言いふらされたことが原因で社会的・経済的被害を受けた場合は「誹謗中傷」「風評被害」両方の被害者であるといえるでしょう。

虚偽の情報は拡散されるのが早い傾向がある

アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)の調査によると、SNS上において事実の情報より虚偽情報の拡散率のほうが70%も高いことがわかっています。さらに、事実の情報を1500人に届けるためには虚偽情報の拡散にかかった時間の6倍もの時間が必要でした。つまり、事実無根の情報があるとわかった時点で、できるだけ早い段階で対策をとる必要があるということになります。その情報の出所を止め、事実情報を伝達したとしても、虚偽情報の拡散が起こった後ではすでにさまざまな噂や憶測が出ており、それらをすべてなくすのは非常に困難です。
(参考:Study: On Twitter, false news travels faster than true stories )

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風評被害の実例

こちらでは、どのような風評被害が起こったのか、実例を挙げてみましょう。

事実無根の噂から資産減少に

A社ではある商品の原材料偽装、製品不良が発生した際、同社の他商品も「原材料偽装などが行われているのでは」という噂・憶測が拡散しています。そのため、金融機関の信用不安や取り付け騒ぎになったことから資産が減少する事態になりました。

従業員の不適切投稿から企業イメージダウンに

B社は、1人の従業員がSNSに不適切な投稿を行ったことが発端でした。コンプライアンス意識の低さを指摘されたうえ、営業方法に問題があるという噂がSNS上で拡散されています。

根も葉もない噂から経営者のイメージダウンに

C社では経営者が反社会的勢力の関係者であるという噂が拡散されました。実際には無関係であったにもかかわらず、犯罪者と同姓同名であるという理由のみでC社が犯罪者の企業であるとSNS上で投稿されています。

風評被害の原因は、個人的な感情であるケースが少なくありません。つまり、風評被害を受けないためには、そういった点について向き合う必要があるといえるでしょう。

風評被害によるさまざまなリスク

風評被害は、企業にさまざまな悪影響を及ぼします。しかも、インターネット上で一度拡散された虚偽情報をなくすことは困難です。そのために早期対策を行わなければなりません。適切な対策をとるためにも、風評被害による影響にはどのようなことがあるのか見てみましょう。

売上の減少

企業にとって、経営破綻につながる致命的な悪影響が売上の減少です。一般的に、販売されている商品やサービスについての口コミがインターネット上で投稿されることは珍しくありません。良い評価もあれば、ネガティブ評価になっている場合もあるでしょう。しかし、通常、こういったネガティブな口コミは課題として、より企業の発展、商品開発などに役立ちます。

ところが、悪意を持って拡散される噂や憶測は根も葉もないだけに、企業(商品・サービス)のイメージダウンになるのみで、実になるものがありません。事実ではないので改善しようがなく、噂だけがひとり歩きする状態になります。その結果、「この企業の商品はすぐ壊れてしまう」「営業がしつこい」といったマイナスイメージによって売上の減少につながりやすいです。

優秀な人材の確保がしづらくなる

企業の発展のためには、優秀な人材の確保は必須といえるでしょう。就職・転職支援サイト「人事のミカタ」が行ったアンケートによると、就職・転職活動をする際に「口コミサイトや口コミ検索で企業について調べる」という回答は71.0%でした。これは「企業のホームページから情報収集をする」に続く情報収集方法であり、企業イメージが良いことは優秀な人材確保にも深く関係していることがわかります。ネガティブな噂が多い企業にあえて就職・転職をしようとする人は多くはないでしょう。

企業のイメージダウン

ネガティブな噂や憶測が増えれば、企業イメージが低下することは避けられません。顧客や株主、取引先などからの信用が落ち、それが原因となって顧客離れや批判が増加することも想像に難くないでしょう。企業イメージが低下している状態では、新規顧客の獲得も困難です。結果、業績悪化につながってしまいます。

個人のイメージダウンや情報拡散

企業そのものではなく、経営者や従業員など個人に対して被害が出るケースもあります。人間関係は必ずしもうまくいくとは限りません。ただ、気が合わない人が存在していたとしても、そのなかで社会生活を送るのが常です。しかし、風評被害による個人のイメージダウンはそういった範疇でおさまることがなく、企業にまで影響を及ぼします。

人間の心理として、悪い噂がある経営者や従業員がいる会社の商品は利用したくない、契約したくないという気持ちになりやすいからです。また、噂や憶測だけではなく、個人情報がSNS上に投稿されてしまう場合もあるため、甚大な被害になるケースも少なくありません。

風評被害が起こり得る場所とは?

インターネット上の風評被害で話題になることが多いところにはSNSがありますが、ほかにもさまざまな場所でそのような事態が起こっています。

SNS

風評被害の原因となる場所として、最も多いといえるのがSNSでしょう。匿名でさまざまな人と触れ合ったり、日常について短文で投稿できたりと便利な場所として高い人気を誇っています。ただ、SNSでは発言ひとつが発端となり、フォロワー以外の利用者にまで短時間でその情報が拡散されます。また、不満を感じたことがきっかけで虚偽の投稿をしたといった話題が出ることも珍しくありません。悪質なものに関しては法的措置をとったという話もありますが、利用者が多いだけに風評被害がなくなることは難しいのではというのが現状です。

ブログ

無料、しかも匿名で登録することができるブログは、風評被害が起こりやすい場所のひとつです。フリーアドレス1つあれば登録することが可能で、多くの場合、氏名や住所などを入力する必要もありません。また、削除に関してもいつでも自分自身でできるため、気軽にはじめることができるのが魅力です。

ところが、そういった自由度の高さが風評被害につながるケースも少なくありません。公開状態で記事を投稿後、フォロワーなど多くの人が読むことで、SNS同様に短時間で虚偽情報が拡散される可能性があります。また、ブログ記事を早く検索結果に表示させる工夫がされているサイトもあり、情報拡散が早まる場合も多いです。

動画視聴サイト

24時間365日、いつでも好きなときに興味がある動画を視聴できるサイトも風評被害につながる場所です。こういった動画視聴サイトには、動画作成者によるさまざまな動画が投稿されています。一般的に、投稿されている動画は気分転換や癒やし、趣味など興味を持ち、楽しみながら視聴できるものとなっています。

ただ、すべてがそういった動画というわけではなく、なかには人の発言や企業の商品に関して過剰な批評をしている投稿者もいるのが現状です。投稿者の多くはSNSやブログなども同時に運営しているため、場合によっては動画、SNS、ブログと3つの場所から風評被害を受けることもあります。

そのほか(サジェスト、検索ワード・検索結果)

検索窓に調べたいワードを打ち込むと出てくるサジェストや検索ワードで企業名を入力した際に、風評被害の原因となったワードが出てくるケースもあります。この時点で、そのワードが気になって検索をする人も少なくありません。また、検索結果が出た際に、ネガティブワードとともに企業名が出る場合もあるので風評被害がひろがってしまうこともあります。

風評被害に備えて行うべき対策とは

ソーシャルメディアは事実無根な噂などが拡散されやすい場所であるため、企業側は前もって対策を練っておかなければなりません。こちらでは、あらかじめ行うことができる風評被害対策について解説します。

社内において公式のSNSガイドラインを作成する

風評被害が自社の従業員から発生することがないとはいえません。そのため、自社において、公式にSNSガイドラインを作成し、すべての従業員に浸透させましょう。自社用SNSアカウント上だけではなく、従業員の個人アカウントについても利用する際のルールをまとめ、正社員だけではなく、アルバイトなども含めて教育を行います。これによって、従業員から風評被害が発生するリスクを低減することが目的です。

クライシスコミュニケーション体制の整備

クライシスコミュニケーション(crisis communication)とは、企業にリスクが発生した際、顧客、取引先、メディアなどに対して必要に応じて行う対外危機管理対応を指します。万が一、事実無根な噂や憶測などによるリスクが発生した場合には問題となった部署、広報などが連携し、情報共有をしたうえで今後の対策を練らなければなりません。その際に中心となって意思決定に関わるのは誰なのか、経営陣への報告はすべきなのかなど、あらかじめ決められたエスカレーションフローに従って動くことになります。クライシスコミュニケーションの体制を整えておくことは、被害を最小限にとどめることに非常に有効です。

日ごろからインターネット上の自社に関する投稿をモニタリングする

風評被害を早期検知するため、日ごろからインターネット上の自社に関する投稿をモニタリングすることもひとつの方法でしょう。一見目立たないような投稿であっても、何がきっかけで拡散されるかわからないのがインターネットです。そのため、小さな記事や短い投稿であっても、自社に関するものはチェックしておく必要があります。エスカレーションフローが定められていれば、リスクになる可能性があると判断した投稿に対しても、次の行動に移りやすいです。

投稿者(発信者)を特定するために行動する

風評被害を受けた際には法的措置を念頭に置いた行動をしなければなりません。そのひとつが投稿者の特定です。多くのソーシャルメディアは匿名で利用できるものであり、見ただけでは誰なのかを特定することができません。そのため、まずは投稿されたサイトに対し、発信者の情報開示を求めます。サイトによってはIPアドレスの開示を求める必要もあり、そこからプロバイダーを特定し、発信者情報の開示を請求するというのが流れです。特定する行動が起こされているという事実は将来的な風評被害の防止になり、実際に発信者が特定できれば損害賠償請求をすることもできます。

企業イメージの回復を行う

風評被害に関する対応が落ち着いた後、次の行動するべきなのは企業イメージの回復です。被害の度合いにもよりますが、いずれにせよ、企業イメージが損なわれたことには違いありません。そのため、今後、どのように顧客、取引先などに対して関係性の再構築を行うのかが重要になります。「風評被害を受けにくい企業になる」という前提で、長期的目線で正しい情報発信の強化や顧客とのコミュニケーション強化などを行っていく必要があるでしょう。

風評被害対策は日ごろからのモニタリングが重要

謂れのない噂や憶測による風評被害を受けないためには、日ごろから自社に関するインターネット上の投稿などをチェックしておくことが重要です。モニタリングの継続によって、風評被害の原因となる小さなきっかけも芽が育つ前に摘むことができるからです。従業員に対するSNS利用ガイドラインを作成したり、クライシスコミュニケーション体制の整備をしたりといった対策も効果的でしょう。