2023/03/28

ソーシャルリスク対策

SNSで拡散されたカスタマーハラスメントの事例や対策方法・対処方法を解説

近年、サービス業や小売業などの企業を悩ましているのがSNS上で起きるカスタマーハラスメントではないでしょうか。カスタマーハラスメントとは、客による店内での迷惑動画や、企業に対するひぼう中傷などを指します。SNS上にひとたびアップされれば、企業に落ち度が無い場合であっても売上減少などの被害を受けるかもしれません。この記事ではSNS上でのカスタマーハラスメントの事例を見つつ、被害に遭わないための対策や、起きたときの対応方法などを解説します。

カスタマーハラスメントとは?SNSで拡散するケースが増加している背景

カスタマーハラスメントとは小売業、飲食サービス業、宿泊業、運輸業などで客が従業員や企業に対して行う迷惑行為のことです。従業員に対して暴言を繰り返したり、正当な理由がない過度な要求をしたりするのもカスタマーハラスメントに含まれます。

現在、カスタマーハラスメントがSNSで拡散される被害が増加しており、その背景には「カスタマーハラスメント自体の増加」と「SNS人口の増加」が挙げられます。

2020年10月3日~30日に全国の従業員30人以上の企業・団体に調査した厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」によると、カスタマーハラスメントについて「過去3年間に相談件数は減少している」とした企業が2.2%だったのに対して、「過去3年間に相談件数が増加している」と回答した企業は3.8%という結果でした。また、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどと比較しても、事例の件数が増加している割合がもっとも高くなっています。

最近ではSNSを使ったカスタマーハラスメントも目立っています。SNS上で企業や社員の名誉を棄損させるほか、SNSへのアップロードを脅しに使うケースもあるようです。

SNSを使ったカスタマーハラスメントが目立つ背景として挙げられるのは、SNS人口の増加です。ICT総研によると、2021年には8,149万人がSNSを利用しているというデータがあり、2024年には8,388万人に達すると試算されています。

参考:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル
参考:ICT総研「2022年度SNS利用動向に関する調査」

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SNSで拡散されたカスタマーハラスメントの事例集

SNSを使ったカスタマーハラスメントには、店内で行った迷惑行為をSNSにアップさせることで、企業の信用を損なわせるというものがあります。外食テロなどと呼ばれるものですが、なかには仲間内で見るのに留めるつもりが、うっかり流出してしまったというケースもあります。いずれにせよ、企業は多大な迷惑を被ることには変わりありません。事例について見ていきましょう。

回転寿司チェーンでのカスタマーハラスメント

複数の回転寿司チェーンで、以下のようなカスタマーハラスメントが発生しました。

  • なめた指で回っている寿司に触れる
  • 寿司ネタをしゃりからはがしワサビを入れてレーンに戻す
  • 箸をつけた寿司をレーンに戻す
  • 甘だれの容器にしょう油をいれる

いずれも行った時点ではいたずらという程度の意識だったのかもしれませんが、SNS上で拡散され、各店舗に多大な迷惑をかけることになりました。業界のイメージダウンに加え、中には株価が大幅に下落するなどの影響を受けた企業もありました。

うどんチェーンでのカスタマーハラスメント

あるうどんチェーンでは、客が無料サービスの天かすを共用のスプーンで口に直接入れる動画を撮影し、SNS上で拡散されるという事件がありました。

天かすは本来、共用のスプーンで、うどんの上に振りかけて食べるものですが、直接口に入れるのは不衛生だと、大きな問題となりました。セルフの店では調味料やトッピングの食材などをカウンターに置き、客は好きなように味のカスタマイズができるというシステムをとっていますが、客側が正しく使うという信頼があってこそ成り立つものです。しかし、その信頼関係を揺るがす行為だと、たちまち大きな話題を呼びました。

うどんチェーンでは該当店舗の天かすを取り換え、容器を消毒するなどの対応に追われました。

牛丼チェーンでのカスタマーハラスメント

牛丼チェーンでも、客によるカスタマーハラスメントがSNSに投稿されました。客は卓上の紅しょうがを自分の丼に乗せるのではなく、直接箸で食べ、それを撮影したものがSNSに掲載されたのです。

牛丼チェーンはすぐに店舗を特定して、該当店舗を一時的に閉鎖しました。そして、紅しょうがの交換と容器の洗浄などを実施しました。また、ほかの調味料入れなども消毒や洗浄を行ったと言います。

SNSで話題になりやすいのは大手チェーン店ですが、規模の小さな飲食店や、飲食以外の施設や店舗でも起こり得るので、他人ごととはせずしっかりと事例を確認しておきたいところです。

風評被害対策については以下の記事をご覧ください。
関連記事:風評被害対策とは?経済的損失を避けるための備え

SNSで拡散されたカスタマーハラスメントを放置するリスク

店舗はあくまでもカスタマーハラスメントの被害者ですが、放置をしておくと多大な損害を被る可能性があります。放置した場合のリスクについて解説します。

被害者であっても信頼を失う可能性がある

カスタマーハラスメントでは基本的に企業側は被害者ですが、何も対応をしないでいると信頼を失う恐れがあります。

店内の迷惑行為を見過ごした場合には、店舗が安全管理、衛生管理を怠っているとされ、ほかの客が被害を受ける可能性を放置していると考えられてしまうかもしれません。一度、安全管理、衛生管理を疑われてしまえば、後になって企業が説明をしても信じてもらえなくなってしまいます。

顧客減少による売上ダウン

企業側に落ち度がなくても、とくに衛生に関することに対し顧客は敏感であり、その企業の店舗から足が遠のくという事態が起こります。「見知らぬ他人が口や手をつけたものは気持ち悪い」という感覚的なものだけではなく、コロナ禍のような感染症のまん延を懸念する声が上がるのも無理のないことです。

顧客が離れれば当然、売上がダウンします。株価の下落につながり企業の存続が危ぶまれる事態につながるかもしれません。また、1社が被害にあうと同様の形態で営業をしている他企業の利用にも不安を感じる顧客が増え、業界全体に影響があることから適切な対応が必要です。

企業における信用・ブランドの毀損に関しては以下の記事をご覧ください。
関連記事:【レピュテーションリスク】種類と実例

SNSのカスタマーハラスメントを対策する方法

カスタマーハラスメントに遭わないために、企業はどのような対策をすれば良いのでしょうか。事前の対策について見ていきましょう。

対策推進チームの設置や対応マニュアルの作成を行う

カスタマーハラスメントによる被害を最小限に食い止めるには、専門の対策チームを作ることをおすすめします。メンバーには人事担当者や法務担当者、カスタマーサービス担当者、現場に詳しい現場管理者、外部の有識者などを加えると良いでしょう。対策チームを作成したら、基本方針、現場での対応方法、SNSへの対応方法などをマニュアル化し、さらに従業員全員に教育や周知を行います。

SNSで広まってしまうと事態の収集が難しくなるため、できるだけ現場でトラブルを防ぐことが大切です。SNSに関する対策だけではなく、現場対応についても社内ルールを設けることをおすすめします。

法律に則った対応を明示する

刑事、民事の両面から、法律に則った対応を毅然と行うことを明言することも、事態の沈静化とともに、再発防止に良いと考えられています。

カスタマーハラスメントにより抵触する主な法律は以下の通りです。

  • ウソのうわさを流し企業や人の社会的信頼を低下させた場合は「信用毀損罪」(刑法233条)
  • SNSに企業を特定できるような状態で著しく信用を低下させる書き込みをした場合には「名誉毀損罪」(刑法230条1項)」
  • ウソのうわさを流すなどして業務を妨害する恐れのある行為をした場合は「偽計業務妨害罪」(刑法233条後段)
  • 店内で暴れてその場にいる人に迷惑をかけた場合は「威力業務妨害罪」(刑法234条)

迷惑行為に対してきっぱりとした対応をするということを、店内で明示したりホームページに記載したりすると抑止力になります。

過去の事例を参考に対策する

似たような被害に遭わないためには過去の事例を分析し、対策を立てることが重要です。SNSで拡散されたカスタマーハラスメントであれば、過去の事例はネットニュースやSNS上のコメントを検索して確認できます。

過去の事例を自社に置き換え事前対策を行うことで発生確率を下げられる可能性が高まります。検索をする際は事実関係だけではなく、事件に対する世論の動きなども見ておくと良いでしょう。

SNSでカスタマーハラスメントの被害にあったときの対処法

カスタマーハラスメントの被害に合った際、企業はどのように動けば良いのでしょうか。できるだけ早く事態を沈静化し被害を最小限に食い止めるための対処法について考えていきます。

事実確認を行い対応の指針を決定する

カスタマーハラスメントが発生したらまずは迅速かつ冷静に事実確認をしなければなりません。

顧客からのクレームであれば、それが言いがかりなのか、正当なクレームなのかの判断が必要です。SNS上の嫌がらせであれば、店舗の特定と被害の内容、範囲を把握するとともに、自社に落ち度がなかったかの確認をしてください。

管理者は従業員からヒアリングをするとともに、加害者と直接連絡をとり、事情の確認を行うと良いでしょう。

また、カスタマーハラスメントが起きた現場では、スタッフ1人で判断せず、客観的事実を管理者に報告して判断を仰ぐとともに、複数人で情報を共有しておくと良いでしょう。複数人で状況を確認しておくことで後に事実確認を正確に行えるほか、企業側に落ち度がないことを証明する材料にもなります。

事実確認ができたら過去の事例を元に企業として定めておいたマニュアルに従い、対応の指針を決定します。

ホームページやSNSで対応や今後の対策を発信する

事実関係および適切な対応や対策をホームページやSNSで発表することで、顧客の不安を解消することが大切です。再発防止策を講じた点や加害者に対して正当な抗議をすることなどを盛り込むと、顧客の安心につながりやすくなります。

企業として発信をする際には社会通念と照らし合わせて内容を考える必要がありますが、社会通念は定まったものではないため判断が難しいところです。一般常識とかけ離れた文章を掲載すると不要な反感を買ってしまう恐れがあるため、事前にSNSなどにある世論を把握したうえで発信するのが良いでしょう。

然るべき機関に相談する

SNSで被害に合った場合には、掲載先の運営者に削除を求めるようにしましょう。

投稿者に対して損害賠償等を請求したい場合は、弁護士に相談しながら発信者情報の開示をSNSの運営者に対して請求します。投稿者の処罰を望むなら弁護士や警察への相談等を検討してください。

解決策や削除の求め方が分からなかったり、脅迫的な発言などをされたりした場合は違法・有害情報相談センターや「誹謗中傷ホットライン」などに相談する手もあります。

SNSのカスタマーハラスメントは早期発見が重要

SNSのカスタマーハラスメントは、早期発見・早期対応をすることが大切です。時間が経つほどに投稿や動画が拡散され、収集がつかなくなります。

また、動画の場合は、拡散するほどに加工されていくため、オリジナルの投稿を正確に把握できなくなります。発見したらまずオリジナル動画を保存してください。

早期発見のためには以下の4つの方法のいずれかでSNSを監視する必要があります。

  • 社内の担当者が監視をする
  • Googleアラートを設定し、気になるキーワードをチェック
  • SNS監視を外部の会社に依頼する
  • ソーシャルリスニングツールの活用

SNSを常時社内の担当者がチェックする方法やGoogleアラートもやや手間がかかります。外注は費用がかかるので予算との相談になります。

よって、コストパフォーマンスが高い方法は、SNS上のコメントを常にチェックするソーシャルリスニングツールの導入といえるでしょう。自社に対する投稿が増加した際に通知してくれるため、早い段階でSNS上のカスタマーハラスメントに気付くことができます。

SNS監視の重要性は以下の記事をご覧ください。
関連記事:SNS監視の重要性と具体的な4つの方法・炎上対策や対処法も解説

SNSのカスタマーハラスメント対策には「Buzz Finder」

Buzz Finderは、企業のブランドセーフティを強固にするソーシャルリスニングツールです。

業界でもトップクラスのスピードでX (旧Twitter)公式全量の投稿をほぼリアルタイムで収集し、炎上への迅速な対応やVOC(Voice Of Customer)分析に役立ちます。自社に関する投稿が急増した場合にはアラートが自動通知してくれるため炎上の早期発見が可能です。また、主要メディア投稿の分析をすることで速やかな問題解決ができます。

SNSのカスタマーハラスメントは対策すべき大きなリスク

「外食テロ」など、店内での迷惑行為がSNS上で拡散してしまったために大きな話題となる事例が多数起きています。客からの嫌がらせともとられる一連の行為については、一度発生すると企業のリスクも高いため、事前に対策を練るとともに発生後の迅速な対応が必要です。SNSで拡散されることに備え、ソーシャルリスニングツールの導入も考えてみてはいかがでしょうか。

ソーシャルリスニングツールの「Buzz Finder」は、炎上の火種をアラート機能でタイムリーに知らせてくれ、SNS上でのカスタマーハラスメントに対する早期対応を可能にします。

「Buzz Finder」の詳しい情報はこちら

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