2024/03/07

ソーシャルリスク対策

キャンセルカルチャーの意味や効果・問題点とは?日本・海外の事例も紹介

企業や著名人の発言、行動などがきっかけで起きるキャンセルカルチャー。SNSでの批判のほか、不買運動やボイコットなどにもつながり、企業の業績にも悪影響を与える恐れがあります。昨今では、海外だけでなく、日本でもキャンセルカルチャーが起こる場合があり、リスクへの対策は不可欠といえるでしょう。

本記事では、キャンセルカルチャーの意味や原因、効果、日本や海外で実際に起きた事例、リスク対策の方法などを解説します。

この記事の内容
  • キャンセルカルチャーとは、著名人や企業の発言、行動、製品などが社会的に好ましくないと判断された場合に起きる運動を指す
  • SNS上での糾弾や不買運動、ボイコットなどによって対象を社会的にキャンセル(抹殺)しようとする動きで、信頼の低下や業績の悪化など企業にも悪影響をおよぼす恐れがある
  • 海外の#MeTooムーブメントが有名だが、日本でも東京オリンピックを巡る騒動などでキャンセルカルチャーが起きており、企業にとって対策すべきリスクの1つになっている
  • キャンセルカルチャーに適応するには、内部統制の整備や誠実な対応、ブランドの確立、SNS監視の徹底などが有効な対策になる

キャンセルカルチャーの意味とは?概要を簡単に解説

キャンセルカルチャーとは、著名人や企業など、特定の個人や団体が社会的に好ましくない発言や行動をした際に、SNSでの糾弾や不買運動、ボイコットなどを行い社会的にキャンセル(抹殺)しようとする動きです。キャンセルカルチャーの標的になると、SNSやメディアを通じた猛烈な批判やテレビ番組の放送中止、CM出演の停止、不買運動による売上の減少、支援の取りやめなどの影響が考えられます。

キャンセルカルチャーは、インターネットやSNSが世間に浸透しはじめた2010年頃から見られるようになりました。用語の由来については、新聞や雑誌などのメディアを読者が批判する際に使われていた言葉から派生したとの説や、南北戦争や公民権運動といった歴史から生まれた説などさまざまです。

コールアウトカルチャーとの違い

キャンセルカルチャーの類義語に「コールアウトカルチャー(Call-out Culture)」があります。コールアウトカルチャーは、他者の間違いを大衆の前で徹底的に批判する動きです。キャンセルカルチャーと同じように使われるケースもあります。しかし、コールアウトカルチャーの場合は、非難や謝罪の要求だけでなく、他者を「必要ない(Call-out)」と切り捨てて排除しようとする点が、キャンセルカルチャーよりもさらに過激な動きといえるでしょう。

炎上との違い

キャンセルカルチャーとよく似たSNS上の動きに「炎上」があります。特定の個人や企業を標的に猛烈な非難を行う点は同様ですが、炎上の場合は、単なる批判や誹謗中傷に終始する場合がほとんどです。キャンセルカルチャーの場合は、不買運動やボイコットなど、本人や組織に対して謝罪を求めたり、何らかの具体的な制裁を加えたりする点が異なります。炎上は時間とともに鎮静化するケースもありますが、キャンセルカルチャーだと、後の活動に影響を残す場合が多いことも異なる点です。

ポリコレとの違い

「ポリコレ」とは「ポリティカル・コレクトネス(political Correctness:政治的正しさ)」の略で、社会的なマイノリティなど特定の集団に対して差別的な意味を含まないような表現を指します。キャンセルカルチャーとも結びつきが深い用語の1つです。しかし、ポリコレとキャンセルカルチャーはイコールではありません。ポリコレはあくまでも、政治的・社会的な表現を指す用語です。キャンセルカルチャーは、ポリコレに反する発言をした人に向けられる運動です。ポリコレが表現のみにとどまっているのに対し、キャンセルカルチャーは具体的な行動を伴っています。

ポリコレに関してさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
ポリコレの意味とは?企業の炎上防止に役立つ具体的な例や施策を解説

Buzz Finder無料トライアル

キャンセルカルチャーが起きる主な原因

実際にキャンセルカルチャーが起きる原因として、主に以下のような事例があります。

  • 芸能人やセレブなどの発言:著名人がポリコレに反する内容など、差別的ととられる発言やSNSへの投稿を行ったケース。一般人やメディアは、社会的影響力の大きな有名人に対して世間よりも高い倫理観を求める傾向がある
  • 企業の発言や行動:SNSでの配慮に欠ける投稿、不正行為の発覚、環境への影響を考えない製品の販売など、消費者や社会から企業が社会的責任を果たしていないと判断されたケース
  • 文化的な違い:国や民族における文化の違いから非難の対象になるケース。自国では受け入れられる発言が、外国では問題視される場合もある

キャンセルカルチャーのポジティブな効果

ネガティブなイメージをもたれやすいキャンセルカルチャーですが、社会的な課題を解決するうえでポジティブな効果を生み出す場合もあります。キャンセルカルチャーのポジティブな効果は以下の通りです。

  • 社会的問題の解決に影響:多くの批判が集まるため、社会的な圧力・影響力が高まり問題解決に結びつきやすくなり、公正な社会を形成する手助けになる
  • トラブルの抑制:著名人や企業の公での責任が重くなるため、発言や行動を慎重にするようになり、トラブルの抑制につながる
  • 人々の問題意識の向上:キャンセルカルチャーが起きて議論が深まれば、社会的な課題に対する一般人の問題意識が高まる

キャンセルカルチャーへの批判・問題点

ポジティブな効果もあるものの、他人を糾弾し、謝罪などを半ば強要するキャンセルカルチャーに対しては批判も多く、さまざまな問題点・課題点も指摘されています。キャンセルカルチャーへの主な批判・問題点は以下の通りです。

  • ネット上やSNSで偽情報や誤解が拡散され、誤った情報に基づいて人々が判断を下す場合がある
  • 批判が過激になると、対象者のプライバシーや人権の侵害につながる
  • 意見を発信するリスクが高まるため、自由な発言がしにくくなり、かえって多様性を抑圧する
  • 社会の分断が進み、特定の人とのコミュニケーションが難しくなったり、お互いを理解できない社会になったりする危険性が潜んでいます。

キャンセルカルチャーの事例

ここからは、実際に日本や海外で起こったキャンセルカルチャーの事例を紹介し、どのような場合にキャンセルカルチャーが起きるのか、どのような結果になるのかを見ていきます。

日本での事例

日本での主なキャンセルカルチャーの事例は以下の通りです。

東京オリンピックを巡る問題

2021年に開催された東京オリンピックでは、開幕前にエンブレムデザインの盗作疑惑が起こり、デザイナーによる撤回につながりました。また、開会式の楽曲を担当したミュージシャンが過去の発言で批判を浴びて辞任するなど、キャンセルカルチャーを巡る騒動が連続しています。

Amazonプライムの解約運動

AmazonがCMに起用した国際政治学者が過去の徴兵制に関する発言で批判を受け、X(旧Twitter)上で「#Amazonプライム解約運動」のハッシュタグをつけて解約を呼びかける動きが起こりました。騒動の後、Amazonは「当初の予定通り」としてCMを終了しています。

海外での事例

海外でのキャンセルカルチャーに関する主な事例は、次の通りです。

J.Kローリングの事例

ハリー・ポッターシリーズの作者、J.Kローリング氏が、トランスジェンダーの人々に対する差別的な発言を行ったとして炎上が起き、アメリカの博物館が展示物からJ.Kローリングの記述を削除するなどの影響がありました。一方、J.Kローリングは、キャンセルカルチャー的な動きに対して、他の作家や学者とともに公開書簡を発表し、「異なる見方への不寛容を助長する」と異議を唱えています。

#MeTooムーブメント

セクハラや性暴力の被害を受けた経験を「#MeToo」のハッシュタグをつけてSNSに投稿することがムーブメントになった事例です。これまで隠すものとされてきた多くの体験が公になり、性的暴行を告発されたハリウッドのプロデューサーが逮捕されるなど、社会に大きな影響をおよぼしました。

SNS上のさまざまな炎上事例について、さらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
SNSにおける企業の炎上事例9選|炎上の対処法・事前対策を紹介

キャンセルカルチャーへの適応は企業のリスク対策としても重要に

キャンセルカルチャーへの対応は、現代の企業にとって大切なリスク管理の1つです。企業の発信や行動、製品が原因でキャンセルカルチャーが起きると、社会的な信頼を失い、業績が悪化する恐れもあります。企業はこれまで以上にSNSでの発信内容やマーケティングの方法、社内教育などに目を向けていく必要があるでしょう。

キャンセルカルチャーの原因となる発言や行動をすると、顧客だけでなく、ステークホルダー全体からの信頼を失い、大きな代償を支払わなければなりません。特に、SNSなどの投稿は、削除してもインターネット上に情報が残り続ける場合があり、長期間にわたって企業イメージに悪影響をおよぼすため注意が必要です。

企業のビジネスにマイナスの影響を与えるレピュテーションリスクについて、詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
レピュテーションリスクの要因と対策とは|企業事例や定量化の方法も紹介

企業がキャンセルカルチャーに適応するための方法

キャンセルカルチャーによる悪影響を避けるためには、企業はどのような手段がとれば良いのでしょうか。ここからは、企業がキャンセルカルチャーに適応していくための方法を紹介します。

内部統制を整備する

企業が適切なリスク管理を行うには、内部統制の整備が重要になります。内部統制とは、会社が事業や経営の目標を達成するために行うルールや仕組み作り、制度運用の確立などを指す用語です。内部統制を整備することで、リスクへの正しい評価や法令の順守、社会問題に配慮した発言や行動ができるようになる、などの効果があります。ルールや制度作りに加えて、社内でキャンセルカルチャーに関する研修を開くなど、従業員への意識教育を実施するのも有効です。

誠実な対応と強固なブランドの構築を行う

キャンセルカルチャーは回避すべきリスクですが、意図せず起きてしまう可能性もあります。万一、トラブルになった場合、被害の規模を抑えるには、誠実な対応と強固なブランドの構築が有効です。

アメリカで実施された調査では、キャンセルカルチャーが発生した場合でも、企業がきちんと謝罪し反省を示した場合は、商品・サービスの利用を続ける人が半数近くいるとの調査結果が出ています。また、普段愛用している商品やサービスの場合も、キャンセルカルチャーが起きても完全な不買は行わず、利用を続ける人が一定数いるとの調査結果も出ています。

キャンセルカルチャーが発生した場合は、丁寧な謝罪を行い、被害を最小限に食い止めるのが最善といえるでしょう。

出典:トゥルースターコンサルティンググループ株式会社|キャンセルカルチャー、企業は対応すべきか
出典:Marketing Dive|Cancel culture: Trouble for brands or just noise?

SNS監視を徹底する

キャンセルカルチャーのリスクを抑えるうえで、重要になるのがSNS監視です。キャンセルカルチャーでは、「#MeToo」のようにネットやSNSでの運動が発端になっているケースも多くみられます。SNS監視により異変を早期発見できれば、問題の内容を把握できることはもちろん、迅速かつ適切な対応が可能になります。結果、被害を最小限に防ぎ、信頼の回復にもつなげられるでしょう。

また、普段からSNS上で幅広い声を見聞きしていると、キャンセルカルチャーにつながる発言や行動の傾向も把握できます。ただし、SNSは情報量が膨大で、手作業による監視は効率、精度ともに悪くなってしまいます。SNSの情報を自動で収集・分析できるソーシャルリスニングツールの導入がおすすめです。

SNS監視やソーシャルリスニングについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

SNS監視の重要性と具体的な4つの方法・炎上対策や対処法も解説
ソーシャルリスニングとは|意味や分析方法の解説と導入事例を紹介!

キャンセルカルチャーによるリスクを抑制する「Buzz Finder」

Buzz Finderは、SNSのデータを収集・分析し、企業のキャンセルカルチャーや炎上によるリスクを抑制するソーシャルリスニングツールです。X (旧Twitter)公式全量の投稿をほぼリアルタイムで収集・分析し、毎日の日報メールにより、SNS上での投稿の変化と生の声を把握できます。

さらに、炎上や風評被害などが発生した場合は、ポスト数の急増検知を知らせるアラートメールを送信します。拡散状況を早期に把握できるため迅速な対応が可能です。

FacebookやInstagramなど、他のSNS分析にも活用でき、VOC分析(顧客の声や意見を利用する分析方法)や専門コンサルタントによる分析など、分析機能も充実しています。

次に、「Buzz Finder」を導入している企業様の事例をご紹介します。

導入事例|消費財メーカー 様

ある消費財メーカー様は、以下のような課題を抱えていました。

  • 社内の各部署でSNSの情報を共有・連携をしたい
  • ネガティブ投稿による風評被害やトラブルを防ぎたい
  • インフルエンサーの動向や影響度を把握し、顧客やメディアへの対応に活かしたい

このような理由からBuzz Finderの導入を決めました。導入後は、炎上の可能性がある投稿をリアルタイムで把握して体系的なアクションが可能となったほか、社外ステークホルダーの意見も把握しやすくなっています。また、情報の共有や業務フローの整理により、関係部門同士の意識や連携も向上しました。

キャンセルカルチャーと向き合い対策を検討しよう

企業や著名人の発言・行動が原因となって、SNSでの非難や不買運動、ボイコットなどにつながるキャンセルカルチャーは、企業がSNS発信やマーケティングを実施する際に対策するべきリスクの1つになっています。キャンセルカルチャーへの対策には、社内制度の整備やブランド構築に加え、SNS監視が重要です。キャンセルカルチャーと適切に向き合うため、SNS分析ツールやソーシャルリスニングツールの導入を検討してみると良いでしょう。Buzz Finder導入を検討の際は以下のリンクから資料請求が可能です。ぜひご活用ください。

関連記事

資料ダウンロード資料ダウンロード

閉じる閉じる