2024/03/07

ソーシャルリスク対策

ポリコレの意味とは?企業の炎上防止に役立つ具体的な例や施策を解説

企業経営においても多様な価値観が求められる現代。特定の人たちを傷つける発言などにより、企業の信頼が失われているといった現状もあります。そんななか、注目を集めているのが「ポリコレ(ポリティカルコレクトネス)」と呼ばれる概念です。

本記事ではポリコレの概要や効果、歴史、企業のポリコレ対策などについて解説します。ポリコレについて理解を深めたい企業のご担当者はぜひ、参考にしてください。

この記事の内容
  • 「ポリコレ(ポリティカルコレクトネス)」とは、人種や性別、年齢などによる差別・偏見を無くすための運動
  • ポリコレを意識することにより、企業価値の向上や社会的信頼の醸成などが実現しやすくなる
  • 企業のポリコレ対策には、ハラスメント・グローバル研修、福利厚生・給与制度などの平等な設計、SNS監視の強化などがある

ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)とは?意味をわかりやすく解説

まずは、ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)の概要や社会的な効果、問題点などについて解説します。

ポリコレとは「差別・偏見を無くすための運動」

「ポリコレ」とはポリティカルコレクトネス(political correctness)の略称です。社会制度やあらゆる表現を差別・偏見のないものに変え、人種や性別、年齢、障害の有無などによるマイノリティ・社会的弱者を守るための運動を指します。日本語では「政治的正しさ」「政治的妥当性」などと訳されます。

例えば、かつては女性の看護師を「看護婦」と呼んでいましたが、職業における性差別をなくそうという考えから、男女ともに「看護師」と呼ぶようになったのもポリコレの一例です。

ポリコレの社会的な効果

ポリコレが浸透することで、性差別的な表現や制度、無意識の偏り(アンコンシャスバイアス)が是正される可能性があります。人々の意識が変革し、多様性を受け入れる社会の実現に近づけることが期待できます。一人ひとりが生きやすく、それぞれの能力をしっかりと発揮できるなどのメリットもあるでしょう。

また企業においても、ポリコレは適切なマーケティングやイノベーションの促進につながります。企業の姿勢を社会に示すことで、企業価値の向上や社会的信用を醸成することが可能です。ステークホルダーや顧客へのアピール材料にもなり、企業に良い影響を及ぼすものと考えられます。

ポリコレは「やりすぎ」と言われることもある

ポリコレによって差別や偏見をなくすことが期待できる一方で、ポリコレを意識するあまり行きすぎた表現や判断をすることがあり、やりすぎと感じる人もいます。自分の考えを無理やり他人に押し付けようとしたり、些細なこともポリコレに反すると批判したりなど、線引きがあまりにも厳しくなってしまうのは危険です。

具体的には、意見の違いや自分が不快に感じることをポリコレの問題にして批判する、問題があった企業の商品を買う人も批判するなどの行為が該当します。多様性を認めることがポリコレの本来の概念であるため、他者に強制しすぎることが無いよう注意を要します。

映画・アニメ・ゲームなどにもポリコレが波及している

近年では、映画やアニメ、ゲームなどにもポリコレの意識が波及しています。例えば、昨今のディズニー映画「白雪姫」や「リトル・メーメイド」では、ヒロインにアフリカ系アメリカ人やラテン系アメリカ人をキャストしており、配慮のしすぎで表現の自由が奪われる可能性があると懸念する人や作品がつまらなくなったとの声もあります。

特に、白雪姫のように長い歴史や共通したイメージのある作品にポリコレを取り入れると、ユーザーが求めているものとズレが出ることが多く、視聴者に「つまらない」といった感情を抱かせることにもつながります。

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ポリコレはいつからある文化?海外・日本の歴史を紹介

昨今、注目を集めているポリコレですが、実はその歴史は古く、海外では1900年代にポリコレの考え方が登場していました。ここでは、海外と日本におけるポリコレの歴史について解説します。

海外の歴史

海外でのポリコレの発祥は、1900年代のアメリカに遡ります。人権意識の高まりにより、それまで社会の中心として君臨していたアングロ・サクソン系プロテスタントの白人とマイノリティとの衝突が大きくなりました。特にマイノリティの人々はポリコレを欠いた呼称で呼ばれることも多く、問題が大きくなっていったのです。

それ以降、先住民族を「インディアン」から「ネイティブ・アメリカン」と呼ぶようになるなど、ポリコレへの動きが強まります。次第に民族や人種、性別などがもとになる差別を防ぐため、ポリコレの概念が広く浸透していきました。

日本の歴史

日本でポリコレという概念が注目を集めたのは、2010年代からといわれています。この頃から、インターネット上で女性や性的マイノリティなど特定の人々に対して偏見を助長するような表現がされ、批判を集めるようになったのがきっかけという話があります。

また、アメリカで開催された2015年の第1回共和党大統領討論会で、ドナルド・トランプ氏がポリコレに言及する発言をしたことから日本でも注目され、Googleの検索数が急上昇したという話もあります。

ポリコレの具体的な例

続いて、ポリコレに反する表現の具体例を見ていきましょう。

性別に関する表現

性別に関する表現のなかで、職業の名称はポリコレの影響を大きく受けています。かつては男性・女性を連想させる呼称が多かったものの、現在では共通で使えるものに変更されています。

(例)
保母 →保育士
看護婦 →看護師
スチュワーデス・スチュワード →客室乗務員・キャビンアテンダント
カメラマン →フォトグラファー

また、名前の後につける敬称も変化の傾向にあります。男性には「くん」、女性には「ちゃん」といった敬称が用いられていましたが、昨今では男女ともに「さん」が基本です。海外で使用されていた未婚女性への「Miss.」、既婚女性への「Mrs.」の継承は、すべて「Ms.」に統一されました。

さらに、服装の規定もポリコレの影響を受けています。例えば学生服の場合、男性はズボン、女性はスカートが規定されていたものの差別的という見方があり、特に女性は制服を選択できる学校が増えてきています。

人種に関する表現

ポリコレにおいて、避けられないのが人種に関する表現でしょう。かつて、アメリカ先住民は「インディアン」と呼ばれていましたが、差別的な意味合いがあるということで、現在では「ネイティブアメリカン」と呼ぶようになっています。また同様に、かつて肌の黒い人は「黒人(ブラック)」と呼ばれていましたが、これには侮辱的な意味が含まれているため、「アフリカ系アメリカ人」といった表現に変化しています。

ただし、黒人(ブラック)のルーツはアフリカ系アメリカ人に限定されないため、なかにはアフリカ系アメリカ人にアイデンティティを感じられない人が出てくるといった問題も出てきています。

指向に関する表現

性的指向によって他者から侮辱・非難されるケースも存在します。例えば、性的マイノリティを示す「LGBTQ」は、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クイア・クエスチョニングなどの性的指向や概念を持つ人々を指す言葉です。また、男性・女性の身体的特徴を併せ持つインターセックスや、恋愛感情や性的欲求を持たないアセクシュアルなど指向を持つ人も存在します。これら性的指向への差別や誤解につながる表現を無くし、受け入れることで、非難や排除のない社会へ変容できると考えられます。

特に、トランスジェンダーに見られる戸籍上の性別と性自認が異なる場合も、素直な指向にもとづいた選択がしやすくなってきています。

宗教に関する表現

信仰する宗教によっても、差別的な表現を受けるケースがあります。他者の信仰する対象に関して深い理解を有している人は少なく、特定の人が傷つけられる場面も少なくありません。特に、宗教と政治が絡む場合は問題視されやすい傾向にあります。宗教においても多様性を大切にし、他人の信念を尊重する姿勢が求められています。

企業がポリコレに適応したほうがよい理由

ポリコレは個人の問題のみならず、企業においても見過ごせないものです。ここでは、企業がポリコレに適応したほうが良い理由を解説します。

ステークホルダーからの信頼の維持・向上につながる

昨今、企業がポリコレを意識することは一般的になってきています。ポリコレを意識しない経営をしないと、ステークホルダーから企業としての意識を疑われ、信頼を失う恐れがあります。一方、ポリコレを意識した経営を行うことで、ステークホルダーからの信頼を維持・向上できるでしょう。

また、社会課題への意識の高さを示すことで、従業員は自社に誇りを感じて帰属意識やモチベーションを高められます。消費者や投資家などからの印象も良く、企業のブランド価値や業績の向上につながります。

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ダイバーシティの促進によりイノベーションが創出される

ポリコレを意識することで、多様な人材が在籍することを意味するダイバーシティーの実現にもつながります。多様な価値観を持つ人を受け入れないと、これからの時代、事業の成長や新しい事業の創出は難しくなるでしょう。多様な人材が活躍することでこれまでにない発想が生まれ、イノベーションが創出しやすい環境になります。

また、日本国内においては、少子高齢化に伴う労働人口の現象が問題となり、多様な人材を採用する必要性も出てきています。性別や年齢、人種などにとらわれない人事採用を行うことで、雇用の拡大にも貢献できるでしょう。

従業員の心理的安全性が確保される

ポリコレは多様な考えや特性を受け入れることなので、従業員間での差別や偏見の抑制にも役立ちます。マイノリティの人は周囲に自分が受け入れられないといった不安感を抱きやすく、心を閉ざしがちです。しかし、ポリコレを意識することで、マイノリティであっても不安を感じずに働ける環境をつくることができます。

心理的安全性の高い環境であれば、従業員のモチベーションが上がることはもちろん、コミュニケーションの活性化や生産性の向上にも期待できます。

SNS炎上やキャンセルカルチャーを回避できる

世間のポリコレに対する意識の高まりは、これまで以上にSNSでの炎上リスクが上がることを意味します。SNSの情報拡散のスピードは速く、情報が一人歩きをして取り返しのつかない事態に陥ることも。さらには炎上にとどまらず、不買運動などのキャンセルカルチャーへ発展する可能性もあるでしょう。

特に、企業のプロモーションや経営陣による発言の内容には注意が必要です。最悪の場合、企業のイメージがダウンし、顧客や世間の信頼を失うことにもつながりかねません。企業がポリコレを意識することで、マーケティング内容もポリコレに対応したものとなり、炎上リスクを回避することができます。

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企業の具体的なポリコレ対策

続いて、企業が取り組むべき具体的なポリコレ対策を5つ紹介します。

ハラスメントやグローバルに対応するための研修を行う

ポリコレ対策として、ハラスメントやグローバルに対応すべく研修を行うことが挙げられます。ハラスメントには、性的な言動によるセクシャルハラスメント、職場内での優位性を利用したパワーハラスメント、性別を理由としたジェンダーハラスメントなどさまざまな種類があります。ハラスメントに関する研修やチェックを行うことで、ポリコレに反するリスクを軽減できます。

また、海外進出する企業が増えたなか、グローバルへの対応も必要になってきました。国籍による言語や文化の違い、海外とのポリコレに対する意識の違いなど、グローバルに対応できる研修やマニュアルを作成し実施することが求められます。ポリコレを意識することで、海外の企業との取引や社内でのトラブルを回避できるでしょう。

福利厚生・給与制度・人事評価制度を平等に設計する

ポリコレ対策として、企業の福利厚生や給与制度、人事評価制度などを見直すことも必要になります。性別に関わらず育児休暇を取得できるような環境整備や、宗教的な理由による休暇に配慮するなど、それぞれのバックグラウンドを理解したうえで不平等に感じない福利厚生の設計が重要です。

性別や国籍による給与制度の違いなどがあると、ポリコレに反するとして炎上する恐れもあります。能力や実績に関係のない要素を給与制度や人事評価制度に取り入れないよう注意しましょう。

求人募集の内容に注意する

企業が求人を募集する際には、ポリコレに反する表現がないか気をつけましょう。性別を限定するような表現や服装の規定は避ける必要があります。また、性別によって服装や髪型、ヒゲ、ネイルなどに差をつけないことも必要です。性別の記入欄を設けない、もしくは無回答の選択肢を設けるなどの配慮を行いましょう。

ポリコレに配慮しないとSNSでの批判につながり、優秀な人材を逃してしまう恐れも出てきます。

採用面接時の質問内容に注意する

採用面接を行う際には、面接時の質問内容にポリコレに反するものが含まれていないか注意しましょう。基本的に、出生や居住地、家族関係、性的指向、宗教に関することなどは質問しないようにします。また、仕事に関係のないことを質問すると、それにより採用・不採用がを判断するのではないかといった疑問が生じるため注意が必要です。

SNS監視を強化する

ポリコレを意識していても、些細なことでSNSの炎上につながる恐れがあります。早期発見や被害拡大を抑えるためにも、SNS監視を強化しておくとよいでしょう。日頃からSNS監視を行うことで、炎上リスクの軽減に加え、ポリコレに対する世間の感覚や基準を把握できます。

とはいえ、SNSには膨大な情報が日々流れているので、手作業で監視するのは困難です。必要に応じて、代行業者への依頼やソーシャルリスニングツールの導入も検討したほうがよいでしょう。

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ポリコレによる炎上対策に有効な「Buzz Finder」

Buzz Finderは、企業のリスクや炎上対策に最適な分析ツールです。Twitter公式全量データからリアルタイムで情報を収集・分析でき、問題点へ迅速な対応ができます。また、自社に対するツイートが急増したときにはアラートメールで通知されるため、炎上の拡大を回避できるのも特徴です。さらに、ツールにログインすることなく、メールチェックだけで変化を把握できるのも強みです。トレンド分析や関連語分析、ポジネガ分析など多様な分析機能も備えています。Buzz FinderはさまざまなSNSユーザーの生の声を分析し、効率的に改善するのにも役立つツールです。

導入事例|消費財メーカー

Buzz Finderの導入前、消費財メーカー様には以下の課題がありました。

  • SNS上のネガティブな投稿を早期に把握し、ブランドの風評やトラブルを最小化したい
  • ネット上のインフルエンサーの動向を把握し、メディア対応・顧客対応に活かしたい
  • 組織を横断した社内各部署の連携を図りたい

導入後は、以下のような効果を実感されています。

  • 炎上につながりそうな事象をリアルタイムで把握でき、体系的なアクションが取れるようになった
  • 社外のステークホルダーの意見を集め、対策を立てられるようになった
  • 関係部門の意識や連携が高まった

ポリコレを意識した企業経営が求められている

企業がポリコレを意識することで、ステークホルダーや顧客からの信頼を獲得しやすく、SNS炎上の回避、従業員が安心して働ける環境の整備なども実現しやすくなります。本記事で紹介したポリコレ対策なども参考に、多様性を受け入れる取り組みを意識することで、企業に良い影響を及ぼすはずです。

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