2024/03/14
ソーシャルリスク対策
SNSでコンプライアンス違反が拡散されるリスクとは?有効な対策方法を紹介
昨今、従業員の悪ふざけがSNSで投稿・拡散されるといったケースが見られます。また、企業の不祥事がSNSで瞬時に広まり、社会的信用を落とす事態なども招いていることから、企業にはコンプライアンスの遵守が強く求められています。
本記事は、コンプライアンス違反が拡散されるようになった背景や違反が拡散されるリスク、対策などについて解説する内容です。実際に起こった事例もあわせて紹介するので、SNSによるコンプライアンス違反の拡散を防止したい企業のご担当者は、ぜひ参考にしてください。
- 昨今、企業の社会的責任に対する認識の変化やインフルエンサーの存在などによりコンプライアンス違反がSNSで拡散されるようになった
- SNSでコンプライアンス違反が拡散されると、企業としての信頼を失う、売上が低下する、刑事罰が科せられる、などのリスクがある
- SNSでコンプライアンス違反が拡散されないためには、コンプライアンス研修の実施、SNSガイドラインの策定、ソーシャルリスニングの実施などの対策をとる必要がある
SNSで拡散されるコンプライアンス違反は法令違反だけではない
コンプライアンス違反は本来、法令違反のことを指しますが、社会的には社会道徳や社会規範に反したこともコンプライアンス違反と判断されるので注意が必要です。以下は、コンプライアンス違反の一例です。
- 営業担当者が自社名や取引先名、商談内容などを飲み会の席で話していた。その話を聞いた人がSNSに内容を投稿し情報漏洩となった
- 会社の営業車で運転中、赤信号に変わったタイミングでスピードを出し横断歩道を通過した。その様子が撮影されてSNSにアップされた
- 講演会で差別的発言をしている経営者の様子がSNSで拡散され、会社に批判が殺到した
このように、コンプライアンス違反による炎上リスクが高まる現代においては、適切な行動と対策が重要になっています。
SNSでコンプライアンス違反が拡散されるようになった背景
ここでは、SNSでコンプライアンス違反が拡散されるようになった背景について解説します。
テクノロジーの進歩によるSNSの隆盛
SNSでコンプライアンス違反が拡散されるようになった背景として、テクノロジーの進歩が挙げられます。スマートフォンやドライブレコーダーなどが普及したことで録音・録画が容易になり、不正や不適切な発言が記録されやすくなりました。合わせてSNSが普及し、記録した内容が一気に世間に拡散されるようになったことも影響しています。
国内だけでなく、世界中の人と容易につながることができるSNSの利用者は年々増加しています。一度情報が発信されれば瞬時に拡散されるため、企業のマーケティングでSNSを効果的に活用できる一方、企業のマイナスな情報も消費者の目に留まりやすくなったといえるでしょう。
企業の社会的責任に対する認識の変化
近年、企業の社会的責任がより強く求められるようになってきました。ステークホルダーも企業の社会的責任に注目し、ESGに配慮している企業に投資資金が集まる傾向も見られます。コンプライアンスに欠ける言動や行動が、炎上につながりやすくなっているので注意が必要です。
また、消費者も企業の理念や取り組みを重視するようになってきており、コンプライアンス違反をしている企業の商品は買わないといった行動に出る恐れもあります。このような監視の目が強まっていることも、コンプライアンス違反がSNSで拡散される背景の一つといえるでしょう。
インフルエンサー文化の浸透
インフルエンサーとは、SNSを中心にフォロワーを多く持ち、世間への影響力がある人を指します。インフルエンサーは企業のマーケティングでも活用されていますが、ステルスマーケティングなどにより炎上するケースも見られます。実際の商品やサービスよりも良い印象を消費者に抱かせるステルスマーケティングは、景品表示法の不当表示にあたる違法行為です。
また、情報提供を受けて内部情報をリークしたり、あえてSNS上で批判を受けそうな情報を広めたりするインフルエンサーも存在し、拡散のきっかけとなる場合もあります。
コンプライアンス違反の書き込みが拡散される原因は誰?
コンプライアンス違反が拡散される原因は、企業、インフルエンサー、従業員などです。企業によるコンプライアンス違反の事例としては、脱税、粉飾決済、景品表示法違反、パワハラ、セクハラなどが挙げられます。
また前述したように、報酬をもらっているインフルエンサーが、あたかも公平な評価であるかのように見せかけた投稿を行うステルスマーケティングも違法行為です。なかには、インプレッションを集めるためにコンプライアンス違反を拡散するインフルエンサーも存在します。
従業員の場合、組織への不満や悪ふざけからコンプライアンス違反になる投稿をする例も増えています。内部通報の正当なルートで告発せずにSNSで投稿する場合、業務妨害や名誉毀損に発展する可能性もあるため注意が必要です。
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企業がSNSでコンプライアンス違反を拡散されるリスク
以降では、企業がコンプライアンス違反を拡散されるリスクについて解説します。
企業としての信頼を失う
企業のコンプライアンス違反がSNSで拡散された場合、株主やクライアント、従業員などのステークホルダーからの信頼を失う可能性が高くなります。ブランドイメージが損なわれると顧客離れが起き、新規顧客の獲得も難しくなるでしょう。取引先との関係も悪化し、ビジネスチャンスを逃す恐れがあります。
最悪の場合、一度のコンプライアンス違反で経営破綻に陥る可能性もあります。一度失った信用を取り戻すのは難しいため、コンプライアンス違反をしないよう厳重な意識が必要です。
売上・株価が低下する
企業イメージが下がって顧客離れが起きると、売上にも大きく影響します。コンプライアンス違反による影響が低下するまで新商品の販売は難しくなり、注文の減少や契約の解約なども起こり得ます。取引先や顧客の評判が落ちれば、長期的に売上を悪化させる恐れもあるでしょう。
また、SNSでコンプライアンス違反を拡散されると株価が暴落する可能性もあり、新たな資金調達も困難になるかもしれません。
文章・写真・動画として残り続ける
インターネット上の情報はデジタルタトゥーとして、半永久的に残り続けることになります。情報や投稿を削除しても、キャプチャーが拡散されるケースも多く、この場合、自分では容易に消すことができず、情報がアップされた時点では問題が大きくならなくても、あとから問題に火がつくこともあります。特に画像や動画はインパクトが大きく、長期的に影響を及ぼす恐れがあるので注意が必要です。
また、過去の投稿を削除すると隠ぺい行為とみなされ、かえって拡散につながってしまうケースもあります。
刑事罰が科せられる
法令違反をすると刑事事件となり、刑事罰が科せられる恐れがあります。刑事事件に発展した場合、社会的影響はより大きくなります。取引先や顧客が離れていき、業績が悪化するリスクは避けられません。たとえ、従業員の個人的なコンプライアンス違反であっても、企業自体も影響を受けます。企業自体に法的責任がない場合でも、同義的責任を指摘される可能性があります。
行政指導・行政処分・行政罰が科せられる
コンプライアンス違反をSNSで拡散されることで、行政指導や行政処分、最悪の場合には行政罰が科せられる恐れもあります。行政指導とは、行政機関が目的を達成するために企業や個人に協力を求めることで、法的な拘束力はありません。勧告や要請、指導、助言、指示などを行ない、内容に納得できない場合は必ずしも従う必要はないものです。
一方、行政処分は法的強制力を持ち、法律に基づき企業や個人の権利制限にかかわる処分が行われます。例えば、おとり広告によって実際には店舗で取り扱いのない商品を宣伝・集客し、別の商品を販売している飲食店があった場合、行政が実際に違反があったかを確認し、指導・勧告する行為が行政指導です。その後も業務改善が行われない場合には、営業停止などの行政処分が科される可能性があります。
行政罰は、行政上の義務違反に対する刑罰のことです。具体的な刑罰としては、科料や勾留、禁錮、懲役などがあり、場合によっては非常に重い刑罰を科せられます。指導や処分、行政罰を科せられると、消費者からの信頼を損ない業績悪化につながります。
使用者責任が問われる
コンプライアンス違反をすることで、企業の使用者責任が問われるケースもあります。民法715条では、従業員の不法行為により生じた第三者に対する損害に関して、企業が損害賠償責任を負わなければならないと定めています。たとえ企業に過失がなかったとしても、使用者責任が問われるのです。
例えば、従業員が個人のSNSで顧客の個人情報を漏洩した場合、たとえ過失であったとしても、従業員と企業のどちらも責任を問われることになります。
損害賠償が請求される
取引先や顧客の情報を漏洩した場合などは、損害賠償責任を負うことになります。情報を漏洩された被害者をはじめ、株主から取締役の任務懈怠責任(にんむけたいせきにん)を理由に損害賠償を請求されるケースもあります。取締役は従業員を監視・監督する義務を負っているため、「知らなかった」では済まされません。
従業員のSNS使用に関する規定や、体制・運用などについて不備があった場合は、第三者から損害賠償を請求されるリスクがあります。
人材の確保が難しくなる
コンプライアンス違反を起こすと社員の退職が増えるだけでなく、新入社員の応募にも影響を及ぼす恐れがあります。企業イメージが一度悪化すると、信用を取り戻すことは容易ではありません。長期に渡り人材の確保に苦労する恐れがあります。また、人材確保に関するコストが増加する恐れもあるでしょう。優秀な人材が確保できないと、よい商品・サービスが提供できず、従業員のモチベーションも低下してしまいます。その結果、業績も低下し、事業成長が困難になる可能性があります。
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企業に起こったコンプライアンス違反をSNSで拡散された事例
以降では、コンプライアンス違反がSNSで拡散された事例を5つ紹介します。
医療ベンチャーの事例
新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年、医療ベンチャーがコロナ治療薬を医療コンサルタント会社と共同開発すると発表しました。その後、メキシコの子会社が実施していた臨床試験に成功し、薬事認証も受けたと公表。100円台だった医療ベンチャーの株価は急騰したものの、その後発表した内容は虚偽であったと判明しました。
株価はその後急落し、SNSで同社の不祥事が次々と拡散されることになりました。2022年2月には、同社の株をインサイダー取引したとの容疑で建設会社社長ら3人を逮捕。また同社と共同した医療コンサルタント会社の取締役も逮捕されました。
大手企業が不正会計を行った事例
2015年、大手企業が幅広い分野で利益のかさ上げを行い、7年間における総額が2200億円超になったとのニュースが拡散されました。当時、経営者が部下へ厳しい売上目標を達成することを強制し、それらのプレッシャーに耐えられず、不正会計が行われたことが判明。経営トップらを含めた組織的な関与があった事例です。
この不祥事で会社が多額の損害を被ったとし、同社と株主が旧経営陣15人に対し損害賠償を求める裁判を起こしました。2023年には旧経営陣のうち5人に対し、総額3億円超の賠償を命じる判決が下されました。
飲料メーカーの事例
大手飲料メーカーが販売するメロン味のミックスジュースが、虚偽の表示をしていた問題がSNSで広く拡散されました。パッケージには「100%」の表示があったものの、実際にはメロン果汁はわずか2%程度で、ほかの果汁が多く使用されていた問題です。
消費者庁は同社に再発防止を求める措置命令を出しており、命令を受けて同社はパッケージを変更しました。またその後、消費者庁は景品表示法に違反したとして、同社に対し1915万円の課徴金を納付するよう命じました。
洋菓子による食中毒の事例
2023年に東京ビッグサイトで開催されたイベントで、腐敗したマフィンを販売したとの問題がSNSで広く拡散されました。マフィンを食べた数名が腹痛や下痢、嘔吐などの症状を訴え、食中毒が懸念された事例です。いずれも症状は軽くすぐに回復したものの、洋菓子店を非難する投稿が殺到し、X(旧Twitter)では「デスマフィン」というワードがトレンド入りするなど注目を集めました。
イベント当日はほかの菓子出店者の商品もすべて販売不可となり、多大な影響が及んでいます。保健所は店への立ち入り検査や症状を訴えた人の便検査などを実施しましたが、食中毒の原因となる菌は検出されなかったため、営業停止の行政処分は見送られました。
電車の中吊り広告の事例
電車の中吊り広告に掲げられた言葉が、多くの人に不快感を与えたとの批判が相次ぎ、取り止めになった事例です。中吊り広告に掲載された「私たちの目的は、お金を集めることじゃない」「毎月50万円もらって毎日生きがいのない生活を送るか、30万円だけど仕事に行くのが楽しみで仕方がないという生活と、どっちがいいか」などのメッセージを受け、「15~17万円で頑張っている人も多いのに」「バブル時代の話か」といったSNSへの投稿が相次ぎました。
企業の宣伝とも取れるメッセージに、押し付けがましさを感じた人も少なくなかったのかもしれません。
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SNSでコンプライアンス違反が拡散されないための対策
ちょっとしたことがきっかけで大問題に発展しやすいコンプライアンス違反ですが、事前の対策で予防することが可能です。ここでは、SNSでコンプライアンス違反が拡散されないための対策について解説します。
役員や新入社員を含む全社でコンプライアンス研修を実施する
コンプライアンス違反の対策として、コンプライアンス研修の実施が有効です。コンプライアンス研修とは、人としての倫理観や責任感、社会人としての規範などに対する従業員の意識を高めるための研修です。法令や社会的ルールを広く理解し、コンプライアンス違反を避けることを目的に実施されます。その内容は幅広く、個人情報保護法やSNS発信、ハラスメント、著作権など多岐に渡ります。コンプライアンス研修は以下の順序に沿って行われます。
- コンプライアンス意識の調査
- 研修内容の決定
- カリキュラムの決定、実施
- 再調査と効果測定
また、実際に起きたコンプライアンス違反の事例や、コンプライアンス違反クイズなども交えるとより理解を深められます。場所や時間にとらわれず繰り返し学べるeラーニングの活用もおすすめです。
SNSガイドラインを規定する
SNSガイドラインとは、従業員がSNSを利用する際のルールや指針を示した文書のことです。SNSガイドラインを設定することで、従業員の意識改革が期待できます。企業アカウントのみならず、個人アカウントに対するガイドラインを設けることも重要です。ガイドラインには、以下のような内容を盛り込みましょう。
- 基本方針
- 機密情報の保護
- 著作権や肖像権の保護
- 取引先や顧客情報の保護
- ステルスマーケティングの禁止
- 個人アカウントにおける責任の明確化など
ガイドラインを設けることで社外のステークホルダーにも企業の方針を説明することができ、またコンプライアンス研修の資料としても利用できます。ガイドラインは定期的に見直し、必要に応じて改訂することも大切です。
内部通報制度を整備する
SNSを利用し、組織の不祥事などを内部告発するケースもあります。SNSは個人で容易に利用できるうえ、拡散力もあります。やむをえず告発する場合であっても、なかには企業や顧客の重要な情報の流出につながるケースもあるため、企業としては避けたいところです。企業内部に問題がある場合は是正しなければなりませんが、必要以上に炎上する恐れもあるので注意が必要です。
社内向けにコンプライアンス違反を相談できる窓口を設けることで、そのようなリスクを軽減することができます。SNSで炎上する前に、社内で解決できる環境を整備しましょう。
ソーシャルリスニングを行う
ソーシャルリスニングとは、SNSやブログ、レビューサイト、掲示板などの情報を収集して分析し、企業のブランディングに活かすマーケティング手法です。SNS上のリスクをいち早く察知し、適切な対応をとることで被害を最小限に抑えられる可能性があります。SNSで自社に関連したキーワードを入力して口コミなどを検索し、問題となる投稿を探すことができます。
ただし、手作業で行うのは多くのリソースが必要となり、精度も低くなるため、ソーシャルリスニングを自動化できるツールの導入が有効です。
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ソーシャルリスニングとは|意味や分析方法の解説と導入事例を紹介!
SNSで拡散されたコンプライアンス違反の早期発見に寄与する「Buzz Finder」
SNSでの炎上回避に役立つツールをお探しの企業様には、炎上対策やVOC分析に役立つ「Buzz Finder」がおすすめです。Buzz FinderはX(旧Twitter)公式全量の投稿をほぼリアルタイムで収集して分析できるソーシャルリスニングツールです。炎上などによりツイートが急増した際にはアラートメールで通知します。ネット炎上への迅速な対応が可能で、顧客やメディアからの問い合わせへの事前対策を練ることも可能です。
また、前日のツイート量と主な話題をデイリートピックメールで通知するため、ツールにログインすることなく変化を把握できるのも強みです。SNS炎上対策だけでなく、さまざまなSNSユーザーの生の声を分析し、効果的に改善するのに役立ちます。
導入事例:情報通信サービス業 様
情報通信サービス業様はソーシャルリスニングツールを導入以前、以下のような課題・要望をお持ちでした。
- ネット炎上時のメディア対応に備えたい
- SNS上の顧客の声を自社のサービス改善に活かしたい
- 炎上やトラブルの入電影響を事前に把握したい
導入以後は、以下のような効果を実感されています。
- ツールの素早いリスク通知とレポートにより、迅速かつ的確なメディア対応・プレスリリースが可能になった
- 全社でSNS上の顧客の声を共有でき、改善意識が高まった
- 平時からSNSの反応を日報で定点把握でき、変化への対応力が向上した
SNSによるコンプライアンス違反の拡散防止には事前対策とツールの活用が有効
SNSによりコンプライアンス違反が拡散されると、企業の信頼を失う、優秀な人材の確保が難しくなるといったリスクがあり、最悪の場合、刑事罰が科せられるケースもあります。一度なくした信用を取り戻すのは容易ではないため、コンプライアンス研修の実施やガイドラインを整備するなどして、事前対策をしっかりと行いましょう。
まずはソーシャルリスニングツールを活用し、情報の収集・分析を行うことをおすすめします。多くの企業様に利用いただいているBuzz Finderを、SNSのコンプライアンス対策にお役立てください。
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