NPSベンチマーク調査2019、総合型旅行会社部門 で3年連続の第1位に輝いた株式会社ジャルパック。すでに高い顧客満足度を得ていた同社で、さらなる顧客満足を目指して導入されたのが「NPX Pro」でした。ここではその経緯と導入後の活用ぶりについて、巽氏、三上氏にうかがいました。
― はじめに、貴社の事業についてお聞かせいただけますか。
三上 : 当社は、日本航空を利用した旅行商品の企画運営・販売・管理を行っております。事業内容は主に「海外旅行事業」、「国内旅行事業」、「訪日事業」、「ツアーオペレーター事業」の4つで、このうち、海外旅行・国内旅行・訪日の3事業にNPX Pro を導入しています。
― 以前から顧客満足度(CS)調査を実施されていたそうですが、そこにNPSを採用するに至ったきっかけは何だったのでしょう。
巽 : 当社独自の顧客満足度アンケートでは、満足度が常に90%を超えている状態でした。満足度をさらに1%向上させるという目標は実効的ではないということで、日本航空で2017年度に導入したNPSの導入を検討することになったのです。
三上 : NPX Pro に決めたのは、アンケート調査を実施する上でのシステム上の使いやすさ、分析結果の可視化に優れていること、そして、相談に気軽に応じもらえるなどの支援体制が充実していることが大きかったですね。導入して1年、今これらの利点を実感しています。
回答結果を自在に集計できる機敏性、分析の切り口やポイントの絞り方など、導入当初に操作説明いただいた部分含め、「課題を把握しやすい」というのが私の印象です。以前ですと回答結果をエクセルファイルに落とし込んでからピボットを組み……と作業に手間と労力を要していたものが、NPX Pro ではいちど設定すればすぐに呼び起こせますから。
― 調査を実施してみて、どのようにお感じですか。
三上 : 従来の満足度調査は5段階評価でしたので、「評価4と5では何がどの程度異なるのか」、「評価5の中でどのくらいの位置づけにあるのか」までは突きとめることができませんでした。NPS調査で11段階まで評価の幅を拡げた結果、回答結果にばらつきが出て、良い評価をいただく一方で、課題も浮き彫りになりました。
自社の強み弱みという部分が浮き彫りになったのに加えて、NPSと他のデータの相関が見えるようになりました。具体的には、アクションドライバー機能で相関関係を四象限図として可視化できるようになったことも大きかったと思います。「どこから改善に取り組めばNPSが向上するのか」優先順位をつけられるようになりました。
巽 : これは社内の会議などでも手応えを感じていますね。四象限図というのはやはり理解してもらいやすいですし、納得感が大きいのではないでしょうか。
三上 : アンケート設問(調査票)の作成にあたっては、NTTコム オンラインのコンサルタントとの打ち合わせの中で「こんな設問も必要なのですか?」というやり取りもありました。しかし、アンケート調査が進むにつれて、NPSと相関が高く、無駄な質問が1つもないことがわかりました。今後、NPX Pro と調査結果をどう使いこなしていくか。NPSに基づく改善の取り組みがいよいよはじまります。
― NPS調査はどのような内容で行っているのですか。
三上 : 「JALパック」、「JMBツアー」、「JALダイナミックパッケージ」といった商品ごとに、7種類の調査票を設計し、集計運用しています。7種類共通の設問もあれば独自の設問もありますが、いずれもお客さまがご旅行される上での行動(カスタマージャーニー)に注目しています。具体的には、「旅前(出発前の手配など)、旅中(旅行中の観光、食事、宿泊施設など)、旅後(帰着後の当社の対応など)」に分類し、お客さまと当社の接点の評価を測っています。
旅行とは、お客さまがご自宅を出発されてから帰着されるまでの一連の行動ですから、例えば旅行前の準備、旅行中の観光といった要素それぞれで、お客さまにどれだけご満足いただけたのかを測るのが重要だと思います。
巽 : 初期の調査結果は私たちにとって大変驚きでした。従来の満足度調査で「旅行全体に強みがある」と思っていましたが、実際には「旅行前に弱みがある」ことがわかったのです。接点ごとに課題があることもわかってきましたので、旅行前の弱みを改善するために、今後深堀を進めていくことになると思います。
三上 : その課題が可視化されただけでも、私たちにとってはかなりの前進です。例えば海外旅行の場合、方面別、国別に集計してみると、方面全体のスコアは高くても、ある国のスコアは低い、といったことが見えてくる。従来は分析結果を出すのに1日がかりでしたが、NPX Pro を使えばすぐに集計可能であるため、ものごとの見当をつけるのにも役に立っていますね。
― 90%以上のお客さまが満足なさっている品質レベルを一層高めるために、あえて厳しい方へ挑んだわけですね。NPS調査は顧客サービス部が取りまとめていらっしゃるのですか。
三上 : 私たちはあくまでNPS調査を推進する立場です。データを分析したり改善活動を実施するのは、旅行商品に携わっている社員一人一人です。
巽 : ただ、現在はまだNPX Pro を社内に定着させていく段階です。例えば、私たちは毎月2回NPSならびにNPX Pro について社内講習会を開催しています。
「使いなさい」というのではなく、NPX Pro に触れる機会を作って、この良さを理解してくれる社員を増やしたい。ですから参加は任意ですし、社員がどこにいても出席できるようWeb会議システムでも参加できるよう開催設定しています。
― 定着のためにそこまで熱心に取り組まれるケースは稀かと思います。素晴らしいですね。
三上 : 他部署の取り組みとしては、お客さま相談室では、すべての回答結果をチェックしています。関連部署に情報共有したい回答結果があれば、NPX Pro の機能を活用して、画面コピーの上、メールで周知したりしています。この取り組みにより、関連部署の全員が、NPX Pro を参照せずとも、お客さまから寄せられた大切な回答結果を把握することができます。
巽 : ゆくゆくは、お客さま相談室が回答共有した時点で、関連部署が「すでに回答結果をチェックして、お客さま対応や改善に向けた取り組みを進めています」という体制になってほしい。お客さまからいただいた大切なご意見に担当者が直接回答するのが将来の理想像であると、三上とよく話しています。
そういえば、NPS調査でお客さまに「ご意見・ご要望」として自由にコメントをいただいているのですが、私たちが前日にいただいたコメントを翌朝に確認し、その中で、特に気になった「お客さまの声」を選りすぐり、全社員にメールで共有するといった取り組みも行っています。
三上 : ただ、あくまでお客さまの声を紹介・共有しているもので、すぐに改善を要望するための取り組みではありません。
巽 : そうですね。例えばハワイ方面の商品に関するお客さまの声を沖縄方面の担当部署が知る機会は今までほとんどありませんでした。担当外の商品にお寄せいただく声を知る仕組みを創ったことも、当社にとっては一歩前進です。NPX Pro 導入以前からの取り組みではありますが、NPX Pro 導入によりその業務を簡素化することができました。
三上 : お客さまの声の共有をきっかけに、時には社長や役員からも問い合わせが入り、社内のコミュニケーションが活発になりました。社員がお客さまの声の大切さを意識する機会に発展しました。
― 仕組みを仕掛けるお2人のマインドも素晴らしいし、それを社員の皆さんも受け止められて、自由に意見も言う、というコミュニケーションの中にNPX Proが携わっているのはとても光栄です。その社風があってこそ、NPX Proも活かしていただけているのではないかと。
― 今後のNPS活用について、お聞かせいただけますか。
三上 : NPSの活用はまだはじまっておらず、この1年でようやく準備が整ったと思っています。
巽 : 1年分の回答結果がようやく蓄積されたため、前年との比較ができるようになりました。NPSスコアの伸び悩むところがあれば、原因を見つけて改善につなげていく。そういった意味では、これからの方が改善効果がNPSスコアやNPX Pro に反映されるため回答結果が楽しみですね。
三上 : 今後、各部門が調査結果を分析する機会が増えていけば、私たちが「なぜこういう結果になったのか?」と問い合わせを受ける機会も増えるでしょう。そこで、私たちも適切に答えられるようNPSやNPX Pro についての知識や技術を身に着けていかなければいけない。また、社員一人一人が切磋琢磨して迅速かつ真摯に改善活動に取り組むことができるよう、社内の運用自体を見直す必要があると感じています。
もっと言えば、自身の業務分野にとらわれず、他の部門の強みや弱みを理解した上で、改善活動を進める上でのヒントをつかんでもらいたい。そのきっかけを私たちが作れるようになりたいですね。
― NPX Proの可能性をさらに広げていただくという意味でも、今後の展開を楽しみにしております。本日はありがとうございました。
※ 記載内容は2020年1月現在のものとなります。