NTTコミュニケーションズ株式会社

より多くの「推奨者」獲得に向けてVOC調査を変革

NTTコミュニケーションズでは、今年度からVOC調査の手法が大きく変わりました。顧客ロイヤルティを測る「NPS®(Net Promoter Score)」という指標や、サービス提供・保守完了などの直後に行う「トランザクショナル調査」を導入し、セールス、サービス、オペレーション各分野の改善に役立てています。

NTTコミュニケーションズ株式会社
経営企画部 オペレーション戦略部門 主査 松田裕治氏、山本恭哉氏、中嶋正裕氏
クラウドサービス部 企画部門 主査 有賀真由美氏

ゴールは「顧客ロイヤルティを上げて収益・利益アップにつなげる」こと

― なぜVOCの調査方法を変えたのですか?

従来のVOC調査は国内のお客さまを対象に、アンケート・分析・改善というサイクルに1年という期間をかけ、不満解消に注力する取り組みでした。もちろん、改善は進んでいるのですが、大きく3つの課題感がありました。1つ目は、市場の変化に対し、年1回の調査ではスピードが足りない。2つ目は、厳しい競争の中で、不満の解消だけではお客さまに選び続けていただけない。
3つ目は、国内のみの活動に留まっており、海外のお客さまの声を生かしていく仕組みがない点です。

こうした課題の解決に向けて、2年前から試験的に導入したのがNPS®ソリューションです。NPS®は顧客ロイヤルティを測るグローバルスタンダードな指標であり、収益との相関が高いといわれています。取り組みとしては、お客さまを推奨者/中立者/批判者に分け、弱みの解消により批判者を減らすだけでなく、強みを磨いて推奨者を増やしていきます。推奨者は継続して契約してくださるとともに、多くの追加購買をしてくれます。そのため、企業の収益増に効いてきます。(経営企画部 オペレーション戦略部門 主査 松田裕治氏)

NPSは、欧米の大企業の3分の1以上が利用し、IR(InvestorRelations)情報にNPSの数値を入れるほど一般的になりつつあります。このコンセプトを共同開発した3社のうちの1社が米国のサトメトリックス社です。NTTコム オンラインは同社と日本国内における独占契約を締結して、NPSソリューション(NPSクラウド)を提供しています。(NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション リサーチ&CRM本部 担当部長 熊谷賢一)
NPSを導入するにあたっては、まず、2014年度から個人向け、法人向けサービスのそれぞれ1サービスでトライアルを開始しました。当初、日本人は中間の5点や6点をつける傾向があるので、あまり推奨者はいないのではないか、本当に日本企業に向くのか、といった懸念がありました。しかし、「良いサービス」と明確に評価してくれる方は意外と多く、また、トライアル中に懸念点をつぶしていくうちにマーケティングに役立つ手応えを感じ、2015年度から全サービスの調査をNPSに切り替えました。NPSは日本でも広がりつつあります。すでに大手の飲料会社や、自動車会社でも利用されているそうです。
NTTコム オンラインのNPSクラウドではアンケートの集計・分析が自動で“見える化”できます。何がお客さまのロイヤルティ向上に効くかが分かります。サービスの強み/弱みも分かります。今までは、一律の基準でお客さまが不満に感じていることを全て「課題」として設定し対処する“絨毯爆撃型”でした。今年度は、各サービスがロイヤルティを高めるために、何に力を入れ、何を割り切るかを選択してもらう方式に変えました。そして、VOC調査のゴールを単なる不満の解消ではなく、「顧客ロイヤルティを高め収益・利益アップにつなげる」ことへと明確化しました。(松田氏)

― 調査結果を見ますと、NPSの値はマイナスばかりです。この数字をどう見ればいいのでしょうか?

マイナスの数値に皆さんは一様に戸惑われます。NPSは、10点中6点以下をマイナスの値としてカウントしますので、どうしてもマイナスになりがちです。実際、いろいろな業界で調査をしたところ、ほとんどがマイナスで、ISP数社の平均は-54でした。数値の見方としては、絶対値にはあまり意味がなく、他社比較や経年比較をして相対的に評価する必要がありま す。例えば、あるサービスの数値が年々上がっていけば改善が着実に進んでいると判断できます。(NTTコム オンライン 熊谷)
年1回のVOC調査とあわせて今年度から実施しているのが、開通やお問い合せなどお客さま接点を契機とした「トランザクショナル調査」です。今の世の中の変化の激しさからすると、年1回のVOC調査ではスピード感が足りないという課題がありましたが、かと言って大々的な調査を年に何回もやるのは現実的ではありません。
そこで、トランザクショナル調査を数多く実施してタイムリーにお客さまの声を聞くことで、スピーディーな改善活動につなげようとしています。お客さま接点の直後に実施することで、回答していただけるお客さまも多く、コメントもかなり具体的な改善ポイントについて回答いただけます。(経営企画部 オペレーション戦略部門 主査 山本恭哉氏)

NPS調査とお客さま訪問を組み合わせてお客さまの声を深掘り

― クラウドサービス部ではお客さまの声を活用するために独自の活動をされているとお聞きしましたが、どのような取り組みをされていますか?

VOC調査の結果を受けて、クラウドサービス部では独自にお客さまへヒアリングを実施しています。VOC調査のアンケートでもコメント欄はあるのですが、抽象的なコメントになりがちで、お客さまが本当に求めていることがわかりません。そこで、当部の社員が直接お客さまを訪ねて詳しくお聞きしています。
例えば、「マニュアルが使いづらい」というコメントがあれば、どの部分かを画面をみながら直接ご指摘いただいたり、「遅い」というコメントがあれば、どの動作が遅いのか詳細をお聞きしています。そうしていただいたたくさんの具体的なご要望を糧(かて)に、サービス全体を良くするためには、何を優先的に改善していけばよいかを議論し、実際に改善しています。
サービスを提供する側にいると気付かない課題や目が届かないところを、お客さまの力をお借りして拾っており、普段の改善活動以上に重要だと位置付けています。NPSでひろったキーワードを元に、いかにお客さまとのコミュニケーションを深められるかがこの活動のポイントです。
もう一つ、アンケート受領後すぐにフォローできるスピード感も重要です。この部分はNPSソリューションをもっと活用することで改善できないか検討しています。(クラウドサービス部 企画部門 主査 有賀真由美氏)

1回のアンケートだけで全てを把握することはできないので、有賀さんが話されたようなアプローチは理想的です。従来のVOC調査のように細かく膨大な設問数になると答えるほうは疲れてしまって、逆にロイヤルティを下げることになってしまいます。そのため、アンケートの設問数は必要最低限に留め、評価の背景にある想いや具体的なエピソードなどはその後のお客さまとのコミュニケーションを通じて明らかにしていくことをお勧めします。(NTTコム オンライン 熊谷)

こういった調査の結果はお客さま訪問のきっかけにも利用できると思いますので、営業の担当者も次のアクションにつなげるツールとして使えるよう検討を進めています。(山本氏)

― 海外でもNPSの利用は進んでいるのでしょうか?

全社施策としてのVOCのグローバル対応は2014年度から始まりましたが、NPSを採用したのは国内同様2015年度からです。グローバルでVOCを実施してみて分かったのですが、回答率が国内に比べ低い状況です。そもそもアンケートの開封率が低く、実施にまで至っていないといった状況や、回答している途中でドロップアウトしてしまうお客さまもいることが見えてきました。これらは次年度に向けて改善していくべき部分だと考えています。
グローバル強化策の一環として、2016年度はNPSの利用をさらに活発化していく方針です。そのためにも、アンケート開封率アップの工夫や、開いた後のデザインの見やすさ、適度な設問数など、グローバルで受け入れられる、ユーザー目線で見たアンケートの答えやすさを追求していきたいと思います。
今回参画した海外子会社の中の1社は、NPSのスコア自体を今後のマネジメント層の評価指標にし、社を挙げて顧客ロイヤルティの向上に取り組んでいくと聞いています。こうした積極的な取り組みが他の海外子会社にも影響し、グローバル全体でVOC活動がさらに開花していけばと思います。(経営企画部 オペレーション戦略部門 主査 中嶋正裕氏)

「全社一丸となってVOC活動を推進していきたい!

― 今後の展開についてお聞かせください。

現状のユーザー調査では、例えば失注したお客さまやサービスを解約したお客さまの声は集められていません。営業組織やコールセンターなど各部の取り組みとも連携して相互に補完し合いながら、「お客さまの声」を業務に生かす取り組みを拡大していければと思います。トランザクショナル調査も手軽にお客さまの声を収集できる仕組みになっていますので、今回の取り組みを社内に発信することで利用を拡大していければと思います。そうした連携、あるいは情報交換の場として、社内SNSでVOCのグループを作りました。他社事例など参考になる情報等の発信を通じて、社員にVOC活動に興味をもっていただけるよう活動しています。(山本氏)

VOC活動は全組織が一丸となって取り組んでいるものです。今も、サービス、セールス、オペレーションの各組織からメンバーが集まって、2~3カ月に一度、VOC連絡会を開いて方針や施策などを決めています。これからも全社一丸になってVOC活動を活発に推進していきたいと思います。(松田氏)

まとめ

課題

  • 従来の年1回のVOC調査では、市場の変化に対しスピードが足りない
  • 厳しい競争の中で、不満の解消だけではお客さまに選び続けていただけない
  • 従来の調査は国内のみの活動にとどまっており、海外のお客さまの声を生かしていく仕組みがない

導入の効果

  • アンケートの集計・分析の結果が、NTTコム オンラインのNPSクラウドで自動的に可視化され、改善活動のスピードが向上した
  • 調査結果に応じた改善活動のゴールを、単なる不満の解消ではなく、「顧客ロイヤルティを高めて収益・利益アップにつなげること」に設定し、お客様の声を生かす取り組みを全社的に推進できた

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