NTTコミュニケーションズ株式会社

NPX Pro によるNPS調査が組織を越えた連携を生み、一丸となって改善に取り組むきっかけに

デジタルトランスフォーメーション実現に貢献し、ICT活用による経営課題の解決やスマートな社会の実現に取り組むNTTコミュニケーションズ株式会社。社内で、お客さまの声を聞くことに加え、自社サービスに対する社員の意見や改善要望を集め、組織を越えた連携を実現させるために活用されたのが「NPX Pro」でした。ここではその経緯と導入後の活用ぶりについて、伴野さん、橋田さんにうかがいました。

NTTコミュニケーションズ株式会社
ビジネスソリューション本部 事業推進部門 伴野 美保子さん
プラットフォームサービス本部 アプリケーションサービス部門 橋田 理佳さん

セールススタッフの生の声をサービス開発担当へ届け、組織を越えた競争力強化を実現

― 伴野さんはビジネスソリューション本部所属とのことですが、事業内容ならびに担当業務について聞かせてください。

伴野 : ビジネスソリューション本部はセールス組織でして、その中で私の所属する事業推進部門はセールス組織に新たに創設された部門で、組織内および組織間の連携を推進する業務をミッションとしています。本部内でも業界別に分かれたアカウント組織がありまして、それらの共通業務の一元化や、組織間の情報の橋渡しを実施しております。中でも私は、お客さま要望の深掘りや日々の現場から上がる課題、それらの改善要望をとりまとめ、サービス組織へ共有することで、サービス競争力を上げ、よりお客さまに高付加価値を提供するソリューション提供につなげるための施策を打つことがミッションになっています。

― NPX Proを導入するに至ったきっかけは何だったのでしょう。

伴野 : 社内で「サービス競争力強化施策」と呼んでいるのですが、追加開発やサービス改善に向けた好循環をつくる最初の一歩として、「全セールスの声をサービス側へ伝えていく」というミッションを持ったことですね。そのために、VOS(Voice of Sales)という社内アンケートを立ち上げることにしました。
日々の営業でいただくお客さまの声もですが、より率直な意見を持つセールススタッフの声は、サービスや会社の現状把握、また成長につなげる指針として非常に大切です。日々の営業業務もある中で、業務負担を少なく効果的に意見を集められるツールであること、収集した意見を適切に分析するためのデータが蓄積できること、全社での共通認識として扱うレポートとして可視化が容易であること、等を考えてNTTコム オンラインのNPX Proを導入した形です。

こうした施策ではお客さまの声を直接聞くVOC(Voice of Customer)がよく知られていますし、VOSにも類似したところはあるのですが、実は大きな違いがあります。

VOCにお寄せいただくのは、すでにご契約のあるお客さまが中心です。しかしセールススタッフの声であるVOSでは、それ以外の領域、例えば失注したケース、あるいは、現在ご契約に至ってなくてもお客さまの要望をタイムリーに伝える等、現場の生の声についてを収集することができるのです。
弊社では7年前からVOCを収集し、扱い慣れているNPX ProをVOS収集にも活用すれば、導入がスムーズなことに加え、VOCとVOSのデータを相互連携させるといったこともできます。こういった点も、選定の決め手になりました。

顧客満足だけでなく「売りやすさ」もセールスを伸ばすための改善ポイントに

― NPS調査はどのような内容で行われているのですか。

伴野 : 新たにセールススタッフ向けのアンケートサイトVOS(Voice of Sales)を立ち上げまして、NPX Proで、サービスを定量評価する10項目の評点を取りました。昨年第1回を終え、本年第2回を実施するべく準備していますが、経年によってその点数がどのように推移していくかを注視していくことにしています。集計データはBIツールのTableauも用いましたが、改善点のピックアップや失注原因の分析といったところにはNPX Proから収集したデータを活用しています。

― VOS収集でどのような成果が見られましたか。

伴野 : VOCによるお客さまのご意見では、「価格」や「納期」、「保守、運用」といった指標があるわけですが、私たちの実施したVOSでは、セールススタッフの立場からの「売りやすさ」といった指標での評価も見えてきました。例えば「社内での販売支援体制は十分か」、「事務処理は煩雑でないか」といった、お客さまからは見えないけれども、結果的に「セールス意欲」にも結びつくであろうというポイントですね。そういった新たな改善ポイントを吸い上げることができたのは、ひとつの成果だったと思っています。
また、追加開発要望や課題もかなりの数が見つかりました。直ちに対応できるものばかりではありませんが、必要性や効果をサービス・セールス両者で確認し、擦り合わせる、といったことを経て、改善へ動き出しているものも多々あります。この年度末には、どれくらい改善できたかを可視化することで、VOSで上げた要望の声がきちんと活かされ、セールススタッフのモチベーションアップにも導いていければ、と考えているところです。
まだまだPDCAを回している最中で試行錯誤なところが多いですが、NPX Proによる情報の収集とレポートの作成のみに終わることなく、サービス競争力の向上につなげる施策まで全社一丸となって取り組んでいきたいと考えております。

― 今後のNPS活用について、お聞かせいただけますか。

伴野 : 先ほど少しお話した「VOS とVOCの相関分析」を進めつつありますので、セールススタッフの好印象点とお客様からお褒めの言葉をいただいている点等の分析結果を受け、成功事例集などを作成し、セールス組織で共有したりするような仕組みを作りたいですね。その他、「お客さまの声による評価は高いが、セールスからの評価が低い」要素や、あるいは逆のパターンにおける“ギャップ”の原因は何なのか、ギャップを埋めるためには、何をすべきなのか、それを実現すればどのくらい収益に貢献できるのか……といったことを確かめるツールとして、サービス側へもフィードバックし、全社一丸となってサービスを磨いていきたいと考えています。

非対面セールスでも「お客さまのことを知る」ために、NPS調査でダイレクトな声を聞く

― 橋田さんは別のセクションでNPSを活用されているそうですが、事業内容ならびに担当業務について聞かせてください。

橋田 : 私はアプリケーションサービス部門、先に伴野がお話した「セールス」と「サービス」の、サービス側に所属しています。VOSを反映していく方の立場ですね。担当しているサービスは法人向けのオンラインストレージ「Bizストレージ ファイルシェア 」といいまして、お客さまが利用されている期間、月額料金をいただくサブスクリプション型のSaaSサービスです。

― NPX Proを活用するきっかけは何だったのでしょう。

橋田 : きっかけをお話する上で、「Bizストレージ ファイルシェア 」の特徴が関わってくるので、少しお話しさせていただきます。「Bizストレージ ファイルシェア 」は、従来多かった「セールススタッフがお客さまを訪問して売り歩く」手法ではなく、プロモーションや営業活動のほとんどを非対面、もしくは Web上で行っています。
対面の機会がないと、お客さまがどのような課題を持ってサービスを探しているのか、どのように活用したいのか、選定において重視される点は何か、といった要素が見えづらく、サービスやプロモーションの方向性が提供元である我々の主観に片寄りがちなのです。例えば、お客さまが抱く不明点が把握できず、その結果負担をかけてしまう。場合によっては契約を逃す、解約に至るといった可能性もあります。
そこで、BoxやSalesforceが先行して成功させている「お客さまのことをもっと知ろう、お客さまの成功を最も重視して動こう」というCSM(Customer Success Manager)活動を取り入れ、その手段の一つとしてNPSを導入したのです。
ちなみに、ここでいう「Success」は、例えばオンラインストレージなら「Eメールへの添付ファイルを廃止し、オンラインストレージに置き換えたことで、マルウェア感染などのセキュリティインシデントが減り、結果、本来業務の生産性があがった」、「DVDなど物理媒体でのデータ受け渡しを廃止し、オンラインストレージに置き換えたことで、テレワーク環境が整備されるとともに、販路も広がった」といったこと、つまりお客さまの課題を解決することですね。

― NPS調査はどのような内容で行われているのですか。

橋田 : 現在、2通りの調査を行っています。ひとつは2016年から 2~3年に1度といったタイミングで実施している「契約中のお客さまを対象としたWebアンケート」です。そこでは「どういった使い方をしているか」、「ご不満点・改善要望」、「良いと思う点」などをうかがっています。

もうひとつは2017年から随時実施している「無料トライアル中のWebアンケート」です。ご契約前のタイミングで立ち上がりの支援をしていく、そこでできるだけ早くお客さまのご不明点を解決することを、CSM活動のひとつとしています。

Eメールを利用して、例えばトライアル3日目のお客さまには「3分でわかる便利な使い方ご案内」、10日目のお客さまには「他社の導入事例」をお送りするといった、いわゆるテックタッチの中に、NPS調査も組み込みます。
トライアルしていただく企業さまは月に100社~200社にもなりますので、法人コンタクトセンターだけで1対1のご説明やヒアリングを実施するのは難しいのです。そこでメールでのテックタッチを始めたのですが、その評価もまた難しいところがあります。「メールの開封率」、「メールからの反応」など、お客さまの行動履歴を追っていく手法が一般的ですが、それではお客さまの状況を類推するしかないのです。NPS調査であればよりダイレクトに「お客さまはどのような状況で、どう感じている」という生の声をヒアリングできます。

定性データもテキストマイニングによって、スピーディーに共通理解を深める要素に

― それぞれのNPS調査ではどのような成果が見られましたか。

橋田 : 「契約中のお客さまを対象としたWebアンケート」では、お客さまから具体的な改善要望をいただくので、そこが次のサービス機能改善の出発点となっています。例えば、弊社にお客さまが最も期待しているのは「セキュリティ」だということ、また「ログインセキュリティを高めたい」というご要望が多いことがわかったので、今年度は多要素認証を開発し、ログインセキュリティの強化に優先して取り組みました。こうした優先度がはっきりする点はこの調査ならではのメリットですね。
また、新規のお客さまへ向けたプロモーションとして、お客さまの声から得た事例をWebサイトに掲載 しています。

「無料トライアル中のWebアンケート」もサービス改善の重要な資料になっています。失注理由がわかることもありますし、最近行った設問見直しでは「現在のオン・ボーディング支援はわかりやすいか」といった質問も加えて、活動の振り返りに役立てています。
お客さまも、自由記入の設問は本当に正直に書いていただけていて、1つ1つ読むことからも気づきがあるのですが、NTTコム オンラインの協力でテキストマイニングをしたところ、一歩進んだデータ活用につながりました。1つ1つ読むだけではなかなかつかめない「回答全体の大まかな方向性」を見たり、「カテゴリ分け」をしたり、さまざまな観点・角度から分析できます。そもそも稼働的にチームメンバー全員がすべての回答を読む時間が取れない中で、メンバーの共通理解として「お客さまが求めてらっしゃるもの」が一目でわかる。つまり、PDCAのサイクルもより短くできるわけで、テキストマイニングの力に気づかされましたね。

― まさに「お客さまを知る」ことにつながったわけですね。

橋田 : はい。それについては、データを見るだけでなく、その後も徹底的にやりました。
私は「Bizストレージ ファイルシェア」のサービス企画担当ですけれども、このサービスひとつをとっても、セールス部門、法人コンタクトセンター、ヘルプデスク、デジタルマーケティング部門、オーダー部門……と、組織をまたがって多くの担当者がいます。ただ、お客さまから見れば「NTTコミュニケーションズ」というひとつの会社であって、組織が違うなんて関係のないことです。
そこで、各サービスで「横断的にカスタマーサクセスを考えよう」というプロジェクトが立ち上がり、評価指標や施策とその進め方などをディスカッションしながら、各サービスに合った取り組みを実践しています。
私たちは「関連部署が集まって、1人のお客さまのカスタマージャーニーマップを描く」という取り組みを実施しました。自分の担当が終わったタイミング、つまり引き継ぎ後の担当へ移った際に、お客さまはどう感じてらっしゃるのか、自分から引き継いだ以降のお客さまの抱えた問題点はどういうものなのか、といったことを、組織の垣根を越えてディスカッションしました。まず組織で共有して作り上げるプロセスに意義があり、一丸となって取り組めます。

― 今後のNPS活用について、聞かせていただけますか。

橋田 : お客さまのことを知りたい、お客さまの成功をご支援したい。これを自分の担当分野だけでなく、組織を越えた仲間との共通理解とし、共に取り組んでいくことですね。

― DXが進み、コミュニケーションの形も変容していく中で、VOSやCSMに成長のヒントを見出したことはとても貴重だと感じます。今後もぜひ、皆さまの声を届けあうための一助となれれば幸いです。本日はありがとうございました。

まとめ

課題

  • セールス組織とサービス組織は組織内の細かいユニット単位での連携しか行われておらず、全体を一体化させるために「すべてのセールスの声をサービスへ届ける」必要があった
  • 非対面でのプロモーションや営業手法では、お客さまの抱える課題や重視するポイントなどが見えにくく、お客さまの立場でのサービス開発やセールス戦略の立案が難しい

導入の効果

  • NPX Proによりお客さまに接するセールススタッフの声を拾い上げることで、お客さまの満足度だけでなく、失注原因や社内におけるセールス関連の課題など、より幅広い視点でのポイントを洗い出せた。部署を越えた改善の動きも活発化している
  • お客さまの生の声を吸い上げられただけでなく、データマイニングによるより明確な「お客さまに関する共通理解」が進んだ。組織横断的にお客さまのことを考えるプロジェクトも立ち上がり、共に取り組む機運が高まっている

※ 記載内容は2021年4月現在のものとなります。