電力会社におけるブランドロイヤルティ分析レポート
【ブランド認知浸透度分析編】
~純粋想起・助成想起ともに東京ガスが高い~
~純粋想起・助成想起ともに東京ガスが高い~
NTTコム オンラインが実施した「NPSベンチマーク調査 電力部門」の電力会社を中心とした新電力9社を対象に、純粋想起率や助成想起率、パーチェスファネルを用いたブランド認知浸透に関する分析の内容をレポートします。
ブランド認知浸透度を分析することにより、自社の認知度向上や新規顧客獲得に向けた戦略立案が可能となります。
2016年の電力自由化以降に新規に電力会社を契約した、もしくは契約プランを変更した人において、新電力に契約率を調査したところ、新電力の契約者の割合は全体の48.7%となりました。また、一般電気事業者の電力供給エリアごとに分析したところ、最も新電力の割合が高くなったのは、東京電力エナジーパートナーの電力供給エリアとなり63.7%、次いで関西電力の電力供給エリアで53.2%、北海道電力の電力供給エリアで47.6%と続きました。大都市圏を中心とした電力供給エリアにおいては、新電力契約者の割合が高くなりました。
図:一般電気事業者の電力供給エリア別に見た、新電力の契約者割合
新電力のブランド認知度を分析するにあたり、ブランド認知を測る指標である「純粋想起」と「助成想起」について調査を行いました。純粋想起とはヒントなしにブランドを思い出すことをいい、自由回答形式で聴取します。純粋想起の中でも、1番最初に思い出されるブランドを「トップ・オブ・マインド」と呼びます。一方で助成想起とは、ブランド名を提示した上で知っているものを選択形式で聴取します。
本調査では新電力が電力を供給するエリアの居住者それぞれに対し、電力会社といえばどの会社を思い出すかという質問をし、新電力について思い出した順に5つまで自由に回答を得ました。その結果、1番目に思い出したトップ・オブ・マインド率は、対象9社平均で4.8%となりました。トップは東京ガス(11.3%)、次いでENEOSでんき(6.3%)、東邦ガス(5.7%)が続きました。
また、5番目までに思い出した純粋想起率の平均は6.8%にとどまりました。一般電気事業者の純粋想起率の平均87.3%と比較しても低い結果となり、新電力においては認知率の観点でさらなる向上の余地がみられました。企業別では東京ガス(14.2%)、ENEOSでんき(9.3%)、auでんき(8.2%)が続きました。
図:新電力の純粋想起率
※各新電力がサービス提供するエリアの居住者を対象として、各新電力の認知率を分析(括弧内は対象者数)
さらに、対象の9社の電力会社を列挙した上で、知っている電力会社(助成想起)を調査したところ、助成想起率の平均は60.2%となりました。トップは東京ガス(87.3%)、次いで東邦ガス(72.7%)、ENEOSでんき(67.7%)が続きました。
図:新電力の助成想起率
※各新電力がサービス提供するエリアの居住者を対象として、各新電力の認知率を分析(括弧内は対象者数)
純粋想起率と助成想起率をもとに、各企業をポジショニングしたところ、助成想起も純粋想起も高い「リーダー」に位置するのは東京ガスをはじめとする4社となりました。また、純粋想起は高いが助成想起が低い「ニッチ」は1社が該当しました。
純粋想起も助成想起も低い「マイノリティ」に位置するのは4社となりました。自社が「マイノリティ」に位置する場合は、ブランドの認知度が低いため、まずは助成想起をいかに高めるかが課題になります。一方で「レガシー」に位置する場合は、ブランドが市場に浸透しているものの、消費者に強い印象を残せていない状況にあります。このように、純粋想起と助成想起に基づき、自社のポジションを把握することで、認知度向上に向けた戦略立案に役立てることが可能となります。
図:純粋想起・助成想起マトリクス
新電力の契約プロセスを把握することを目的に、消費者の行動を「認知」、「探索」、「検討」、「契約経験」、「現在契約」に区分しパーチェスファネル分析を行いました。パーチェスファネル分析とは、消費者の購買・契約行動プロセスをろうとに見立てて、認知や探索、検討などのフェーズごとの消費者の脱落状況を特定する分析手法です。どのフェーズにおいて課題があるかを把握することで、最終的な購買・契約獲得に向けて施策を検討することに役立ちます。
図:パーチェスファネル分析に基づく施策の検討例
対象9社の全体では「認知→探索」フェーズにおいて離脱率が最も高くなりました。最終的な契約獲得に向けて興味換起策の検討やSEO対策といった、「探索」フェーズにおける脱落を防止するための施策がポイントであることがうかがえる結果となりました。
また、認知度上位企業においては、「認知」「探索」「検討」「契約経験」「現在契約」のいずれのフェーズにおいても業界全体より脱落率が低く、現在契約までつながっていることがわかりました。
図:新電力におけるパーチェスファネル分析
一方で認知度の向上に余地がある企業においては課題となるフェーズの違いもみられ、新電力G社では認知での脱落が低い一方でそれ以外のフェーズの脱落は低く「消費者→認知」において課題がみられたほか、新電力H社は探索での脱落が低いものの、ほかのフェーズでの脱落が高いといった傾向がみられました。
図:対象企業におけるパーチェスファネル分析のレーダーチャート
※スコアは偏差値であり50が業界平均となる
分析対象企業(アルファベット順、50音順):auでんき、ENEOSでんき、J:COMでんき、Looopでんき、大阪ガス、ソフトバンクでんき、東京ガス、東邦ガス、楽天でんき
※新電力がサービス提供するエリアの居住者を対象者として、各新電力の認知浸透度を分析した
Net Promoter®およびNPS®、Predictive NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズ(現NICE Systems,Inc)の登録商標です。
また、eNPSは、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズ(現NICE Systems,Inc)の役務商標です。