2019/02/05

【NPSトップ企業に聞く顧客ロイヤルティ向上の秘訣2018】

転職エージェント部門 第1位 リクルートエージェント(株式会社リクルートキャリア)様
~時間がかかっても事業にとって必ずプラスになる。強い決意でNPSを企業文化に~

NPSベンチマーク調査2018、転職エージェント部門で第1位に輝いたリクルートエージェント。転職エージェント業界で圧倒的なシェアを誇る同社ならではのNPS導入の経緯と、NPS浸透や社内文化の醸成のための取り組み、NPSの活用方法について、お伺いしました。

幅広いお客さまにNPS調査を実施し、データに基づいた改善活動を実現

― 今回のNPSベンチマーク調査において、転職エージェント部門で株式会社リクルートキャリアが1位を獲得されました。誠におめでとうございます。まずは、御社の事業について、お聞かせいただければと思います。

(左)株式会社リクルートキャリア エージェント事業本部 本部長 執行役員 佐藤 学 様
(右)NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社 代表取締役社長 塚本 良江

(以下敬称略)

佐藤 : 当社には2つ主要事業がありまして、リクルートの創業事業でもあるメディア事業と、転職や採用のお手伝いを、人の手を介して行うエージェント事業となっております。メディア事業では、リクナビやリクナビNEXTといったサービスを提供しています。エージェント事業では、年間約4万人のお客さまの転職をお手伝いしており、日本最大の転職エージェントとして、全国、全業種、ほぼ全職種を対象としたサービスを提供しております。

― 転職エージェント業界においてはまさにリーディングカンパニーでいらっしゃるわけですね。お客さまのロイヤルティマネジメントというのは、どのように位置づけていらっしゃいますか。

佐藤 : 私たちのビジネスモデルでは、直接売上につながるお客さまとして、企業さまがいらっしゃいます。また、転職にあたり相談にいらっしゃる個人の方も、お客さまとして考えています。少し前まではエージェントとして転職案件を持っていること自体がサービスの優位性だったのですが、今はむしろ、「キャリアが描けない」、「迷っている」といったご相談にのっていく、ソリューションサービスが本質になっています。転職自体はそう頻繁にリピートするものではありませんが、評判は口コミで広がっていきますので、サービスにご満足いただき、ロイヤルティが高まることが非常に重要だと考えています。

― NPSをどのように活用していらっしゃるのでしょうか。

佐藤 : 3ヶ月に1回のペースで、企業のお客さまと、個人のお客さまの双方にNPS調査を実施しています。また、私たちはサービス業ですから、eNPS(注:Employee Net Promoter Scoreの略、従業員エンゲージメント)も重視しており、NPSとeNPSの両輪で、両方にパワーをかけて実施しています。
活用の仕方としては、サービスの中で実施するアンケート調査結果なども踏まえ、お客さまの特徴ごとにカスタマージャーニーマップを作り、どのプロセスがNPSに影響があって、どの点が私たちの強み・弱みで、改善ポイントはどこで、といったデータを可視化しています。
そのデータに基づき、実際にお客さま接点のある各部署が対策を考え、面談のやり方や各種コミュニケーションのやり方を変えてみるなど、いろいろな取り組みをおこない改善をし、それをナレッジとして共有していく、といったことを行っています。

顧客満足度では測りきれないお客さまの声を聞くために、NPSを導入

― 顧客満足度調査も実施されていたそうですが、それに加えてNPSを導入されたのにはどのようなきっかけがあったのでしょうか。

佐藤 : 一つは、お客さまを起点にした事業をしたいという思いは持っていたものの、マーケットの変化に伴い、リクルートが主語のサービスになってしまっているのではないか、という強い反省がありました。圧倒的マーケットシェアを持っているわけですが、今後も選ばれ続けることができるのか、という危機意識があったわけです。サービスの質が劣位になっている部分が散見され始めたように感じており、もう一度お客さま価値に立ちかえろうという議論をしていました。
もう一つは、顧客満足度調査で「本当にお客さまの声を聞けているのか?」という疑問を感じたという点です。肌感覚として状況がシビアになってきているのに、顧客満足度は相変わらず高止まり、という状態でした。そこで、顧客満足度の今までの取り方がおかしいのではないかということで、企画のチームから、「NPSを掲げてやりませんか」という声があがりました。

― 始めた当初から企業のクライアントと、個人のお客さまと、両方にNPS調査をやっていらしたのでしょうか。

佐藤 : はい、最初から両方とも取っています。ただ、データは取っていたのですが、社内で認知されるのに、ものすごく時間がかかりました。
NPSもeNPSも、社内での認知が8割を超えるところまで、認知のための社内活動をやり続けました。認知が8割を超えたところで、次に、「NPSに納得していますか」と、納得までいくための様々な施策を行いました。メンバーが、「こんなに忙しいのに、本当にやる意味があるの?」と思っているのか、納得して心から取り組もうとしているのか、といったところですね。
現状は、納得も8割を超えたので、NPSの効果を実感してもらおう、というところで活動をしています。

社内活動を通じて、NPSの認知や納得感を高め、各部署の改善PDCAが回り始める

― NPSへの社内の認知や納得感、実感を得るために社内運動を起こすというのは、素晴らしい取組だと思います。この認知や納得感をあげていくために、具体的にはどのような施策をされたのでしょうか。

佐藤 : 最初の頃は、NPSが浸透するための6つのスローガンも掲げました。「途中で変えない」、「同じことを言い続ける」、「トップダウンにしない」、「確認・可視化する」、「スコアを目的にしない」、「小さく始めて成果を作る」。これをみんなで何度も確認しました。今はもう浸透しているので、殆ど言いません。
また、マーケティングの鉄則である「可視化」、「最適化」を踏んだのは大きいですね。可視化すれば、マイナス点は不快ですし、それが続けば最適化したくなる。各事業や部署ごとのNPSの可視化と共有、改善施策のシェアといったことを1年くらい行い、現場が自走するようになりました。自走し始めたところで、上手くいっている部署をフィーチャーしていくと、メンバー全体がNPSを気にするようになってきます。
他にも、毎週の役員会の最初の10~15分を、必ずお客さまの声をみんなで読み込むところから始める、社員総会で取り上げる、部長が部長の言葉で部に対して話す、といった様々なことをやっています。
同時に、NPS関連の活動が商売とつながるというところを実証し続ける、ということをやりました。

NPSの動きは売上の先行指標にも。NPS関連活動と売上の関係性についても言及

― NPSのスコアと売上ですが、実際のところは連動してますでしょうか。

佐藤 : NPSが上がったから売上がリニアに連動して上がるということはないのですが、リンケージはあります。また、NPSが下がると売上が下がるといった、先行指標的なところがあります。
たとえば、ある領域や支社が盛り上がってきているなと感じていると、まずeNPSが上がり、今度はNPSが上がりはじめて、売上もついてきます。

― 昨年度と本年度のNPSベンチマーク調査を比較すると、御社では「ディトラクター(批判者)」の減少率が大きい点が目立ちます。業界他社と比べても大きな変化です。

佐藤 : もちろん「プロモーター(推奨者)」を増やしたい気持ちはあるのですが、改善策としてはまず問題点に取り組む方がわかりやすいので、そこを改善したのだろうと思います。例えば、言葉遣いやこまめな連絡などは、行動として誰でもすぐ取り組めることです。各部署より、「NPSスコアを上げるためにはどうすればいいか」という相談を企画チームが受けることも増えたのですが、その際も「プロモーターを増やそうとするより、ディトラクターを減らそうとする方が始めやすいので、そちらから取り組むことが多いですよ」と伝えています。

― 「ディトラクターを減らしてサービス品質を底上げする」というのが上手く機能したということですね。

佐藤 : 「すべての方に良いサービスを提供したい」という思いが根底にありながらも、実践できていない部分もあり、メンバーも気になっていたのではないかと感じています。だからこそ、NPS導入によって、改善の動きが出始めたので、みんな一生懸命やってくれたのだと思います。全くそういう思いが無いところでは、変えるのは相当大変なのではないでしょうか。

一番大切な人に、自信を持ってお薦めできるエージェントサービスを目指して

― この3年間、ご自身で感じていらした想いやコミットメントはどのようなことでしょうか。

佐藤 : 持続性にはすごくこだわりました。「3年で成果が出なくてもやめない」と言っています。足が長い取組で、時間がかかるけれども、必ず続けていくことで事業にはリターンがある、なので、言い続けなくてはならない、やめるわけにはいかない、というところにこだわり続けました。あとは、実際にお客さま接点のある部署に火がつくか、というところを非常に気にしていました。
今は、各組織が自走しており、次のステージに来ていると思います。ここから加速すると思うのですが、そのためには何が良いのか、私たちも色々模索しているところです。

― 最後に、NPSをご活用されながら、今後作っていきたいサービスの世界観をお聞かせください。

佐藤 : 「一番大切な人に、自信を持っておすすめできるサービスに」ということを言っています。 私たちは、転職エージェントというのはすごく良いサービスだと信じているので、働き方改革やキャリアの多様化が言われている今の世の中で、このサービスをもっと世に広げたいという思いがあり、その先駆者であり続けたいと考えています。同時に、独り勝ちを望んでいるわけではなく、転職エージェント業界全体をより良くしていき、もっと世の中にインフラとして認められることを目指したいですね。
リクルートキャリアのビジョンは「働く喜びを増やしたい」となっていまして、ただ、その時に、転職そのものの納得感は、まだそれほど高くないと感じています。なので、そこをもっと高めていくことで、働く喜びを増やしたい、そう考えています。

― 素晴らしいビジョンですね。本日はありがとうございました。

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