丸井織物株式会社 様
国内トップのシェアを誇るテキスタイルメーカー、丸井織物株式会社。約1,100台の織機が稼働する工場で、スポーツウェアなどに使われる機能性素材、エアバッグや梱包用資材などとして利用される産業用素材、多くのアパレルブランドで使われる衣料用生地などを製造しています。同社が、織機の稼働状況をより正確に把握し生産改善を行うため採り入れたのが、 Spotfire®(スポットファイア)でした。
ここでは、導入の経緯と活用の様子について、技術部生産技術課の松本氏、大橋氏にうかがいました。
[お話を伺った方]
技術部 生産技術課
松本 翼 氏(右)
技術部 生産技術課
大橋 洸介 氏(左)
経営企画室(広報・採用担当)
岡島 彩 氏
左から「大橋氏」「松本氏」
―― まずは丸井織物様の事業内容や特徴、技術部の業務内容についてお聞かせください。
松本氏 : 当社は、衣料用や産業用などの織物を製造するテキスタイルメーカーです。約1,100台の織機を駆使して多様な織物を作っているのですが、なかでも得意なのが、スポーツウェアなどによく使用される機能性素材。汗や水分がすぐ乾く素材や、劣化を限りなく抑えた長寿命素材などを数多く提供しています。
こうしたさまざまな織物の製造にDXを駆使して取り組んでいるところも、当社の特徴のひとつです。他社に先駆けてFAシステムを導入したり、AIによる検品システムを導入したりと積極的にデジタル化を進め、ものづくりとITを掛け合わせた、最先端のテキスタイル製造を実践しています。
国内最多の織機を保有し、創業から90年近く、繊維業の発展に尽力してきました。こうした功績が評価され、2024年、会長の宮本徹が旭日単光章を受章しています。
私と大橋が所属する技術部では、生産性と品質を向上させることをミッションに掲げています。生産技術課は織物を織るために必要な経糸(たていと)の条件を整えたり、織機の回転数を分析する業務を行っており、特にこの部分の生産改善に、積極的に取り組んでいます。
―― 早くから先進的な取り組みを推進し業界を牽引して来られたのですね。そのなかで、どんな課題を抱えていらっしゃったのでしょうか?
松本氏 : 先ほどお話しました通り、当社は、業界に先駆けてDXに取り組んできた会社です。最新の織機やFAシステムなどを積極的に導入しており、かなり前から、膨大なデータが取れる状態になっていました。
ところが、これを駆使して分析するということがあまりできていませんでした。もちろんデータは見ていましたし、相関がありそうなデータを見つけてExcelやAccessで分析するということもしていたのですが、やはり手作業だと時間と手間がかかってしまうんですよね。
ほかに、データが集まったタイミングでベンダーに委託し分析をしてもらうということも行っていたのですが、これについては、コストがかさんでしまうのが大きな悩みでした。
―― どのようなきっかけでSpotfireをお知りなったのでしょうか?
松本氏 : お客様主催の勉強会に参加したことがきっかけです。先述したような課題に直面し悩んでいたときに、繊維製造業におけるDXをテーマにした講演に参加し、そこでSpotfireというBIツールがあることを知りました。
講演を聞いて驚いたのが、Spotfireを使って、織機1台1台の売上や利益まで管理しているという企業の話です。あらゆるデータを活用・分析し、圧倒的な成果を上げているとのことでした。アジアのとある企業の事例だったのですが、「海外の企業はここまで進んでいるのか」「BIツールでこんなことまでできてしまうのか」と、衝撃を受けたことを覚えています。
その話を聞いて、「これはまずい」と。「我々も急いでBIツールを入れなければならない!」と感じ、すぐにBIツールの導入を検討し始めました。
―― BIツールの検討はどのように進めていかれたのでしょうか?
Spotfireの導入の決め手についてもお聞かせください。
松本氏 : 自社においても本当に効果があるのかを確認するために、まずは、SpotfireではないBIツールの無料アカウントを取得して、テスト利用をしてみました。すぐに有用な分析結果が得られたため、「やはりこれは効果がある」と確信し、無料利用したBIツールとSpotfireを比較検討することになりました。
海外の同業他社がSpotfireを使って圧倒的な効果を上げているという事実も導入の後押しとなりましたが、実際にトライアルしてみると、現場での使い勝手がよく、分析結果の特定の部分をより詳細に見たいとなったときのドリルダウンがしやすかったため、Spotfireの導入を決めました。
―― 導入後は、どのような形で活用されていますか?
大橋氏 : サーバーに蓄積されている膨大なデータをSpotfireに投入し、日々、織機の稼働を分析しています。最初の頃は何百万行とあるデータをすべて読み込んでいたのですが、このやり方だと効率が悪いということに気付き、現在は、主に分析したい日や期間のデータを入れて分析を行うようになりました。
また、定期的に織機のデータを読み込むように設定し、更新されたダッシュボードを、計10セクションの現場に設置されたモニターを通じてリアルタイムで共有しています。生産技術課では毎日、生産性が落ちていないか確認を行ったり、課員全員で週1回のペースで立ちミーティングを実施。ここで織機の回転数や気になるデータを改めて確認し、改善するということもしています。
これらの取り組みによって、織機の不具合に、ほぼ確実に対応できるようになりました。まずSpotfireで「この織機の回転数が目標に達していないけれど、どうしたんだろう?」と気付いて、データを深掘りして原因を探ったり、現場の調整者に実際に異常が起きている機械を見てもらうなどすると、たいてい、なにかしらの問題点が見つかるんですよね。
これまでは、どの織機に異常が発生しているか特定することさえままならなかったので、スピーディーに不具合のある織機を見つけ、対策することができ、本当に助かっています。
―― 実際にSpotfireを使ってみてのご感想をお聞かせください。
大橋氏 : 約1,100台の織機の稼働状況がマップやグラフでパッと確認できるところが、とても気に入っています。稼働状況が見える化されたこと、それだけでも大きな意味がありました。また、現場の課長や織機調整者と、ダッシュボードを見ながら「ここおかしいね」「ちょっと見てこようか」とスピーディーにやりとりができるようになった点も有難いですね。これまでは織機調整者のカンに頼って手探りで織機の調整をしていた部分があったのですが、Spotfireを導入したことによって、データに基づいて行動できるようになりました。
他に、分析のスピードが圧倒的に早くなったという効果も出ています。30分~1時間ほどかけて自分が分析したいグラフを作成しておくと、次からはSpotfireを立ち上げるだけで分析できるようになります。分析のたびにグラフを用意する必要がなく、データを入れるだけで、日々の業務として分析まで行えるようになっています。
―― 「BIツールは使いこなすのが難しい」というイメージもあると思うのですが、現場社員の方の活用は進んでいますか?
大橋氏 : みんながみんな使いこなせるというわけではないのですが、導入時に研修を受けた10名ほどの社員のうち数名は、Analystライセンスを使っての分析ができるようになっています。特に、生産技術や品質管理など、生産性や品質の向上がミッションとなっている部署の社員は、高い意識を持って、スピーディーに、深く使いこなしているように思いますね。分析のプロですとか、関数をバリバリに使えるという社員ではなく、“Excelに慣れている”ぐらいの者も勉強しながら活用できています。
使いこなすところまではいかない社員に対しても、とにかくこまめにヒアリングをして、使い方や見方を説明するようにしています。「現場の社員にこそ使ってほしい」、そんな思いで、活用を推進しています。
―― なるほど。分析ご担当の方だけでなく現場の方が使えるよう、継続して定着支援をされているのですね。その結果、得られた具体的な変化や成果についてお聞かせください。
松本氏 : これまではなにをしても上がらながった織機の回転数が、Spotfireを導入したことによって、面白いぐらいに上がるようになりました。分析結果に基づいて停台原因の調整を行い、チョコ停を減らしたり、稼働が良い品番については織機の回転数の基準値を上げることで、右肩上がりで稼働が良くなっていき、現在は年間で数千万円規模の生産改善効果が出ています。
大橋氏 : 私は、データをすぐ見られる・まとめられるようになったところに効果を感じています。これまで時間がかかっていたデータ分析が、とにかく早く、タイムリーに行えるようになり、常に最新データに基づいた判断が可能となりました。その結果、手戻りが減少し、業務を定量的に進められるようになりました。
あとは、社内に蓄積されていたデータを知る機会になったところもよかったなと思っています。以前は、あまりに膨大なデータがあるため、どこにどんなデータがあるのか把握することさえ困難な状況でした。Spotfireを導入したことで、データの中身を知り、実際に使えるようになって、「実はものすごく価値のあるデータが眠っていたのだ」と気付くことができました。「あのデータとこのデータを掛け合わせたらどんな結果が出るのだろうか」と想像することも多くなり、今、データとDXに、無限の可能性を感じています。
松本氏 : 今後は織機の稼働状況の改善に加え、統計的な処理にもチャレンジし、部品の交換周期の予測や、設備故障の兆候をとらえるような予防保全にも役立てていきたいですね。また、人事や総務といった事務作業にも、Spotfireを活用したいと考えています。BIツールは、「入れれば必ず効果が出る」と言っても過言ではない強力なツールです。製造業、ものづくり産業の企業に、強く、導入をおすすめしたいですね。
―― 実際にSpotfireを活用して、数千万円の効果を出されているとのこと、当初の狙い通りしっかりと業務改善効果が出ているようで、大変嬉しく思いました。今後も、貴社の“無限のデータ活用“をSpotfire®とともに支援してまいります。本日はありがとうございました。
※掲載内容は2024年11月時点の情報です。