株式会社 大丸松坂屋百貨店
J. フロント リテイリンググループの中核事業会社であり、分店・関連会社を含む全国15店舗の百貨店を運営する株式会社大丸松坂屋百貨店。そのCRM刷新で得られた膨大なデータを活用する分析ツールとして選ばれたのは、TIBCO Spotfireでした。ここでは導入の経緯と活用の様子について、営業本部 営業企画部 部長の山田(彰)氏、同部の笠原氏、山田(直)氏、狩野氏にうかがいました。
[お話を伺った方]
営業本部 営業企画部
・山田 彰範 氏<部長>
・笠原 工輔 氏
・山田 直樹 氏
・狩野 辰夫 氏
― みなさまが所属されている営業企画部の業務についてお聞かせいただけますか。
山田(彰)氏 : 営業企画部はお得意様営業とCRM企画、販売サービスなどを担当しており、本日参加しているのはCRM企画のために立ち上げたデータサイエンティストのチームです。
2018年頃、我々は新しい顧客戦略を掲げて全社的にCRMの見直しをスタートさせました。アプリの導入、カードのリニューアル、オウンドメディアの再構築、外商のお得意様へのSFA導入などを数年かけて実施していくというものです。そうして顧客とのタッチポイントが増えていった先にはやはりデータ活用が欠かせません。そこでこのチームを立ち上げ、分析ツールとしてSpotfireを導入するに至りました。
― Spotfireはどういった業務にご利用いただいているのでしょうか。
山田(直)氏 : 現在は社内でデータサイエンティストの価値をいかに感じてもらえるか、いかに効果を出すかというところに重点を置いています。Spotfireは「データ分析によって優良顧客を発掘し、売上の拡大に寄与する」といった業務に活用しています。データの可視化は別のBIツールを使用していたのですが、今後はSpotfireでのデータ可視化にも取り組もうとしているところです。
― Spotfire導入のきっかけはどのようなことだったのですか。
山田(直)氏 : まずはデータ分析を内製化するか、外注するか検討するところからでした。そこで「内製するべきだ」という判断をしたわけですが、当時は社内にデータ分析のリソースやノウハウがなく、人材の育成から始めなければならなかったのです。
ユーザーの私としては、Spotfireはデータ分析の知識がない人でも使いやすいUIを持っているし、表計算ソフトのような感覚で使えるので、マッチしていると感じました。まったく知識がない中で使っていくことになるので、サポート体制がしっかりしていたことも安心できましたね。一方、システム担当者の方では、行動ログなどのビッグデータを扱うので、大量のデータを扱えるパワフルさが決め手になったようです。
― Spotfireを優良顧客発掘に活用いただいているとのことですが、具体的にはどのような分析をしているのですか。
山田(直)氏 : 主な分析のひとつとして、外商顧客の「購買予測モデル」を出しています。従来はPOSデータとデモグラフィックデータ(人口統計学的属性)しかなかったので、「過去によく買ってくださった」外商のお客さまに対して、その担当者がアプローチをするといった形を取っていました。ただその方法では「まだ買っていないけれど、これから買う可能性が高い」お客さまにアプローチすることはできません。そこで、Spotfire導入後はPOSデータやSFAのデータ、アプリのデータなどをSpotfireで加工し、ロジスティック分析や回帰分析を使ってお客さまごとの「購買確率」を算出し、外商担当者と連携してアプローチに使ってもらっています。
― データ分析の手応えや、成果はいかがですか。
山田(直)氏 : 従来はPOSデータとデモグラフィックデータという限られたデータしか扱えなかったのが、Spotfireではさまざまなデータを取り込み、クラウド上のデータベースにも接続したりして、データを複数組み合わせた分析ができます。そのおかげでかなり踏み込んだ分析になっていると感じますね。
購買予測モデルは実際の売上アップにつながったこともあって、経営陣からもかなり期待を寄せられており、「次はこの商材で予測を」という依頼も来ています。また、店舗からも「なるべく早く購買予測リストが欲しい」とリクエストされるようになりました。一度予測モデルを作ってしまえば、そこからSpotfire上でデータの置き換えは比較的スムーズにできるので、要望に対応できる人員を増やして、今以上に社内へ広めていきたいですね。
― Spotfireの使い勝手などはいかがですか。
笠原氏 : トレリス機能(グラフを格子状にグループ分割表示できる機能)は、弊社のように複数の大都市圏に店舗を持っている企業には非常に便利ですね。地域性といいますか、店舗ごとに顧客像や売上規模、売れ筋の商品などといった特色に大きく差があるので、全店をまとめたデータと、トレリス機能で店舗ごとに切り分けたデータではかなり違った特徴が出るのです。我々は本社におりますが、データを見ながら実際に話をするのは各店舗のスタッフなので、店舗ごとにデータを分けるのは理解していただくために重要です。その点で、トレリス機能は非常に使い勝手がいいです。
他にも、例えばひとつの商品にフォーカスを当てる中で「過去数年間にわたってどんな形で売上が推移してきたのか」、増税や外出自粛といった「購買行動に影響する出来事のタイミングではどう売上が動いたか」といったことがわかるラインチャートが時系列ですぐに出せます。さらにそれを月ごとに、クオーターごとにと柔軟かつフレキシブルに動かしていける。非常にわかりやすいですし、店舗スタッフにも目で見て理解してもらえます。
我々がデータを分析する際も、例えばブレインストーミングの段階から、Spotfireの画面を共有していて、データの見方を切り替えながらアイディアを出しあっています。短時間のうちに違った視点での切り口ができるといいますか、「何か出てきそうだ」という時に、「持ち帰ってやってみます」ではなくその場で分析できる。個人的にもここ最近は「まずはSpotfireにデータを読み込んで……」という使い方をしていて、読み込んだデータを眺めてみたり、外れ値を検出してみたり、ひどく影響しているところを詳しく見たり、ということをよくやっています。
狩野氏 : 私は昨秋に着任しまして、表計算ソフトしか扱ったことがない状態から初めてSpotfireを使うようになりました。多機能なツールですから、まだ使いこなしているとまではいきませんが、初めてのユーザーに対しても、何がどこにあるか、レイアウトも含めてわかりやすいと感じています。うっかり意図しない処理をした時も「最初からやり直し」ではなく、すぐに元に戻せるのは心強いです(笑)。
それに、表計算ソフトでは処理の結果しか見られませんが、Spotfireは他のユーザーがどの順番でどうデータを処理したか、後からひとつひとつ履歴を追えるところがとても勉強になります。
― まさに現代ならではの「仕事は見て盗め」ですね。師匠がそこにいなくても、いつでも何度でも見られるという…
笠原氏 : こうやって分析手法を新たに学ぶのにもいいですし、分析した本人が履歴を追った場合も「前回の分析の時にはこう処理をした」というところをしっかり振り返れますから、役立ちますね。
― みなさまにはNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが開催している
Spotfireのトレーニングなどにもご参加いただいていますが、印象はいかがですか。
笠原氏 : 私は他のスタッフよりある程度先のステップにいる状況ですが、それでも先日の対面トレーニングを通じて「もっと便利な機能がある」と気づいたり、分析結果をもっと深く読み取るためのヒントを得たりすることができたので、大変参考になりました。
狩野氏 : 操作自体を教えていただけたことも有意義でしたし、ちょっとした操作で大きくデータの見え方が変わる様子を見て「使いやすいだけでなく、こんなこともできるのか」と改めて感心しました。
山田(彰)氏 : 普段のSpotfire操作は皆に任せているのですが、今回は私もトレーニングに参加しました。他のツールでは、教わりながら迷子になってしまい、どこにいるかわからなくなる…ということもあったのですが(苦笑)、丁寧に教えていただけたので、皆がSpotfireについて話している内容がさらに深く理解できるようになりましたね。
― 今後、Spotfireをどのように活用していきたいとお考えですか。
山田(彰)氏 : 現在は全店分の分析を本社で手掛けているので、いずれSpotfireを使える人材を各店舗に配置して、自店のデータを自ら分析できる体制にしていきたいですね。店舗によって取扱品も違いますし、お客さまの特徴も違いますから、より深い分析をするためには各店舗で分析できる体制が必要だと感じています。
笠原氏 : そうして社内でより広くデータ分析の効果を知ってもらい、データ分析に通じた人材を育てることの意義を理解してもらいたいと考えています。それには「データ分析がお買い上げにつながった」という結果を出すことがなによりですから、例えばSpotfireで購買予測データを作り、テンプレート化して各店舗に広めることで、結果を出していこうと。
― まさしくデータドリブン的な組織を自ら作っていこうとされているのですね。Spotfireの活用法としても理想的といえるもので、大変意気に感じております。一日も早い実現のために、我々も引き続きご支援させていただきます。本日はありがとうございました。
※掲載内容は2022年5月時点の情報です。