―そんな使い方にはTIBCO Spotfireが最適
三井石油開発株式会社(MOECO)
石油・天然ガス、その他のエネルギー資源の探鉱、開発、生産などの事業を手掛ける三井石油開発株式会社。世界各国で事業を営む同社だけに、国内事業所への「TIBCO Spotfire」導入も、海外でその活躍を知ったことがきっかけになったといいます。ここではSpotfireの詳しい活用方法について、海外でシェールガス・オイル事業(以下シェール事業)を手掛け、現在は地熱事業部マネージャーを務める井上氏にうかがいました。
[お話を伺った方]
地熱事業部 マネージャー
井上 博文 氏
「アメリカのシェールガス業界ではすでに皆がSpotfireを使っていました」と井上氏
― はじめに、御社の事業についてお聞かせいただけますか。
弊社は石油・天然ガス、その他のエネルギー資源の探鉱、開発、生産、販売ならびに投資を主事業としています。私自身は現在、化石燃料に代わる次世代エネルギー資源のひとつである、地熱資源の開発を担当していますが、以前は米国の拠点に出向し、シェール開発事業に携わっていました。Spotfireを導入したのもその頃です。
― Spotfire導入前に抱えていた課題について教えてください。
シェール開発は、1本の坑井から採れる資源が限られているので、継続的に多くの坑井を開発して事業を成立させているという側面があります。私が着任したのは2013年1月でしたが、すでに数百本の坑井が開発されており、将来的な計画としては、そのフィールドで数千本単位の開発を行うことになっていました。
油・ガス・水の生産量・圧力データといった坑井のデータは、各坑井ごとに毎日送られてきます。当時は、坑井数百本分のデータを表計算ソフトで管理していましたが、とても管理しきれませんでした。データベースソフトも導入しましたが、データを貯めておくことはできても、必要なデータを引き出して分析するには非常に手間が掛かりました。
当時大小さまざまな企業があった米国のシェール業界ですが、どうやら他企業は表計算ソフトではなく、膨大なデータをスピーディーに処理でき、可視化も分析もできるソフトウェアを使っているらしいと耳にし……それがSpotfireだったのです。
そこで弊社もすぐにトライアルを実施した訳ですが、データの取り込みや連結が簡単にでき、とにかく動作が早いことに感動を覚えました。特にマップチャート機能は、表計算ソフトでは考えられないものでした。その当時、シェイプファイルフォーマット※で、さまざまな情報を盛り込んだファイルが当たり前のようにやり取りされていましたので、Spotfireであればそれらを活用してマップチャートを作成し分析することができます。トライアル開始からすぐにSpotfireを正式に導入しました。
※図形情報と属性情報をもった地図データファイル
― Spotfireで、どのようにデータを活用しているのですか。
全体としては、エリアや期間などの条件を与えた場合の生産量の分析や、異常に生産量が多い坑井や、逆に少ない坑井を見つけ出すことですね。これはSpotfireのトレリス機能で一気にグラフを表示すると、すぐに見つけられてとても便利です。
さらに各坑井に対しては、「開発デザイン最適化」のために使っています。シェール開発では、各坑井に対して水圧破砕を行うことで地下に亀裂を発生させ、その亀裂を通して生産流体を回収します。ただし、亀裂には地下応力がかかるので、亀裂が閉じないように保持する工夫が必要となります。そこでプロパントと呼ばれる砂を水やジェルなどと配合してポンピング※し、亀裂を保持します。この配合などが最適化を左右する大変重要なポイントなので、いくつものタイプを作って試行錯誤しながら比較していくのです。ある坑井はAタイプ、別の坑井はBタイプとそれぞれ配合などが違うので、うまく比較するには、Aタイプの坑井だけを集めて比較して……と、こうなると、表計算ソフトではもう限界でした。
Spotfireでは、毎日届くデータを逐次アップデートし、可視化して、どの坑井とどのタイプの組み合わせが好成績か分析するまでスムーズに進められる。定期報告はフォーマット化していましたが、デイリーのディスカッションでは、その時に思いついたグラフをスクラッチでパッと作ったりして。これもSpotfireのいいところですね。
※ポンプの圧力の作用によって流体などを移動させること。
「動的なグラフを作り、いくつものタイプをその場でディスカッションしながら検証できます」と井上氏
― 表計算ソフトでも、統計分析を試みられたことがあるのですか。
そうですね。単純な線形回帰分析を用いた予測などを、表計算ソフトで行列式を使って行っていたことがありました。手作業的で時間をかけてデータを作り、よくわからないけれどもそれらしい結果が出てきて、モデルの検定もせずに「こういうものか」と思っていた感じです。
Spotfireでは、こうした作業が数分で終わりますし、モデルの検定も実施してくれる。データセットを変えてまたすぐ流せば次の分析結果も出ますし、それぞれのケースに名前を付けて保存することもできる。表計算ソフトでは手作業で参照範囲を変えていたのが、Spotfireであればフィルター機能で瞬時に変えられて、自分が今どういうフィルタリングをしているかというのも把握しやすいです。シェール事業のように、いくつものタイプをテストしたい使い方にはもってこいですね。
― Spotfireの使い方を学ぶ際や、社内に広めるにあたって苦労されたことはありますか。
Spotfireって「触ったもの勝ち」というか、思いつきでもやってみることで新しい機能に気づいたり、やりたいことがあって試行錯誤するうちに習熟していたり……というところがありますよね。私に関していえば、米国では担当プロジェクトに集中できる分、Spotfireに触る時間も確保できたので、そこで基本的な操作方法を身につけられました。
日本の拠点では、私と同時期に米国で働いていた社員が先に帰任し、Spotfire導入を進めてくれました。若手社員も積極的にSpotfireを使って、社内報告会などで使い方を広めてくれていますね。
私も、今携わっている地熱事業にもっと応用できないかと考えています。地熱事業もやはり坑井を掘削するのですが、日本の地質は火山岩で固いこともあり、掘削効率がよくないのです。その中で、今年から掘削のデータを取り始めるので、そのデータを掘削効率の最適化に活かせないかと思っています。
「今はエンジニア中心ですが、いずれ全社がSpotfireでデータ共有できるようにしたいですね」と井上氏
― そうですね……SpotfireとTIBCO Streamingというリアルタイム処理のツールを組み合わせれば、その場で掘削状況を分析し、発生したアラートをビジュアル化できます。予測モデルと組み合わせれば、予兆の段階で意思決定することもできますね。
リアルタイム分析ですか。たしかに自動化や予測機能は魅力的ですが、スピーディーに現場へ取り入れるなら「現場で人がデータを見ながら掘削のパラメータを調整する」という使い方がいいかもしれないですね。
実は、掘削リグ(装置)※は現在もドリラーと呼ばれる専門職が操作し、掘削パラメータは人手で調整されているのです。我々は自社で掘削リグそのものを持っているわけではないので、掘削リグ自体を改良し、自動的にアクションを実行させるのはかなりハードルが高くなってしまう。
一方、ドリラーに現場でリアルタイム分析のデータを提供し、それらを基にオペレーションを最適化してもらう方法なら、掘削リグ自体の大がかりな改良が必要なく、分析とその結果をモニターする環境だけ用意すれば問題なさそうです。掘削はとてもコストのかかる作業なので、これを最適化できればかなりのインパクトになりますよ。
※地下に眠る石油・天然ガス、地熱資源を採りだすための井戸を掘る装置
― 最新技術やハイエンドの設備だけにとらわれない、柔軟かつユニークなご発想を目の当たりにでき、感激しております。ぜひ、実現へ向けてサポートさせていただければ幸いです。本日はありがとうございました。
※掲載内容は2020年7月時点の情報です。