2018/03/30
【NPSトップ企業に聞く顧客ロイヤルティ向上の秘訣2017】
NPS®ベンチマーク調査2017、動画配信サービス部門で第1位に輝いたAmazonプライム・ビデオ(アマゾンジャパン合同会社)。直近数年で著しく競争が激化した動画配信サービス業界において、一歩抜きん出る同社の特徴的な企業理念とそれを支える行動指針、「お薦めしたい」サービスNo.1に導いた取り組みについてお伺いしました。
― 今回のNPSベンチマーク調査において、動画配信サービス部門でAmazonプライム・ビデオ(以下、プライム・ビデオ)が1位を獲得されました。おめでとうございます。この素晴らしい成果を上げられた御社の取り組みについてお聞かせいただければと思います。まずはプライム・ビデオの強さの源泉はどこにあるのか、また、戦略はどうなのかといった点についてお伺いいたします。
児玉 : 動画配信サービスプライム・ビデオに限らず、Amazonの全てのサービスに共通する戦略で言いますと、徹底したお客さまニーズへのこだわりだと思います。プライム・ビデオは日本でサービスの提供を開始してから2年経ちますが、Amazon自体は日本で様々なビジネスを17年以上にわたって展開しており、消費者のニーズについての学びは、それなりの蓄積があります。
― 日本におけるプライム・ビデオのメインターゲットはどのようなお客さまだとお考えでしょうか。
児玉 : 極端な話、「日本に住んでいる方全員」と言いたいくらいですね。それくらい、特定の条件を当てはめることは考えていません。
― それほど広範なお客さまのニーズや声を聴くのは大変なことだと思いますが、具体的にはどうやって拾い上げていらっしゃるのですか。
児玉 : 定量的な面では「何人くらいの方が使っていらっしゃるか」「どんなコンテンツが観られているか」などというデータを考慮しています。定性的な面の一例としては、各作品の担当者がAmazon特有のカスタマーレビューを見ています。この両面を参考にしながらやっていますね。
― VOC(Voice of Customer)を集めるセクションなどはありますか。
児玉 : カスタマーサービスセンターがあります。一般の社員もいつでも行って、どういうご要望やフィードバックがあるのかを聞けるようになっています。むしろ、定期的にお客さまの声を聞きに行くよう促されていますね。
― お客さまの声を聞いた後にどう考えるかといった枠組みを作ることも重要だと思うのですが、そういった仕組みはどうなっているのでしょうか。
児玉 : プライム・ビデオに関しては、お客さまの声として一番重要な部分を、カスタマーレビューに書いていただけるので、そこがポイントですね。
まず定量的に各コンテンツの視聴数や、平均的にどれくらいの時間観ていただいたとかを見て、それがずば抜けて良いコンテンツや、期待に対してあまり良くなかったコンテンツに対しては、カスタマーレビューなどの定性的な検証に入って「こういう理由なのか」と突き止めていく。
― 膨大なデータだと思いますが、分析はどうやっていらっしゃるのでしょうか。
児玉 : そこは一人一人がみています。どんなお褒めの言葉が多いか、どんなことを残念だと書かれているかは受け止めてやっていますね。会議の場には、担当者がレビューを抽出してサマリーしたものを、「こういう声が多いです」「ここが改善点ではないですか」という形で持ってきます。
例えば、バラエティ番組にもいろいろな進め方、流れがありますよね。その中で「この流れだと観にくいね」「興が削がれるね」といったことをレビューに書いていただける。我々もそれに伴って「次はフォーマットを変えよう」とか「こういう演出はやめよう」などと検討することはよくあります。
― 御社にとってロイヤルティの高いお客さまや優良なお客さま、というのはどういうお客さまになりますでしょうか。例えばAmazonプライム会員はロイヤルティの高い、いわゆる優良顧客だとお考えなのでしょうか。
児玉 : 我々は、お客さまが優良顧客か、そうでないか、といった発想はしていません。「優良顧客だから大切に」「優良顧客ではないからそれなりで」といった発想はまったくないと思います。
Amazonプライムのサービス自体も、会員だから優良顧客、というわけではなく、お客さまの毎日の暮らしをより便利で豊かにするプレミアムなサービスと考えています。ですから動画コンテンツでも、プライム会員にはプライム・ビデオというサービスを通してAmazonでしか観られないPrime Originalのコンテンツや人気映画やテレビ番組を追加料金無しで見放題配信していますが、まだプライム会員になられていないAmazonのお客さまには、数万本の新作映画やテレビ番組を有料でレンタルまたは購入できるサービスを提供しています。
― 今一番力を入れておられることは何でしょうか。
児玉 : 一番はやはり、より良い作品を用意することですね。プライム・ビデオとしては2つの大きな方向性があって、ひとつは「圧倒的に多くの方に楽しんでいただける大作を揃えること」。そしてもうひとつは、逆説的ですけれども「ほんの少数の人しか観ていただけない、ニッチなニーズの作品も網羅すること」です。その少数の方はもしかしたら「そのコンテンツだけのためにAmazonプライムに入っている」ということもあるわけですよね?だから、大作とニッチな作品のバランスをしっかり取っていくことが、一番大きな課題、挑戦だと思っています。「圧倒的に観てもらえるものってなんだろう?」というのは常に悩ましいところではありますし、一方でニッチなニーズはどうやって担保していこうかというところもあります。
― その「より良い作品」のために、今後取り組みたいことをぜひ教えてください。
児玉 : 日本国内向けのコンテンツ、オリジナル番組制作にどんどん力を入れたいと思っています。日本のお客さまのためのコンテンツというのはまだまだニーズがあると考えていますので。オリジナル番組の制作はある意味クリエイティブの領域なので、原作があれば原作を読み込ませていただく、脚本なら脚本を読み込ませていただく、場合によってはアメリカの同僚にも翻訳して読んでもらい、意見をもらう、そこまでやりますね。一本一本がすごく大切なものなので。そういった番組を、もっともっと増やしていきたいですね。
― お客さまへの対応として、一般の企業ですと、カスタマーサポート室といった組織があり、組織全体に情報を流していく、といったイニシアチブをよく耳にしますが、御社では、どのような取り組みを行っていらっしゃいますか。
児玉 : 責任者がいるというよりも、日々の意思決定がすべてそれに基づいている感じです。議論の場で、AとBのどちらかを選ぶという時に、最初に出る言葉は「AとB、どっちがお客さまにとって良いのか」です。「どちらの利益率が高いのか」という話にはなりません。お客さまに対してどこまで考えているかが、いつでもトップに位置付けられています。
Amazon全体が「地球上で最もお客さまを大切にする企業であること」というミッションを掲げていまして、全社員が共有している行動指針「リーダーシップ・プリンシパル(Our Leadership Principles/OLP)」の中でも、トップに「カスタマー・オブセッション(Customer Obsession/お客さま中心主義)」が挙げられています。
― 個人の評価の中でもそういうことはあるのでしょうか。
児玉 : ありますね。我々の社員証にはOLPの14項目が記されていて、これらの行動指針は社員一人ひとりがリーダーとして心がけるものとして提示されています。評価軸でも、OLPトップにある「カスタマー・オブセッション」が非常に重要になります。もちろん、「デリヴァー・リザルト(Deliver Result/実績をもたらす)」もその中には入ってきます。
ただ、短期的な利益よりも、お客さまがハッピーであるために決して妥協しないことが、長期的には会社にとってメリットがあるということなのです。
― 行動指針が軸となって、常にお客さまのことを第一にするという姿勢が会社のカルチャーとして深く浸透しているということがよくわかりました。
本日はありがとうございました。
Net Promoter®およびNPS®、Predictive NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズ(現NICE Systems,Inc)の登録商標です。
また、eNPSは、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズ(現NICE Systems,Inc)の役務商標です。
【インタビュー後記】by NPSベンチマーク調査担当
NPSベンチマーク調査2017動画配信サービスから読み取れる、Amazon プライム・ビデオの魅力
NPSベンチマーク調査2017動画配信サービスでは、動画配信サービスのお申込み手続き、動画ラインナップ、コストパフォーマンスなど、サービスの選択から利用まで一連の流れにそった、16の要因別に重要度および満足度を聞いています。
業界全体で重要度が高いにも関わらず、満足度が伸びなかった(重要度と満足度のギャップが大きい)、「コンテンツの豊富さ」や「コストパフォーマンス」といった項目で、Amazon プライム・ビデオは、非常に高い評価を得ていました。
また、「推奨者」の推奨理由(自由記述)としては、「Amazonでしか見られないコンテンツが面白い」、「観たかったビデオやもう一度観たいものを好きな時間に観ることができるので、とても便利。まだこの制度を知らない人や使っていない人に便利さを伝えてあげたい。」など、コンテンツや使いやすさへの満足度に関連したコメントが多数見られました。また、「プライム会員の通常特典だけでもお得なのにさらに動画サービスも受けられるのはお得」、「アマゾンプライムの年会費を払うだけで、見放題の映画・ドラマがたくさんある。月1~2本見ればこれだけで年会費の元が取れるのではないかと思えるほど。」など、「お得感」や「コストパフォーマンス」も推奨理由となっていました。