2019/05/08
【NPSトップ企業に聞く顧客ロイヤルティ向上の秘訣2018】
NPSベンチマーク調査2018、アパレルECサイト部門で第1位となったMAGASEEK(以下マガシーク)(株式会社マガシーク)。19年前に雑誌とのコラボレーションで始まったマガシークの変遷や成長、お客さまから高い支持を得ている理由について、おうかがいしました。
―今回のNPSベンチマーク調査において、アパレルECサイト部門でMAGASEEK(以下マガシーク)様が1位を獲得されました。おめでとうございます。流行に左右されがちなファッション事業で、井上社長がマガシークを立ち上げてからは19年と伺っています。途中で変化もあったと思いますが、どのような経営方針でここまで事業を伸ばしてこられたのでしょうか。
井上 : ひとつは、私自身がファッションを好きだったことがあります。子どもの頃から、洋服を買ってもらうときは自分も一緒に行って選んでいたのですが、新しい洋服を手にして、それを着ていく明日が楽しくなるという思い。それが、ファッションのいいところだと思っています。当社のスローガンに、「明日が楽しくなる事業をやろう」というものがあるのですが、マガシークのサービスを使って、明日を楽しくしていきたいというのが当社のひとつのビジョンです。さらに、当社の経営理念として「誇り」というキーワードがあります。自社のサービスに誇りを持ち、仲間に誇りを持とうということを、いつも社員に伝えています。新しく入社した社員には、私から当社のビジョンをプレゼンテーションしています。一度では忘れてしまうので、入社1年後研修もやっていますね。社員同士の仲もいいですし、今回、こういった結果をいただいて、お客さまにも伝わったのかなということでは非常にうれしく思っています。
― それぞれの時代に井上社長がターゲットとして見つめられてきた顧客像がどのように変遷し、今のお客様像をどのように捉えられているのか、お聞かせいただけますか。
井上 : マガシークサイトは、当初から変わらず、丸の内OLというのが明確なイメージです。都市型の、ややリッチで、ちょっとコンサバティブで品のいい、30、40代のOLの方と、かつてそこにいらした奥様たち。売れているブランドも、フレンチ系の、1万円か2万円以上のものが多いですね。マガシークは写真のこだわりもすごくありまして、トップページの写真は、当社の特別撮影チームが、雑誌並みにメイクや場所にこだわって、毎回20点フォトシューティングをしています。洋服をいかに雑誌のように見せるか。マガシーク自体から雑誌的なニュアンスを感じていただきたいと思っています。
― お客さまの“欲しいと感じる瞬間”の情報は、どうやって入手されているのでしょうか。
井上 : 見られているページビューとコンバージョンから、この写真が売れたね、といった情報は、ノウハウとして蓄積するようにしています。同時に、今は、より提案が出来るサイトを開発しようとしているところです。“欲しい瞬間”をこちらから提供できる、お客様にとって、よりパーソナライズ化された提案がリコメンドされるなど、人工知能を使った取り組みが出来ないかなと考えているところです。
また、お客さまの声、という意味合いでは、マーケティング部門が月に1度メールマガジンでアンケートを実施して、意見を聞いています。
― 集めたお客さまの声は、どのように社内にフィードバックされるのでしょうか。
井上 : 部門長や私にフィードバックして、今後の戦略に生かしていきます。ただ、声から施策を作るというよりは、ある程度こちらでアイディアを練って、仮説を立てて、裏付けとしてアンケートを取る、というパターンが多いですね。
― NPSでは、お客さまの声を取り入れて生かしていくということが重要なわけですが、実際にお客さまの声によって売上やブランド向上につながったご経験はありますか。
井上 : かつてはアンケートなどでも、送料に関する声が非常に多かったです。送料が安ければ、という声が圧倒的に強かったので、送料を下げるといった施策を実施した時期もありました。
また、返品送料に関しても、毎回返品するわけではないので無料にしてほしい、といった意見があり、返品手数料ゼロの“おうちde試着”を始めたのです。試着感覚でいろいろ取り寄せてもらい、欲しいものだけ購入していただき、あとは返していただいて結構ですよと。そのサービスを使っていただいた方は、平均単価の3倍ほど購入いただいています。コートとか、かなり高額なものも取り寄せていただいて、気に入ったら購入していただき、気に入らなければ返品できるという仕組みです。
― かなり回数を買ってくださるリピーターと、新規の方がいらっしゃると思いますが、今一番力を入れて伸ばそうとしているのは、どちらですか。
井上 : 新規ですね。既存のお客様が大切なのは言うまでもありませんが、マガシークは、いいサービスをしている自負はある割に知名度がまだまだと感じています。新規の方や、たまにしか買っていただけない方にもファンになっていただきたいという思いがあります。返品手数料無料も、他ではあまりないサービスなので始めました。今後も、マガシークの方が他よりもいいかな、という施策を考えています。
現状は売上の8割がリピーターの方たちで、コアなファンに支えられていると感じることが多いですね。コアなファンの方たちは、ファッションアイテムの8割、9割はマガシークでご購入いただいていると思います。
― どのようにしてそのようなロイヤルティの高い、コアなファンを魅了し続けていらっしゃるのでしょうか。
井上 : マガシークでは、サイトデザインも、メールマガジンも、一貫したイメージを提供するようにしています。ターゲットの方に合うようなブランドの配置や、特集の組方、メールマガジンの内容など、すべてを揃えて行くことで、居心地のいいサイト、「私好みのサイトだな」と思っていただけるような工夫をしています。そのために、裏側では、その方がどのブランドを見ているかで、トップページを出しわけて、自分好みのものが出てくるサイトというのを目指しています。
また、カスタマーサポートも自社でやっているので、サービスの統一性はあります。ブランド担当者とカスタマーサポートの担当者が連絡を取りやすいですし、すべて社内で完結しており、そこが強みだと思います。
― NPSの特徴として、推奨者(推奨度9~10の回答者)は、中立者や批判者の何倍も商品購入する、というのが上げられます。コアなファン、プロモーターをさらに増やすような施策はお考えでしょうか。
井上 : まだ計画段階ですけど、プロモーターに近い方たちを各地方で集めたイベントをやろうかっていうのは検討しています。今後力を入れていきたい部分ではあります。
― NPSへの期待値を教えて下さい。また、NPSでは、お客さまに加え、従業員の満足度やロイヤルティを測る、eNPSという指標もあります。
井上 : NPSはこれを契機に、認知度等とあわせて、定期的に測り、参考にしていきたいです。また、社員満足度(ES)はここ10年くらい取っていますので、「知り合いにお薦めしたい会社」という意味で、eNPSも参考にしたいですね。社員の満足度がお客さまの満足度につながるというのは、いつも考えております。
― マガシークは、2013年にNTTドコモと資本提携されていますが、その前と後で、大きく変わったところがありますか。
井上 : NTTドコモさんがd fashionを始めるに当たり、マガシークと組めないかというお話をいただいての提携だったのですが、d fashionはゼロから立ち上げたので、すぐに大きくはならないだろうと思っていました。しかし、NTTドコモからの集客がうまくいき、マガシークの売上に迫る勢いでd fashionが伸びています。
結果的に売上が短期間で2倍になり、売上げがよくなったことで品ぞろえもよくなって、お客さまの満足度も上がるという、いい循環が作れていると思います。マガシークはもともと“MagazineをSeekする”ということで女性誌とコラボレートしていたので、お客さまは9割以上が女性ですが、d fashionでは男性が3割くらい購入しています。
― 最後に、今後の事業を伸ばしていくための構想をお聞かせいただければと思います。
井上 : 弊社はマルチサイト戦略をとっていますので、d fashionではマスも含めて展開し、大きく拡大していきたいと思います。一方マガシークは、ターゲットをある程度高級なライフスタイルを求めていらっしゃる方に絞っていきながら、マガシークだけで購入できる商品を増やして、世界観によりエッジを立てていきたいですね。
― 今日はありがとうございました。
アパレルECサイト6社のNPS(ネットプロモータースコア)およびロイヤルティ要因についての分析レポートです。
推奨者や批判者などのセグメント別年間購入金額の分析や、新型コロナウイルス下での「お薦めしたい」気持の変化など、掲載しております。是非ご一読ください。