2019/05/15

【NPSトップ企業に聞く顧客ロイヤルティ向上の秘訣2018】

不動産情報サイト部門 第1位 SUUMO(株式会社リクルート住まいカンパニー)様【前篇】
~納得感ある物件とコンシューマーとの出会いを提供するためにSUUMOは進化し続ける~

NPSベンチマーク調査2018、不動産情報サイト部門で2年連続の第1位に輝いたSUUMO(株式会社リクルート住まいカンパニー)。一般消費者であるカスタマーと、企業のお客さまであるクライアントの双方から高い評価を得ている同社の、NPS施策についてお伺いしました。インタビュー前篇では、SUUMOのカスタマー接点を担うプロダクトデザインユニット長の若林様から、エンドユーザー向けの観点で支持され続けるSUUMOの進化の秘訣を、後篇では、執行役員の三好様から、企業のお客さまからの高い評価の背景にある、NPSの活用によるスピード感あるPDCAが回る世界観をお伺いしました。

納得感のある物件との出会いを全力でサポートし、お客さまの声から新機能が生まれる

― 今回のNPSベンチマーク調査において、不動産情報サイトでSUUMO(株式会社リクルート住まいカンパニー)様が2年連続の1位を獲得されました。誠におめでとうございます。
最初に、ご担当されているエンドユーザー向けの領域で、SUUMOの事業の目標や方針、それに基づいてどういうサービスを提供されているか、お聞かせいただけますか。

(左)株式会社リクルート住まいカンパニー ネットビジネス統括本部 プロダクトデザインユニット ユニット長/役員 若林 一寿 様
(右)NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社 代表取締役社長 塚本 良江

(以下敬称略)

若林 : リクルート住まいカンパニーの掲げているビジョンとしては、住まい探しを中心に暮らしを進化させることで、幸せになる方々を増やしていきたい、というところになります。その中で、SUUMOという住まい探しのメディア、ポータルサイトにおいては、具体的に住まいを探している一人ひとりのカスタマー(コンシューマー)が、自分に合った納得感のある物件と出会えることというのを、ひたすら愚直に実現していき、出会いのサポートに尽力しています。

― 若林様はSUUMOのプロダクトデザインを取りまとめていらっしゃるということですが、企画設計にあたり最も大事にされていることはどのようなことでしょうか。

若林 : 住まい探しは、楽しいけれどやはり大変ですよね。例えば、住みたいエリアや家のイメージがあっても、予算が合わないことがわかった時に、振り出しに戻ってしまったり。様々なことで迷い、悩みながら、時間をかけて探す方が多いと思います。私たちは住まい探し本来の「楽しさ」にフォーカスできるように、カスタマーの「大変さ」を取り除いていきたいのです。
そのためには、物件情報を求めるカスタマーが自ら細かな検索条件を指定して探すことを繰り返す状態よりも、カスタマーが求めていそうな条件や、あるいは物件を提示、提案できることが大事になってきます。カスタマーに寄り添って、例えば、今探しているエリアでは予算オーバーの物件が多かった時に、実はお手頃な物件が近くのエリアにありますよ、といったサポートができると、良い物件との出会いを増やせると考えています。

― 寄り添うという意味では、カスタマーの声をつぶさに聞くことや、そこから潜在的な要望をくみ上げることも非常に重要かと思います。カスタマーの声を聞く姿勢は、NPSの考え方の中でも非常に重視している点でもあります。お客様の声に耳を傾け、それが実際の改善につながった例はありますか。

若林 : カスタマーの声を聞くために、日々色々な調査を行い、結果を分析しています。ポップアップアンケートの形で、NPSなどのデータもとっておりますし、定性調査もしています。
カスタマーの声から生まれた新サービスの一例としては、住まい探しをする際の課題感として、「オンライン上にある物件情報だけでは足りない」、「写真だけでは物件の中の様子がわからない」という声が一定数見られました。その声を別の観点で分析していくと、写真では物足りないので内見したいが、内見に伴う物理的・心理的ハードルが非常に高いので、住まい探しから離脱してしまう、ということが分かりました。
そこで、テクノロジーを活用することで課題を解決できる可能性があるのではないかと考え、昨秋「3Dウォークスルー機能」をリリースしました。物件を「写真で見る」というところから一歩進み、バーチャルに物件の中を内覧しているような体験ができる機能です。動きがスムーズで、画質も素材の材質までわかるようにしています。オンライン上で物件の隅々まで歩き回る疑似体験ができます。自分に合った物件かをより詳しく確認した上で、実際に足を運ぶことができるという効果が期待できます。

NPSを含め、あらゆる指標を参考に、「愛され続ける」サービスをデザイン

― SUUMOのウェブサイトやアプリの制作運営にはどのような部署が関わっているのでしょうか。

若林 : まずはカスタマーの集客を担当する「マーケティング」担当がいます。そして私が担当する「プロダクトデザイン」担当は、カスタマーがいかにスムーズに、自分に合った物件と出会えるか、最後のアクションまでたどり着けるかという点を研究し、企画設計をおこないます。そしてそれを実装する「開発」担当と、データ分析をする専門性の高い「データサイエンス」担当がいます。そしてこれら全体を統括するのが、「プロダクトマネジメント」担当です。

― 今回のNPSベンチマーク調査のコメントで、使いやすさに関する評価が非常に高かったのですが、プロダクトデザインをリードされている中で一番大事にされていることは何でしょうか。

若林 : プロダクトデザイン担当として、ユーザー、つまりカスタマーやクライアント様から愛されるサービスを仕立て続ける、というミッションを掲げています。それを愚直にやりきることです。

― 愛されているかを理解するために、どのようなカスタマーの評価を参考にするのでしょうか。

若林 : NPSも当然そうですし、あらゆる指標に「愛されているかどうか」が表れていると考えています。コンバージョンレートでいえば、アクションが増えるということは、SUUMOをご利用いただく中で、ちゃんと納得感をもって物件や会社を選んでいただけたということですし、次にまた使いたいと思っていただいた結果がリピート率などに表れてきます。ごく当たり前のことですが。

「アイディアは誰からでてもいい」若手もエンジニアもアイディアを出し合い、ベストを尽くす

― 愛され続けていらっしゃるからこそ、本調査でも非常に高評価だったと思うのですが、ユーザビリティのよさやUXのよさ、というのはどのように実現されているのでしょうか。

若林 : 弊社の特徴とも言えますが、一つは、すでにご利用いただいているカスタマーや、企業のクライアント様がたくさんいらっしゃるので、データが質・量ともに豊富にあります。そしてそのデータを活かせる組織と人材がいるという点です。組織や人材の強化には非常に力を入れていまして、専門性を高めるための実践的な勉強会も数多く行っています。
また、部署によって担当しているセクションが分かれていますが、かなりシームレスで、フラットです。企画・UXデザインの担当者は、1つ1つの仕様に対して、ユーザーニーズから裏付け・理由づけをしながら設計しますが、エンジニアから意見が出ることも多々あります。「アイディアは誰から出てもいい」というカルチャーが浸透しているので、新技術を取り入れるきっかけが「この技術が活用できそうです」という若手エンジニアの声からということもあります。

― 最先端のテクノロジーの見つけ方や、取り入れるときの判断はどうなさっているのでしょうか。

若林 : 取り組むタイミングが重要だと思っているので、そこはある意味シビアです。新しい技術、その活用方法が、現時点で実用に耐えうるか、潜在的なカスタマーニーズ、クライアントニーズに火が点くタイミングはいつ頃になりそうかといったことを精査しながら取り組んでいます。

カスタマーが住まい探し本来の「楽しさ」を感じられるように、伴走し続けるパートナーでありたい

― 新規の企画や、改善のための修正など、完成するまでに何回くらいレビューを繰り返されるのでしょうか。

若林 : ユーザーニーズに沿った筋の良い打ち手であれば、1回で決まります(笑)。レビューの回数は特に決まっていませんが、例えば、ある1つの画面のユーザビリティを改善する内容であれば、多くても2、3回ですね。
ユーザーにとって良い企画になっているか、良いデザインになっているかは、合理的に判断できます。データやカスタマーの生の声を分析して、「どんなニーズの何を改善するべきか」がしっかり特定できていれば、あとは合理的、客観的に決まっていきます。

― 今後、積極的に取り組みたいことはどんなことでしょうか。

若林 : 冒頭の話にも通じますが、住まい探しの「不」をなくすことです。不便、不満、不安を極力なくし、住まい探し本来の楽しさが感じられる状態にしていくことです。いつでもカスタマーのそばに伴走する「住まい探しのパートナー」であり続けられるよう、研鑽を続けていきたいです。

― どうもありがとうございました。

NPSベンチマーク調査レポート最新版【不動産情報サイト】

NPSベンチマーク調査レポート最新版 2019年
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