2019/05/17

【NPSトップ企業に聞く顧客ロイヤルティ向上の秘訣2018】

総合型旅行会社部門 NPS 第1位 株式会社ジャルパック様
~NPS導入を通じて、よりきめ細やかにお客さまの声を吸い上げ、アクションにつなげたい~

NPSベンチマーク調査2018、総合型旅行会社部門 で2年連続の第1位に輝いたジャルパック。今回は、代表取締役社長の江利川様、執行役員 顧客サービス本部長の石濱様、NPS導入に携わる顧客サービス部の山田様、巽様に、お話をうかがいました。

「オンライン」「直販」という変革の流れの中で、旅行会社が勝ち残るには

― 今回のNPSベンチマーク調査において、総合旅行会社部門でジャルパック様が2年連続の1位を獲得されました。誠におめでとうございます。江利川様は社長ご就任後9か月ほどとのことですが、ジャルパックについてお感じになられていることや、今後の方向性についておうかがいさせてください。

(左)株式会社ジャルパック 顧客サービス部 部長 山田達 様
(中左)株式会社ジャルパック 代表取締役社長 江利川宗光 様
(中右)株式会社ジャルパック 執行役員 顧客サービス本部長 石濱文子 様
(右)株式会社ジャルパック 顧客サービス部 安全・CS推進グループ長 巽匡伸 様

(以下敬称略)

江利川 : まずは2年連続1位を頂戴しまして、心から御礼申し上げます。おっしゃる通り就任から日が浅いこともあり、日々頑張ってくれているジャルパック社員、支えてくれているJALグループ全社員、同時に長年お付き合いいただいている世界中のお取り引き先さまのおかげだと改めて感じております。
私自身は就任まで30数年間エアラインに携わる一方、旅行業界では新参者です。ただ、それゆえに強く感じるのは、テクノロジーの進化、お客さまの消費行動の変化、日本では少子高齢化といった問題の中で、旅行業界の業界構造自体が大きな変革期にあるということです。
今年はジャルパックというブランドが生まれて55周年という節目の年ですが、伝統も重んじつつ、変革し、成長することが大事だと考えています。

― 旅行業界における変革の最たるものはどういったことでしょうか。

江利川 : ITの進化によって、旅行の手配を旅行会社に頼らず、お客さま個人で行う流れが加速しています。エアラインや宿泊施設などのサプライヤーサイドが、より高い収益性を求めて直販へシフトしている状況もあります。オンライントラベルエージェントや価格比較サイトといった、30年前には考えられなかったような業態も登場しています。その変化の中で、どこにポジションを置き、勝ち残っていくかは、我々も含め旧来型の旅行会社全体が抱えている大きな問題なのです。
旧来型の旅行会社の中でも、私たちは「JALグループの旅行会社」という非常にユニークな立場であり、一義的なミッションとして「JALの航空座席販売」があります。航空座席には限りがありますから、薄利多売でいたずらに規模拡大を目指すのではなく、私たちだからこそ提供できる付加価値を自ら明確にして、そこに磨きをかけることを追い求めています。
その一方で、もちろん変革にも取り組んでいます。例えばオンライン販売では、 JAL の航空座席と宿泊のみを組み合わせた国内旅行商品「ダイナミックパッケージ」が、お客さまに非常にご支持をいただいています。そこで、ユーザビリティを向上させたり、レンタカーなどのオプション需要にも細やかにお応えしたりできるよう、システム投資などにも力を入れているところです。

CSからNPSへの切り替えを通じ、お客さまの声をアクションにつなげる

― 現状のジャルパックのお客さまですと、リピーターと新規はどちらが多いのでしょうか。

石濱 : リピーター率が高いですね。「ダイナミックパッケージ」のような商品は、毎月のようにご利用いただいている方もいらっしゃいます。

江利川 : 昨年からジャルパックのお得意様をロイヤルティマネジメントさせていただく、数千人規模の「ロイヤルクラブ」をスタートさせました。ただ、JALはマイレージバンク制度の中でさまざまな施策をとっており、会員も世界で3000万人を超えていますから、その中にはジャルパックの潜在的なリピーター候補もまだ何百万人もいらっしゃると見ています。次なる課題は、こういった皆様にどういうセグメントでどういう施策を打っていくかですね。

― NPSをこの4月から導入されるとお伺いしています。JALグループとしても昨年からNPSを導入されていらっしゃいますよね。

江利川 : そうですね。グループ全体の代表的な指標として、NPSを追い求めていこうということは方針として決まっております。私たちもNPSを導入することで、JALのエアーとしての評価、ジャルパックのエアーを使った商品の評価を同じ基準でみていけるので、いい流れだと考えています。

― NPS導入に当たり、CSとの併用ではなく、完全に切り替えられたそうですね。併用する企業も多い中で大きな決断だったとお見受けしますが、そのきっかけは何だったのでしょうか。

石濱 : もはや「旅行」と大雑把にとらえればいい時代ではなくなりました。旅先の方面や、国内か海外かによっても事情は違いますから、そこで細かくやり方を変えてニーズに対応することが求められています。そういった中で、細かく質問を変えながらお客さまのご意見を聞けて、打ち手がわかるNPSは、非常に魅力がありますね。もちろん旅行商品を作る担当者は「できる限りお客さまの声を聞いて、反映したい」と考えていますが、弊社は直接販売のカウンターなどが少ないので、お客さまと対面の接点を持つことが難しい。
NPSで細かくお客さまの声を聞けることはかなり大きいのです。

― CSからNPSへ舵を切られる理由は何でしょうか。また、NPSを導入されるにあたり、KPIとして計測しトラッキングしていくだけでなく、NPS向上に向け、データを関係者全員で共有し、またPDCAを継続的に回すことを支援するシステム(NPX Pro)もあわせて導入されます。システムを導入するに当たり、どのようなことを期待されていますか?

山田 : これまでのCS調査はいわゆる自社のパッケージ商品だけが対象でしたが、NPX Proが導入されると、他社と提携しているダイナミックパッケージなどの事業領域もカバーできるようになります。それも、推奨度が測れるようになったというのは非常に大きいと思います。
回答率にも期待しています。これまでは60問以上あり、記述式の項目も多いので、ご回答に20分から30分かかっていました。商品企画の社員などが細かく聞きたがる一方で、回答するお客さまの煩わしさを実感できておらず回答率をあげるためどうすべきか悩んでいました。
NTTコム オンラインのコンサルティングを受ける中で、NPS調査の平均的な回答時間は3分から5分だとお伺いして、まず設問をどう絞るか、何を聞きたいかを明確化することが重要な課題という認識をもちました。もちろん社内からの要望はありますが、それをいかに絞ってお客さまが回答しやすいアンケートを作るか、今まさにご相談しているところです。

: 今、まさに設問設計の最終段階にあるのですが、お客さまにアンケートを聞くだけではなく、アンケート結果を受けて、どのように改善アクションへつなげるかまで考えなければならないので、難しいけれどもやりがいを感じますね。

― 導入にあたり、組織へはどのように浸透させていきますか。また、どういった方がNPX Proを利用されるのでしょうか。

江利川 : NPX Proに集まってくるデータは、社員500人全員が見ます。JALでもそうなのですが、全社員が目にして、日々意識していきます。

山田 : また、組織への浸透については、まずは様々なレベルで社内説明会を実施します。

石濱 : 初年度に、これまでの調査から看板を架け替えただけではないという結果を出すには、相当密に現場とやっていかないと思いますし、そうしないとNPSを活用できないと感じております。そこが、私たちのチームの2019年の大きなチャレンジだと思っています。

事業の成長と「お薦めしたい」サービスを通じて、若い世代に旅行業の魅力を伝えていく

― 江利川社長がNPSに期待されるのはどのような点でしょうか。

江利川 : 我々の課題認識として非常に大きいのが、現在ご利用いただいているお客さまの年代層が比較的高めであること。若年層をカバーする品揃えもあるものの、認知度が追い付いていないということです。
我々の商品は基本的に旅行会社で代理販売していただくか、もしくはオンライン販売です。そこで新たな顧客層を開拓していくには、NPSでいうところの「他者推奨」、つまりお客さまから「こんなことがあって、ジャルパックはいいよ」と薦めていただくことが、重要なポイントだと私は考えています。特に若年層は口コミの波及力が高い一方で、CMや広告を見なくなっていますから、一層重要です。

― CMや広告に代わる若年層向けの施策にはどのようなものがありますか。

江利川 : 社内で若手社員の委員会を設けてヒアリングなどを行ったり、産学連携で学生さんの力を借りながら商品開発をしたりと、若年層にジャルパックを認知していただく取り組みも、昨年から始めています。こういうことは即効性ある打ち手でうまくいくものではありませんから、長い取り組みがまさに今スタートしたというところですね。

― 今後作っていきたいジャルパックの姿についてお聞かせください。

江利川 : 個人的にではありますが、旅行業界に熱意を持っている若い世代が、以前と比べると少し減ってきている印象はあります。そこで、我々が収益性と成長性にこだわることによって、若い世代にも「この業界で働いて、お客さまに夢や感動を提供したい」と思ってもらえるモデルになりたいと考えています。
実は、ジャルパックのブランドデザインとして「10年後どうありたいか」を今まさに探っているところです。
ひとつは「よりグローバルな旅行マーケットに挑戦していく」、また伝統に安住せず「お客さまにとっての新たな価値を創造して、お届けしていく」、そして「常に成長を目指していく」ということを考えています。
もちろん、JALの航空座席数は増えるといっても限りがありますから、急激に2倍、3倍の規模を目指すということはないですけれども、それでも常に成長を目指していこうと思っています。

― NPSも主軸の一つとしながら、今後着実に成長していかれることを願っております。本日はありがとうございました。

NPSベンチマーク調査レポート最新版【総合型旅行会社・ネット専業型旅行会社】

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【総合型旅行会社・ネット専業型旅行会社】

総合型旅行会社8社およびネット専業型旅行会社6社のNPS(ネットプロモータースコア)およびロイヤルティ要因についての分析レポートです。
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