2020/08/06

【NPSトップ企業に聞く顧客ロイヤルティ向上の秘訣2019】

通販化粧品部門 第1位 株式会社ファンケル様
~顧客ロイヤルティの高いお客さまとの関係性を深め、一層の事業成長を実現するNPSに高い期待~

NTTコム オンラインNPSベンチマーク調査2019の「通販化粧品部門」で1位となった株式会社ファンケル。競争の激しい通販化粧品業界において、顧客ロイヤルティの高いお客さまとの深い関係性の構築を柱に、一層の事業成長を目指していらっしゃいます。そのためのお取り組みや、お客さまの声に耳を傾ける企業文化、NPSに期待する点など、幅広くお伺いしました。

継続的な事業成長を目指し、顧客ロイヤルティの高いお客さまとの関係性を深めていく

―この度は受賞、おめでとうございます。通販化粧品部門は非常に競争が激しく、毎年順位が入れ替わるのですが、今回、1位をお取りになられた最大の理由はどこにあるとお考えでしょうか。

インタビュー受け手:
株式会社ファンケル 通販営業本部 営業企画部 部長 長谷川 敬晃様

長谷川 : これまでも真摯にお客さまと向き合ってきた自負はありましたが、ここ2、3年は、特に深くご愛顧いただいているお客さまに対しての向き合い方を見直しました。ロイヤルティの高いお客さまをこれまで以上に大事にするという取り組みに重点を置く戦略を立て、2019年4月から通販店舗共通の会員サービスを抜本的に刷新しました。具体的には、年間購入金額で変わるポイントサービスにおいて、多くご購入されている方にはこれまで以上にポイントが還元される新しいステージを用意し、さらに高いステージの方には誕生月にスペシャルなプレゼント差し上げるといったサービスなどです。このような形で、お客さまとさらに深いつながりや関係性を築くといった取り組みが、他のお客さまに当社の製品を薦めていただけることにもつながり、NPSの調査結果に反映されたのではないかと考えています。

―顧客ロイヤルティが高いお客さまほど手厚いサービスをご提供するという形にされたということですが、施策をシフトされた理由は何でしょうか。また、比較的ライトなお客さまからご不満が上がってくることはなかったのでしょうか。

長谷川 : 近年、異業種からの新規参入の増加も含め、通販化粧品の市場の競争環境が激化してきたことがあります。今後も事業を伸ばしていくためには小さな変化ではなく、抜本的に視点を変えないといけないのではないか、ということで、通信販売のメンバーを中心に1年ぐらい喧々諤々、議論をしました。その結果、今後の事業成長のためにはファンケルを好きなお客さまを増やすことに注力し、好きになっていただいたお客さまには我々とずっと一緒にいていただけるようにしようという結論に至り、使命感を持って改革に乗り出しました。
お客さまの公平性に関しては、導入前は社内でも賛否両論あったのですが、結果的にご不満の声はそれほどあがってきませんでした。年間購入金額別にステージを設定しているのですが、その金額設定の仕方も、お客さまの声をお聞きしながら、向き合って考えてきたところもあり、多くのお客さまにご納得いただけるような形になったのではないかと思います。

―お客さまの方でも、公平に扱われるのではなく、長いことファンケルとお付き合いしている方は、大事に扱ってほしいという想いがあったのかもしれません。

長谷川 : それもあったと思います。長くご愛顧いただいているお客さまの中には、化粧品と健康食品を合わせてかなりの額を購入してくださる方も数多くいらっしゃいます。現状、年間購入金額の一番上のステージは10万円以上となっているのですが、そのようなロイヤルティの高いお客さまほどお喜びいただいており、ご購入金額もさらに増え、LTV(注:Life Time Value(ライフ タイム バリュー)、顧客生涯価値)も上がるようになりました。

お客さまの声が絶対の企業文化

―お客さまの声はどういうかたちで拾い上げ、社内でどのように共有されているのでしょうか。

長谷川 : 弊社はお客さまの声をとても大事にする文化が昔からありまして、電話窓口のほとんどは自社の社員で運営しています。これは、ファンケルの文化をしっかりと持った社員がお客さまの声と真摯に向き合い、自分たちが出来ることを最大限実行するという考えに基づいています。電話窓口にいただいたお客さまの声は全てデータベースへ登録することになっており、週に1度、社長以下役員等が揃う会議を通じて、全社員にフィードバックされる形になっています。
お声の分析・集約は人の手で行っているので大変ではありますが、そこが我々のコアになる部分だと考えています。厳しい意見を含めてあらゆるお声を吟味し、それを元に軌道修正していきます。お客さまの意見は絶対で、お客さまに受け入れられてこそ、という、会社としての文化が根付いています。

―VOCの一連の仕組みの中で、NPSは活用されていらっしゃいますか。

長谷川 : NPSについては、これまで定点的に調査をしたことはありましたが、今後は、本格的に取り入れていきたいと考えています。お客さまとの向き合い方を考えたときに、我々のマーケティングの基本を、数のマーケティングではなく、お客さまとどれだけ深くお付き合いできるかという深さのマーケティングにしていきたい、と思っています。関係性の深さを追い求めていくことは数値的に測りにくく、どれくらい深くなったのか、というのは可視化が難しいのですが、NPSならできるのではないかと思っています。
関係性が深い、ロイヤルティの高いお客さまは、LTVも高くなる傾向が見られます。どのような施策を打ったらお客さまとの関係性が深まり、NPSがあがるのか、何がNPSに影響を与えるのか、といった関係性を捉えて、NPSを今後の営業活動のベースにしていきたいと思っています。

社内を巻き込み顧客ロイヤルティ重視の戦略を実現

―NPSやVOC改善活動を行う中では、全社員が想いを共有することが必要かと思いますが、ご苦労されているところはありますか。

長谷川 : やはり企業として売上は上げなければならず、キャンペーン的なもので短期的な売上アップを目指すこともあります。一方で、NPSやロイヤルティを向上させるためのマーケティングはより中長期的な売上向上であるため、どちらを優先すべきかという点は議論になります。ただ、今回の方針転換にあたり、これまでの数十年分のマーケティング活動を分析してみたところ、ロイヤルティ重視の活動もバランスを取ってやっていかないと、長い目で見た時になかなか伸びていかないということが分かってきました。そういった分析結果も共有して、社内で理解を得ながらこれらの取り組みを進めています。

―大きな判断が必要な場面では、社長や役員など、経営側のコミットメントが求められると思いますが、そこはいかがですか?

長谷川 : 数字で語る必要があるので、影響度などは出来るだけ数字で示して、理解を得るようにしています。同時に、熱意を持った明確な意思として“お客さまと向き合ってやっていくために、我々はこういう付き合いの仕方をしたいと考えています”ということも伝えています。現場でやっているメンバーが、どういう意思を持ってお客さまと接しようと思っているか、どういうコミュニケーションを取ろうと思っているかという点を理解してもらえるように意識しています。

NPSを通じ、お客さまの顧客ロイヤルティ向上と、成果の可視化を目指す

―NPSの考え方には、顧客ロイヤルティが高い、推奨者の方たちが発信する本音の口コミが、新しい顧客を生むというものがあります。新規のお客さま獲得の際に、口コミを活用することもあるのでしょうか。

長谷川 : ファンケル通販の新規のお客さまは、お試しセットと言われるようなトライアル商材で獲得する手法を多くとっています。そこでは弊社の思想や商品価値を感じてもらえるようなメッセージの出し方をしつつも、実際にご購入いただいたお客さまからの口コミも掲載し、購入の後押しに活用しています。この活動で継続性が高いお客さまを獲得出来ているので、さらに育てていこうと思っています。
同時に、ロイヤルティが高いお客さまには、アンバサダーとしてインスタグラムやツイッターを中心に情報発信をしてもらっており、SNS上で弊社の商品の口コミを多く目にしていただくことが新規のお客さまの獲得にもつながっています。

―NPSを今後展開されていくにあたり、NPSに期待されていることはありますか。

長谷川 : ちょっと大きい話ですが、NPSという手法がお客さまご自身も含めて社会に浸透すると、我々だけでなく、世の中がもっとよくなるような気もしていて、そういうNPSの認知度向上に対する期待感はあります。例えば、NPSの評価を意識しながらウェブサイトが作られたり、NPSが高いウェブサイトだからという理由でお客さまに利用されたりすると、結果としてお客さまにとって優良な会社だけが生き残っていける社会になっていく、といった意味合いです。
一方で、当社の活動においては、NPSの手法と当社の指標とを組み合わせて、どううまくKPI化できるかをまさに今考えています。我々の営業活動としては、NPSを活用して、売上以外の部分も見える化をしていくことで、お客さまを育て、ファンになっていただきたいと思っています。例えばNPS中立者の方たちのロイヤルティを上げて推奨者になっていただくと同時に、それを見える化して、社内でも数字的な成果を共有していきたいと考えています。

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