2020/10/05

【NPSトップ企業に聞く顧客ロイヤルティ向上の秘訣2019】

不動産管理会社(マンション)部門 第1位 三井不動産レジデンシャルサービス株式会社様
~NPSを活用し、お客様の変わりゆくニーズに応える~

NTTコム オンライン NPSベンチマーク調査 不動産管理(マンション)部門で第1位となった三井不動産レジデンシャルサービス株式会社。時代とともに変わるお客様のニーズに応えるべく、お客様とのコミュニケーションの最大化を図られています。顧客ロイヤルティ向上のためのNPS活用の仕組みや、社内での浸透方法についてお伺いしました。

より良い暮らしをサポートするマンション管理を目指す

―ご受賞おめでとうございます。最初に、御社の事業概要や、三井不動産グループ全体における貴社の位置づけを教えてください。また、今回お客様から評価されたのは、どのような点だとお考えでしょうか。

インタビュー受け手:
三井不動産レジデンシャルサービス株式会社 取締役常務執行役員レジデンシャル営業本部長 山村 勝治様

山村 : この度は、ナンバーワンを頂戴いたしまして、身に余る光栄でございます。
 当社は、三井不動産グループの一員としてマンション管理事業を担い、マンション管理のハード面とソフト面、つまりお客様の「すまいとくらし」を担うというミッションのもと、関連子会社総計で約28万戸のマンション管理業務をおこなっております。
 私たちの仕事は、物を作り販売することではなく、お客様へサービスを提供することであり、一番の資産財産は”人”だと考えております。そのため、お客様の窓口となる担当者(フロントマネージャー)あるいはお客様と日常的に接する管理員やコンシェルジュなどの現場スタッフ等、人への投資に非常に高いウエイトを置いています。今回の調査結果でも、特にこの“人”に関する項目で高い評価を頂くことができ、大変嬉しく思っています。

お客様とのコミュニケーションと、それを支える“人”の育成を重視

―お客様が評価されるポイントとしては色々あるかと思いますが、その中でも、”人”にフォーカスしていらっしゃる意図はどのようなものなのでしょうか?

山村 : 最大の背景は、「お客様のマンションへの永住志向が高まったこと」です。以前は、”いずれは夢の一戸建て”という考え方が一般的で、マンションに永住したいというお客様は決して多くありませんでした。それが、国土交通省の調査によれば今日では6割以上の方がマンションへの永住志向を持っていらっしゃいます。そうなると、管理会社としても、従来の建物のメンテナンスを中心とした業務からの進化が必要で、「今の住まいでずっと暮らしたい」とお考えのお客様にいかに満足していただけるようなサービスを提供させて頂き、顧客ロイヤルティをあげることで、長期的な関係を築いていくことがより重要となります。お客様と信頼関係を構築し、末永く当社をご支持いただくためにも、お客様とコミュニケーションを積極的に図り、お客様ニーズに対して的確なサービスを提供させていただくことが重要です。そのためにも、お客様と直接かかわり、サービスを提供していく”人”が、非常に重要な役割を占めるということです。

―“人”のお話もありましたが、マンションの管理業務をされる中で、特に力を入れているのはどのようなところでしょうか。

山村 : まずは、お客様とのコミュニケーション機会を増やすことです。お客様の暮らしのお役に立てるサービスをご提案していくためには、理事会のみなさまだけでなく、そのマンションに居住されている一人ひとりのお客様とコミュニケーションを図っていく必要があります。そのためには、現地の管理員だけでなく、会社全体の取り組みとして積極的にお住まいの皆様にアプローチし、例えばイベントや相談会などをご提供しながら多くの接点を設けさせて頂いたりしています。
 2つ目の取り組みは先ほどと関連しますが、”人”にどう投資をするかということです。従業員に教育や研修を通じて学びや気づきの場を提供し、お客様の永住志向にお応えできる力を育成することを重視しています。
 3年前に、社屋の中に“すまラボ”というマンション管理業務を中心としたすまいとくらしに関する体験型研修施設を作りました。営業担当者や現場の管理員だけではなく、協力会社の皆様も一緒に勉強するような機会を提供しています。
 また、”すまラボ”では、非常ベルを押してみる、あるいは消防ホースを使ってみるといった防犯・安全の研修を実体験することができますので、社内だけでなく、お客様にもご利用いただいております。地元の消防署などともご一緒しながら、”すまラボ“を通じて、お客様とのインタラクティブなコミュニケーションも生まれています。2018年には、この”すまラボ”が提供するサービスが地域コミュニティ形成の一助を担ったことが評価され、グッドデザイン賞を頂戴することも出来ました。

NPS調査から、お客様の思いを可視化し、アクションにつなげる

―お客様とのコミュニケーションを深めることで顧客ロイヤルティを向上することに、マンション管理の軸足を置いていらっしゃいます。どのようにお客様の思いを把握し、改善を図っているのでしょうか。

山村 : まだまだ私たちも勉強中ですが、マンション管理業界全体としては、まだまだ建物のメンテナンス等のハード面にウエイトが置かれていると感じています。当然、それはマンション管理業務の基本であり大変重要なところです。一方で「当たり前の品質」をご提供するだけでは、最高でもNPSにおける8点の評価にとどまってしまうということだと思います。9点、10点をつけてくださり、当社を他の方に推薦したいと評価してくださる推奨者の方々を増やしていくためには、やはり永住志向をお持ちのお客様の「すまいとくらしのニーズにお応えできるサービス」をご提供し、「三井不動産レジデンシャルサービスが管理するマンションに住んでよかった」と思っていただく必要があると捉えており、そのために努力をしているところです。
 そして、お客様の期待に対しどうお応え出来たか、何に高い評価を頂いているのかを測るのが、まさにNPSだと考えています。お客様の思い、感じていらっしゃることを数値化していくということは、とても価値がありますので、弊社においても7年ほど前からNPS調査を実施しています。

―NPSのアンケート調査で集められたお客様の声を捉え、活用していく仕組みを教えて下さい。

山村 : 当社では2013年からアンケートを開始し、現在は、2019年4月に新しく立ち上げたCS戦略推進部が中心となって行っています。CS戦略推進部は、お客様にロイヤルカスタマーになっていただくための施策推進の役割を担っており、それを起点にしてお客様に対する具体的なサービスを関係各部にて企画、実行しています。
 弊社が行うNPSアンケートについては、CS戦略推進部にて、結果を分析し、関連部門を回ってその内容を伝えていきます。各部門のNPSの結果や、上昇率ナンバーワンの部門、NPSベストテンのマンションなどを共有し社内浸透を図っています。
 その後、特にお客様と直接接点を持つ営業部門は、アンケート結果により把握した課題や、それらに対するお客様の評価を振り返り、課題解決に向けて目標を設定し、改善のアクションに繋げていくようにしています。それを1年間の目標として取り組んだ後、またアンケートを実施してお客様から評価を頂戴する、というサイクルで実施しています。

―顧客ロイヤルティを測る指標として、NPSのどのような点を評価していらっしゃいますか。

山村 : NPSの指標では、推奨度合いを通じて、絶対的な満足感を測ることが出来るのが素晴らしいと思います。三井不動産グループに任せれば、暮らしやすく、良い品質と良いサービスが得られる、と思って頂くためには、9点、10点をきちんと頂戴できなければいけない。実際、新たな取り組みで、推奨度が倍増した支店もあります。

―どのようなときに大きくNPSが上がるのでしょうか。

山村 : 一本の決定打は無いと思います。当社の仕事はお客様との長いお付き合いによるものであり、その成果としてNPSが上がると思っています。それには日常からのお客様とのコミュニケーションや様々な提案の積み重ねが大変重要であるとともに、例えば三井不動産グループの商業施設がオープンすると、「是非行ってみませんか」と無料送迎バスを運行させたり、よろず相談所のように、特定の目的を設けずに当社担当者がお客様のお役にたてることを伺うキャンペーンを展開してコミュニケーションを図ったりと、様々な工夫も行っています。
 お客様との接点が増えれば、必然的に次はこんなことをやってほしい、といったフィードバックを頂くことが出来、次につなげることができます。このように成功事例が出てくると、必ず全体のNPS向上にもつながっていきます。

NPSの活用を通じて、さらなる顧客ロイヤルティ向上を目指す

―“三井のすまいLOOP”という会員サービスを提供されていますが、このサービスが御社の顧客ロイヤルティ向上、満足度向上の中で占めている役割を教えてください。

山村 : まさに、お客様のすまいとくらしのお役に立てるサービスの一つとして、三井不動産グループ全体で展開しているサービスです。お客様のニーズやその変化を捉えながら様々なサービスを広く提供しています。
 “三井のすまいLOOP”の大きな目標は、お客様のすまいとくらしにお役に立ちながら三井不動産グループのリソースや、コミュニケーションツールを活用しお客様のニーズに的確にお応えすることで「三井に住んでよかった」というロイヤルティやシンパシーを感じて頂くという点になります。三井不動産グループとしては、引き続き大きく”三井のすまいLOOP”を育てていくことで、お客様との接点を長く持ち、より良いすまいとくらしの実現に向けたお手伝いをしていきたいと考えています。

―今後の御社の顧客ロイヤルティ向上に向け、NPSに更に期待されるところを教えて下さい。

山村 : NPSの活用に関しましては、これまでのやり方に加え、もっとタイムリーに理事会様などお客様の満足度を知りたいといった課題も出てきています。今後は、新しいやり方を組みあわせて、さらなる改善を目指していきたいと考えています。
 同時に、今回、お客様のニーズや課題に対し私たちがコンサルティングやサービスのご提案を行ってきたことを評価頂いたということは、大変嬉しいことです。まだまだ課題は多いですが、NPSをプラスにしていくことを目指していきたいと思っています。

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