2020/04/15

【NPSトップ企業に聞く顧客ロイヤルティ向上の秘訣2019】

総合型旅行会社部門 第1位 株式会社ジャルパック様
~NPSのクローズドループ活動を社内に浸透させ、全社員がお客さまに寄り添う企業風土を醸成~

NTTコム オンラインNPSベンチマーク調査2019の「総合型旅行会社部門」で3年連続第1位となった株式会社ジャルパック。お客さまに寄り添う企業風土作りを目指し、江利川社長自らNPSの社内浸透をリードしてきました。NPS指標の導入と同時に、弊社の提供するNPS向上のためのクラウド・ツール「NPX Pro」の利用を開始。システムの導入によって、NPSスコアやお客さまからお寄せいただいたアンケート回答や分析結果を迅速に共有することが可能になりました。その結果として、全社員による改善活動を推進されています。ジャルパックならではの安全・安心、そして品質を大切にした「いい旅、あたらしい旅。」づくりに向けて、お客さまの声に応えていく。そのための社内の取り組みや、今後の方向性についてお伺いしました。

経営幹部がNPSについて議論を交わし社内浸透を促進

―3年連続のナンバーワン、おめでとうございます。1年前にNPS(指標)を導入され、また同時に、NPSを活用した顧客ロイヤルティ改善のクローズドループを回すために、弊社の提供するNPS向上のためのクラウド・サービス「NPX Pro」をご活用いただいています。NPSを始めるにあたり、期待されていたことや、取り組みの現状について、お聞かせください。

インタビュー受け手:
(左)株式会社ジャルパック 取締役執行役員 顧客サービス本部本部長 石濱 文子様
(中央)株式会社ジャルパック 代表取締役社長 江利川 宗光様
(右)株式会社ジャルパック 顧客サービス部部長 山田 達様

江利川 : ありがとうございます。この1年間は過渡期としてNPS(推奨意向)とCS(顧客満足度)を併用してきましたが、今ではNPSを主体とした改善活動を進めています。NPSを社内に定着させるために、まずは幹部が本気になることが重要だと考え、経営幹部が集まる月次開催の「ジャルパック安全・CS推進委員会」にて、NPSスコアの推移や、当社の弱み強みを幹部全員で確認・把握し、その打ち手を考えています。また、商品造成部門はNPS評価を重要視しており、旅行商品の方面別、お客さまの年代別といった切り口で分析を行い、新たな商品展開に活かす取り組みが始まっています。「NPX Pro」から即時に得られるNPS分析結果やお客さまの声そのものを社内電子掲示板に掲載し、全社員に共有しています。NPSはロジックがしっかりしていて、推奨者、中立者、批判者の分類と定義が非常にわかりやすい。自分たちの立ち位置を振り返る際にも役立っています。

―経営者として、NPSが向上することによって、どのような変化を期待されていますか。

江利川 : お客さまに真摯に寄り添い、お客さま目線で商品やサービスを提供する風土が社内に醸成されることだと考えています。NPSスコアが目標値を上回ることが重要なわけではなく、お客さまがジャルパックの商品をどのように捉えていらっしゃるか、時系列的な変化の流れをきちんと読み取り、今後の商品やサービスに活かしていく。そのような取り組みが企業風土にしっかり根付いていくことが最も大切だと思っています。

―ご期待に沿う形での改善は進んでいらっしゃいますでしょうか。

江利川 : NPS導入からまだ1年ですが、良い方向性で進んでいると思います。素晴らしい旅行商品をお客さまにご提示するのも大事ですが、実際に素晴らしい旅行をどのように体現していくか。NPSの数値と同時に、お客さまのご意見にもしっかりと耳を傾けなければならない。「NPX Pro」を活用したデータ分析や共有を通じ、改善活動のための社内の仕組みが整った気がします。具体的な取り組みとしては、顧客サービス部が、「NPX Pro」から得られた「お客さまの声」を選定し、週に3回全社員にメール配信しています。私もそれを読むのを楽しみにしています。

―江利川社長もお客さまの声を読み込んでいらっしゃるのですね。

江利川 : 厳しいご意見をお寄せいただいたお客さまの中には、NPSでは推奨の評価をされている方もいらっしゃいます。対照的に、お褒めの言葉をいただいても、NPS評価が中立の方もいらっしゃいます。このように、お客さまの心の機微や商品に対する期待感を、NPSスコアと具体的なご意見双方から把握することが大切だと思っています。私がお客さまの声を見て色々と指示するものですから、社員にとっては大変だと思いますが、トップが実行するからこそ、社内の風土が醸成されるように思います。

―貴社は元々お客さまに寄り添われている企業風土かと思いますが、さらに変化を起こしたいとお考えでしょうか。

江利川 : そうですね。小さい事象でもすぐに動き、トップに対しても同時に報告する。お客さまのために、お客さま目線でものごとを捉えて行動する。NPSスコアやお客さまの声に関する情報を随時社内に共有することで、NPSを軸とした改善活動の仕組みが動き始めたと思います。お客さま目線に立って改善活動を実施する上で、NPSは私たちの立ち位置を指し示してくれているのです。

社員全員がNPSを通じてお客さま目線を持つことを目指す

―NPSを社内で浸透させるにあたり、この一年間でご苦労されたことはありますか。

石濱 : 実は関連部署への浸透という意味合いでは、あまり苦労はありませんでした。というのも、商品を造成する部門や旅行素材を手配する部門を中心に、お客さまのことをもっと知りたいという要望があったためです。「NPX Pro」では、社員一人一人が自由にデータ分析できることから、社員は導入当初より強い関心を持っています。顧客サービス部門で「NPX Pro」の使い方や分析方法など、相当な回数の研修を実施してきましたが、社員の参加率は高く、各部門が自発的にデータを深掘りするなど、活用機会が増えています。
一方で、お客さまとの接点が薄い間接部門の社員に、いかに関心を持ってもらうか課題認識しています。全社員が関心を持てば、会社全体が「ジャルパックは旅行販売会社である」ことへの自覚と強い意識を持つようになると思います。

―財務部門などの間接部門にもNPSを意識してほしい、ということでしょうか。

石濱 : そうですね。間接部門にもお客さまの声を知ってもらいたいと思っています。財務部門を例に挙げると、お客さまが旅行商品を購入された代金が私たちにとっての大切な収入であり、結果として財務という業務が成り立ちます。このように、社員には、お客さまがあってこそ今の業務が成り立つことを強く意識してほしいと思います。このため、お客さまにとって必要なことであれば、所属部門や業務範囲に捉われずに取り組んでもらいたいと思います。「NPX Pro」についても、週に1回でも良いので、全社員が自ら操作して、お客さまの実際の声に触れてほしいと思います。

―「NPX Pro」を通じて、全社員がNPS分析結果やお客さまの声を共有することができる環境を整えていらっしゃるからこそ、実現ができることですね。
NPSの今後の活用に際し、力を入れていらっしゃる点などあれば教えてください。

山田 : NPS集計開始から1年が経過した段階であるため、NPSスコアの解釈方法や、比較対象範囲が限定されていると認識しています。このため、今年度はさらに「NPX Pro」を活用して、NPSスコアや目標値の位置づけを各部門に理解してもらうための取り組みを推し進めます。例えば、NPSの比較対象が少ない中でも、商品別や方面別に分析をすると、結果にばらつきがでてきます。なぜA商品はB商品よりも批判者が多いのか、といったことに着目し、深掘りを進めていきます。
 また、今後は訪日事業におけるアンケート運用拡充にも力を入れていきます。「NPX Pro」が多言語対応可能であるため、今後の訪日事業拡大にあわせた幅広い活用を期待しています。

NPSを起点に改善活動を回し「旅」の質や付加価値をさらに高めていく

―これからさらにNPSを推進していくにあたり、NPSへの期待値があれば教えてください。

江利川 : NPSを単なる通知表にせずに、PDCAを回してこそ、NPSが活きてくると思います。それも、数か月や年単位のPDCAではなく、毎月、毎週、日々の現場の中でPDCAを回したいと考えています。

山田 : NPSスコアの向上を目標に掲げ、単にその達成を測ることが目的と思いがちですが、むしろ、スコアを上げるために何をすべきか、何を改善できるのか考え、実行することが重要だと考えています。改善活動によって旅行商品の品質が向上することで、より多くのお客さまからジャルパックの商品をお選びいただけるようになると思います。「NPX Pro」などを活用しながら、改善活動をひたむきに繰り返すことこそが、スコア向上を目指す意義であることを、社内に浸透させたいと思っています。

―最後に、今後、どのように会社を導いていかれたいか、お聞かせください。

江利川 : 旅行業界は、OTAと呼ばれるオンライントラベルエージェントなどが参入し、激動の時代を迎えています。競争が激しくなる中、ジャルパックは、ジャルパックならではの付加価値、お客さま目線に基づいた価値ある旅を提供するために、NPSスコア含め、お客さまの声に敏感でありたい。その結果として、お客さまに信頼され、愛され、厳しい状況の中でも成長していける会社でありたいと思っています。

NPSベンチマーク調査レポート最新版【総合型旅行会社・ネット専業型旅行会社】

NPSベンチマーク調査レポート最新版 2019年
【総合型旅行会社・ネット専業型旅行会社】

総合型旅行会社8社およびネット専業型旅行会社6社のNPS(ネットプロモータースコア)およびロイヤルティ要因についての分析レポートです。
推奨者と批判者のSNSによる情報発信の違いについてや、年間の旅行代金について、掲載しています。