2022/06/16

【NPSトップ企業に聞く顧客ロイヤルティ向上の秘訣2021】

銀行部門 第1位 ソニー銀行株式会社 様
~現場のコミュニケーションやテクノロジーを駆使したスピーディーな改善サイクルを構築。より良い顧客体験を通じて、NPSを向上させていく~

NTTコム オンラインNPSベンチマーク調査2021「銀行部門」で第1位に輝いたソニー銀行株式会社。お客様にとって「フェア」であることを大事な価値観として、画一的なトークスクリプトを持たないお客様に合わせた問い合わせ対応をはじめ、現場のコミュニケーションやテクノロジーの活用による素早い改善サイクル構築などにより、顧客ロイヤルティの向上に取り組んでいます。NPS活用の位置づけや、お客様の声との向き合い方、サービス改善に向けた取り組み、また今後の展望についてお伺いしました。

お客様視点に立ち、それぞれのお客様にとっての「フェア」を体現する

―この度の受賞おめでとうございます。今回の調査では、銀行のほか生命保険や損害保険など他の金融部門においても、ソニーフィナンシャルグループの各企業が1位となりました。銀行部門で貴社がNPS1位を受賞された理由や背景についてお伺いさせてください。

インタビュー受け手
(左)ソニー銀行株式会社 データアナリティクス部長:伊達 修 様
(中左)ソニー銀行株式会社 代表取締役社長:南 啓二 様
(中右)NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社 塚本 良江
(右)ソニー銀行株式会社 本店営業部 カスタマーセンター長:宮澤 勇気 様

: ありがとうございます。ソニーで金融事業を担う当グループは、企業文化としてお客様視点に立つことを強く意識していることが特長です。お客様に真剣に向き合い、前例にとらわれずに本当に求められていることは何かを考え、人のやらないことをやる、ソニーの遺伝子を当社も受け継いでいることを、今回の受賞で改めて認識致しました。
新型コロナウイルスが国内で猛威をふるう中でも多くの社員がお客様にとっての銀行業務の重要性を理解し、率先して顧客対応にあたってくれました。その結果、コロナ禍においても大きな業務縮退をすることなく、お客さまには通常とほぼ同等のサービスを提供することができました。社員の間でも「お客様本位」という、ソニー銀行の企業文化が浸透していることに気付かせてもらいました。これが今回のNPS1位に繋がった最大の要因であると思っています。

それぞれのお客様にとっての「フェア」を体現するためのNPS

―お客様本位であるために、どのようなことを大事にしているのでしょうか。

: お客様に対し「フェア」であることを大事な価値観としています。お客様視点を以て、ニーズに合わせてバランスよくお客様と接することが大事であると考えています。口座を持ち始めたお客様も当社を長く利用されるお客様も、双方のお客様にご満足いただける「フェア」を体現していくことが、お客様本位であることに重要なことであり、今後のNPS向上にも繋がってくると思っています。
お客様にとって「フェア」であるためには、組織としては個性を活かして対応できる人材を幅広く持った組織であることが重要です。担当者それぞれの能力や個性を互いに認め合い、それらを活用できる組織であることが、お客様への「フェア」の実現には必要であると考えています。

宮澤 : 当社の顧客対応の特長として、カスタマーセンターでは画一的なトークスクリプトではなく、お客様への説明で必要となる情報を対話の流れに沿って整理したものを用いてお客様対応を行っています。コミュニケーターのスキル習熟までに時間は要しますが、お客様一人ひとりの状況に合わせてお話することを重視しています。もちろん、応対品質面も大切にしており、電話応対の内容を自動評価する等、より適切な言葉遣いや表現方法についてアドバイスしていますが、型にはめて対応を均質化させるよりもむしろコミュニケーター一人ひとりの強みを伸ばすことを意識して指導するようにしています。今回のNPSベンチマーク調査の結果でも「問い合わせ応対の良さ」を評価されているのは、こうしたお客様に合わせた対応や取り組みの成果であると考えます。

―「フェア」の実現において、貴社の中でNPSはどのような位置づけとなっているのでしょうか。

伊達 :当社は社員がやりたい施策を比較的自由にできる環境にありますが、その施策の良し悪しを判断するひとつの指標としてNPSを活用しています。5年ほど前に自社で調査を実施した際、NPSが高いお客様の方が一人あたりの収益が高く、半数のお客さまで収益の6割強を占めていることが分かりました。このことから、現在は経営目標の一つとしてNPSの向上に取り組んでいます。また、ソニーフィナンシャルグループとしてもNPSの活用が進んでいます。
現状のところNPS調査は、年に1回のリレーショナル調査の形で実施している状況ですが、今後はお客様ひとりひとりにとって「フェア」を実現していくために、トランザクショナル調査においてもNPSを活用していくことを検討しています。

アジャイル開発のようなスピード感で改善を進めるために、お客様が今感じたことをNPSでお聞きする

―貴社の中でお客様の声の活用や、改善への取り組みはどのように進めていますか。

伊達 : お客様視点に立った改善を進めていくには、商品やサービスの修正や、新しい商品の企画の展開についてスピーディーに対応することが求められます。例えばWebサイトについてご指摘などを頂いた際には、迅速に修正の対応を完了できる、IT企業のアジャイル開発のようなスピード感で対応することが重要になってきます。
これらの改善活動としては、お客様の行動を踏まえて、複数の調査結果などを組み合わせながらNPS向上に寄与するキードライバーを探し、改善への施策を検討することで取り組んでいます。例えば「お客様に寄り添う姿勢」に対する評価については、タイミングやニーズに合致したメール配信や、メール本文を分かりやすくするといった施策がNPS向上に寄与することが分かっています。このような、お客様の声や感じたことなどをNPS調査によって汲み取ることで、徹底したお客様視点に立ったスピード感を持って改善活動を進めることが可能となっています。

宮澤 : また、カスタマーセンターと商品企画部門では情報管理ツールを共用しており、お客様の声をシステムに登録すると、両部門で見ることができる仕組みとなっています。これによりお寄せいただいたお客様の声を随時共有することで、データ分析や商品企画といった部署にもスピーディーに伝達できるようになりました。加えて、お客様からの要望でも特に重要と思われるものについては、カスタマーセンターの上席から、商品企画部門やコンプライアンス部門、社長まで一気通貫した情報の共有をリアルタイムで行っています。このような現場でのコミュニケーションも重視しながら、改善のサイクルを素早く回せるように取り組んでいます。
(図:顧客推奨度と利益の関係)

図:顧客推奨度と利益の関係 図:顧客推奨度と利益の関係

伊達 : このほか、お客様とのコミュニケーションの整備を目的に、1年ほど前からお客様とやり取りをするメール種別あたりの収益分析なども行っています。データ分析を担う部門が、毎月送付されるメールをチェックして、クリック1回あたりの単価や、オプトアウトされた方が出た場合の損失などを元に、そのメールの収益と損失を試算しています。担当者にとっては送ったメールの反応によって、そのメールが赤字か黒字かが分かる仕組みであるため、データ分析部門のフィードバックに基づいた改善方法を探ることが可能となります。これらの施策により少しずつではありますが、メールの質も向上してきています。
当初は現場間での対立なども起きましたが、お互いに改善点を探っていくうちに円滑なコミュニケーションが取れるようになりました。現場でのコミュニケーションをすり合わせるという経緯を経た上で、現状の施策が活きていると感じます。

DXありきではなく、より良い顧客体験の提供のためにテクノロジーを活用する

―顧客ロイヤルティやNPS向上を踏まえて、デジタルやテクノロジーはどのように活用していますか。

伊達 : 当社ではかなり早い段階からデータの整理やペーパーレス化の取り組みを行ってきました。住宅ローンのAI審査も2018年から実施しております。従来、時間がかかりがちな住宅ローンは仮審査においてAIを活用することにより、基準内の申し込みは素早く処理できるようにし、残った複雑な案件については担当者が時間をかけて審査することができ、作業効率の向上を図ることができました。その結果、お客様への審査結果のご連絡などもスピーディーなものとなり、この点がNPS向上にもつながったと思います。

: 当社はリテール主体の銀行なので、お客様視点や顧客本位であることが第一です。経営戦略的にDXを唱えるのではなく、お客様視点を起点として、よりよい顧客体験の提供に必要な便利なことを、テクノロジーを用いて整備を進めたことが、結果としてNPS向上に繋がっていたということだと捉えています。今後もテクノロジーを活用することでお客様とのコミュニケーションの取り方をブラッシュアップしていき、お客様が本音を言える環境を整えていきたいと思っています。お客様とのコミュニケーションから得られる改善のポイントや、示唆などをきちんと受け止めていきながら、分かりやすくて使いやすいサービスへと改善していくことで、さらなる良質な顧客体験を提供し、ロイヤルティの向上につなげていきたいと思います。

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