2023/05/11

【NPSトップ企業に聞く顧客ロイヤルティ向上の秘訣2022】

クレジットカード部門 第1位 株式会社 JALカード
~NPSを活用し、ブランドビジョンを意識したPDCAサイクルを構築する~

NTTコム オンラインNPSベンチマーク調査2022「クレジットカード部門」で第1位に輝いた株式会社 JALカード。NPSをベースにしたPDCAサイクルの構築などに取り組み、JALフィロソフィや新たに策定したブランドビジョンにて社員のあるべき心構えとなる「豊かな人生を送りたい人の、一番の理解者。」というコンセプトを定め、また、対外的にはスローガンとして「あなたの願いの、いちばん近くに。」を掲げ、お客さまの声と向き合っています。JALグループの中核企業として、航空事業のみならず、顧客基盤を活かした航空以外にも日常生活に寄り添ったクレジットカードとして発展するために取り組んでいる、NPSの活用や改善サイクルの構築についてお伺いしました。

マイルをフックとした商品性で、JALマイルライフ構想の中核を担う

―クレジットカード部門でのNPS第1位、おめでとうございます。新型コロナウイルスの感染拡大もあり、大変な時期だったと思いますが、貴社のどのような点が評価されて1位になったと感じていますか。

インタビュー受け手
(左)株式会社 JALカード 取締役 企画部長 大髙 由惠様
(中左)株式会社 JALカード 代表取締役社長 西畑 智博様
(中右)NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社 塚本 良江
(右)株式会社 JALカード 特約店マーケティング部長 島村 賢治様(※取材当時の所属および肩書は、 コミュニケーション戦略部 部長)

西畑 : ありがとうございます。当社はJALグループのクレジットカードである「JALカード」の発行をしています。JALカードは「マイル」をフックに、日常と旅行などの非日常をつなぐサービスを提供しており、他と比べてもユニークな商品性を持ち合わせたクレジットカードです。新型コロナウイルスの感染拡大により、旅行をはじめとした移動の制限があった中においても、JALカードが今回NPS1位に選ばれたことは、この「マイル」を起点とした独自の商品性や、コンタクトセンターなどの現場の対応力が評価されたことにあると捉えており、素直に全社で喜んでいます。

JALグループ全体では「JALフィロソフィ」という全社員が持つべき理念がありますが、JALカードではさらに2019年にブランドビジョンの構築に取り組み、「豊かな人生を送りたい人の、一番の理解者。」というコンセプト、「あなたの願いの、いちばん近くに。」というスローガンを策定しました。社員がそれぞれJALフィロソフィとこのブランドビジョンを意識し、体現できるように取り組んできたことも、今回の受賞につながったと感じています。

マイルに関するキャンペーンや施策については、JALのマイレージ事業部などと共同で進めています。JALグループ全体における中期経営戦略においては「マイルライフ」領域を一番の成長分野と位置付けており、JALカードはその中核を担っています。このため、現在350万人いらっしゃるJALカードの会員はJALグループの中でも重要なお客さまとなっており、そのお客さまから高く評価されたことは大変ありがたく思っています。

NPSを通じたPDCAサイクルの構築や社員のマインドセットでブランドビジョンの実現を目指す

―NPSの導入の背景や、現在の運用について教えてください。

島村 : NPSの調査は2022年度から開始をしました。それまでは定点的な顧客満足度調査を実施していましたが、調査結果から十分にアクションにつなげられていないことを課題に感じていました。その点NPS調査では、推奨度と各タッチポイントでの満足度との相関から改善すべきポイントを可視化できます。お客さまの声を改善に生かすためのPDCAサイクルを構築し、効果的に活用できることからNPSの導入を決めました。

現時点では全体のNPSを測るリレーショナル調査を実施し、各種お客さまとのタッチポイントごとの推奨度と満足度を把握しており、担当の部署とアンケート結果を共有しながらPDCAを回し改善の活動に取り組んでいます。NPS導入による効果の一つとして、お客さまから寄せて頂いた声を基に改善を進めるにあたり、優先順位をつけられるようになったことが挙げられます。どのお客さまの声もすべて重要なものではありますが、それぞれ推奨度との相関などを捉えることで、何から改善に取り組むべきか、という優先順位が見える化されたことが導入効果として大きいものだと思います。

大髙 : NPS調査により、課題が可視化され各部署での優先的に取り組むべきことがつかめるようになったことで、ブランドビジョンの達成に向けて、社内の連携がより強くなったと感じています。従来、「JALフィロソフィ」や新たに策定したブランドビジョンの浸透や理解を深める手段として、eラーニングやワークショップなどの各種研修にも取り組んでいますが、NPS調査を通したPDCAサイクルの構築により、社員がお客さま目線に立ち、ブランドビジョンを意識した行動がとれるようになったとも感じています。

この結果、社員のマインドセットも高まり、CXの向上やブランドビジョン達成にもつながるという流れが構築されていきました。現在ではNPSを通じたブランドビジョンの実現を目指していくことが、EXやCXの向上、ひいてはSDGsなどの社会貢献にもつながっていくことを社員にも認識してもらえるよう、ワークショップなどを通じて意識合わせをして、全社員が同じベクトルを向くような仕組みづくりに取り組んでいます。

お客さまの声をデジタル化し共有することで、各部署を巻き込んで改善に取り組む

―NPSを運用するにあたり、どのような点に気を付けていますか。

島村 : NPSをベースとした改善活動を行うにあたっては、アンケートの結果が出たところがスタートラインである、と考えるように注意しています。同時に各部署を巻き込んで、アンケートの結果からどのように改善につなげていくかということを非常に意識しております。そのためにはNPSのみならず、日々コンタクトセンターに入るお客さまの声を集約し、きちんと伝えられる仕組みを整える必要があり、お客さまの声のデジタル化ということにも取り組んでいます。以前はExcelでまとめたものを全社で共有していたのですが、なかなか見てもらえませんでした。現在はBIツールを活用し、各部署の担当者がそれぞれの課題をつかみやすくするように見せ方を工夫するといった取り組みを行っています。

また、現状のリレーショナル調査だけでは大枠の改善が必要なタッチポイントを知ることはできても、タッチポイントごとの具体的なアクションにつなげにくい状況にあります。今後は次のステップとして、各タッチポイントの体験直後の推奨と満足を測るトランザクショナル調査を行う準備を進めています。

JALグループとしてシームレスな顧客体験の提供によりさらなるCX向上を目指す

―CXやNPSへの取り組みについての今後の課題や展望についてお聞かせください。

西畑 : CX向上の観点では、デジタルやITの領域においてはまだ改善できる余地は多いと感じています。特にWebサイトについてはサービスが複数のページにまたがっており、お客さまからも使い勝手について改善のご要望を頂いています。提携しているクレジットカード会社とのシステム連携もあり制約もありますが、シームレスなお客さまの体験を提供できるようにサービス化の方向性を検討しています。

JALグループとしては、飛行機や空港だけにフォーカスせず、飛行機を降りた後の日常生活も含めた「ライフ&トラベル」までカバーしていく方向性にあります。そのため、生活の中でJALカードを通じて得たお客さまの体験はJALグループ全体の体験にも通じていくため、グループにおける当社の担う役割は大きいと感じています。今後は取り組んでいるNPSによる改善活動に加え、NPSを通じて得たお客さまの声をJALグループのさまざまなサービスに結び付け、最終的にはJALグループにおける顧客の声の基盤になるような発展を目指していければと考えています。

Net Promoter®およびNPS®、Predictive NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズ(現NICE Systems,Inc)の登録商標です。
また、eNPSは、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズ(現NICE Systems,Inc)の役務商標です。