2019/04/09

【NPSトップ企業に聞く顧客ロイヤルティ向上の秘訣2018】

対面証券部門 第1位 野村證券様
~お客さまとの信頼関係の中でビジネスを広げ、発展させていく~

NTTコム オンライン NPSベンチマーク調査2018、対面証券部門で第1位に輝いた野村證券株式会社。圧倒的なブランド力を誇りながらもそこに安住せず、「すべてはお客様のために」を掲げてまい進する同社の、顧客ロイヤルティへの取り組みについてうかがいました。

旧来型の株式営業を脱し、NPSやCSを羅針盤に、お客さまからありがとうと言っていただけるビジネスへ

― NTTコム オンライン NPSベンチマーク調査2018において、対面証券部門で野村證券株式会社が1位を獲得されました。誠におめでとうございます。最初に、リテール営業部門としての事業概要や成長戦略、その中における顧客ロイヤルティの位置づけについてお聞かせ願えますか。

(左)野村證券株式会社 営業部門企画統括担当 専務 鳥海 智絵 様
(右)NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社 代表取締役社長 塚本 良江

(以下敬称略)

鳥海 : 私たちの一番の強みは、対面をはじめとした、「人」の部分だと考えていまして、お客さまと、お客さまを対面で担当している社員一人ひとりが、私たちにとっての財産です。ですので、今回のような、お薦めしたい対面証券としての評価をお客さまからいただけるのは、私たちが目標としているところでもあり、大変喜ばしいことです。
2012年に、現在は代表取締役社長の森田が、「すべてはお客様のために」という基本観のもと「ビジネスモデルの変革」を掲げました。お客さまからの信頼の獲得を通じて、ビジネスを拡大する。お客さまの利益と私たちの利益を一致させ、一緒に幸せになり、成長していくことを目指すというものです。このような取り組みを始め、6年たっておりまして、まだ道半ばではありますが、こういったご評価をいただけるようになり、少しずつ成果が出ているのを実感しています。
金融庁が「顧客本位の業務運営」を推し進めていますが、当社としては、それ以前より、お客さまから信頼を得るということを重視して取り組んできておりました。
正直なところ、変革後の収益や数字については株主の皆さまから厳しいご指摘をいただくこともあります。ただ、先般も野村ホールディングスの永井グループCEOが株主の皆さま向けのミーティングで「この川は渡りきる」と申し上げましたが、もう旧来型の営業スタイルには戻らないと、あらためて宣言したところなのです。どうやってお客さまにご満足いただくことを通じて、私たちのビジネスも拡大できるのかというところで、もう一段ステップアップして、やりきらなくてはならないと考えているところです。

― まさに“不退転の決意”で変革を進めていらっしゃるのですね。NPS自体はアメリカで数十年前から導入されており、スコアと売上や収益との相関は検証されています。一時的に状況が厳しいということもあるかもしれませんが、最終的には、NPSのスコアが上がってくると、後追いで売上や収益といった数値もついてくるというところがありますね。
「まだ道半ば」とのことですが、これから目指すところについてお聞かせいただけますか。

鳥海 : 現状でいいますと、顧客満足度(CS)を起点にPDCAを回しておりまして、改善活動が進んでいます。ただ、主に、お客さまの不満を取り除くという段階にいるように感じております。今後、ここに付加価値を加えるためには、カスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)を高め、「もっと付き合いたい」、「何かを相談したい」という風に、圧倒的に思っていただけるような、そういう方向性を目指したいですね。
また、今はCSとNPSの両方を活用しているのですが、顧客体験のステップを上げていくには、NPSをより重視していこうと考えています。CSはどうしても日々の活動として、お客さまが感じている不満をどう解決していくか、というところにフォーカスされがちなためです。

― 確かに、NPSは、高く評価されている点についても声が上がってくるので、強みをより強くする、といった施策にも向いています。評価の高い項目を伸ばしても、あるいは、評価の低い部分を改善しても、スコアが上がっていきます。強みを伸ばすと社員の皆さまのモチベーションが上がりやすくなります。

社員皆で共有している創業の精神「すべてはお客さまのために」

― NPS調査やCS調査はどのように実施されているのですか。

鳥海 : 1年に1回、担当がついているお客さまを対象に、NPSとCSについてお伺いする「お客さま満足度調査」を実施しています。これは「担当者から適切なフォローがあるか」、「担当者はプロフェッショナルかどうか」といった担当者に関連した内容が中心となっています。NPSも担当者一人ひとりに対してフィードバックをしております。また、店頭にご来店いただいたお客さまに対しては、店頭の満足度調査を別途実施しております。また、全体の結果については部門内の意思決定機構の中で共有されておりますし、ホールディングスの取締役会でも報告をしております。

― NPSにはトランザクショナル調査とリレーショナル調査の2種類がありまして、リレーショナルがブランドや企業の信頼度に対しての評価、トランザクショナルは、お客さまとの接点の部分で何らかアクションがあった際に都度評価いただくイメージになります。NPSの数字を動かそうとするときは、両方組み合わせでお使いになる企業様が多いですね。

鳥海 : 金融機関のトランザクショナル調査というと、具体的にはどういうスキームになりますか。

― メールやSMSなど、お客さまと連絡の取れる関係であることが前提となりますが、ある程度の時間的なサイクルを決めてアンケートを実施するパターンや、店舗への来店、商品の購入や契約の更新、変更など、トリガーを決めておいて、その行動がとられた際にアンケートを配信する、といったスキームになります。担当者の方が直接お渡しするとバイアスがかかる場合もありますので、お客さまがトリガーとなる体験をされたタイミングで、本部がアンケートを配信する金融機関様が多いですね。ただ、そういった仕組みを作って運営していく場合、手作業では対応しきれませんので、ツールを入れて仕組化することで組織全体への導入や効果的な運用が可能になります。例えば、ツールを使うことで、アンケートを配信した本部だけでなく、現場も分析をリアルタイムに見られるようになるので、本部に何か言われる前に改善活動を行うなど、現場が自走し始める、といった形です。

鳥海 : NPSやCSは、部門全体として常に意識をしている指標ですので、現状実施しているお客さま満足度調査に補完する形で、もう少し頻度の高い調査の実施も検討の余地があるかと感じます。
証券業の商品特性や業界特性を考えたときに、CSやNPSに取り組むにあたり、より現状にマッチした形で取り組んでいきたいという想いもあります。例えば、対面で担当するお客さまに関しては、お取引額にかなり幅があり、商品やサービスのニーズも、個々人で非常に異なってくるという特性があります。

― 今回のNPSベンチマーク調査では、御社の圧倒的なブランド力が発揮されていました。野村證券への信頼、営業の方に対する信頼がNPSのスコアを押し上げています。会社としての理念の共有など、どのようになさっているのでしょうか。

鳥海 : 創業者の野村徳七が掲げた創業の精神というものがあり、いくつかテーマはあるのですが、一番根本にあるのが「顧客第一主義」です。現在は「すべてはお客さまのために」という言い方をしていますけれども、会社全体に浸透しており、当然社員全員がきちんと認識しています。毎年「野村『創業理念と企業倫理』の日」を設け、全員で創業理念に関するビデオを観て、各部で「私たちの使命とは」といったテーマのディスカッションをする場も設けています。「理念が行動にも結び付いているか」というところを振り返るという位置づけですね。

― お客さま第一主義への客観的な評価を得るための仕組みは、どのようにされていますか。

鳥海 : 客観的な評価という意味ですと、やはり、「お客さま満足度調査」の果たす役割が大きいですね。お客さま満足度調査で高い評価を得た担当者は、上位入賞者として社内で表彰するのと同時に、新聞の全面広告に掲載しています。入賞する者にとってはすごく励みになりますし、お客さま満足度を社内でより意識していくための仕組みとして、かなりクローズアップしています。

グループの幅広いサービスを活かして「それも、野村にきいてみよう。」に

― 今後の展望についてお聞かせいただけますか。

鳥海 : 野村證券のコマーシャルでは、最後に「それ、野村にきいてみよう。」というフレーズが流れるのですが、私はこれを「それ“も”、野村にきいてみよう。」という風にしたいと考えています。
「野村といえば有価証券取引」をイメージされる方も多いようなのですが、実はグループとしては銀行機能、不動産などさまざまなサービスをご提供できます。ただ、その部分は、まだ十分に知られていないように感じております。証券に留まらないさまざまな引き出しがあるのだから、それを活かす機能をもっと強めて、お客さまが「それも野村にきいてみよう」と信頼してくださる、それがお客さまにご満足いただけるサービスだろうと考えています。
そのためには、担当者の専門性を高めることもそうですし、お客さまから「野村と話すと楽しいよね、面白いよね」と思っていただくようなことも含めた「人の力」をもっと強めていくということ。それが、私たちの強みをより強くすることにもなるのではないかと考えています。

― 本日はありがとうございました。

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