2019/10/31

【NPSトップ企業に聞く顧客ロイヤルティ向上の秘訣2019】

ダイレクト型自動車保険部門 第1位 セゾン自動車火災保険株式会社様
~NPSを経営のKPIとしても、業務改善のための指標としても活用~

NTTコム オンライン NPSベンチマーク調査2019ダイレクト型自動車保険部門で第1位に輝いたセゾン自動車火災保険株式会社。3年連続の受賞を実現した、お客さまから支持される商品・サービスの作り方や、進化し続ける様々な取組みについて、お伺いしました。

お客さまに選んでいただける「オンリーワンの保険会社」を目指して

― 3年連続の1位、おめでとうございます。NPSを活用した顧客ロイヤルティマネジメントをどのように展開すれば、このような高い評価が得られるのか、是非お聞かせいただければと思います。まずは、ここ1年のお取組みについて教えて下さい。

(右)セゾン自動車火災保険株式会社 代表取締役社長 梅本 武文 様
(左)NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社 代表取締役社長 塚本 良江

(以下敬称略)

梅本 : ありがとうございます。3年連続で1位を頂戴しましたが、私たちとしては、まだまだ進化し続けなければ、と考えています。
まず、目指す姿として、グループの経営理念があり、これに基づき当社のブランドメッセージでは、「お客さま一人ひとりに納得感をもって選んでいただける、オンリーワンの保険会社」になることを掲げています。この目指す姿にのっとった形で、日々のオペレーションにおいても、変化に対応し改善ができるということが大事だと考えています。そのために、お客さまとの接点であるサポートセンターやサービスセンターに集まる定性的な情報を理解することと、同時に、ネット企業として集まってくる様々な定量的なデータを活用していくことに力を入れています。
ここ1年では、データ基盤の再整備を進め、BIツールを活用したデータ分析を通じて、オペレーションの改善を進めています。

― これまでのデータ基盤はどのようなもので、それが今後、どのように変わるのでしょうか。

梅本 : 保険会社としては、保険契約のデータと、お問い合わせいただいた各接点でのデータ、保険金支払いのデータを持っています。加えてネット企業として、ウェブ上の遷移データがあります。これらが各部門に散在していたため、関連付けて分析するのが大変だったのですが、2017年10月に「データ統括部」を新設し、それらのデータを統合し会社全体の基盤として整備することと、データを分析してオペレーションの改善に繋げる社員の養成に取り組んでいます。

NPSは経営のKPIとしても、日々のオペレーション改善のためにも活用

― NPSをKPIとして活用されています。具体的に、どのように使われているのでしょうか。

梅本 : 私たちはネット企業として、お客さまからの信頼がなければ成り立たない、と考えています。業績を伸ばすことを大切にしつつも、最も重視しているのはお客さまからの信頼や、そのベースとなる品質です。社内では「品質、成長、効率」という順番で重点課題として打ち出しています。この重点課題の進捗を測るためにNPSを活用しており、経営として成長や品質のバランスを取っていくためにも、経営会議や取締役会でもNPSをKPIとして注視しています。また、こうして社内でNPSをKPIとしたわけですから、社外にも発信していこうということで、「お客さま本位の業務運営方針」のKPIとしてもNPSを取り入れ、ウェブサイト等で公表しています。

― 経営戦略や日々の意思決定においてもNPSを重視されているということでしょうか。

梅本 : そうですね。例えば、損害保険会社では、事故率等の様々な指標の変化に伴う商品改定が発生します。定量的なデータをもとに計算した理想的な改定内容というのがあるのですが、それをそのまま改定すると、お客さまに与えるインパクトが大きすぎる場合があります。17年度からNPS指標を取っていて分かったのですが、改定によって大きな変化があればあるほど、NPSは下がる傾向があります。ですので、直近の商品改定では、数値的に理想的な改定内容と、お客さまに与えるインパクトとのバランスを取って進めることを意識しています。また、お客さまのお問い合わせが増えることが予想される改定の場合は、サポートセンターでのお客さま対応体制が確保できるかといった点も意識して、商品改定の内容を詰めていきます。このバランスを取るというところで、NPSが重要になってきます。

― NPSを日々の改善活動にいかす際は、どのようにしていらっしゃるのでしょうか。

梅本 : NPSのトランザクショナル調査(注:お客さまとの重要なタッチポイントにおいて、体験直後の評価を測定する調査。現場で改善PDCAを回すための指標として活用する)は、4つのタイミングで実施しています。新規のご契約直後と、ご継続後のアンケート。3つ目が満期の3カ月前に実施しているアンケートで、ご契約期間中のサービスや情報提供を評価していただきます。そして4つ目は事故対応時です。事故に遭われたお客さまへのお支払いが完了した時点で、アンケートを実施しています。
新規と継続についてはサポートセンター、日常の指標についてはマーケティング、保険金のお支払いについてはサービスセンターと、複数の部署が担当しています。NPSを部門ごとの切り口で分析し、オペレーションを担っているメンバーの意見も聞き、PDCAのサイクルを回しながら、改善活動を実現しています。
基本はチーム単位で改善活動を進める形になり、表彰制度も実施しています。個人表彰とチーム表彰の両方をやっていますが、やはりチームの方が個人よりも盛り上がります。チームで結果を出すというのは、まさに組織マネジメントとしても重要なところです。

「顧客接点デザイン部」が組織横断の改善活動をコーディネート

― ウェブのアクセスデータと、お客さまがコールセンターにした問い合わせ内容などの情報は一元的に管理されているのでしょうか。

梅本 : データベースとしてはいくつか分かれていますが、オペレーションを改善していくプロジェクトとしては、サポートセンター経験者が全体をリードしつつも、お客さまとやり取りしているコミュニケーターの意見も取り入れ、部門横断で取り組んでいるところです。2017年10月に「顧客接点デザイン部」を立ち上げたのですが、部門の縦割りを解消して全体の方針を決めるなど、日々の進捗管理を行ってもらっています。

― 改革のスピードを上げるための組織かと思いますが、何かを決めるとき、社長の経営判断を待つことなく、顧客接点デザイン部で決めることができるということでしょうか。

梅本 : その通りです。お客さまに対して一体的に見せていくためには、縦割り解消が大きなポイントと考えて立ち上げた部署です。損害保険会社は、お申込み、事故対応、お支払いなど、部門が役割ごとに縦割りになります。代理店型の場合は、代理店がお客さまと向き合うことで、損害保険会社の縦割り組織はお客さまには見えません。ただ、ダイレクト型の場合、保険会社が直接お客さまと接点を持つので、お客さまが縦割りの組織が原因で不自由を感じるようなことがあってはならないと考えています。

― 今年取り組んでいらっしゃる新たな施策について、教えてください。

梅本 : 物事はスクラップ&ビルドで、サービスは時代に合わせた変化が求められます。今年の7月から、LINEを使ったサービスの第一弾をスタートし、さらに発展的にやっていこうと考えています。今後は、事故の状況図をわかりやすく作成してお客さまと共有できるツールを入れるなど、デジタル活用でサービス面の拡充に取り組んで行きたいですね。

― 今後一番力を入れていきたいことについて、お聞かせください。

梅本 : 今後も、お客さまとの接点で、改善を続けていきたいと考えています。サポートセンターやサービスセンター等の人を介する接点については、本社部門とも連携し、NPSを活用してPDCAが回る体制が整ってきています。一方、人を介さないウェブの接点の改善は、今後一層力を入れていきたいところです。お客さまのニーズは二つあり、「おもてなし」と「手間なし」、つまり「ホスピタリティ」と「エフォートレス」のバランスが大切だと考えています。特に最近は「手間なし」ニーズが高まってきていて、他業態も含め、ウェブに対する期待感が大きくなっていると感じています。ウェブの改善を通じて品質を上げていき、そのニーズに答えていく。その結果として人にも余力ができ、人にしかできないサービスの品質も上がっていく。これが理想的な形だと考えています。とはいえ、実行力を高めるのは難しい。多分ほかの企業さんも同じだと思いますが、当社もそこに立ち戻っているというか、実際に導入していくための実行力、それは気合いと根性だけではだめだと思っています。結局は仕組みづくり、人づくりというところですね。そこから地道にやって行こうと思っています。

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