2020/01/17

【NPSトップ企業に聞く顧客ロイヤルティ向上の秘訣2019】

大手携帯キャリア部門 第1位 株式会社NTTドコモ様
~全国のドコモショップでNPSを導入し、改善の柱として活用~

NPSベンチマーク調査2019大手携帯キャリア部門で1位となった株式会社NTTドコモでは、全国約2,300店舗のドコモショップにおいて、NPSを活用した取り組みをおこなっています。NPS導入の経緯、ドコモショップへの導入・浸透方法、NPSを活用しての改善活動について、お伺いしました。

お客さまの満足により近づくために、CS(顧客満足度)からNPSへ

― 1位のご受賞、おめでとうございます。最初に、どのような取り組みがお客さまからの支持につながったか、お考えを伺えますでしょうか。

(左)株式会社NTTドコモ CS推進部長 山本 訓弘 様
(右)NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社 代表取締役社長 塚本 良江

(以下敬称略)

山本 : ありがとうございます。ドコモは、中期戦略2020「beyond宣言」を2017年に公表し、2020年とその先を見据え、ビジネスパートナーのみなさまとともにお客さまの期待を超えることで、お客さまへの驚きと感動の提供、パートナーとの新しい価値の協創の実現をめざしています。「beyond」には、これまでの自分自身が変わり、5Gで豊かな未来を作っていく、という意味が込められています。
料金改定やドコモショップの予約枠の拡充、スマートライフのためのd払いといったサービスの充実、5Gのプレサービスの開始など、「beyond宣言」の実現に向けた様々な取り組みを、全社一丸となって行っており、結果としてお客さまからの支持につながったのではないかと考えております。
さらに今年度は新規参入など市場環境が厳しさを増すこと、電気通信事業法の改正による市場環境の変化への対応などもあり、お客さまとの関係性を強化することの重要性が増しているように感じています。

― お客さまとの関係性に関わってくる部分でもありますが、ドコモ様では、顧客満足度からNPSに切り替えられたとお伺いしております。その経緯を教えていただけますか。

山本 : 2017年度までは顧客満足度を使っていましたが、2018年度からは推奨度、2019年度からはNPSを指標として使っています。

― NPSに切り替えた理由は何でしょうか。

山本 : NPSは、LTV(注:ライフタイムバリュー、顧客生涯価値)などの収益との関係性が強いと考えています。また、お客さまの顧客満足度とNPSを良く見てみると、顧客満足度は高いがNPSは低いお客さまが相当数いらっしゃることがわかりました。NPSを上げていく取り組みをすることで、お客さまの満足はさらに高まるのではないかと考えました。

― 顧客満足度からの切り替えというのは大変なことかと思いますが、NPSの導入を決定した際の反応はいかがでしたか。

株式会社NTTドコモ
CS推進部 CS推進担当部長 今田 剛 様

山本 : ドコモには各地域に支社があるのですが、それぞれ地域性があるので、NPSの目標をどのようにするかについてはかなり議論しました。

今田 : 全国一律の値を設定すると、もともとNPSの高い地域は目標値のほうが低くなってしまう、といったことが考えられます。ですので、地域格差を考え、みんなが納得感のある数値を目標に設定できるよう、工夫しているところです。

当初は「推奨者」を増やすことに注力。丁寧にNPSの理解促進を図る

― ドコモショップには、どのようにNPSの導入を進めたのでしょうか。

株式会社NTTドコモ
CS推進部 CS調査担当 担当課長 林 勇一 様

: NPSは、推奨者から批判者を引くというロジックなので、マイナスになりやすいという話は聞いておりました。そのため、まずは推奨者の割合を増やすことに注力することにして、目標も推奨者の割合を指標としました。したがって、社内にまずは推奨度を意識してもらい、段階的にNPS導入につなげていきました。その間、色々な意見や要望がありましたが、地道なフォローを続け、徐々に理解を深めていきました。また、NPSの理解促進のための研修動画を作って、浸透を図るといったことも行いました。

― 導入時に一番苦労されたのは、どのようなことでしょうか。

: NPSを導入することにより、社内的に、また、ドコモショップを運営している代理店の方々にとって、どのようなメリットがあるのか。そこの理解をいかに浸透させるか、という点かもしれません。例えば、ドコモの中期事業方針としてLTVの最大化をめざしながら収益も上げていくということがありますが、LTVの最大化にも収益増にもNPSが直結することを、実データを示しながら見せていく。あるいは、NPSが高いショップは収益にも寄与しているというような値を示すことができると、NPS向上につなげやすいのではないかと思い、そのようなメッセージを発信しました。

― NPSスコアはどなたがご覧になっているのでしょうか。

山本 : 本社と支社で共有しています。また、ドコモショップにもデータを提供しています。

NPSを活用し改善活動に取り組む

― NPSを通じたお客さまからのフィードバックは、どのように改善活動にいかされるのでしょうか。

今田 : 個人で対応できることなのか、店舗単位、あるいは支社単位で見るべきことなのか、といった点を検証しながら改善していきます。例えば、お客さまが商品の説明が十分でないと感じた場合、NPSはあまりよくない評価がついてしまうかもしれません。しかしそれはスタッフ個々の問題なのか、店舗としてフォローが足りていないのか、もしくは、ドコモとして情報の提供が足りていなかったのか。そういったことを踏まえながら改善を図っていきます。
NPSの数値やお客さまからいただいたコメントは、社内外の関係部門に毎日フィードバックしています。その情報の使い方や活用するタイミングはショップや支社ごとで異なります。
NPSは、ある数値だけをとらえて一喜一憂するより、それがちゃんと改善傾向にあるかどうかを見ていく方が使い方としては正しいと思うので、今回はここが課題になったが、次回は改善しているか、といった視点で活用することが大事です。お客さまからご指摘いただいた内容に対する改善をきちんとやっていけば、NPSも自然と上がるものだと思っています。

― NPSを改善に活用するといったところで、事例としてお話いただけるケースはありますでしょうか。

山本 : 今ドコモでは、ドコモショップの店舗滞在時間の長さが課題となっており、これを縮小すべく来店予約の拡大を図っています。これを例にとると、来店予約を利用したお客さまとそうでないお客さまとではNPSの値に差が生じてきますが、これらの値を比較することで、来店予約の施策がどの程度NPSに影響してくるのかが確認できます。つまり、NPSを計測することで、施策の有効性を確認しながら改善を図っていくことができるといえます。

― NPSが特に高い店舗というのもあるのでしょうか。また、その店舗が優秀な理由は何でしょうか。

今田 : 地域性は当然あるので一概には言えませんが、やはりNPSの評価が高い店舗のほうが、結果的にマイショップ会員(注:お客さまがお気に入りの店舗をマイショップとして登録)の流動性が低かったり、数が増加していたり、という傾向はみられます。お客さまとのつながりが望ましい方向に進んでいる印象です。

山本 : NPSの値も高く、販売成績も良いお店もあるので、そういった店舗にはどのような取り組みを行っているのか取材に行き、他の店舗にも情報共有しています。

― 実際にどのような取り組みをされているのでしょうか。

: お店それぞれに特徴はありますが、一例をあげれば、初めてスマートフォンを使うお客さまへの説明が分かりやすいですとか、ご高齢の方に対しても、操作説明や初期設定など、家に帰ってすぐスマートフォンを使って電話ができるというところまでご案内する。最後までフォローが徹底できている、という事例がありました。

年間500万件を超えて集まるお客さまの声に応える

― ドコモショップ以外でもNPSを導入していらっしゃるのでしょうか。

今田 : お客さまとリアルの接点があるというところで、ドコモショップのほかにも、関連会社に委託しているコールセンターでNPSを導入しています。

山本 : また、コールセンターやインターネット受付を通して、年間500万を超えるお客さまの声をいただいています。それらの声を分析し、関連部門に報告し、サービス改善に活かしています。

― NPSベンチマーク調査では、通信の安定性や信頼感といった項目で、高い評価をうけていらっしゃいました。

山本 : 通信ネットワークについては、実効速度を意識し、ダウンロード・アップロードともに使いやすいものを目指しています。また、最近は災害が多く発生していますが、災害時にいち早くサービスを回復したり、基地局のバッテリーをより強化したり、停電時にも充電できる設備をドコモショップに配備し被災地の方にご利用いただくなどの取り組みを行ってきており、これらの取り組みは、お客さまの安心と安全に繋がっているものと考えています。一方スマートフォンや携帯電話についてもラインナップの拡充や機能向上に取り組んできているところです。

― 今後のNPSの展開について、期待されていることをお聞かせください。

山本 : 「beyond宣言」では、5Gを軸に新たな「お客さまへの価値・感動」や「パートナーのみなさまとの価値・協創」を実現し、より豊かな未来の創造のために、幅広い施策に取り組んでいます。中でもお客さまへ向けた取り組みにおいては、NPSは施策と関連づけた分析ができますので、各施策のNPSへの効果も測りながら、「beyond宣言」を進めていきたいと考えています。

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