2020/02/13

【NPSトップ企業に聞く顧客ロイヤルティ向上の秘訣2019】

対面証券部門 第1位 大和証券株式会社様
~経営戦略から現場変革まで全社をあげてNPSに取り組む~

NTTコム オンライン NPSベンチマーク調査2019の「対面証券部門」で1位を受賞した大和証券株式会社。時代の変化に伴った経営改革の中で、NPSを活用し “対面証券”ならではの価値をより強化しています。NPS導入の経緯や具体的な施策内容、感じていらっしゃる効果や課題について、お伺いしました。

個別商品目標をなくすことで始まった改革をNPSが後押し

―NTTコム オンライン NPSベンチマーク調査2019において、対面証券部門で大和証券様が1位を獲得されました。おめでとうございます。
2017年度よりNPSを導入され、2020年に向けての中期経営計画でも、KPIの一つとしてNPSを掲げていらっしゃいます。最初に、NPSを本格導入されたきっかけを教えてください。

(右)大和証券株式会社 CCO(最高お客様満足度責任者) 常務取締役 望月篤様
(左)大和証券株式会社 営業企画部 NPS推進室 上席課長代理 中塚希恵様

望月 : ありがとうございます。当社の、特に営業本部においては、中期経営計画の中核に営業改革を据え、真にお客さまと向き合った、お客さま本位の営業体制構築に向け変革を進めています。その流れを後押しするのが、NPSという位置付けです。
これまでも営業員の努力でお客さまを中心に据えた、お客さま本位のコンサルティングを行ってきましたが、組織としては、いわゆる業界の文化として、商品ごとに販売目標があるプロダクトアウト型の営業体制となっていました。そのような状況をよりお客さま起点の体制へと変革するため、2017年4月より個別商品の販売目標をなくし、お客さまに最も近い営業店がボトムアップで考える体制へと変更しました。そして2018年度にはお客さま本位の営業体制へより一層進化させていくために、「大和版NPS」を全営業店に導入しました。
これまでも顧客満足度のようなアンケートは行っていたのですが、正直、しっくりこなかった部分がありました。一方、NPSの考え方は、当社が目指す考え方にピタッとはまりました。

―個別商品目標を無くすということが経営に与えるインパクトは大きく、ある意味リスクもあると思いますが、経営判断としてそれでもやりきろうということだったのでしょうか。

望月 : 中期経営計画の目標も、預かり資産が80兆円という大きな目標なので、その中の例えば株式や投資信託といった個別商品の構成がどうか、というのは本来的にはそこまで意味がないと思います。ひたすら個別商品を積み重ねでやっていく、といった手法から離れ、ある意味吹っ切れたところはあります。
そして、個別商品の目標がなくなったことで、今一番お客さまに受け入れられるものは何なのかと、各支店、各営業部員が工夫をし始めました。そして、NPS導入により、しっかり面談をして、お客さまが求めているものを探すという形に、営業の第一歩が大きく変わりました。

―NPSの導入を始めてから2年が経とうとしていますが、手ごたえはいかがでしょうか。

望月 : 2018年度は全国の営業店を複数のグループに分け、1年かけて丁寧に導入しました。先行導入店で得た知見を、後続の導入店に活かして営業店でのオペレーションを機動的に変更したりと、試行錯誤を繰り返した一年だったように思います。ですから、全店導入を完了してからは実質1年程度。まだまだこれから、というところではあります。

―どういうお店は変革できて、どういうお店が苦心されたのでしょうか。

中塚 : 営業店の規模もありますし、営業部員の年次構成も異なりますので、一概にこういうお店が、ということはないのですが、拠点の長である支店長がいかに腹落ちしているかというのが、大きなポイントであると思います。個々の営業員で言いますと、昔から自然とNPSの考え方と一致する営業スタイルを確立している営業員は当然無理なく受け入れていましたが、どの営業員も、これまで各人なりの「お客さま本位」を追求しながら営業活動を行ってきていますので、新たな価値観への対応に少し戸惑いを持つ営業員もいたと認識しています。

お客さまの声にはすべて目を通しNPSを活用した改善活動を促進

―NPSのスコア自体の目標はあるのでしょうか。

望月 : 全支店のNPSを定期的に開示していますが、あくまでもスコアはそれぞれの営業店が自分の立ち位置を確認し、お客さまの声を起点とした改善活動が、正しい方向に進んでいるかを把握するために使用しています。NPS推進室においても、スコアによって良し悪しを決めるのではなく、改善活動の内容や積極的に取り組んでいる姿勢を、きちんと把握するようにしています。

―それはどういう形で確認されるのでしょうか。

望月 : NPS推進室は40名弱の組織ですが、14名の“インタ―ナルホールセラー”がおります。彼らが、全国を回って営業店の実情を確認しています。インタ―ナルホールセラーの体制は20年近く前からあり、優秀な営業員から選出されるポジションで、本部と営業店のパイプ役を果たしています。現在はNPSの推進役として、営業店の改善活動をサポートしたり、営業現場の声を本部に吸い上げたり、時には営業員と直接面談しながらNPS の浸透度合いをつぶさに確認したり、といったことをやっております。

―NPSに関して、その制度が非常にうまく機能しているということですね。
お客さまの声は、どのようなタイミングでどなたに共有されているのでしょうか。

中塚 : 営業員が特定の行動を行なった際に、自動的にアンケートが発送される仕組みになっています。その結果はNPS推進室に届きますので、私たちが全て目を通したうえで営業店にフィードバックしています。
アンケート内容は、営業店の改善活動に役立つものにしたいので、基本的には営業員の営業活動の品質に関する項目を聞くようにしています。お客さまには高齢の方もいらっしゃるので、今は郵送で行っています。

望月 : そのほかにも、お客さまから頂戴したアンケートの中で、営業店では改善できない項目、つまりは本部機能に関連する内容を集めて、関係する本部部署にフィードバックして改善策を求めるということも、定期的に行っています。
代表取締役社長の中田にも、CCOである私から定期的に報告をしています。中田が営業本部長の時代にボトムアップの営業体制への改革がスタートし、現在のNPSにつながっていますので、かなり細かく見ています。

伝統的証券以外のビジネスへと広がる、新たな気付きが生まれる

―NPSを導入して良かった点は何でしょうか。

中塚 : 社内で言えば、新たなコミュニケーションが生まれた気がします。今日会ったお客さまが何を求めていて、どういうことをおっしゃっていたのか。どういうニーズで、どういったソリューションを我々がご案内するべきなのか。特に経験の少ない若手と上司の間で、お客さまを主語にしたコミュニケーションが圧倒的に増えた気がします。

望月 : お客さまとの関係性でも変化が見られました。深い面談を通し、これまでは見えなかったニーズが出てきて、伝統的証券ビジネス以外の、例えば相続や不動産、M&Aなどの新たなビジネスの機会が、実はこんなにあるという手ごたえを、営業員も感じているようです。
そして、私たちはNPSスコアとお客さまの投資パフォーマンスとの相関はとても高いと考えているのですが、こういった新たなビジネスが拡大していけば、単に儲かった、損しただけじゃない評価も、お客さまからたくさんいただけるのではないかと考えています。

市場環境の厳しい今こそNPSを通じて新たな企業文化を浸透させる

―お客さまに広範囲の提案をするためのスキルも必要になると思いますが、人材育成にも力をいれていらっしゃるのでしょうか。

望月 : 営業員は日々の営業活動の中で、ライン課長から実践的な指導を受けているため、ライン課長の知識強化がカギになると考えています。ですので、ライン課長のナレッジ強化のため、1年間の学習プログラムを作って実施している最中です。具体的に申しますと、さきほどお話した、相続や不動産、M&Aなど、金融にまつわる知識を幅広に身に付けるために、相当量の勉強をしています。

―その教育プログラムは、どなたがお作りになられたのでしょうか。

望月 : 全体企画はNPS推進室で行ない、コンテンツはウェルスマネジメント部などが監修しています。

―経営戦略的なところから始まり、相続コンサルなどの新たな領域までカバー範囲を広げ、それを持続可能にする仕組みを作るという、トータルコーディネートでNPSに取り組んでいらっしゃるのがよく分かりました。
最後に、NPSへの今後の期待値について教えてください。

望月 :ご存じの通り、単純なブローカレッジの世界では、手数料がほぼゼロの方向に向かっています。その中で、対面営業のお客さまに提供できる価値は何かというと、包括的なコンサルティングに集約されると思います。ですから、そのクオリティを高めなくては次に進むことができません。そういった意味では、NPSの活動を通じた営業品質向上が非常に重要となります。
私たちの改革は、まだ準備運動を終えた程度の段階だと考えています。大和版NPSが新たな企業文化として定着するよう、さらにアクセルを踏んで取り組んでまいります。

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