2015/07/15
NPS®(ネットプロモータースコア)入門・導入編
第1回 企業にとって顧客ロイヤルティの向上がなぜ必要なのか?
本シリーズでは、NPSをこれから学んでいきたいという方に向けて、NPSに関する基礎知識や、NPS利用に関するベストプラクティス、具体的なビジネスにおける導入事例などをご紹介していきます。
まず第1回のテーマは、NPSとは切っても切り離せない「顧客ロイヤルティ」についてです。
顧客ロイヤルティとは?
みなさんは「顧客ロイヤルティ」という言葉をご存じですか?
その言葉を聞いて、何を想像するでしょうか?
「ロイヤルティ(Loyalty)」とは「忠誠心」「愛情」などを意味する英単語で、「顧客ロイヤルティ」とは、企業自身やその企業の製品・サービスといったブランドに対する顧客の信頼度、愛着度を示す言葉として使われています。
ロイヤリティ、顧客ロイヤルティとは何か
ロイヤリティ(Royalty)は、王族や王位、気品などを表す英語です。ビジネスシーンでは、特許権、商標権、著作権などの権利に対する使用料や、フランチャイズの加盟店が本部に支払う使用料などの意味で使われます。ロイヤルティ(Loyalty)は、忠義や忠誠、誠実などを表します。
そのため「顧客ロイヤルティ」は、企業自身やその企業の製品・サービスといったブランドに対する顧客の信頼度、愛着度を示す言葉として使われています。
数ある製品(サービス)の中でいつもその会社の製品(サービス)を選んでしまう、自分にとってなくてはならないもの、そして友達にも薦めたくなるような製品やサービスをみなさんはお持ちではないでしょうか。
ロイヤルティの2つの側面
ではなぜ、その製品やサービスをいつも選んでしまうのか、友達に薦めたくなってしまうのかを考えたことはありますか?
ロイヤルティには2つの側面があると言われています。
ひとつはその企業が優れた価値を提供しているとお客様自身が信じていることです。 優れた価値とは「特徴」、「品質」、「機能」、「サービス内容」、「価格」などの実質的な要素のことで、理性的に判断できる「頭」の要素とも言えます。
そしてもうひとつはその企業との関係に対してお客様が良い感情を持っていることです。
- 「自分のことを分かってくれている」
- 「自分のことを大切に考えてくれている」
- 「自分の声に耳を傾けてくれる」
- 「自分の価値観・世界観と合っている」
という確信をお客様に持っていただくために感情に訴える「心」の要素とも言えるでしょう。
有名な例としてApple社のプロダクトを思い浮かべる方も多いかもしれません。
例えば、MacbookAir。
これまでのノートパソコンにはない封筒にも入る「薄さ」と「軽さ」を実現したことに加え、スタイリッシュなデザインで注目を集めました。そして、これら「頭」の要素以外に、「持っているとカッコいい自分を演出できる」という「心」の要素があることが非常に大きいのではないでしょうか?
都心のスターバックスに入ると、MacbookAirを使っている人の多いことに驚かされます。このこと自体、もう立派な広告の一部になっていますよね。
もうひとつの例は、最高級ホテルの一流コンシェルジュ。
最高級ホテルならではの客室のクオリティやホテル全体の雰囲気、連携のとれたスタッフのサービスはもちろんのこと、お客様の心情を読み、どんな依頼や要望に対しても期待を超える対応をしてくれるコンシェルジュはまさに、
- 「自分のことを分かってくれている」
- 「自分のことを大切に考えてくれている」
- 「自分の声に耳を傾けてくれる」
という「心」の要素を満たす存在になります。
コンシェルジュとは、レストラン選びやお土産選び、旅行のプランニングまで、一方的でありきたりな提案ではなく、お客様とのやりとりから情報を引き出し、お客様が「そんなところまで考えてくれるの?!」と感動するような提案を行うプロフェッショナルなのです。
旅行を終えたお客様はホテル自体の素晴らしさもさることながら、コンシェルジュから受けたホスピタリティ溢れる対応について、思わず友人に話したくなってしまうのではないでしょうか?
「頭ではわかっているけど心がついていかない」という言葉がありますが、ロイヤルティを上げるためにはお客様の「頭も心も満足させる」ことが求められます。特にコモディティ化が進み、製品やサービスでの差別化が難しくなってきた分野では、この「心」の要素はとても重要になってきます。
企業にとっての「ロイヤルティの高いお客様」の意味
次に、企業の視点から「ロイヤルティの高いお客様」を考えてみましょう。
上記で説明したとおり、ロイヤルティの高いお客様とは「頭も心も満足した」お客様です。言い換えると自社の「熱烈なファン」でもあります。
このようなお客様には次のような特徴があります。
- 自社の製品・サービスを何回も購入してくれる
- 自社の他の製品・サービスも追加購入してくれる
- 友人などの他者へポジティブなクチコミを広めてくれる
- 建設的かつ貴重なフィードバックを提供してくれる
また、クレーマーのようにたびたび電話をかけてきては担当者を長時間拘束することがないため、サービスにかかるコストも低く抑えられます。(ときには電話口で担当者に感謝の言葉を伝えてくれ、やる気を出させてくれることもあります。)そしてなにより、値引きがなくても自社の製品・サービスを購入し続けてくれる大変ありがたいお客様です。
市場競争が激しさを増し、日常的に顧客の争奪戦を繰り広げる企業経営者にとって、こんなに素晴らしいお客様はいません。できるだけ長い期間つなぎとめておきたい、新たにロイヤルティの高い顧客を創り出したい、それにより企業の成長につなげたいと誰もが思うのではないでしょうか。
「ロイヤルティの高いお客様」の見つけ方
では、「ロイヤルティの高いお客様」はどこにいるのでしょうか?
そもそも目に見えない顧客ロイヤルティをどうやって測り、把握したらいいのでしょうか?
次回はいよいよ顧客ロイヤルティを測る新指標「NPS®(ネットプロモータースコア)」の登場です。
【参考文献】
『ネット・プロモーター経営 顧客ロイヤルティ指標NPSで「利益ある成長」を実現する』
フレッド・ライクヘルド + ロブ・マーキー 著
『わたしはコンシェルジュ』 阿部佳 著
【
NPS®(ネットプロモータースコア)入門・導入編
】
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