2024/04/19

NPS®(ネットプロモータースコア)入門・導入編

NPS®の質問内容とは?質問例やアンケート作成のポイントを解説

顧客が自社商品やサービスにどのくらいロイヤルティを持っているかを測る指標「NPS®」。NPS®調査で収集した回答を適切に活用することで、自社が抱える課題の改善に役立てられます。効果的に調査を実施するためには、質問内容をしっかりと設計することが重要です。自社の事業内容や業界に合わせた質問なども組み込み、回答者に負担のかからない設計を意識しましょう。

本記事では、NPS®の概要やNPS®に含める質問内容、NPS®のアンケートを作成する際のポイント・ステップなどについて解説します。具体的な質問例も紹介するので、NPS®の質問の仕方が分からないといった企業の担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

この記事の内容
  • NPS®とは「顧客のロイヤルティ」を測る指標。ベンチマークとしても活用されている
  • NPS®調査の質問は回答者の負担にならない設計が必要。目安は質問数7問、回答時間3〜5分以内
  • NPS®を有効活用するためには、十分なサンプルサイズを用意する、定期的に調査を行い推移を確認する、社内で共有して改善アクションにつなげる、などが必要

NPS®とは?概要と計算方法

NPS®(Net Promoter Score)は、企業やブランドに対する顧客ロイヤルティを数値化する指標です。NPS®のスコアを分析することで、自社の課題や強みを明確にすることができます。また、「顧客満足度」では見えてこなかった部分を顕在化できる指標として、採用する企業が増加しています。さらに、企業の成長と相関性があることも明らかになっていることから、世界で多くの企業が導入しており、ベンチマークとしても活用可能です。

NPS®は「この製品やサービスを友人や知り合いにどの程度勧めたいと思いますか?」という質問を行い、0~10の11段階で評価してもらいます。9~10点をつけた人を「推奨者」、7~8点をつけた人を「中立者」、0~6点をつけた人を「批判者」に分類し、推奨者の割合から批判者の割合を引いて算出します。

例えば、推奨者が60%、批判者が30%の場合の計算式は以下のとおりです。

スコア= 推奨者60% - 批判者30% = 30

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【質問例あり】NPS®に含める質問内容とは?

NPS®の基本的な質問は先述したとおりですが、顧客の満足している点や不満点を深堀りするためにはより具体的な質問を組み合わせるのがポイントです。以下では質問内容や質問例を紹介します。

推奨度のスコア

まずはNPS®調査における基本の質問として、商品やサービスについての推奨度を0~10の11段階で評価してもらいます。

質問例
「この企業の製品やサービスを友人や知り合いにどの程度勧めたいと思いますか?」

スコアの理由

続いて、なぜそのようなスコアをつけたのか、理由について尋ねます。自由記述で回答してもらうことで、商品やサービスに対する顧客の本音を拾い上げやすくなります。

質問例
「その点数をつけた理由を教えてください」

例えば評価内容が低い場合、理由を尋ねることで顧客が何に不満を感じているかを把握できます。批判者の理由は自社商品やサービスの改善に役立てることができ、推奨者の理由は自社の強みとして認識できます。

製品・サービスに関する満足度

スコアの理由と同様、製品やサービスに関する満足度を質問することで、顧客が評価している点、不満を感じている点を把握できます。

質問例(生命保険会社の場合)
「保険商品に関する以下の満足度について教えてください」

  • ブランドイメージ
  • 保険商品の内容
  • 手続きのわかりやすさ
  • 保障内容や請求条件のわかりやすさ
  • アフターサポート
  • お問合せ時の対応
  • 料金

顧客のプロフィール・行動

顧客のプロフィールや行動を質問することで、顧客層の把握やセグメンテーションに活用できます。

質問例

  • 「あなたの現在の職業を教えてください」
  • 「あなたのお住いの地域を教えてください」
  • 「あなたの性別を教えてください」
  • 「あなたの年齢を教えてください」

これらの質問を組み込むことで、回答者と想定しているターゲットが一致しているかを判断できるでしょう。ただし、ホテルなど事前に顧客情報を入手できる業態で、別途顧客情報とアンケートを紐づけられる場合は、基本的なプロフィールの質問は入れないようにします。

NPS®のアンケート項目を作成する際のポイント

ここからは、NPS®のアンケート項目を作成する際の4つのポイントについて解説します。

初めに推奨度を質問する

NPS®調査のアンケートでは、まず推奨度を質問します。初めにほかの質問をすると、ポジティブまたはネガティブなバイアスがかかり、推奨度に影響を及ぼす恐れがあるからです。例えば、「当店の接客で改善したほうが良いと感じた点はありますか?」という質問を冒頭に設置すると、顧客はネガティブな要素を思い出し、本来より低い推奨度をつける可能性があります。ポジティブ・ネガティブに関わらず、バイアスがかからないように推奨度は初めに設置し、第一印象を回答してもらえるようにしましょう。

質問数は7問、回答時間は5分以内を目安にする

これまでの経験上、アンケートの質問数は8問以上になると回答率が下がっていきます。そのため、NPS®調査の質問数は7問以内とし、回答に要する時間も5分以内に収まるよう極力シンプルに設計します。より多くの人に率直なアンケートを回答してもらうには、質問数は7問以内かつ3~5分で回答できるシンプルなアンケートが理想です。

また、なかには回答自体を断る人も出てくる可能性もあります。最後まできちんと回答してもらえるよう、回答者の負担にならない質問設計が必要です。

説明・質問文は簡潔にする

冒頭の説明や質問文は簡潔にまとめましょう。説明や質問の文章が長く回りくどいと、回答者は質問の意図を汲みにくくなります。質問を理解するためにストレスがかかると回答する気がなくなり、途中で回答をやめてしまう人が出てくる恐れもあります。

文章を簡潔に、専門用語を多用しないなど、一目で理解できる文体にすることを意識しましょう。また、質問の対象や質問の時系列を明確にすることも大切です。

自由記述の質問も入れる

NPS®は11段階のスコアで評価しますが、それだけでは具体的な顧客心理を把握するのは難しいものです。選択式だけでなく自由記述の質問も組み合わせることで、想定していない改善ポイントや、より具体的な問題点を把握することができます。

ただし、自由記述は回答者の負担が増えるため、質問数が増えると回答者のストレスが大きくなってしまいます。記述式の設問数は絞り、アンケートの後半に設置するのがおすすめです。また、回答者がイメージしやすいよう、中立的でバランスの取れた解答例を示すのも効果的です。

NPS®のアンケートを作成する3ステップ

以降では、NPS®のアンケート作成手順を3ステップで解説します。

1|目的を明確にする

アンケートの目的を定めることで、適切な質問を設定できるようになります。目的が異なると質問内容も変わってくるため、まずは「何のために調査を行うのか」を明確にしましょう。

NPS®調査を実施する目的の例として、企業の商品・サービス全般に対する推奨度の測定、タッチポイントごとの満足度調査、課題の洗い出しなどが挙げられます。目的を設定することで、製品・サービスの改善に役立つ結果を得やすくなります。

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2|アンケートの手法を決定する

NPS®調査の手法には「リレーショナル調査」と「トランザクショナル調査」の2つがあり、両者を使い分けることが必要です。リレーショナル調査は企業全体の推奨度を測るための調査で、年に1~2回程度実施します。一方のトランザクショナル調査は製品購入やサポートへの問い合わせなど、特定の顧客体験ごとの推奨度や顧客満足度を測る調査で、日次や週次、月次など、リレーショナル調査よりも短いサイクルで実施します。

まずはリレーショナル調査で改善点を明確にし、トランザクショナル調査でより具体的な改善点を深掘りするのが効果的です。

3|質問内容の洗い出し・絞り込み

効果的に調査を行うためには、質問内容の洗い出しや絞り込みも欠かせません。まずは、質問数を制限せずに洗い出しましょう。ただし、思いつきだけで洗い出すと漏れが出るため、カスタマージャーニーマップを活用するのがおすすめです。

カスタマージャーニーマップとは、商品やサービスを購入するまでの過程、時には使用や廃棄を含む、顧客の思考や行動のパターンを時系列で整理した図のことを指します。カスタマージャーニーマップを活用することで顧客への理解を深め、タッチポイントごとに適切な施策を打ち出すことができます。また、質問数が多いと回答に時間がかかり離脱者も増えやすいため、顧客が答えやすいように質問を絞り込むことも必要です。

NPS®を有効活用するためのコツ

ここからは、NPS®を有効活用するためのコツについて解説します。

十分なサンプルサイズを用意する

NPS®調査を行う際には、十分なサンプルサイズを用意する必要があります。サンプルサイズが少ないと、回答の精度が低くなってしまうので注意が必要です。一般的なアンケート調査で必要とされるサンプルサイズは「n≧400」とされています。サンプルサイズがn≧400であれば、結果の誤差は±5%以内に収まると考えられています。

もし400以上のサンプル数を集められない場合は、サンプル数100でも調査は可能です。サンプル数100の場合でも誤差±10%程度と、ある程度信頼できる調査結果が得られます。また、調査内容に理解の高い人を回答者に選ぶなど、回答者を抽出することも精度を高めるために効果的です。

定期的に調査を行い推移を確認する

NPS®調査は一度スコアを把握するだけでは効果がありません。定期的に調査を行い、推移を確認することが重要です。頻度に決まりはなく、半年に1度、1年に1度などと決めておくと良いでしょう。調査結果をもとにした改善施策の効果や顧客ニーズの変化などを時系列で捉えることで、適切なマーケティングや効果的な施策の分析につなげることができます。

スコアの目安の扱いに注意する

NPS®のスコアは公表されているため、多くの企業でベンチマークとして活用されています。業界内比較ができる点はメリットですが、調査方法や対象によってスコアが異なるため扱いには注意が必要です。例えば、自社顧客を対象にしたケースと、調査会社に依頼したアンケートモニタを対象にした場合ではNPS®スコアは大きく変動します。競合他社と比較する場合は、同じ条件で調査しなければなりません。

また、日本は中間の選択肢を選ぶ特性があるため、多くの企業がマイナスのスコアとなっています。一方、アメリカなどは極端な選択肢を選ぶ特性があります。スコアがプラスになる傾向があるため、グローバルで比較する意味はそれほどありません。国内におけるNPS®の結果により競合他社との相対的なポジショニングを把握し、差別化に役立てましょう。

適切な分析ができる体制を整備する

NPS®のスコアを確認するだけでは、適切な施策を立案することは難しいでしょう。アンケートの内容を多様な切り口で分析し、課題を洗い出す必要があります。NPS®の結果には企業が気づいていない顧客の課題が潜んでいる可能性があるため、適切な分析が重要です。商品やサービスの改善だけにとどまらず、新商品の開発にも顧客のフィードバックを活かすことができます。

データを効果的に分析するためには、知識やスキルを持つ人材が必要不可欠です。また、分析を正しく効率的に行うためには、分析を自動化・可視化できるツールの活用もおすすめです。

分析結果から改善すべき項目を特定する

企業が抱える課題は一つではなく、タッチポイントごとにさまざまな課題があります。分析結果から課題が浮き彫りになってもすべてに手をつけることは難しいため、優先順位を決める必要があります。優先して改善すべき項目を特定するためには、「アクションドライバー分析(4象限分析)」を活用するのがおすすめです。

アクションドライバー分析とは、NPS®の向上に影響を与える要素を発見するための分析手法です。横軸に「各満足度の平均」、縦軸に「各満足度と推奨度の相関係数」を設定した散布図を作り、「各満足度の平均」の平均と、「各満足度と推奨度の相関係数」の平均とで分けられた4つのセグメントを用いて、満足度項目の傾向を捉えます。各象限は重点維持項目・優先改善項目・基本維持項目・注意観察項目に分けられ、どの象限にどの要素が当てはまるかを判断し、優先順位をつけていきます。次に起こすべきアクションが明確になることから、ビジネスではよく使われる分析方法です。

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NPSの分析方法とは?定量分析・定性分析の具体的な手法を解説

社内で共有して改善アクションにつなげる

NPS®のスコアや分析結果、改善施策などは社内全体で共有しましょう。社内で共有することで自社の強み・弱みが可視化され、社員のモチベーションアップにもつながります。また、PDCAサイクルを早め、効率的に課題を改善できる点もメリットです。

まずは、タッチポイントごとの課題や施策の効果などを常に共有できる仕組みを作ることも重要です。共有する際にはスコアの結果だけでなく、推奨度の低い顧客の声を基に、現状の業務に対する具体的なフィードバックもあわせて行うと良いでしょう。

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NPSを向上させる5つの取り組みとは?数値向上の重要性や事例も紹介

【2023年度】日本のNPS®スコアランキング

NTTコム オンラインでは、業界別のNPS®ベンチマーク調査を実施しています。自社の業界におけるトップスコアや平均スコアを把握することで、自社のポジションを認識できるほか、目標設定にも活用できます。以下は、2023年度の業界別ランキングと業界平均スコア一覧です。

【NPS®業界別ランキングトップ企業 2023】

業界 ランキングトップ NPS®スコア 業界平均スコア
都市ガス部門 大阪ガス -30.5pt -42.3pt
総合型旅行会社部門 ジャルパック 3.7pt -13.4pt
航空会社部門 ANA(全日本空輸) 0.8pt -11.2pt
ネット証券部門 SBI証券 -5.7pt -30.1pt
セキュリティソフト部門 ESET -20.5pt -36.3pt
ダイレクト型自動車保険部門 ソニー損保 -11.2pt -28.7pt
クレジットカード部門 楽天カード -27.1pt -42.9pt
銀行部門 住信SBIネット銀行 -16.7pt -42.7pt
電力部門(東日本) 東京ガス -30.5pt -55.4pt
生命保険部門(アフターフォロー調査) ソニー生命 -41.2pt -55.2pt
表の続き →

出典:NPS®(顧客推奨度)業界別ランキング

NPS®の質問設計・分析・活用をサポートする「NPX Pro」

「NPX Pro」はCX向上を支援するNPS®ツールです。アンケート調査設計から、アンケートの配信、回答結果の分析、改善アクションの実施管理に至るまでのプロセスをスムーズにサポートしてくれるツールです。NPX Proの主な機能は以下のとおりです。

  • NPS®アンケート作成、配信
  • NPS®アンケート集計、分析
  • NPS®アンケート分析結果の共有
  • 改善アクションの促進・管理

NPX Proはカスタマージャーニーを可視化し、タッチポイントごとに顧客の行動に合わせたアンケート作成や複数の調査の一括管理が可能です。分析結果は視覚的にわかりやすく、社内での情報共有にも役立ちます。また、コメントのネガティブ・ポジティブを通知するアラート機能を搭載しているので、批判者に対する迅速なフォローアップを行える点も特徴です。NPX Proを活用することで最適な顧客へアプローチでき、企業の成長につなげることができます。

導入事例|株式会社 ジャルパック 様

日本航空を利用した旅行商品の企画運営・販売・管理を行なっている株式会社 ジャルパック様。もともと独自のアンケート調査を実施され、顧客満足度は90%超えという状態でしたが、さらなる顧客満足を目指してNPX Proを導入されました。同社4事業のうち、「海外旅行事業」「国内旅行事業」「訪日事業」の3事業において活用されています。

NPX Proを導入後は自社の強みと弱みが明確になり、改善施策の優先順位がつけられるようになったといいます。また、分析結果をすぐに集計できる点や、コンサルタントによる支援体制などにも満足されています。今後はよりNPX Proに関する知識・技術を身につけられるよう、運用自体を見直していきたいとのことです。

適切なNPS®アンケートを作成して改善に活かす

NPS®のアンケートを効果的に実施するためには、回答者の負担にならない質問数や回答時間を設計することが重要です。離脱なく最後まで回答してもらえるよう文章は簡潔にし、自由記述のアンケートも交えて回答者の本音を引き出すこともポイントです。適切なNPS®アンケートを作成して顧客の満足度を客観的に把握し、改善施策に活用しましょう。

NPS®導入についてお悩みの企業様向けに、NPS®ガイドやNPX Pro導入・活用コンサルティング資料、NPS®ベンチマーク調査分析レポートなど各種資料を用意しておりますので、ぜひご活用ください。

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