2015/05/20
カスタマーロイヤルティxビジネス
NTTコム オンラインの朝倉です。今回は、ソーシャルメディアと消費者の行動のつながりについて、前回に引き続きGallup社が公表した調査レポート "State of the American Consumer" からご紹介します。
このレポートでは、「ソーシャルメディアの神話(The myth of social media)」として、企業がソーシャルメディアに対して持っている通念と現実が異なるという点に関して調査結果がまとめられています。
現在、企業によるソーシャルメディアを使った自社の宣伝は多く行われています。BIA/Kelseyによれば、米国の企業は2013年にソーシャルメディアを使った宣伝に51億ドルを費やしており、2018年までには150億ドルに達するだろうと予測されています。
しかしながら、本報告においては、大部分の消費者はブランドとエンゲージするためにソーシャルメディアを使っていない、という結果が紹介されています。
本報告書では以下のようなデータが挙げられています。
以上から、企業が期待するほどソーシャルメディアは強力なマーケティングツールとしての役割を果たしておらず、企業の公式Facebookページや公式X (旧Twitter)アカウントは、消費者に商品の購買を促したり他の人に薦めてもらったりするための動機づけにはならない、としています。
その上で、同社は、もし企業が新規顧客を獲得したいのであれば、最善の方法は既存顧客とのエンゲージメントを通じて、自社を推薦してくれるよう動機づけを行うことであり、『カスタマーエンゲージメントがソーシャルエンゲージメントを促す』と述べています。
そして、カスタマーエンゲージメントは、企業が『全ての』タッチポイントにおいてどれだけ上手に顧客に寄り添うことができたか、ということに大きな影響を受けることから、顧客とのエンゲージメントへの取り組みはオフラインとオンラインの両方のチャネルで行われる必要がある、としています。
例えば、銀行業界では、79%の顧客が手続き等で支店を訪れる一方で、Facebookでその銀行をフォローしている顧客は11%, X (旧Twitter)でその銀行をフォローしているのは5%だそうです。小売業界では、店内のディスプレイを見て商品の購入を決定した顧客が56%であるのに対し、ソーシャルメディアのコンテンツを見て決定した顧客は7%だそうです。
消費者がソーシャルメディアを使う目的は、会話に加わったり結びつきをつくっていくためです。それに対して、多くの企業はソーシャルメディアを一方向のコミュニケーションとしてしかみなしておらず、マーケティング施策を押し出すためにいかにソーシャルメディアを使うか、ということのみに注力する傾向があります。しかし、そのような努力は場違いなものである、と述べています。
本報告では、消費者の会話にかかわっていくために、ソーシャルメディア活用方針をより『誠実』(authentic), 『対話に前向き』(responsive)、『魅力的』(compelling)なものにすることを薦めています。
ソーシャルメディアサイトは極めて個人的で会話的なものです。消費者は「ブランド」ではなく「人」と関わりを持ちたいと思っており、誠実で親しみのもてるものに反応するもので、企業は押し売りではなく、消費者とオープンな会話をもつようにするべきです。
ソーシャルメディアは24時間365日利用できるので、消費者はタイムリーなレスポンスを期待しています。企業は意識して質問に回答したり、不満や批判に返答する必要があります。
ネガティブなフィードバックを無視するとブランド評価にさらに悪影響が及ぶ可能性があるので、消費者の声に耳を傾け、アクティブに反応することが求められます。
コンテンツが溢れている中で、消費者は取捨選択をしています。ソーシャルメディアユーザーを惹きつけるためには、彼らを惹きつける興味深いコンテンツを作る必要があります。
そして、コンテンツはオリジナルのもので、営業やマーケティングに直接関係しないようなものが良い、としています。それにより、消費者が何度もサイトを訪問し、接触を持ち続けてくれる、と述べています。
企業にとっては、ソーシャルメディアを通して、顧客との間に以前はつくり得なかったようなコミュニティを築く機会が生まれるかもしれません。しかし、消費者はソーシャルメディアよりもオフラインの経験の方により影響を受けることから、まず他のチャネルを通して顧客とエンゲージする必要がある、と結論付けています。
消費者の購買意思決定において、ソーシャルメディアは大きな影響を与えるものではないかもしれませんが、一方で『一定の影響がある』ともいえそうです。そして、その影響は、企業が発信するコンテンツ以上に、消費者自身がソーシャルメディアで行う会話によりもたらされるもの、といえるでしょう。
ソーシャルメディアを通じてのマーケティングやカスタマーサポートが注目を集めています。(弊社も、それらをお手伝いするビジネスを展開しております。) この報告書は、ソーシャルメディアを孤立したものとして構築・運用するのではなく、企業の全てのタッチポイントを包含した全体的なカスタマージャーニー戦略の1つとして位置付けることを提唱している、と考えます。
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