2023/02/21

NPS®(ネットプロモータースコア)入門・導入編

従業員エンゲージメントの意味・重要な理由とは?向上させる方法や事例も紹介

人口減少や働き方の多様化により人材の流出が企業の課題となっている現代。より優秀な人材を確保して、社員一人ひとりが最高のパフォーマンスを発揮できる企業をつくるために欠かせない概念・指標の1つが「従業員エンゲージメント」です。この記事では近年注目されている従業員エンゲージメントについて、その意味や重要性を解説するとともに、向上させる方法や実際の企業による取り組み事例も紹介いたします。

従業員エンゲージメントの意味・定義とは?

従業員エンゲージメントとは、従業員が企業のために努力を惜しまない熱意や愛社精神を強く持っている状態です。その概念のコアには、英語のengagementが持つ「契約」「約束」という意味があります。つまり従業員エンゲージメントが高い企業とは従業員と企業の結びつきが強い企業であると言えるでしょう。また、エンゲージメントが高い社員とは、自ら積極的に行動し、企業への貢献度が高い社員を指します。

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従業員エンゲージメントが重要な理由

近年従業員エンゲージメント向上に投資する企業が増えていますが、そもそもなぜ従業員エンゲージメントが重要なのでしょうか。その理由を解説します。

働き方の多様化により人材の流動性が高まっているから

現代の日本では従来の終身雇用制度が崩壊しつつあり、一企業に生涯連続して勤めるのではなく、転職・再就職や休職・復職をするのが当然になり、人材の流動化が進んでいます。これは要するに、勤めている企業に魅力がなければ優秀な人材は容易に流出してしまうということです。従業員エンゲージメントの高い魅力的な企業では従業員が長く勤める傾向があります。そのため在籍社員の組織に対する愛着を向上させることが人材確保、そして流出を防ぐ上で重要なのです。

リモートワークの普及によりコミュニケーションが不足しているから

近年ではICT技術の発展やパンデミックなどの世界情勢によりリモートワークが拡大し、対面でのコミュニケーションが減少しています。コミュニケーションが不足すると意思疎通が十分に出来ず、思わぬトラブルが生じたり、仕事の効率が低下するなどのリスクが高まる上に、これまで対面することで生まれていた仲間意識や帰属意識が薄くなる恐れもあります。そのためリモートワークが日常化しつつある現在は、従業員エンゲージメントの重要性がより高まっています。

商品・サービスの品質を高めるため

従業員エンゲージメントは「良い仕事をして成績を上げたい」「上司に評価されたい」「お客様に喜んでほしい」といった勤労意欲に直結する要素です。従業員の勤労意欲が低いと、会社の業務内容に価値を見出して仕事に誇りを持つことも難しくなります。顧客に喜んでもらえるようなクオリティの高い商品・サービスを提供するには、多くの従業員が前向きに仕事へ取り組む生産性の高い職場をつくる必要があります。

従業員エンゲージメントと3大概念はなにが違う?

従業員エンゲージメントに似た概念として「従業員満足度」「モチベーション」「忠誠心」があります。ここでは3つの概念と従業員エンゲージメントの違いを解説します。

従業員満足度との違い

従業員満足度とは、主に会社が提示する就労条件や職場の人間関係による居心地に対する満足度を示すもの。組織への愛着を示す従業員エンゲージメントとは違い、会社の現状に対する指標なので、同じ条件でも個人の感情やその時の諸事情により変動する傾向があります。そのため事業の収益や生産性との相関性は薄いとされています。一方、従業員エンゲージメントはより本質的な企業との結びつき・愛着を示すもので、収益や生産性との相関関係が強い指標です。

【関連記事】従業員満足度(ES)を上げるには?影響する要素や取り組み事例を紹介

モチベーションとの違い

モチベーションは、日本語で「意欲」や「目的意識」とも呼ばれる概念。仕事へのモチベーションは当然重要な要素ですが、「企業に貢献したい」という意志とは必ずしも一致しません。もちろんなかには会社への貢献をモチベーションにしている従業員もいますが、一般的には、報酬の高さや仕事の内容をモチベーションにして一生懸命働いているが、会社自体には愛着がないというケースが多くあります。モチベーションとは違い、従業員エンゲージメントはあくまでも企業と従業員の関係性を示す指標です。

忠誠心との違い

忠誠心は一般的に人間の上下関係の中で生じるものとされています。従業員は会社もしくは上司から雇用を提供してもらうことで安定・安心が得られる半面、自由な発言や自己判断での行動を抑制し、自分より上の立場の意見を仰ぎ指示に従う傾向にあります。そのような場面で働いているのが忠誠心です。会社や上司のみならず利益を提供してくれる顧客への忠誠心もあるでしょう。一方、従業員エンゲージメントは上下関係によって生じるものではなく、個人から自然に生まれる自発的な貢献意欲なので忠誠心とは似て非なる概念です。

業員エンゲージメントを高めることによる効果

従業員エンゲージメントを高めることによって具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここからは主な効果について解説します。

離職率が低下する

従業員エンゲージメントが高い企業では、離職率が低下する傾向にあります。WTW(ウイリス・タワーズワトソン)の調査では、5つの小売業者の結果を総合して、従業員エンゲージメントの高い店舗は低い店舗より離職率が23ポイント低かったという結果が出ています。企業に対する貢献意欲と信頼から成立する従業員エンゲージメントが高ければ、企業を離れたいと思う従業員が減るのも当然のことです。

参照:Why is employee engagement important? - WTW

社内の活性化・生産性向上につながる

従業員エンゲージメントが高まるということは、企業が示す理念に共感して積極的に貢献する姿勢を持つ従業員が増えるということです。従業員自らが「目標を達成するために何をすればよいか」「職場の環境を改善するにはどうすればよいか」など課題を発見して能動的に行動するため、社内全体に活気が出て職場の雰囲気やコミュニケーションの質が改善し、結果として生産性が向上します。

優秀な人材の確保につながる

従業員エンゲージメントの高い企業の特徴である離職率の低さや社内の明るい雰囲気は、就職活動をしている学生や転職を検討している社会人にポジティブな印象を与えます。さらに離職率が低い理由を具体的に提示すれば、企業の経営理念や将来のビジョンへの理解や共感も深まりさらに信頼度が増します。すると他の企業よりも志望順位が高くなり、より優秀な人材の確保につながるでしょう。

NPS(顧客推奨度)や顧客満足度が高まる

従業員エンゲージメントが高まるとNPS(Net PromoterScore)や顧客満足度も向上します。NPSとは、企業の商品やサービスを顧客が友人・家族へどれくらい勧めたいかを示す指標で「顧客推奨度」とも呼ばれます。企業への貢献意欲が高く積極的に行動する従業員が多いと商品・サービスの品質の向上につながり、その結果、NPSや顧客満足度も高まります。企業の業績を支える重要なNPSと顧客満足度を向上させるには、顧客だけではなく従業員をケアする必要があるのです。

日本の従業員エンゲージメントはなぜ低い?

近年、日本の従業員エンゲージメントは海外に比べて低いことが判明しました。具体的な数値も参照しながらその理由を見ていきましょう。

日本で従業員エンゲージメントの高い社員は5%(2022年調査)

アメリカの調査会社ギャラップの調査結果によると、日本では熱意あふれる社員の割合は2017年調査で6%、2022年調査では1%低下して5%でした。その順位は調査対象139ヵ国中132位(2017年)、129ヵ国中128位(2022年)という残念な結果。なぜこれほど数値が低いのか、その理由として以下のような問題が指摘されています。

年功序列・終身雇用などの日本型雇用

従来の日本の雇用システムでは年功序列や終身雇用が常識でした。そのようなシステムの中では従業員が能動的である必要性は低く、上司に従うことが重要でした。現代では年齢より能力を重視する価値観や、企業に評価されなければ転職をする行動様式が当たり前になっています。にも関わらず、いまだに古い日本型雇用の名残を留める企業が多いため従業員の能動性が抑制されていると考えられています。

個々の多様性を重視しない傾向

日本では従業員自らが仕事内容、勤務地を選択することが難しく、希望や適性に合った働き方が実現できないケースが多くあります。さらに人材育成の方法も画一的で個人がフォーカスされない傾向にあります。企業が従業員個々の多様性を重視しなければ、従業員の貢献意欲も上がりません。理想的には、希望や適性に応じた配置や役職、勤務地を従業員が選択し、生き生きと能動的に働くことが望ましいでしょう。

ジェネラリストを育成する環境

日本では画一的な教育の結果ジェネラリストが育ちやすい環境が確立しています。スペシャリストとは対照的に万遍なく知識を備えたジェネラリストは、広い視野を持ちバランスが良いのですが、その半面突出したスキルを獲得しづらいことが弱みです。ビジネスが細分化・複雑化する現代で実際に必要なスキルはその企業に特有のものが多く、ジェネラリストが多い日本ではエンゲージメントが醸成されにくい傾向にあります。

従業員エンゲージメントを構成する要素

従業員エンゲージメントを高めるには、まず従業員エンゲージメントを構成する要素を理解しておく必要があります。ここでは3つの重要な要素を解説します。

ビジョンへの理解・共感

「この会社に貢献したい」という意志や愛着は、企業が掲げるビジョンを理解し、そこに従業員自身のキャリアプランを重ねることから生まれます。そのため企業側はどのような価値を社会に提供したいのか、今後どんな企業でありたいのかを従業員に示す必要があります。勤める企業のビジョンをよく知らない、もしくは賛同できない状態では自分と組織は一致しているという適合感は生まれず、エンゲージメントも高まりません。

帰属意識

帰属意識とは、自分は職場の仲間に受け入れられており、その組織の一員として貢献しているという自覚及び誇りのことです。帰属意識が高いほど組織における問題を自分ごととして捉え、共に働くメンバーや企業そのものに対する興味や愛着も深まります。そんな帰属意識を強めるためには共に働くメンバーとの関係性が重要。お互いを認め合い、困ったことがあれば助け合えるような信頼できる仲間の存在があってこそ企業への愛着は高まります。

仕事に対する行動意欲

組織のために積極的に動いて仕事に取り組もうとする意志や姿勢を行動意欲といいます。行動意欲がある従業員は組織に依存せず、商品やサービスの質を上げるため、業績を拡大するために自ら能動的に行動します。この行動意欲には「組織の役に立っている」という貢献感、「自分は組織に相応しい」という適合感、「周りと協力しながら働いている」という仲間意識が影響しています。

従業員エンゲージメントを高める7つの取り組み

ここからは従業員エンゲージメントを高めるためにどんな取り組みが可能なのか具体的に見ていきましょう。代表的な7つの方法を紹介します。

1|企業理念・ビジョンを浸透させる

すでに解説したように、企業理念・ビジョンへの理解・共感は従業員エンゲージメントを構成する大きな要素であり、企業側は自社の理念・ビジョンを従業員全体に浸透させる必要があります。そのための取り組みは企業によってさまざまですが、着手しやすいものとして、定期的に勉強会を開催する、ホームページやメディア出演等の広報活動を通じて企業理念を広く公開し、日頃から社会的認知度を高めておくといった方法があります。

2|適性な人事評価制度にする

仕事ぶりやパフォーマンスが正当に評価されなければ、従業員の帰属意識や行動意欲は低下してしまいます。人事評価制度に説得力があり従業員が納得すると、従業員エンゲージメントにも好ましく影響します。適切な人事評価を実施するには、評価者の主観に左右されない客観的な評価基準を設けること、さらにそれを明確化し、従業員へのフィードバックを定期的に実施するといった取り組みが必要です。さらに従業員同士が報酬を贈り合うピアボーナスを導入する、個別で表彰を行うなどお互いを称え合う風土をつくる工夫も大切です。

3|コミュニケーション活性化の施策を打つ

社内の円滑なコミュニケーションと良好な人間関係も従業員エンゲージメントの向上に欠かせません。上司や同僚との関係性が薄いと無駄な作業や残業が増えるなど生産性も低くなります。コミュニケーションを活性化するために、1on1(上司と部下が1対1で行う面談)の定期的な実施、情報共有のためのツールの導入、シャッフルランチ(普段関わりの少ない社員同士の食事会)など組織に合った施策を実施しましょう。

4|ワークライフバランスに配慮する

働き方が多様化している現代では、ワークライフバランスが取れた働き方を実現することはとても重要です。家庭やプライベートの時間が不足するとストレスがたまり健康状態にも悪影響を及ぼします。残業管理の徹底、福利厚生の充実、好きな時間に仕事を開始・終了できる完全フレックスタイム制の導入など、ワークライフバランスのケアを行うことが労働環境の改善につながり、十分な能力発揮を可能にします。

5|リーダーシップの取り方を見直す

上司のマネジメントは従業員エンゲージメントに大きく影響します。マネジメントはひと昔前までは支配型リーダーシップが主流でしたが、現在はサーバントリーダーシップが注目されています。サーバントリーダーシップとはリーダーが部下と積極的に関わり、意見に耳を傾けた上で組織の進むべき方向を指し示す手法です。権力を誇示するのではなく、部下を支えて可能性を引き出すため、「従業員自身が能動的に行動するようになる」「従業員同士のコミュニケーションが活発になる」といったメリットがあります。

6|社員のキャリア形成をサポートする

同じ企業にいても社員が描くキャリアビジョンは人それぞれです。多様なキャリア形成が可能な企業は、従業員エンゲージメントが高い傾向にあります。転職が当たり前の現代では、年功序列や終身雇用により若い人材の成長が望みにくい企業は時代錯誤と判断されて人材が離れやすくなるでしょう。社員が持続的に新しいスキルを身に付けらるようトレーニング環境を整える、部署異動のハードルを下げる、キャリアコンサルティングを設置するなど、キャリアを形成しやすい環境を整えることが求められています。

7|従業員エンゲージメントを測定して課題を明確にする

従業員エンゲージメントを高める取り組みの上では、まず現状を把握して自社の課題を抽出するために適切な方法で従業員サーベイを行う必要があります。社内で実施が難しい場合は従業員サーベイを専門とする調査会社への委託がおすすめです。サーベイ結果を得た後は、組織内で最も改善が必要な領域を特定します。多くの場合、従業員エンゲージメントを最大限向上させるには複数の領域に対処する必要があります。改善すべきポイントを見つけ、その上で具体的な施策を計画して取り組みましょう。

従業員エンゲージメントを高める企業の取り組み事例

日本でも既に従業員エンゲージメントを高める取り組みを実践している企業はあります。今回は有名企業の事例を紹介します。

LIXIL

水回りの住設メーカーLIXILは、従業員エンゲージメントと顧客ロイヤリティの相関関係に着目。ショールームなどエンドユーザーと接点を持つ現場でエンゲージメントの低い状態で接客していると、エンドユーザーは満足しない可能性が高いと考えました。そこで月1回の従業員サーベイを開始して企業内の課題を改めて発見。その後、情報共有システムを活用して社員が必要とするサポートをリアルタイムに提供するなどの施策を実施しました。その結果、10ポイントもエンゲージメントスコアが改善しています(2020年4月時点)。

リクルートホールディングス

2014年の上場以降、働き方改革、グローバル化などを進めてきたリクルートホールディングス。高度なスキルを保有する高度専門人材などの獲得、定着に向けてエンゲージメント強化の取り組みを実施。遠隔会議システムや動画を活用した採用選考、魅力的なオフィスの設計、職場単位のディスカッションなど多様な施策を実施しました。その結果、30 カ国を超える多様な出自の高度専門人材採用を実現。さらに高度専門人材の離職率も低い水準を保ち、効果的なリテンションに成功したといいます。

サントリーホールディングス

サントリーホールディングスはグローバル化によって会社規模が拡大する中、グループ全体の一体感、理念や想いを共有することを重視して取り組みを実施しました。キャリア情報の積極的な開示、1on1の実施、HR(Human Resources)テクノロジーの活用、ジョブローテーションの実施などにより、「キャリア情報サイトの閲覧数が増加する」「従業員意識調査における社員の働きがいが高水準で推移する」「女性管理職層やシニア層の活躍」など、多様な人材の定着・活躍に関して定性・定量的な成果を出しています。

従業員エンゲージメントの改善は定期的な調査が必要

従業員エンゲージメントに関する調査(エンゲージメントサーベイ)は一度やって終わりではなく、定期的に測定して数値の推移を見ながら改善に取り組むことが重要です。調査の度に結果の分析と課題の明確化、施策実施、効果測定という手順を繰り返します。従業員の企業に対するロイヤルティすなわち従業員エンゲージメント、または従業員満足度を測定する際は、NTTコムの「従業満足度調査ソリューション」がおすすめです。

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従業員エンゲージメントの向上は課題の特定からはじめる

この記事では従業員エンゲージメントの重要性や向上させる方法について解説しました。優秀な人材を確保して社内に定着させるには定期的な取り組みを実施することが有効ですが、まずは社内課題の明確化、改善すべきポイントの特定が必要不可欠です。従業員調査を行うためのリソースが不足している場合は、サーベイサービスを導入することから検討してみてはいかがでしょうか。

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