2015/07/07
カスタマーロイヤルティxビジネス
第5回 『新規顧客の獲得』と『既存顧客のリテンション』を考える
NTTコム オンラインの屋代です。今回は、『新規顧客の獲得』と『既存顧客のリテンション』について、コンバージョン支援サービスを提供するinvesp社のブログ記事 "Customer Acquisition Vs.Retention Costs - Statistics And Trends" から考えてみます。
多くの企業にとって『新規顧客の獲得』は常に重要な課題であり、携帯電話業界などでは『新規契約数』自体がニュースとして報道されるほどです。一方で、適正な利益を確保した成長を続けていくためには、一回の取引で離れられてしまわないよう、顧客に満足いただき、取引を継続いただく『リテンション』も大切です。
しかし、この『リテンション』は、『新規顧客の獲得』ほどの注目を集められていない傾向があるようです。記事では、『新規顧客の獲得』により重点を置く企業が44%であるのに対し、『リテンション』により重点を置く企業が18%である、という数字を挙げています。
本記事は、この論点を考えるうえで参考となる、いくつかの数字を提示しています。
まず、一般に知られた数字として、『新規顧客の獲得にかかるコストは、既存顧客を維持するコストの5倍』という数字を挙げています。(ちなみに、この数字については諸説あり、例えば、White House Office of Consumer Affairs の推計では約6-7倍、 eMarketerの2002年の報告においては5-10倍となっており、中には約30倍と推計するものもあるようです。
これらの数値については、"Cost of customer acquisition vs. customer retention" にて参照いただけます。)
そして、回答者の70%は、『既存顧客のリテンションは新規顧客の獲得よりも安い』と回答したそうです。
記事では、『既存顧客のリテンション』について、もう少し掘り下げた数字を紹介しています。企業の89%は、カスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)がロイヤルティ(ひいては、リテンション)をもたらすカギである、とみているそうです。
また、企業の76%は、顧客生涯価値(CLV)を重要なコンセプトとしている一方で、CLVを正確に計測できている企業は42%に留まっている、としています。
さらに、『5%のリテンションの向上は、25%から95%の利益の増加をもたらす(Bein and Company, 1990年)という数字が紹介されています。この数字は、リテンションの重要性を考える際によく引用されるものの一つです。
また、『既存顧客への販売の利益率は60-70%となる一方で、新規顧客への販売の場合は 5-20%となる』『新規顧客に比べて、既存顧客の新製品を試す意向は50%高く、支出額は 31%高い』といった、既存顧客がビジネスに与えるメリットに関する数字を紹介しています。
企業の究極的な目標は、利益ある成長の持続である、と考えます。そのためには、 『新規顧客の獲得』か『既存顧客のリテンション』か、という二者択一ではなく、自社における新規顧客の獲得にかかるコスト、既存顧客の維持コスト(サポートなど)、CLVなどを算出したうえで、最適な資源配分を考える必要があるといえるでしょう。その意味では、今よりももう少し『既存顧客のリテンション』について考える必要があるかもしれません。
そして、既存顧客のリテンションを高めていくために何をすべきか、いいかえれば、顧客が何を重視し、何を改善してほしいと思っているのか、を正しく理解し、適切な施策を講じて、その効果を検証していくことが必要ではないでしょうか。
本記事では、オンラインチャネルごとに、『新規顧客の獲得』と『既存顧客のリテンション』に使われる割合についても紹介しています。例えば、ペイドサーチが『新規顧客の獲得』に使われる割合は86%であるのに対して『既存顧客のリテンション』に使われる割合は2%だそうです。一方、モバイルアプリについては、この割合は30%:44%(『両方等しく』も26%)となるなど、目的に応じてチャネルを使い分けている傾向がみられます。モバイルメッセージやメールは『既存顧客のリテンション』に使われる場合が多い、という結果が出ています。
さらに、『既存顧客のリテンション』に最も効果的なデジタルマーケティング手法についても紹介しています。電子メール(56%)、ソーシャルメディアマーケティング(37%)、コンテンツマーケティング(32%)、口コミマーケティング(26%)など、という回答結果となっています。
これらのデータを参考にしつつ、『自社の見込み顧客はどのチャネルで情報を集めていて、顧客となっていただくために、どのチャネルでどのようなコミュニケーションを取ればよいのか。そして、顧客となっていただいた後に、そのロイヤルティを高めていただくために、どのチャネルでどのようなコミュニケーションを取ればよいのか。』というカスタマー・ジャーニー戦略を立て、マーケティング・オートメーション・テクノロジーなどの助けを借りて戦略を実行し、その結果をコンバージョンといった結果やNPS®調査などで把握し、戦略の修正に役立てていく、という活動が求められていくようになる、と考えます。
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