2016/04/06
カスタマーロイヤルティxビジネス
第11回 ビジネスの視点から『お客様のロイヤルティを測定する指標』について考える
NTTコム オンラインの屋代です。今回は、『お客様のロイヤルティを測定する指標』を、ビジネスの視点から考えてみます。
お客様のロイヤルティを『正確に』測定する方法については、今も多くの議論があります。複雑な人間の感情を『正確に』測定することは、もしかするとそもそも不可能なのかもしれません。では、『お客様のロイヤルティを測定することは不可能である』と結論付けてしまってよいのでしょうか?
ビジネスの視点からこの問題をみるには、重要なポイントがあると考えます。すなわち、 ビジネスの目的である『利益ある成長の持続』を実現するか、です。これまでも論じてきたように、ロイヤルティの高いお客様は、再購入・追加の購入・ポジティブな口コミといった形でこの目的に貢献してくれますので、このようなお客様を何らかの方法により見出すことは有益であり、必要なこととなっています。つまり、ビジネスの視点からいえば、このような行動との相関の高い指標であれば、有益な指標といえるのではないでしょうか。
また、測定にかかるコストという視点も必要です。測定に際して、お客様・企業の双方に発生するコストが高い測定方法は、たとえ『正確』であっても、ビジネスの視点では必ずしも有益とはいえないのではないでしょうか。
このように考えていくと、『利益ある成長の持続』につながる行動の相関が高く、しかも、測定にかかるコストが低い測定方法が、ビジネスにとって有益な測定指標と考えます。ネット・プロモーター・スコア(NPS®)も、このような考え方のもとで開発された測定指標のひとつです。それまでの顧客満足に基づいた指標が、必ずしも行動との相関が高くないのではないか(『満足』回答したにもかかわらず契約を更新しない、更改時に他の企業を選んでしまう、など)という問題意識も出発点の1つとなっている、といわれています。
では、NPSの『利益ある成長の持続』につながる行動との相関は本当に高いものなのでしょうか?この問いについて、オーストラリアの大手保険会社 nib Health Funds が実施した調査について取り上げた記事をご紹介します。
同社では、NPSをカスタマー・ケア・センターなどのタッチポイントでのトランザクション調査において用いており、日々のフィードバックをコンサルタントなどと共有しフォローアップやサービス改善につなげているそうです。そして、リテンションがビジネスでの成功において特に重要な要素となっているそうです。
同社では、12ヵ月間にわたり、20,000件のNPSトランザクショナル調査を実施したうえで解約の記録との比較参照を行ったそうです。また、調査においては、推奨に関する質問だけでなく、顧客満足に関する質問も行ったとのことです。その結果として、次のようなデータが得られたそうです。
- 推奨度スコア1ポイントの上昇は、解約リスクを 7.8% 減少させる
- 顧客満足スコア1ポイントの上昇は、解約リスクを 2.9% 減少させる
つまり、推奨に関する質問は、顧客満足に関する質問に比べて2.7倍効果的である、としています。また、批判者層の解約リスクは推奨者層に比べて1.5倍であることも分かったそうです。
上記の結果から、『ハッピーな』お客様とそうでないお客様を認識するうえでNPSは素晴らしいやり方であることを確認することが出来た、としています。
上記の結果は全ての業界・企業に適用できるものではないかもしれませんが、NPSをはじめとする『お客様のロイヤルティを測定する指標』を考えるうえで、『利益ある成長の持続』を実現する、という『ビジネスの視点』からのアプローチの例としてご紹介させていただきます。
今回ご紹介した記事は以下にてお読みいただけます。(英語です。)
Proof: NPS is much more sensitive than Customer Satisfaction
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