2018/02/06
カスタマーロイヤルティxビジネス
平成29年に金融庁から提言された「顧客本位の業務運営に関する原則」により、フィデューシャリー・デューティーの重要度がますます増しています。
しかし、金融という専門領域の難しさゆえ理解に苦労している方が多いのではないでしょうか?
このような悩みを抱えていませんか?
そこで本記事では、フィデューシャリー・デューティーの基本から金融庁の提言、金融機関の取組み事例、お客様評価の把握方法まで丁寧に解説します。自社の取組にご活用下さい。
フィデューシャリー・デューティー(Fiduciary duty)とは、「Fiduciary:受託者」 と 「duty:責任」 を組合せた言葉で、主に金融業界で使われる概念です。直訳すると「受託者が委託者および受益者に果たすべき義務」となります。弁護士や医師、会計士などの領域でも使われる概念です。
金融業界では、「金融機関が金融商品購入者に果たすべき義務」という意味になります。金融庁が各金融機関に対してフィデューシャリー・デューティーを徹底するよう指示しています。
金融商品の開発、販売、助言、運用、資産管理に携わる金融機関が対象となります。
保険会社、銀行、証券会社、FX会社、商品先物取引会社、資産運用会社など多岐にわたります。
金融機関が果たすべき義務は信託法や金融商品取引法で定義されています。
以下3つが基本的な義務とされています。
顧客本位の業務運営に関する原則とは、経済の持続的な成長及び国民の安定的な資産形成を支えるために金融機関が取るべき行動原則として金融庁より発表されました。
金融機関がフィデューシャリー・デューティーを遂行する上での軸となるものです。4,000文字超のドキュメントになっています。
以下のように発表されており強制的なものではありませんが、多くの金融機関がこの原則を軸にフィデューシャリー・デューティーに取組んでいます。
「本原則では、「金融事業者」という用語を特に定義していない。顧客本位の業務運営を目指す金融事業者において幅広く採択されることを期待する。」
金融庁:顧客本位の業務運営に関する原則(本原則の対象)(PDF)
顧客本位の業務運営に関する原則に関して、金融機関が行うべき活動については以下のように明記されています。
「具体的には、本原則を採択する場合、下記原則1に従って、
・ 顧客本位の業務運営を実現するための明確な方針を策定・公表した上で、
・ 当該方針に係る取組状況を定期的に公表するとともに、
・ 当該方針を定期的に見直す
ことが求められる。
さらに、当該方針には、下記原則2~7に示されている内容について、
・ 実施する場合には、原則に付されている(注)も含めてその対応方針を、
・ 実施しない場合にはその理由や代替策を、
分かりやすい表現で盛り込むことが求められる。」
金融庁:顧客本位の業務運営に関する原則(本原則の採用するアプローチ)(PDF)
実施しない場合にはその理由や代替策が金融庁から求められます。
顧客本位の業務運営に関する原則は、以下7つが明示されています。
これらの各原則には注意点も明記されています。必ず金融庁のサイトで確認しましょう。
金融庁:顧客本位の業務運営に関する原則(PDF)
フィデューシャリー・デューティーは大手金融機関をはじめほとんどの金融機関が取組んでいます。この章では、参考となる金融機関の事例を解説します。
https://www.mizuho-fg.co.jp/index.html
みずほフィナンシャルグループは以下の情報をウェブに公開しています。
業界トップクラスの情報量を公開しています。体系的に公開されていますのでぜひ参考にして下さい。
定量指標(KPI)の設定とアクションプラン取組状況の公表について(PDF)
アクションプランの取組み状況
グループ管理方針に関する 2017 年度アクションプランの中間取組状況(PDF)
販売機能に関する 2017 年度アクションプランの中間取組状況(PDF)
【参考動画】:現場におけるFD定着に向けた施策(役員メッセージビデオ抜粋)
京都銀行はバランスよくKPIおよび進捗を公表しています。金融庁が顧客本位の業務運営に関する原則を発表してから3ヶ月で公表しており、スピード感も高い事例と言えます。
ここまでで、フィデューシャリー・デューティーの理解がだいぶ進んだのではないでしょうか?
フィデューシャリー・デューティーの取組みは、方針の公表・取組み状況の公開だけでなく定期的な見直しが金融庁から求められます。見直しの際に重要となるのがお客様からの取組みに対する評価です。
お客様の評価を測るための指標としては、NPS®の活用をおすすめしています。NPSとは、「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」の略で顧客ロイヤルティを測る新しい指標です。欧米の公開企業ではすでに3分の1以上がNPSを活用しているとも言われています。日本でも顧客満足度に並ぶ新たな指標として注目を浴びています。
NPSを軸とした顧客ロイヤルティ経営では、顧客への価値提供を伴わない「悪しき利益」をできるだけ減らし、顧客への価値提供の結果である「良き利益」の維持・拡大を目指します。その取組みは、金融庁が求める「顧客本位の業務運営」と親和性が高いものといえます。
KPIのひとつとして、NPSを取り入れることで、取り組みの評価を可視化することにつながり、それはまた、今後の改善の方針策定にも活かせることでしょう。
この記事では、フィデューシャリー・デューティーの基本から金融庁の提言、金融機関の取組み事例、お客様評価の把握方法まで丁寧に解説してきました。フィデューシャリー・デューティーは、継続的に改善していかなければならないものです。
そして継続的に改善していくには、取組みに対するお客様の評価を把握することが最重要と言っても過言ではありません。最先端の仕組みであるNPSを積極的に活用しましょう
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