2018/04/20
顧客満足度とNPS®
第3回 CS担当者が変えたVOC活動4つのプロセス~NPS導入による成果~
顧客満足度調査(CS調査)は、顧客の声からサービス改善の材料を得るためによく使われています。調査結果から把握された「不満の声」に対応するために、膨大な稼働をかけ、PDCAを回しているという企業も多いのではないでしょうか。
今回のコラムでは、重厚長大な顧客満足度調査を実施していた、ある企業のCS担当者が、NPSを重要指標に採用し、成果をあげるまでに仕掛けた4つの変化についての実際の体験談です。
全社を挙げて行っていた顧客満足度調査、VOC活動の実態
顧客満足度調査とは、提供サービスに対する顧客の満足度を調査することです。機能や使いやすさ、窓口における応対など項目を設定し、アンケート形式で満足度を記入してもらいます。
提供サービスが顧客ニーズを捉えているとは限らないため、サービス提供者と顧客におけるギャップを見つけ、それを解消しサービス改善につなげるヒントを得ることができ、多くの企業で採用されています。
A社では、毎年1回、顧客満足度調査を実施し、速報/課題/打ち手と、経営層に都度報告し、1年かけて重厚長大なPDCAを推進していました。
一見、PDCAが回っているように見えてはいるものの、報告される打ち手は予定済みのものが多く、さらには、成果につながっている実感がない場合や、関連部署からの快い協力が得られないケースもありました。
その結果、現場からは以下のような声が上がっていました。
- 関連部署が調査結果を把握するまでに時間がかかりすぎており、調査結果が分かるころには既に次の課題が生まれている
- 調査結果として共有される課題が、いかに「不満が多いか」という軸で一律に判断され課題に納得感がない
- 不満を解消しても売り上げにつながっている実感がない。コストだけかかるように思える
現在のVOC活動に対して、現場からの不信感が強く現れたフィードバックでした。
顧客満足度からNPSへ、VOC活動の変革
そこでA社では、VOC活動を全社的に意味のあるものに変えるために、以下4つの点を変えました。
- 調査の目的とKPI
- 調査から改善のPDCAにおける役割分担
- 調査方法
- 調査結果の分析方法や打ち手の考え方
変更点1:調査の目的とKPI
VOC活動の目的を、「ロイヤルティを高め、収益/利益につなげること」と明確化し、そのゴールに到達するためのKPIとして「顧客満足度」ではなく「NPS」を採用することにしました。
NPSはシンプルでありながら業績につながる強力な指標です。
多くの調査がNPSと事業の成長率に高い相関関係があることを証明しています。
変更点2:調査から改善のPDCAにおける役割分担
現場の能動的なアクションをサポートするために、調査したい人が、調査したい時に、自分で調査できるよう、クラウドサービスを導入し、各部署へアカウントを付与することで、いつでも自ら調査を実施できるようにしました。
これにより、都度外注していた時よりも全体の調査コストが削減できました。
批判者を減らして推奨者を増やす NPS向上のための改善アクション実現のヒント
変更点3:調査方法
調査対象者や調査内容を細かく分け、最適な設問ボリュームで、最適なタイミングに実施する方法に替えました。
特にトランザクショナル調査と呼ばれる調査は、ある特定の顧客接点において、顧客との接点があった直後に行ったアンケートの結果、不満や問題を訴えたお客様に対して速やかに連絡を取り、なんらかの解決アクションをスピーディに取るものにしました。
そうすることで日々の業務に組み込まれ、小さな改善をスピーディに回していくことを可能にすることから、現場が自主的に、自分たちの施策の効果測定を行うようになりました。
指標としてのNPSからマネジメントシステムとしてのNPSへ~クローズドループとは?~
変更点4:調査結果の分析方法や打ち手の考え方
満足度の軸に加え、NPSとの相関を示した軸を設け、その項目にNPSとの関連性がどの程度あるかがわかるようにした分析方法に変更することで、解決していくべき項目の優先順位が明確になりました。
満足度が低く、NPSへの影響が強い項目を「弱み」とみなし、優先的に解決していく項目と設定し、満足度が高く、NPSへの影響が強い項目は「強み」とみなし、この項目はもっと伸ばすことで他社との差異化領域にしていこうという取り組みに変えました。
NPS調査から得た顧客の声は宝の山!?正しい分析が効果的な改善アクションのカギ
NPS導入は現場をどう変えたのか
これらの変化で、現場の意識は大きく変わり、PDCAのアウトプットが、質/量/スピードともに大きく向上しました。
各組織が自ら課題を設定し、打ち手を立案して、改善活動を行うようになりました。また、NPSという指標を中心として議論は活性化し、優先順位の合意形成も容易になりました。この分析軸の変化は、サービスの改善において、施策の考え方にも変化を生みました。
さらには、今まで調査開始から分析まで3ヶ月以上を要していた調査は、最短で2週間で結果のアウトプットにまで期間は短縮され、SaaSツールの導入は、調査コストの削減も実現しました。
もちろんこのような全社的な変化を起こすためには、NPSという指標が、自社の課題に沿っており、この指標を採用することに対する現場や、経営層の理解をえられることが大前提となってきます。
経営層には粘り強く働きかけつつも、現場には、強制的ではなく共感して参画してもらうために、情報提供を惜しまないこと、加えて動きをサポートする環境も整えることが重要なポイントとなります。
NTTコムオンラインでは、上記のような変革をサポートするため、現場への浸透を実現したコンサルタントによるNPS導入サポートや、迅速な改善活動をサポートするSaaSツールもご提供しています。 是非お気軽にご相談ください。
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