2021/08/05

顧客満足度とNPS®

顧客ロイヤルティ(顧客ロイヤリティ)とは?向上させるメリットと事例

次々と新たな商品・サービスが誕生していますが、それらすべてを大ヒットさせることは非常に難しいというのが現状です。同類のものを開発・販売している競合他社がある場合、そのなかから群を抜いて顧客の心を掴む必要があります。そこで重要となるのが「顧客ロイヤルティ」です。この記事では、顧客ロイヤルティを向上させるさまざまなメリットや事例について紹介します。

「顧客ロイヤルティ」はもはや必須といえるブランド戦略のひとつ

マーケティング界で耳にする機会が増えた「顧客ロイヤルティ」。その定義や顧客満足度との違いなどを見てみましょう。

顧客ロイヤルティは企業に対する愛着や信頼度

1980年頃から顧客の商品やサービスに対する満足度が重要視されるようになり、顧客満足度調査やアンケートを行う企業が増加しました。しかし、顧客の満足度が高くても、それが商品のヒットにつながるかといえばそうではありません。その場限りではなく、長期間にわたって商品やサービスに対して愛着を持ち、信頼してもらうことが重要なのです。

さまざまな調査やアンケートを重ねてそのような結果にたどり着いたとき、「顧客ロイヤルティ」という概念が生まれました。1990年頃のことです。顧客ロイヤルティの「ロイヤルティ」とは、英語のLOYALTY(忠誠心)が由来になっています。ロイヤルティには「愛着」「愛情」といった意味もあり、「顧客が企業に対して感じている愛着や信頼」が顧客ロイヤルティと呼ばれるようになりました。

間違われやすい「顧客満足度」との違い

顧客ロイヤルティと似ているものとして「顧客満足度」があります。顧客満足度は「customer satisfaction」を略し、「CS」と表現されることも少なくありません。顧客ロイヤルティが企業に対する愛着や信頼度を表わすものに対し、顧客満足度は「顧客が商品やサービスに対し、どの程度満足しているのか」を表わす数値です。

しかし、「満足度が高い顧客=リピーター」とは限りません。日本人の傾向として余程の不満がなければ「満足」と回答しがちなことや、現状では自社の商品やサービスに満足をしていても、競合他社で新たな商品が販売されたときにそちらを気に入ったり、継続的な購入をするつもりがなかったりといったケースもあります。ロイヤルティが高い顧客も商品やサービスに満足している点は同じですが、リピーターになる、積極的に口コミをするなど、商品やサービスに対する愛着心、信頼から自然と行動をとってくれます。これらは満足度が高い顧客との大きな違いといえるでしょう。

関連記事:顧客満足度とは?向上させる目的、注意点を徹底解説

ロイヤルティとロイヤリティの違いとは

顧客ロイヤルティについて知ろうとしたとき、「顧客ロイヤリティ」という表記も見つけ、どちらが正しいのかと迷ってしまう場合もあるのではないでしょうか。結論を先にいえば、マーケティング界における顧客についての「ロイヤルティ」と「ロイヤリティ」はまったく同じものです。発音の表記揺れでロイヤ「ル」ティ、ロイヤ「リ」ティになっているだけといえます。

ただし、「ROYALTY」と「LOYALTY」は日本語の表記では同じでも、意味がまったく違います。ROYALTYは特許権や使用料といった意味です。日本国内では主に使用料を表わす言葉として使われており、たとえば、「ロイヤリティフリー(商標権・特許権・著作権などの使用料が無料)」があります。LOYALTYは忠誠心、誠実、愛着、愛情といった意味で、「ブランドロイヤルティ」「従業員ロイヤルティ」のように使用されることが多いです。

顧客ロイヤルティの定義とは

顧客ロイヤルティには「理性」「感情」という2つの側面があります。こちらでは、それぞれの定義やメリット、計測方法などをより詳しく解説します。

理性 = 優れたサービスを提供しているとお客様が信じていること

理性におけるロイヤルティは、顧客が商品やサービスに対して考える実質的な部分、たとえば、品質・価格・機能などです。商品やサービスはさまざまありますが、そのなかから顧客に理性で選んでもらうことができる状態を目指します。

感情 = サービスとの関係に対してお客様が良い感情を持っていること

商品やサービスの種類は非常に多く、理性のみで選ぶのは困難な場合があります。そのため、理性におけるロイヤルティに加える要素として、「自分の事を分かってくれる」という感情のロイヤルティが重要になるのです。

「理性・感情ともに高い顧客」を評価するのが顧客ロイヤルティです。顧客ロイヤルティが高いお客様は、企業や商品、サービスに愛着があり、継続的な購入・口コミをしてくれます。

「顧客ロイヤルティ」は、顧客の「Head(頭=理性)」と「Heart(心=感情)」の2つの側面から形成されています。

「最良な特性(特徴、品質、機能)を備えた商品を提供してくれている」「最良なサービスを提供してくれている」「商品(サービス)を最良な価格で提供してくれている」というように、その企業が優れた価値を提供していると顧客自身が信じていることが理性面での要素です。

そして、「自分のことをわかってくれている」「自分のことを大切に考えてくれている」「自分の声に耳を傾けてくれる」「自分の価値観・世界観と合っている」というように、その企業との関係に対して顧客が良い感情を持っていることが感情面での要素です。

顧客ロイヤルティというのは、このように理性と感情の複合結果と言えます。

そして、ロイヤルティの高い顧客は「商品やサービスの継続的な利用」や「リピート購入」、「他者への積極的な推奨」といった行動を起こします。場合によっては、企業に対して「建設的なフィードバック」をもたらしてくれます。

顧客ロイヤルティに関連して覚えておくべき用語

顧客ロイヤルティに関わる用語として「顧客エンゲージメント」や「カスタマーリテンション」があります。

顧客エンゲージメント

顧客の行動的ロイヤルティから評価する企業と顧客間の信頼度や親密度を表わす指標が「顧客エンゲージメント」です。「engagement(婚約、約束、契約)」という言葉が由来となっており、日本のビジネス業界では深い結びつきや関わりなどを指しています。ポジティブな口コミをしたり、他社より多少価格が高くても気に入った商品を購入したりする場合は、顧客エンゲージメントが高いといえるでしょう。また、気に入っている企業(ブランド)の情報が更新された際、すぐにチェックする場合も顧客エンゲージメントが高い状態です。

関連記事:顧客エンゲージメントとは何か?信頼関係によるリピート率の向上

カスタマーリテンション

自社の商品やサービスを利用後、継続的に購入するリピーターになることを「カスタマーリテンション(customer retention)」といいます。リテンションは保持や維持という意味がある言葉で、リテンションは保持や維持という意味がある言葉で、この場合、顧客維持という意味です。顧客維持をするために行う施策・方法はリテンションマーケティングと呼ばれています。

顧客ロイヤルティ向上によるメリット

顧客ロイヤルティが向上すると、さまざまなメリットや効果を得ることが期待できます。

リピート率の向上 / 解約率の低下

顧客ロイヤルティが高い顧客はその企業に対して愛着があるため、安易に解約するという気持ちになりにくい傾向があります。同時に、競合他社に乗り換える可能性も低いでしょう。また、継続的な購入・利用をするリピーターの増加が期待できます。新規顧客の獲得も必要なことですが、そのためにはコストがかかります。リピーターの増加は企業の売上の安定性や持続性に有効です。

弊社で実施したNPS業界ベンチマーク調査の結果でも、ロイヤルティの高い顧客は低い顧客に比べて継続利用意向が高いことがわかります。
(NPS調査では、ロイヤルティの高い顧客を推奨者、低い顧客を批判者とよびます。「NPSとは?」を参照)

推奨者は批判者に比べて継続利用意向が高い

出典 : NTTコムオンライン NPSベンチマーク調査2019【証券自動車保険トラベル

証券・自動車保険・トラベルの3つの業界で、対面型と非対面型に分け、継続利用意向を10点満点の評価で聞いています。

縦軸が継続利用意向で、緑は推奨者、赤は批判者の平均値になります。推奨者の方が批判者よりも、継続利用意向が3~4点程高い、結果となっています。推奨者を増やすことでリテンション率の向上が期待できます。

顧客単価アップや購入頻度の増加

商品やサービスに満足するだけではなく、企業に対して信頼を感じている場合、顧客の購入頻度が増加する傾向にあります。また、顧客単価も向上しやすいです。お気に入りの商品が1つでもある場合、「その企業が提供するものならば良質な商品だろう」といった信頼感を持っていることから、同企業のほかの商品やサービスも見てみよう、試してみようという気持ちにつながります。

推奨者は批判者に比べて経済的価値が高い

出典 : NTTコムオンライン NPSベンチマーク調査2019【証券自動車保険トラベル

先ほどと同じ証券・自動車保険・トラベルの3つの業界で、推奨者と批判者の経済的価値を算出した結果です。

グレーの棒グラフは、推奨者・批判者の年間の口座残高や支払い金額の平均値になります。緑は推奨者、赤は批判者の口コミ価値になります。批判者はネガティブな口コミを伝えることもあるため、マイナスにでています。(口コミ価値については、Satmetrixが作成したモデル式をベースに算出)

結果としては、グレーの実績だけみていただいても推奨者の方が批判者よりも口座残高や支払金額は高く、さらに口コミという目に見えない価値も金額に置き換えて積み上げると より大きな差になっているということが伺えます。
例えばトラベル業界では、批判者と推奨者の間では年間で77万円もの差がでています。つまり、批判者を減らし推奨者を増やしていくことで、売上げや収益増加が期待できるといえます。

口コミによる拡散

商品やサービスに対して高い満足を得た顧客は、その気持ちを誰かに伝えたいという心理になりやすいです。そのため、口コミによって良い商品・サービスであることがひろがります。簡単に気持ちを伝えることができる方法としてSNSもあり、周囲の人だけではなく、より多くの人に口コミできます。顧客ロイヤルティが高まり、口コミがひろがることで新規顧客の獲得につながります。広告にかかるコストも削減できる点もメリットです。

推奨者は批判者に比べてポジティブな口コミが多い

出典 : NTTコムオンライン NPSベンチマーク調査2019【証券自動車保険トラベル

先ほどと同じ証券・自動車保険・トラベルの3つの業界で、対面型と非対面型に分けて結果を作成しております。縦軸がポジティブな口コミを伝えた件数になります。緑は推奨者、赤は批判者の年間でポジティブな口コミを周りに伝えた件数になります。

結果をみると、すべての業界で推奨者のほうが批判者よりもポジティブな口コミ件数が1~2件ほど多いことがわかります。批判者を減らし、推奨者を増やす取り組みを行うことで、クチコミ増加が期待できます。

建設的なフィードバックによる改善促進

顧客ロイヤルティの高い顧客は、単なるクレームで従業員のモチベーションを下げるのではなく、建設的かつ貴重なフィードバックをもたらしてくれます。
企業にとっての有益なポジティブなフィードバックが自社商品やサービスの改善につながります。お客様からのフィードバックを得て、改善をするといった好循環をうみだすことができ、お客様の声に寄り添った企業姿勢を醸成することが期待できます。

顧客ロイヤルティ低下によるデメリット

顧客ロイヤルティは向上すればさまざまなメリットを得ることができますが、逆に低下すると自社にとっての損失になってしまいます。

購入金額や購入数の減少

購入ロイヤルティの低さと購入金額や購入数は比例しているといっても過言ではありません。「顧客ロイヤルティが低い=商品やサービスに対する愛着がない」ということであり、それがダイレクトに響くのが購入金額や購入数だからです。愛着がないのでその商品やサービスにこだわる必要もなく、ほかに良いと感じるものがあれば簡単に目移りしてしまいます。

ネガティブな口コミが拡散されやすい

商品やサービスに対する満足度が低いときには、ネガティブな感情が強くなりやすいです。そのような状態で口コミを書き込んだ場合、悪い点ばかりが強調された内容になってしまいます。SNSは口コミに対する反応が早く、多くの人の目に留まるため、商品やサービスだけではなく、企業価値も低下する可能性があるでしょう。

サービスコストが増加する

顧客ロイヤルティが低い状態では顧客からの信頼度も低く、良い口コミの拡散による広告コストの削減といったメリットを期待するのは困難といえます。そのため、商品やサービス、自社に対して良い印象を持ってもらえるような工夫をしなければならず、その分、コストがかかってしまいます。マーケティング業界には「新規顧客獲得に必要なコストは、既存顧客1人に対するものの5倍である(1対5の法則)」といわれており、顧客ロイヤルティが高い場合と比較してサービスコストが増加してしまいます。

顧客ロイヤルティを測定する「NPS®」

「NPS®」とは、顧客ロイヤルティを測る指標である「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」のことです。目に見えづらかった顧客の企業(ブランド)に対する愛着や信頼を数値化しているため、今後の課題を見つけやすくすることができます。企業の成長と比例していることから、日本を含む世界各国で取り入れている企業が増えている指標です。

測定方法はシンプルなアンケートになっています。顧客ロイヤルティを知りたい企業(ブランド・サービス・商品)を周囲の人に薦める可能性について質問し、0~10段階から顧客に選択してもらうのです。結果から「批判者(0~6と答えた顧客)」「中立者(7あるいは8と答えた顧客)」「推奨者(9あるいは10と答えた顧客)」の3つに分け、推奨者の中から批判者の割合を引いた数値がNPSとなります。

関連記事:NPS®とは?

顧客ロイヤルティを向上するための手順

顧客ロイヤルティを向上するためには、手順に沿って行動しなければなりません。こちらでは、どのような進め方をすれば良いのか紹介します。

顧客の声を正確に知る

顧客ロイヤルティの基準となる情報を集める必要があるので、まずは顧客の声を正確に知るために自社アンケートなどを実施してみるのも良いでしょう。リアルな顧客の声を集めることで先入観なく、必要な情報を収集することができます。アンケート以外にも、実際に対面またはWeb上で質問をしたりするインタビューも効果的な情報収集のひとつです。さまざまな角度からの情報収集、顧客ロイヤルティを指標化するNPSの活用で、より詳しく現状を把握します。

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収益指標と比較しながらの分析

顧客ロイヤルティは企業の収益向上を目指す方法のひとつですが、収益向上において関与するポイントは企業によって違います。そのため、収益指標と比較し、顧客ロイヤルティが低い原因を具体的に探ることで自社の課題を改善していかなければなりません。

課題改善に有効な対策を練る

顧客ロイヤルティ向上のためには、「商品やサービスの利用」「インターネット上(SNSを含む)から受けるイメージ」「店頭で受けた接客」など、顧客が実際に商品やサービスに関して体験した「カスタマーエクスペリエンス」を改善することが必須です。カスタマーエクスペリエンスのなかでも重要な部分を特定し、改善に関する優先順位をつけます。さまざまな課題が発覚したとしても、1度にすべてを改善することは困難です。顧客のロイヤルティへの影響の高さを把握し、優先順位が高い課題から取り組んでいくことが重要になります。改善した課題も定期的に見直すことで、より顧客ロイヤルティの向上につなげることが可能です。

顧客ロイヤルティを向上に取り組んでいる企業の事例4選

実際に顧客ロイヤルティの向上に取り組んでいる事例を挙げてみましょう。

トレンドマイクロ株式会社

セキュリティソフトウェア業界で活躍するトレンドマイクロ株式会社では、より実効的なNPSを求めた結果、自社の弱点を明確化し、会社全体で課題クリアに取り組むことができるようになりました。課題に優先順位をつけ、ほかのチームにも情報共有して連携をとりながら取り組んでいます。

詳細:NPS調査だけでは改善につながらない。弱点を明確化し、施策へ落とし込むにはNPX Proが不可欠

株式会社マネースクエアHD

FX取引を取り扱っている「株式会社マネースクエアHD」では対面やWEB上でのアンケートで顧客の声を集めていましたが、顧客ロイヤルティの向上を目指してNPS調査を導入しました。その結果、調査分析をする際の効率化や集計ミスの軽減というメリットを得ています。また、株式会社マネースクエアHDは顧客本位のサービスを目指す企業です。そのため、結果によっては自省し、それが課題をクリアするためのモチベーションになっています。

詳細:真の「お客様本位のFintech(アセットマネジメント)企業」を目指し、NPSスコアの向上を追求

株式会社ジャルパック

日本航空利用による旅行商品の企画運営・販売・管理を行っている株式会社ジャルパックでは、海外旅行や国内旅行、訪日についてNPSの導入を行っています。分析結果の可視化ができるようになり、今後の課題やほかのデータとの相関などがわかるようになりました。それによって、課題の優先順位をつけることが可能となり、よりサービス品質の向上を目指しています。

詳細:NPSとNPX Proの分析機能で、カスタマージャーニー上の改善点が可視化された

株式会社西武ライオンズ

株式会社西武ライオンズは、プロ野球球団である「埼玉西武ライオンズ」を運営しています。球団ファンの声を可視化し、そのニーズに沿ったサービス向上をするためにNPSを導入しました。現場にいるファンの歓声からニーズを判断する傾向があった導入前とは違い、導入後はそれが可視化されて求められているサービスを提供できるようになったのです。さらに、定期的な調査を行うことで、新たな課題のクリアに有効となっています。

詳細:ホーム試合 (72試合)の多くをNPSで定点観測するにはNPX Proのスピードが欠かせない

数値として可視化できる「顧客ロイヤルティの向上」は必須戦略

顧客ロイヤルティの向上をするためには顧客の感情・行動の両面を見る必要があります。どちらも高い顧客は、リピーターや顧客単価向上、口コミによって売上に相関します。「売上・サービス向上に繋がるアンケート調査を行いたい」「顧客満足度は高いが、売上と相関が低い」などの課題がございましたら、是非お気軽にご相談ください。

関連記事:CS向上から顧客ロイヤルティ向上へ

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