2023/03/10

NPS®(ネットプロモータースコア)入門・導入編

アンケートに有効な5つの分析方法|集計〜分析の流れや効果を高めるコツ

施策のなかでアンケートを実施する際、「どんな集計をすれば分析に役立つのか分からない」「どうやって分析すればよいか分からない」という悩みを持つ方は多いのではないでしょうか。

アンケートを実施することで、課題発見や顧客ロイヤリティを向上させるヒントが見つかる可能性があります。しかし、有効活用するには正しい分析方法を知ることが重要です。

この記事では、アンケートを有効活用するために必要な「3つの集計方法」「5つの分析方法と手順」「効果的な分析を行う方法」について解説していきます。記事を読むことで、集計から分析までの流れに加えて、正しくアンケートを分析することでもたらされるメリットが見えてくるでしょう。

アンケート分析の前に把握しておくべき集計方法

アンケートの分析の前に行うのが集計です。アンケートの目的や回答内容によっては、どのような方法を取るかにより集計効率や分析結果に大きな変化が生まれます。

集計方法でよく用いられている方法は以下の3つです。

  • 単純集計
  • クロス集計
  • 自由記述集計

効果的な分析を行なうためにも、目的に応じた集計方法を理解しておくことが重要です。ここからは、3つの集計方法について詳しく解説していきます。

単純集計

単純集計は、一つひとつの質問に対して何人が回答したのかを、割合や比率で表す基本的な集計方法です。単純集計を行なうことで、アンケートデータの全体像が把握できます。

単純集計は主に以下のような表でまとめられます。

例:合計100人に「インターネット回線に求める条件は何ですか?」という問いに3つの選択肢による回答を求めた場合

インターネット回線に求める条件は何ですか? 回答者数 割合
早さ 364 72.8%
月額料金 109 21.8%
セキュリティ 27 5.4%
合計 500 100%
表の続き →

上記のような場合であれば、インターネット回線には月額料金や早さが一番重要視され、セキュリティ面を重視する人は少数といった結果がすぐに見えてきます。

また、同じ質問で定期的に集計すると、数値の変化をいち早く察知可能です。増減の傾向を把握することで、傾向分析や施策の修正に役立てられるでしょう。

クロス集計

クロス集計は、複数の項目を掛け合わせて詳細な分析をするために用いる集計方法です。例えば、単純集計で用いた例と同様の質問において、「男性なのか女性なのか」「年齢はどの世代なのか」といった詳細な分析ができます。

例:「インターネット回線に求める条件は何ですか?」という問いに「セキュリティ」と回答した人の性別と年代

男性 女性
20代 2(11%) 0(0%)
30代 14(78%) 6(67%)
40代 2(11%) 3(33%)
割合(27人中) 18(67%) 9(33%)

上記の例でクロス集計すると、セキュリティと回答したうち、男女ともに年齢は30代が多く、男性が全体の半数以上を占めていることが分かります。クロス集計を行なうことで、施策のターゲットを明確に設定できる他、根拠のある提案にも役立つでしょう。

自由記述集計

自由記述とは、回答を選択肢から選ぶものではなく、感想や意見など回答者の自由な意思で記入するアンケートです。自由記述の集計では、得られる回答内容が「数値」か「文章」かによって集計方法を変える必要があります。

詳細は後述しますが、数値の場合はグラフに変換して可視化し、文章の場合はアフターコーディングやテキストマイニングによってデータ化して、集計の効率化と分析の材料にしていきます。

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アンケート分析の種類とは?5つの方法を解説

アンケートの目的や内容に応じて分析方法を使い分けることで、マーケティング施策の有用な判断材料となります。

アンケートの分析方法は、主に以下の5種類です。

  • 決定木分析
  • 主成分分析
  • アソシエーション分析
  • クラスター分析
  • 時系列分析

ここからは5つの分析方法について、適した活用分野を含めて解説していきます。

1|決定木分析

決定木分析とは、結果から得られた情報から、関連性の高いさまざまな項目を分類し、1本の木と見立てて分析する方法です。予測や検証を分析するのに適しています。

引用:NTTコム オンライン|決定木分析の事例を使ってメリットや活用場面を紹介

上記の例を用いて、体力テストの結果から男性か女性かを知りたいとしましょう。男女の違いが表れそうな項目「身長差」「握力」「走力」に注目して項目を結びつけます。すると、男女差が大きく表れるのは身長で、次いで握力と走力にも影響があると分析できます。

決定木分析の主なメリットは以下の3点です。

  • 誰が見ても解釈しやすい
  • 組み換えパターンが豊富なため幅広いデータを分析できる
  • 分析にかかる時間が少なく済む

決定木分析は主に以下のシーンで活用されています。

  • 顧客の行動分析による課題発見
  • 属性分析によるターゲット層の把握

また、分析を行う際は分岐の数に注意しましょう。分岐が少ないと精度が低くなる可能性があり、多すぎると解釈が難しくなってしまうからです。少ない分岐からはじめて、精度に不安が残る場合にプラスしていくのがよいでしょう。

2|主成分分析

主成分分析とは、多数ある項目を集約・分類して分かりやすくする方法です。

引用:NTTコム オンライン|主成分分析とは? 例を使って活用方法とメリットをわかりやすく解説

例えば、総合的な学力について分析するとしましょう。総合的な学力を判断するための要素には、国語や英語など多くの科目があります。さらに現代文や古文といったように、国語の括りのなかでも複数に分類されるケースがあるため、要素は10を超えるでしょう。

科目を大きく分類する際「理系」と「文系」に分けられるのがほとんどです。そのため理系を第1主成分、文系を第2主成分としてみていきます。すると複数の要素が2つに集約されるため、分析が容易になるといったイメージです。

主成分分析には、以下のようなメリットがあります。

  • データ数が少なくなることで理解しやすい
  • 変数が減ることで分析の効率が上がる
  • 影響力の大きな要素が分かる

主成分分析は、以下のようなシーンで活用されています。

  • 顧客の分類
  • ブランドイメージ調査
  • 人事評価

主成分分析を行う際は寄与率に注意しましょう。寄与率とは、データ全体のなかで主成分がどれくらいの割合を示すのかを表したものです。主成分の寄与率が低い場合は、結果を裏付ける根拠になるとは言えません。第2主成分までの寄与率が50%以上、主成分軸の合計で80%近くを占めているなら信頼性の高いものになります。

3|アソシエーション分析

アソシエーション分析とは、仮説を立てて関連性を探る分析手法です。関連性を探ることで、例えば「Aの商品を購入している人は一緒にBの商品も購入する傾向にある」といった事象が見えきます。そのため、A商品の近くにB商品を陳列するなどの施策案が生まれやすくなります。

理由は後述しますが、アソシエーション分析をする際は、以下の点に注意が必要です。

  • 相関関係と因果関係を混同しない
  • 目的のない仮説を立てない

アソシエーション分析は、以下のシーンで活用されています。

  • Webサイトの訴求力改善
  • 陳列やメニュー表などのレイアウト改善
  • ECサイトなどのリコメンド改善

関連性の高い事象が見つかれば、自社にとって強い方程式となる可能性を秘めています。正しく分析することでマーケティング施策の大きな武器になり得るでしょう。

4|クラスター分析

クラスター分析は、多くのデータから似ているものをグループ化して分析する方法です。以下のように、複数の要素をいくつかのグループに分類したグラフが作成できます。

引用:NTTコム オンライン|クラスター分析とは? メリットや実際の活用例を紹介

例えば、ある商品を選んだ理由についてアンケート調査を行なったとしましょう。得られる情報は、年齢と、機能性やデザインなどの購入理由だとします。

一例ですが、クラスターを作成する際には「年代」「機能性」「デザイン性」といった3つのクラスターに分けます。すると、20代はデザイン性を重視し、30代は機能性を重視しているといった結果が見えてくるでしょう。

クラスター分析には、以下のようなメリットがあります。

  • 大量のデータをシンプルにまとめて判断できる
  • 構造を視覚化しやすくなる

クラスター分析が活用されているシーンは、主に以下の3つです。

  • アンケートデータの分析
  • 顧客や商品のグループ分け
  • 市場調査の分類

クラスター分析では、似ているものと似ていないものを判断する基準の定義に注意が必要です。定義を設けない場合、分析者によってグループ分けが異なる可能性があり、分析結果に信用が持てなくなってしまいます。

また、クラスター分析はあくまで分類するものです。そのため、他の分析方法と併用することで、有用なマーケティング施策が見えてくるでしょう。

5|時系列分析

時系列分析とは、時間によってどんな変化が起きているかを分析する方法です。

流行や売り上げなどあらゆるものが、時間の経過によって変化していきます。年・月・週、季節ごとなど、一定期間ごとに集計すると変化の把握が可能です。データが集まれば集まるほど信頼性は高まります。

時系列分析が活用されるのは、主に以下のシーンです。

  • トレンド分析
  • 飲食業界の発注量最適化
  • 購買行動の調査

マーケティング活動は、計画通りに進まないことも多いため変化を察知することは重要です。時系列分析を用いていち早く変化を察知することで、先々の予測に役立てられるほか、すばやい改善策を実施できます。

自由記述によるアンケートの分析方法

決まった選択肢から選ぶものではない自由記述のアンケートは、回答内容が「数値の場合」と「文章の場合」で分析方法が異なります。

ここからは、それぞれの分析方法について詳しくみていきましょう。

回答が数値の場合

回答が数値の場合は、以下の数値を集計して分析を行ないます。

  • 平均値:全回答数値の平均値
  • 最小値:回答のなかで一番小さい数値
  • 最大値:回答のなかで一番大きい数値
  • 中央値:最大値と最小値の中間の数値
  • 標準偏差:ばらつきの大きさを表した指標

最小値や最大値が極端な場合、連動して平均値が変動しばらつきが大きくなります。ばらつきが大きくなれば全体像を的確に把握できません。そのため、上記5つすべての数値を集計して分析し、全体像を正しく把握できるようにしましょう。

回答が文章の場合

回答が文章の場合は、以下の方法を用いると文章をある程度データ化することが可能です。

  • アフターコーディング
  • テキストマイニング

アフターコーディングは、回答文を似ている内容に仕分けて、分類コードを設定する方法です。例えば、回答文のなかに「スタッフの接客が良かった」「アメニティが豊富」といったものがあれば、「接客」「アメニティ」といったコードを設定します。すると、文章でも各コードごとにまとめられるため、整理ができるほか、グラフなどにも変換可能です。

テキストマイニングは、自然言語処理という解析方法を使用して分析する方法です。膨大な量の自由記述アンケートでも対応できるため、効率的に集計して分析できます。アンケートのほかにも、WebサイトやSNSの文章からも分析できるのが大きなメリットです。

アンケート分析の手順

アンケートの結果をマーケティング施策に活かすためには、手順に沿って分析することが大切です。アンケートの分析は、以下4つの手順を踏みます。

  1. 全体の傾向を把握する
  2. 細部を深堀りする
  3. データの信憑性を検証する
  4. 分析結果をまとめて結論を出す

ここからは、各手順の詳細や注意点について解説していきます。

全体の傾向を把握する

分析に入る前に、アンケート結果の全体像を把握しましょう。始めから具体的な内容に焦点を当ててしまうと、誤った解釈をする可能性があります。アンケート全体を俯瞰して確認し、仮説を立てたうえで具体的な内容を見ていくことで、データを正しく解釈できます。全体像の把握には、単純集計が有効です。

細部を深堀りする

全体が把握できたら、仮説を立てて属性や傾向に分類、深堀して仮説の検証をしていきます。クロス集計を使いさまざまなパターンで分析するのが有効です。多角的な視点でクロス集計することで、新しい仮説が生まれることもあります。

データの信憑性を検証する

データに信頼が持てるかどうかは、アンケート分析において重要です。回答数が少ない項目で仮説を立ててしまうと、「本当に正しいデータと言えるのか」と疑問を抱いてしまうでしょう。また、100人にアンケートを行い全体の男女比が6:4だった場合、回答が男女比9:1では代表性があるとは言えず信頼できません。以上の理由から、アンケート結果を検証する際は、「十分な回答数があるか」「代表性はあるか」に注目して検証しましょう。

分析結果をまとめて結論を出す

分析結果に信憑性が認められたら結論を導きましょう。結論を出す際には、数値の相関関係と因果関係を混同しないよう注意が必要です。例えば、A商品が売れるとB商品も売れるといった場合、二つの商品に相関関係はありますが、必ずしも因果関係があるとは限りません。相関関係に加え、因果関係もあるかを検証したうえで、適切な結論を導くことが重要です。

効果的なアンケート分析を行う方法

アンケートを実施しても、やり方を間違えてしまうと、分析で得られる結果の質に大きな差が生まれてしまうでしょう。効果的なアンケート分析を行うには、以下のような方法を取ります。

  • 分析の目的を明確にしておく
  • 目的に合うグラフを選択する
  • アンケートの作成〜分析まで対応するサービスを利用する

ここからは、3つの方法について詳しくみていきましょう。

分析の目的を明確にしておく

分析において目的を明確にすることは重要です。アンケートで得られる結果から、自社の何を解決したいのか、何のために行うのかを事前に確認しておきましょう。目的がない場合、分析する範囲が広すぎて結論を導けなかったり、結果に必要な集計ができなかったりしてしまいます。

「顧客満足度の向上」や「リピート率の改善」など、達成したい目的を設定し、逆算することで必要な質問内容や分析方法を選択できるでしょう。

アンケート作成時にも目的を明確にすることが大切です。作成時の詳細は以下の記事で解説しています。参考にしてみてください。

アンケートの目的と作成例、調査のポイントを解説

目的に合うグラフを選択する

アンケートの目的に適さないグラフで可視化すると、データを読み取りづらくなります。アンケートや分析の目的に応じた必要なグラフを、伝わりやすい形で表現することが重要です。

グラフは主に以下のように使い分けます。

  • 棒グラフ:複数のデータを並べて比較するとき
  • 折れ線グラフ:推移などの変化を表すとき
  • 円グラフ:全体に対する割合を表すとき

分析結果は、主に第三者に見てもらうものなので、誰が見ても理解しやすいように適切なグラフを選択することが重要です。

アンケートの作成〜分析まで対応するサービスを利用する

アンケートの実施から分析には、多くの労力と人手が必要です。特に集計と分析は多くの手法があり、適切な方法が異なります。マーケティング活動のなかで、アンケートを実施したいけれど、集計や分析に多くのリソースを割けない場合は、外注するのが有効です。

精度の高いアンケート調査を実施したい場合は、顧客ロイヤルティを計測できる指標の「NPS(ネットプロモータースコア)」を活用したツールの「NPX Pro」がおすすめです。「NPX Pro」は、アンケートの調査・集計・分析まで全てをまとめて任せられます。また、公認資格を持つコンサルタントによる運用支援があることに加え、ダッシュボードによって分析結果をリアルタイムで共有可能です。そのため、改善行動や施策の実施までのスピード感が大きく向上します。

アクションスピードが向上すると、結果として顧客ロイヤリティを高めることが可能です。アンケートから企業が見えていない課題を発見・解消し、満足度向上に繋がったという導入実績もあります。

NPS の詳細は以下の記事で解説しています。こちらも参考にしてみてください。
NPS®(ネットプロモータースコア)とは?

アンケート分析は目的に合う方法を選択する

アンケート分析は、目的を明確にすることに加えて、目的に応じた分析方法を理解することで有効活用できます。しかし、アンケートの分析経験が少ない場合、どこをどう読み取っていけば良いか分からないという方もいるでしょう。また、理解できていたとしても、アンケートの収集・分析に多くの時間が必要で、結果をまとめるのも一苦労です。費用対効果を考慮すると外注した方が良い場合があります。

NPS調査目的に応じた分析について

先にあげた分析とNPS調査の関連性は以下の通りです。

  • 決定木分析
    NPS調査では何が境目になって推奨者・中立者・批判者を分けているのかを明らかにするためによく用いられます。
  • 主成分分析
    NPX Proで実装されているアクション・ドライバー分析ではドライバー項目が多数存在することがあります。このドライバー項目を主成分分析で集約し、アクション・ドライバー分析もしくは重回帰分析を行うケースもあります。
    また、主成分分析を発展させた共分散構造分析を行う事もあります。
  • クラスター分析
    ブランディング調査において、企業のイメージを推奨者・中立者・批判者で集計し、その結果をコレスポンデンス分析によりMAPにして、クラスター分析で分類する事があります。企業イメージをドライバー項目に代えて同様にコレスポンデンス分析&クラスター分析を行うのもNPS調査にとって有意義でしょう。
  • 時系列分析
    NPS調査を長年行う事で蓄積されたデータを用い、経時変化の分析を行います。サービス改善による効果の他、環境変化など外的要因など、これまでのNPSの推移等、有意義な分析です。

NPS調査の目的に応じて、適した分析手法を用い最適な課題方法を見出しましょう。

NTTコムオンラインではNPX Proを用いたNPS調査をはじめ、お客様の要望に応じた様々なアンケート調査を承っております。アンケートをマーケティング活動で有効活用するためにも、まずは資料請求から問い合わせてみてはいかがでしょうか。

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