2024/12/06

顧客満足度とNPS®

顧客体験(CX)の調査はどうすればよい?NPS®の有効性と調査のポイントを解説

顧客体験(CX)を調査する場合、顧客ロイヤルティを示す指標であるNPS®を上手く活用できるかどうかで、企業の集客力や収益性が大きく変わるといっても過言ではありません。顧客体験の個別満足度と推奨度を組み合わせ分析することで、お客様の声を基にした、改善アクションを効率的に行えます。

本記事では、顧客体験の基礎知識を踏まえつつ、NPS®の有用性や調査手順、NPS®調査で顧客体験を向上させるためのポイントなどを解説します。自社の顧客体験を調査・改善したいと考えている方は、ぜひご一読ください。

この記事の内容
  • タッチポイントが多様化している現在、顧客体験を最適化することによって顧客ロイヤルティの向上や競争優位性の獲得を実現できる。
  • 顧客体験を調査する場合、事前にカスタマージャーニーマップを作成しておく必要がある。
  • NPS®調査を行うことで、よりスムーズに顧客体験を最適化できる。
  • NPS®調査で顧客体験を向上させるためには、調査方法の使い分けやポジティブなフィードバック、運用体制の整備など行うことが大切。

顧客体験(CX:カスタマーエクスペリエンス)の調査とは?わかりやすく解説

顧客体験とは、顧客が商品・サービスに関心を持ち、実際に購入・利用するまでの過程で得られる体験の総称です。別称で「Customer Experience(CX:カスタマーエクスペリエンス)」とも呼ばれています。

顧客体験に対する消費者の評価を調査すれば、自社を取り巻く現状や課題などを把握することが可能です。

昨今、インターネットやスマートフォンの普及に伴い、顧客との接点(タッチポイント)は多様化しています。検索エンジンで商品・サービスの情報を調べたり、企業と顧客がSNSでやり取りしたりすることが当たり前になりました。

このような状況下で各タッチポイントにおける顧客体験を最適化すれば、顧客ロイヤルティ(商品・サービスへの愛着)の向上や競合優位性の獲得を実現できるようになります。

最適化を図るにあたって顧客体験を調査する場合、顧客ロイヤルティを計測できる「NPS®」を活用するケースが一般的です。

企業成長を導く「顧客体験(CX)」とは?その重要性と高める方法や事例を紹介

顧客満足度調査とは何が違う?

顧客体験(CX)の調査で用いるNPS®と混同されやすい概念に「顧客満足度(CS)」がありますが、実際は似て非なるものです。NPS®は企業やブランドのロイヤルティも含めて評価しますが、顧客満足度は企業が提供する商品・サービスへの評価となります。

顧客体験の調査と顧客満足度調査を比べた場合、前者のほうが各タッチポイントにおける顧客の動向や感情を詳しく分析できます。そのため、改善優先度の高いタッチポイントを明確にできる点が大きな違いです。

顧客満足度(CS)とは?向上させる目的・方法・注意点を徹底解説

顧客体験(CX)向上の成功事例【スタバ】

世界屈指のコーヒーチェーンとして有名なスターバックスでは、顧客体験(CX)の向上を目指して以下のような施策を実施しています。

  • ソーシャル活用
    SNSや口コミを活用したアプローチで「ソーシャルメディア活用売上ランキング」で1位を獲得
  • サードプレイスの提供
    自宅や職場・学校とは異なる、居心地の良い「第3の場所」を提供
  • スタッフ教育の徹底
    新人スタッフに70時間もの教育を実施し、接客の質を向上

これらの施策を通じた顧客体験の向上により、同社は商品・サービスの改善・開発を実現しています。

顧客体験を調査する前にカスタマージャーニーマップを作成する

カスタマージャーニーとは、商品・サービスの認知から購入・利用後の評価までに発生する顧客の一連の体験を「旅(journey)」に例えた概念です。そのカスタマージャーニーを可視化したものが「カスタマージャーニーマップ」となります。

顧客体験の調査にあたってカスタマージャーニーマップを作成すれば、顧客目線で自社の商品・サービスを認識できるようになります。また、可視化によって全社で共通した認識を持てるため、関係者間での意思疎通や施策検討がスムーズになることもメリットです。

カスタマージャーニーの基本的なプロセスをそれぞれまとめたので、以下も併せてご確認ください。

  1. ニーズ認識
    課題を解決するための新しい手段を探している
  2. 商品認知
    課題を解決できるツールやイベントを調べる
    (Web広告の料金、システムの搭載機能、セミナーの内容など)
  3. 比較検討
    資料や説明会を経て、ツールやイベントを比較する
  4. 購入
    商談や問い合わせを経て、契約を締結する
  5. 利用
    商品・サービスを実際に利用し、不明点や疑問点はカスタマーサービスに問い合わせる
  6. 継続・再購入
    商品・サービスの必要性やプランを見直し、リピート・継続利用すべきか検討する

このような流れを、カスタマージャーニーマップに落とし込む必要があります。

顧客体験の調査に活用するNPS®とは?

先述の通り、顧客体験を調査する際は「NPS®」の活用が重要です。

そこで、NPS®の基礎知識を踏まえつつ、マーケティングでの有用性や顧客体験との関連性、NPS®の調査手順について解説します。

NPS®は「顧客ロイヤルティ」を測る指標

NPS®(Net Promoter Score)とは、商品・サービスに対する顧客の愛着や信頼を示す「顧客ロイヤルティ」を測るための指標です。

NPS®では、顧客ロイヤルティを0~10点の数値として表したうえで、最終的なNPS®スコアを算出します。計算方法を簡潔にまとめたので、以下も併せてご確認ください。

  • 商品・サービスへの評価を0~10点の11段階で示すNPS®アンケートを実施する
  • 「批判者(0~6点)」「中立者(7~8点)」「推奨者(9~10点)」に分類する
  • 批判者(0~6点)および推奨者(9~10点)の数を集計し、割合を算出する
  • 推奨者の割合から批判者の割合を引く
  • 上記で算出した割合の%表記を省略したものがNPS®スコアとなる

「推奨者の割合-批判者の割合=NPS®スコア」と覚えておきましょう。

顧客ロイヤルティ(顧客ロイヤリティ)とは?向上させるメリットと事例

NPS®の有用性とは?

NPS®を向上させることは、自社の商品・サービスに愛着や信頼を持っており、なおかつ他者に推奨したいと考えている顧客「ロイヤルカスタマー」の増加につながります。NPS®アンケートでは、顧客に対して「〇〇を他者に薦めたいか」という旨の質問を投げかけるため、ロイヤルカスタマーの存在を明らかにすることが可能です。

さらに、NPS®は事業成長と相関関係を持っているといわれています。NPS®の向上によってロイヤルカスタマーが増加すれば、その分だけ受注率やリピート率も高まるため、収益アップにつなげることが可能です。

また、NPS®は各業界のベンチマークとしても活用できるので、自社のポジションや競合他社の状況を確認する際にも役立ちます。

顧客体験との関連性

先述の通り、NPS®は顧客ロイヤルティを計測できる指標です。顧客体験を向上させる場合、各タッチポイントにおける顧客ロイヤルティを改善しなければなりませんが、改善施策を考える前にアンケートなどで現状を把握する必要があります。

NPS®で顧客ロイヤルティを数値化しつつ、全体および各タッチポイントの調査・改善を継続的に行うことで、顧客体験を最適化できるようになります。

NPS®の調査手順

NPS®の調査手順と実施する際のポイントをまとめたので、ぜひ参考にしてください。

  1. 課題の明確化
    社内ミーティングの内容や各部門からのフィードバックに基づき、自社の課題を明確化・可視化したうえで、調査の目的をきちんと設定します。
  2. アンケートの作成
    商品・サービスの推奨度を0~10点で評価する質問をベースに、点数をつけた理由や顧客の属性に関する質問を作成します。
  3. アンケートの配信対象者の選定
    顧客データベースなどで属性や購入傾向を調査し、アンケートの配信対象者を選定します。
  4. アンケートの配信
    アンケートを配信し、回答を依頼します。クーポンやプレゼントなどのインセンティブがあれば、回答率を高めることが可能です。
  5. 回答の分析
    アンケートの回答結果を分析・レポーティングし、改善施策の立案に活用します。

NPS®調査で顧客体験を向上させるためのポイント

NPS®調査で顧客体験を向上させるためには、以下のポイントを実践する必要があります。

  • リレーショナル調査とトランザクショナル調査を使い分ける
  • ポジティブなフィードバックも行う
  • NPS®に影響を与える要素をあぶり出す
  • 適切に運用できる体制を整える
  • 継続的に調査を続ける

各ポイントの詳細も解説します。

リレーショナル調査とトランザクショナル調査を使い分ける

NPS®調査は大きく分けて「リレーショナル調査」「トランザクショナル調査」の2種類がありますが、それぞれ異なる性質や役割を持っています。

リレーショナル調査とは、商品・サービスの利用者に対する顧客体験全般を調べる方法です。年1~2回のペースで定期的に実施し、NPS®と各顧客体験の満足度・ニーズを調査します。

一方、トランザクショナル調査とは、特定の顧客体験について調べる方法で、週に1回や月に1回などリレーショナル調査より頻繁に実施されます。各タッチポイントと接点を持った直後の顧客が対象であり、NPS®と特定の顧客体験における満足度・ニーズを詳細に調査します。

NPS®調査を実施する場合、まずはリレーショナル調査で課題を抽出しつつ、トランザクショナル調査でさらに掘り下げると効果的です。

ポジティブなフィードバックも行う

NPS®の主な目的は「現状の課題の改善」なので、顧客から寄せられた不満やクレームをメインに抽出し、現場にフィードバックしがちです。しかし、ネガティブなフィードバックばかり行っていると、従業員のモチベーションが低下し、NPS®調査に対しても後ろ向きになってしまう可能性があります。

従業員のモチベーションを高めるためには、顧客からの喜びの声や感謝の言葉といったポジティブなフィードバックを先に伝えて、課題を受け入れやすい環境をつくることが大切です。するとNPS®調査にも良い影響が生じ、顧客体験の向上につながります。

NPS®に影響を与える要素をあぶり出す

NPS®の結果を踏まえて、どの要素が数値に影響を与えているのか調べることも大切です。その際に「アクションドライバー分析」を用いると、より効率的に調査できます。

アクションドライバー分析とは、以下の4象限から構成される「ドライバーチャート」を使った分析方法です。各象限に当てはまる要素をチェックすることで、改善施策の優先度を把握しやすくなります。

  • 重点維持項目
  • 優先改善項目
  • 基本維持項目
  • 注意観察項目

4象限のうち、特に重要なものが「重点維持項目」と「優先改善項目」です。前者は顧客ロイヤルティを醸成するための強み、後者は顧客ロイヤルティを阻害する弱みとなります。

なお、アクションドライバー分析を効率的に行うにはNPS®ツールの導入がおすすめです。

NPSの分析方法とは?定量分析・定性分析の具体的な手法を解説

適切に運用できる体制を整える

NPS®を適切に運用するためには、アンケートの設計方法や分析方法などに関する知識・経験が必要です。

例えば、アンケートの質が低いと、思うような回答を得られない可能性もあります。また、誤った分析方法を選択すれば、適切な施策を実施できなくなるかもしれません。

自社でNPS®に関する知見がない場合、NPS®コンサルタントなどの専門家に調査を依頼したほうが無難です。

継続的に調査を続ける

NPS®調査は単発で実施しても、高い効果は見込めません。継続的に調査することで、ようやく方向性の正否や改善施策の進捗などがわかるようになります。

顧客体験の向上を目指す場合、NPS®調査で現状を把握しつつ、その都度適切な対策を検討することが望ましいといえるでしょう。

顧客体験の改善に役立つNPS®調査をサポートする「NPS®ソリューション」

NTTコム オンラインでは、NPS®調査をサポートするサービスとして「NPS®ソリューション」を提供しています。サービスの概要や導入事例も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

NPS®の効果を高める「NPS®調査・コンサルティング」

「NPS®調査」では、NPS認定資格者によるNPS®の導入支援を受けることができます。アンケートの設問設計や実査、レポートまで手厚いサポートが可能です。

また、自社のポジショニングを把握する「NPS®ベンチマーク調査」や、自社のNPS®の有効性を検証する「NPS®アセスメント調査」なども行っています。収益性との相関関係、推奨者・批判者の経済的な価値などの検証にも対応可能です。

さらに、高いロイヤルティの要因分析や優先改善項目の把握などもサポートしています。それに関連するブランドロイヤルティ調査では、以下のような恩恵を受けることが可能です。

  • 4つの品質保持(モニター・調査票・アンケートシステム・回答結果)を柱とした「クオリティポリシー」に基づく徹底した品質確保を実施している
  • 自社の位置づけや課題を把握し、ブランド価値向上に効果的なアクションにつなげる
  • 自社の認知度向上や新規顧客獲得に向けた戦略立案を実施する

NPS®コンサルティングでは、4つのフェーズ(導入・定着・活用・拡大)にてNPS®コンサルタントが高品質なサポートを提供しています。

顧客ロイヤルティの向上に寄与する「NPS®分析・顧客体験管理ツール」

NPS®ソリューションでは、顧客の課題に対応したツールラインナップとして「クアルトリクス(顧客体験管理ツール)」と「NPX Pro(NPS®調査ツール)」を提供しています。各ツールの主な機能もまとめました。

クアルトリクス(顧客体験管理ツール)

  • カスタマージャーニーを直接把握し、顧客の不満やギャップを最適なタイミングで修正
  • オムニチャネルでユーザーインサイトを分析し、改善案を迅速にフィードバック
  • 顧客のポジティブな意見を担当者に即通知し、従業員エンゲージメントを強化

NPX Pro(NPS調査ツール)

  • 標準テンプレートで作成したNPS®アンケートをメールやSMSで配信可能
  • リアルタイムで回答結果を確認し、多種多様なフレームワークで分析
  • NPS®アンケートの分析結果をツール上で手軽に共有し、迅速な改善を実現

導入事例|楽天トラベル(楽天株式会社)様

楽天グループに属する楽天トラベル様では、売上や収益を長期にわたって安定させるため、NPS®による品質向上施策を検討されていました。

NPX Proを導入した結果、毎月複数回のトランザクショナル調査の実施が容易になり、改善PDCAがスムーズに回るようになったといわれています。また、顧客の声もダイレクトに届くようになり、より迅速かつ能動的な対応が可能になったとのことです。

顧客体験の最適化にはNPS®調査が有効

顧客体験の最適化を図るためには、NPS®調査を通じて顧客ロイヤルティを数値化しつつ、回答結果や分析結果に基づく改善施策を実行する必要があります。調査方法の使い分けやフィードバック内容の見直し、運用体制の整備など行うことで、顧客体験のさらなる向上につながります。

NPS®調査に関するアドバイスやサポートを受けたいなら、NPS®ソリューションの導入もご検討ください。

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