2023/08/25
NPS®(ネットプロモータースコア)入門・導入編
アップセル・クロスセルの意味や違いとは?具体的な活用例や成功事例を紹介
アップセル・クロスセルは、どちらも顧客一人あたりの単価を高める営業手法です。LTV(顧客生涯価値)を向上させるためにも必要な手法として注目を集めています。本記事は、アップセル・クロスセルの概要やメリット、活用のポイントを解説する内容です。また、あわせてアップセル・クロスセルの活用例や成功事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
- アップセルとは、検討中の商品より上位モデル・グレードへ乗り換えてもらうこと。クロスセルとは、関連商品を紹介して別商品の購入も促すこと。
- アップセル・クロスセルには「機会損失を回避できる」「売上やLTVが向上する」「顧客満足度やロイヤルティの向上」などのメリットがある
- アップセル・クロスセルを成功させるポイントは「顧客視点での設計」「訴求するタイミングの最適化」「NPS®の活用による顧客ロイヤルティの見極め」にある
アップセル・クロスセルの意味や違い
それでは早速、アップセルとクロスセルの意味や違いについて解説します。
アップセルとは
アップセルとは、顧客の購入単価をアップさせるための営業手法です。顧客が以前購入した商品や検討中の商品より「上位モデル」「上位グレード」へ乗り換えてもらうことを目指します。アップセルにより、顧客数を増やさずとも総売り上げを伸ばせるため、顧客あたりの売上単価をアップさせたい企業の売上向上策となるでしょう。
たとえば、年会費無料のクレジットカードから有料のゴールドカードにアップグレードしてもらう、通信販売で定期コースへの引き上げを狙うなどもアップセルの一例です。
クロスセルとは
クロスセルとは、顧客が購入を検討している商品と別の商品を提案し購入してもらうこと、もしくは、希望商品と組み合わせて使える別商品の購入を促すための営業手法です。関連商品を紹介するという点がアップセルとは異なります。
たとえば、スマートフォンの購入時に、画面保護シートやケースの購入を提案する、ECサイトでユーザーの購入履歴から関連商品をレコメンドするなども効果的なクロスセルです。アップセル同様、新規顧客を獲得せずとも、低コストで売上アップを狙える手法といえます。
ダウンセルが有効なシーンもある
ダウンセルとは、あえて価格やグレードの低い商品やサービスを提案し、顧客の購買意欲を高める営業手法のこと。たとえば、価格の高さからエアコンの購入に踏み切れない見込み客に対して、グレードを下げた商品を提案するなどが一例です。最新モデルより機能は劣ってしまいますが、価格が下がることで顧客の購入に対するハードルを下げられます。
また、ダウンセルは既存顧客に対しても有効です。たとえば、サブスクリプションサービスの利用料金が顧客にとって高額すぎる場合、それが理由で不満や解約につながるケースもあります。個々の状況にあわせ適切なタイミングでダウンセルを行うことで、購入や長期間の継続利用を促進できます。
アップセル・クロスセルのメリット
ここからは、アップセル・クロスセルのメリットについて解説します。
機会損失を回避できる
アップセル・クロスセルにより、顧客が望むより良い商品・サービスへのアップグレードや、必要とする商品・サービスを提供できるなどの機会損失を回避できます。特に、アップセル・クロスセルの主なターゲットとなる既存顧客であれば、すでに自社の商品やサービスの認知を得ているため、ほか商品への誘導も比較的スムーズに運ぶでしょう。
売上やLTVが向上する
アップセル・クロスセルを成功させることで、売上やLTVの向上に期待できます。一般的に、新規顧客の獲得にかかるコストは、既存顧客への営業コストの約5倍かかるといわれています。そのため、新規顧客の獲得に比べ、既存顧客との継続的な関係を構築しLTVを向上させることは、より売上アップにつながりやすい施策といえます。
アップセル・クロスセルをうまく活用できれば、1回あたりの購入金額や購入点数を増やし、顧客単価を効率良く上げることができるのです。ただし、単なる値上げでは通用しません。顧客にしっかりと品質の良さやメリットについて理解してもらうことで、良好な関係を構築できます。また、アップセル・クロスセルにより蓄積されるデータも増え、より効果的なマーケティング活動を行えるのもメリットです。
顧客満足度やロイヤルティの向上
適切な内容やタイミングでアップセル・クロスセルを行うことで、顧客満足度やロイヤルティを向上させられます。顧客が求めるより良い提案や、潜在的なニーズを満たせる提案を積極的に行えば、リピート購入や良い口コミの創出にもつながるでしょう。顧客と信頼関係を築き、リピーターになってもらうことは、経営の安定化を図るうえでも重要な要素です。アップセルやクロスセルで提案する商品やサービスは顧客に役立つものです。たとえば、パソコンを販売する際にモデムや家庭用ネット回線などのセット割を提供することで顧客の利便性が増すことに加え、満足度が高まることでブランドイメージも向上するでしょう。
アップセル・クロスセルの具体的な活用例
それでは、アップセル・クロスセルの具体的な活用例を見ていきましょう。
アップセルの活用例
アップセルを行う際には、グレードアップがビジネスや満足度に良い影響を与えることが大切です。そのためには、より上位の商品やサービスに関心を持ってもらうきっかけ作りが必要になります。以下は、アップセルの活用例です。
・上位プランの提案
SaaS製品などで基本プランを使用している顧客に対し、追加機能や優先的なサポート、使用無制限などを訴求します。支払った費用以上のメリットを提供することで、顧客満足度の向上が期待できます。
・より高単価なサービスを提案
美容サロンやスパなどで、通常の頭皮マッサージに相乗効果のあるトリートメントサービスの追加などを訴求します。顧客が新しいサービスを実際に利用して効果を実感できたら、リピーターになる可能性も高まるでしょう。
クロスセルの活用例
クロスセルを行う際には、一緒に購入したほうが便利、安い、効果的などと感じてもらうきっかけが必要です。つまり、顧客の課題解決のためのオプションを提案することが必要です。
・追加機能を提案
導入ソフトウェアに関する追加機能や拡張パックを提案し、機能性の向上による効率化や汎用性の向上を訴求します。顧客満足度を高めることで、顧客単価を上げることが期待できます。
・バンドル販売の実施
ECサイトで商品を販売する際、関連する商品とパッケージ化したバンドル販売を行います。デジタルカメラを購入する顧客に対し、レンズやメモリーカードなどのパッケージを同時に提案するなどです。顧客の「お得感」「ついで買い」などの心理を引き出し、販売につなげます。
アップセル・クロスセルの成功事例
ここでは、アップセル・クロスセルの成功事例を3つ紹介します。
Dropbox
オンラインストレージサービスを提供している「Dropbox」は、アップセルを効果的に取り入れている企業です。個人ユーザーを引きつけるために無料で2GBまで使える基本プランを提供し、残容量が少なくなってきたタイミングで上位プランへのアップグレードへ顧客を誘導します。
上位プランユーザーに対しては、ユーザーの行動パターンを分析してさらに適切なプランへの移行を促します。たとえば、企業ユーザーにはよりセキュリティ機能が優れたEnterpriseプランを勧めるなどです。また、既存ユーザーが新規ユーザーを招待すると容量が増えるキャンペーンも実施。新規ユーザーの獲得により、全体的なアップグレードの可能性を高めるという仕組み作りを行っています。
Amazon
Amazonは、オンラインにおけるBtoC商材の販売で成功を収めています。商品の購入画面に「よく一緒に購入される商品」や「関連する商品」を表示させ、クロスセルによる合わせ買いを促進しています。「ほかの人が購入しているのであれば」と、購入を促す動機にもなるでしょう。また、顧客はいくつかの商品を比較して選べるため、より機能性の高い商品へのアップセルも実現しやすいのが特徴です。
顧客側には、一から自分で関連商品を探す手間が省ける、買い忘れのリスクが減るといったメリットがあります。また、レコメンド機能を用いることにより、顧客に押し売りをせずとも購入を促せる点もメリットです。
マクドナルド
マクドナルドの戦略は、クロスセルの事例としてよく登場します。ハンバーガーを単品で注文した際に、レジで「ポテトやドリンクも一緒にいかがでしょう」と提案されたことがある人は多いかもしれません。これは合わせ買いを狙ったクロスセルの例です。また、単品で購入するよりもお得なセットメニューを充実させることで、顧客単価を上げることにも成功しています。
さらに、一時期100円ハンバーガーなど低価格の商品を全面的に売り出していたマクドナルドですが、ターゲット層を増やし、通常商品をバージョンアップした高単価の商品も展開するなど、アップセルの戦略も採用しています。
アップセル・クロスセルを成功させるポイント
アップセル・クロスセルを成功させるためのポイントについて解説します。
顧客視点で設計する
アップセルやクロスセルは顧客の視点で設計することが重要です。企業の都合で設計してしまうと、顧客は無理に購入やアップグレードを勧められているように感じてしまい、満足度や企業への信頼が低下してしまう可能性があります。
ただ単に目先の利益を得るためではなく、「アップセル・クロスセルを行うことでさらに顧客の満足度を高める」という意識を持つことが必要です。「なぜ一緒に買うべきなのか」「グレードアップによってどのようなメリットが得られるのか」など、あくまでも顧客視点で自然と価値を感じられるアップセル・クロスセルの戦略を考えましょう。
訴求するタイミングを最適化する
アップセル・クロスセルは、最適なタイミングで訴求しないと効果が出にくいものです。アップセルの場合、商品を選んでいる段階でより高品質の商品を提案したり、購入確認時にアップグレードを提示したりするのが効果的です。また、サブスクリプションサービスの場合、顧客が高い満足度を示したタイミングで上位プランを提案するなども考えられます。
また、クロスセルの場合も、商品の選択中や購入確認時が有効。一定額以上の購入で送料無料になる、誕生月はセット購入がお得になるなどのキャンペーンのタイミングで訴求するのも効果的です。
NPSの活用で顧客ロイヤルティを見極める
アップセル・クロスセルが成功しやすく、かつ高い満足度を感じるのは、企業やブランドへのロイヤルティが高い顧客だといわれています。ロイヤルティの低い状態で画一的なアップセル・クロスセルを行うと、効果が出ないばかりか、かえって悪い印象を与える恐れがあるので注意しましょう。アップセル・クロスセルを成功させるためには、顧客ロイヤルティを計測する指標となるNPSを活用するのがおすすめです。
NPSとは、アンケートによって顧客が企業やブランドに対しどれくらいの愛着や信頼感を持っているかを計測し、数値化するための指標です。NPSでは「商品をどの程度親しい人にすすめたいと思うか」という問いの回答者を点数によって「批判者」「中立者」「推奨者」の3つに分類します。NPSの活用により、顧客ロイヤルティの計測や推奨者が価値を感じているポイントを明確にでき、効果的なアップセル・クロスセルを実施することができます。
NPSの導入によりアップセル・クロスセルの機会が増加した「シマンテック社」
NPSの導入以前、シマンテックの事業部門のひとつであるコンシューマービジネスユニット(CBU)では、営業や顧客サポート、エンジニアリングなどの各部門が独自の目標や管理指標のもと動いているといった状況でした。同社でNPS調査を実施したところ、インストール、製品性能、サポート対応などが顧客ロイヤルティに関連する問題であると判明。これらの構造的な問題に対処するため、CBUはNPSを導入し、すべての部門で目標をNPS向上に関連づけて設定するなどの改革に取り組みました。
その結果、CBUのNPSは3年で2倍になり、サポート部門は設定目標を超える13ポイントの改善を達成。また、これまで顧客一人あたりにかけていたサポートの通話時間を削減し、同時間で平均1.6人の対応ができるよう改善できました。全体の費用は維持しながら、削減できた分のサポートコストを顧客体験向上のために再投資しています。これらの取り組みは”PC World”の編集者賞を受賞したほか、世界各国で多数の評価と賞を受けました。
アップセル・クロスセルに重要な顧客ロイヤルティの計測には「NPX Pro」
「NPX Pro」はCX向上を支援するNPSツールです。顧客のフィードバックを分析し、改善アクションの実施までをスムーズに実現できます。以下は、NPX Proの主な機能です。
- NPSアンケート作成、配信
- NPSアンケート集計、分析
- NPSアンケート分析結果の共有
- 改善アクションの促進・管理
NPX Proは、NPS調査の設問設計から配信、回収をはじめ、分析、改善アクションの提案、社内における情報共有も可能にします。アップセル・クロスセルの成功率を高めるためには、顧客ロイヤルティの高い顧客へ提案することが必要です。NPX Proを活用することで最適な顧客へアプローチできるため、最大限の効果が期待できます。
アップセル・クロスセルはLTVの向上に役立つ施策
アップセル・クロスセルを効果的に実施することで、企業の売上やLTVの向上に期待できます。まずはNPSなどの指標を用いて顧客ロイヤルティを可視化し、現状を確認しながらアプローチの方法を決定しましょう。アップセル・クロスセルはただ実施するだけで売上に直結するものではありません。大切なのはしっかりと顧客のニーズを把握し、適切な顧客体験を提供することです。
NPX Proの導入を検討中の企業様向けに、NPSの基本情報や活用方法、各種レポートなどをご用意していますので、ぜひご活用ください。
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