2024/02/26

NPS®(ネットプロモータースコア)入門・導入編

従業員体験(EX)とは?重要視されている背景や向上施策、企業事例を紹介

従業員のエンゲージメント向上のために注目されている「従業員体験(EX)」。GoogleやNetflixなどの企業でも従業員体験(EX)を高める施策を積極的に導入しています。従業員エンゲージメントが高まることで、顧客満足度を高めることも可能です。

本記事では従業員体験(EX)の向上が重要視されてきている背景や向上させるための施策、また従業員体験(EX)の向上に取り組む企業事例などを紹介します。従業員体験(EX)を向上して企業成長につなげたいと考える方は、ぜひ参考にしてください。

この記事の内容
  • 従業員体験(EX)とは、会社内における従業員の体験全般を指す
  • 従業員体験(EX)と顧客体験(CX)には相関性があり、サービスプロフィットチェーンを生み出す
  • 従業員体験(EX)を向上させる施策には、エンプロイージャーニーマップの作成、1on1ミーティング、DXの推進などがある

従業員体験(EX)とは

従業員体験(EX)とは、会社内における従業員の体験全般を指します。英語では「Employee Experience」といいます。企業が行う施策は基本的に企業の成長を目的としますが、従業員体験(EX)はそこに従業員がどのように感じ、どのような体験を得るのか、という視点を加えた概念です。

例えば、「売上向上のために必要な商品知識をつける研修を実施しよう」という考えは、従来の企業目線によるものです。一方、同様の研修であっても「顧客が本当に求めている情報を提供できれば満足してもらえ、ひいては従業員のやる気にもつながる」といった考えのもと実施されれば、従業員体験(EX)を高めるものになるでしょう。

このように従業員目線で施策を企画することで、従業員エンゲージメントを向上させることができます。

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従業員体験(EX)の向上が重要視されてきている背景

ここでは、従業員体験(EX)の向上が重要視されてきている背景について解説します。

人材の確保が難しくなっている

かねてから問題になっている高齢化や少子化もあり、日本の労働人口は減少しています。今後もさらに人材の確保が難しくなると予想できるでしょう。人材の絶対数が減少していくなか、優れた人材を自社に引き止めておくことは企業にとって大きな課題です。

また、働き方の多様化により、人材の流動性も高まっています。特に、2000年以降に生まれたZ世代の社会人は労働に対する価値観が大きく変容し、従来の働き方にとらわれず、転職することへの抵抗が少ない人も多く見られます。そんな社会人が増えるにつれ、さらに人材の流動性が高まるかもしれません。

人材を確保するためには単に金銭的価値だけを追求するのではなく、従業員体験(EX)を向上し、離職を防止することが求められます。

顧客体験(CX)との相関性が明らかになっている

従業員体験(EX)や従業員満足度が向上することで、顧客体験(CX)も向上することがわかっています。従業員が働きやすい環境で仕事に取り組むと、生産性やサービス品質の向上、アイデアの創出などさまざまな効果があります。

また、先述した優秀な人材の流出を阻止できれば顧客へのサービス向上につながり、結果、顧客体験(CX)に還元でき、企業の業績向上にも寄与します。このような良い循環のことを「サービスプロフィットチェーン」と呼びます。実際に、従業員体験(EX)と顧客満足度、業績との相関性を示す研究も実施されています。

参照:従業員満足度,顧客満足度,財務業績の関係 ーホスピタリティ産業における検証ー

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ワークライフバランスが求められている

従業員体験(EX)が重要視されている背景には、ワークライフバランスの考え方もあります。ワークライフバランスとは、仕事もプライベートも両方充実させる働き方のことです。生産性の低い業務フローによる長時間労働や、有給休暇をとりにくい環境など、マイナスの従業員体験(EX)を放置していると、ワークライフバランスが悪化してしまいます。

ワークライフバランスが求められている要因として働き方の多様化もありますが、女性の労働人口が増加していることも要因の1つです。総務省統計局の調査では、女性の就業者数は2012年の「2,658万人」から、2022年の「3,024万人」に増加しています。産前・産後休業や復帰のしやすさなど、女性に配慮した環境整備が必要だといえるでしょう。

参照:労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)平均結果の概要

リスクマネジメントの重要性が高まっている

インターネットやSNSの普及に伴い、企業内部の情報が拡散されやすくなりました。労働環境などのネガティブな情報は広まりやすく、企業のレピュテーションリスクは高まっています。また、消費者は企業の口コミや評価などを簡単に検索できるため、評価が低いと企業の成長にとって大きな打撃となり得ます。

それらのリスクマネジメントとしても、従業員体験(EX)の向上は重要です。従業員体験(EX)を向上させる取り組みはポジティブな情報の拡散につながるなど、企業価値を高める効果も期待できます。

従業員体験(EX)に関連する項目

従業員体験(EX)は多岐にわたるので、いくつかの項目に分けて整理することが大切です。以下は項目の一例です。

従業員体験の項目 内容
自身の業務に関する項目 業務内容、業務量、権限、裁量など
自身の成長に関する項目 評価、昇進、研修、周囲からのアドバイスなど
周囲との関係に関する項目 上司や同僚、クライアントとの関係性など
企業に関する項目 企業成長・業績、ビジョンへの共感など
企業文化に関する項目 柔軟性や革新性、情報共有ができているか、互いに評価できているかなど
働くうえで基本となる項目 給与、賞与、福利厚生、ワークライフバランスなど
表の続き →

これらの項目に対する施策を満遍なく行うことで、従業員体験(EX)を向上させることができるでしょう。

従業員体験(EX)を向上させる施策

ここからは、従業員体験(EX)を向上させる具体的な施策について解説します。

エンプロイージャーニーマップを作成する

従業員体験(EX)を向上させるためには、エンプロイージャーニーマップを作成することが有効です。そもそもエンプロイージャーニーとは、従業員1人ひとりが入社してから退職するまでに経験するすべての体験全般を指します。例えば、採用やオンボーディング、キャリアアップ研修、働き方や人間関係など、あらゆる要素が含まれます。エンプロイージャーニーマップとは、エンプロイージャーニーを見える化したものです。

マップの各ポイントの従業員体験(EX)を高めることで、離職率の低下や企業のイメージ向上、従業員エンゲージメントの醸成、独自の文化の構築につながります。以下は、エンプロイージャーニーマップの作成手順です。

  • 従業員へのヒアリング
  • ヒアリングを基にしたペルソナの設定
  • 入社から退社までのフェーズを分類
  • アクションプランの作成

実施する際は、定期的にアンケートなどで効果測定を行い、施策を改善していく必要があります。

1on1ミーティングを行う

1on1ミーティングも従業員体験(EX)向上施策の1つです。1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で行う個人面談のことです。上司が部下の育成やモチベーションアップを目的に、週1回や月1回など定期的に実施します。

グループでのミーティングと異なり、従業員のニーズを正確に把握できる、信頼関係を構築できる、部下を深く理解し特性に合った対応ができるなどのメリットがあります。効果的な1on1をするには、部下の声に耳を傾けることや、話しやすい雰囲気を作ることが大切です。

従業員アンケートを実施する

従業員体験(EX)向上のため、従業員アンケートを実施する企業もあります。従業員アンケートとは、従業員を対象に職場環境への不満や課題などを確認する目的で実施されるものです。数ヶ月に1回から年に1回程度の頻度で行います。従業員アンケートは、従業員体験(EX)を向上させる施策の優先度を検討する材料にもできます。

ただし、適切な質問内容の設計や結果の効果的な分析、可視化などが難しいため、従業員アンケートの代行サービスやツールの活用などで精度を高めることも検討しましょう。

タレントマネジメントを行い従業員エンゲージメントを高める

タレントマネジメントを行うことで、従業員エンゲージメントを高めることができます。タレントマネジメントとは、従業員1人ひとりの能力やスキルを最大限活かすための人事マネジメントのことです。

従業員の特性を知り、得意分野を伸ばしたり、課題を明確にしたりすることができます。また、適切な育成や配置ができるので従業員エンゲージメントが高まり、結果として従業員体験(EX)が向上します。タレントマネジメントの効果を高めるためには、1on1ミーティングなどを通して個別の情報を正確に把握することが必要です。

積極的にDXを推進する

従業員体験(EX)を向上させるには多様な方法がありますが、アナログな手法だけで実施しても効果は限定的です。デジタルツールによるDX(Digital Transformation)を推進することで、さらに効果を高められるでしょう。

DXとは、ビジネス環境の急速な変化に対応して競争力を高めるために、企業がデジタル技術を活用することを指します。職場のDXにより業務の効率化だけでなく、従業員の働き方をデータとして可視化し、従業員の満足度を測定することもできます。

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従業員体験(EX)の向上に取り組む企業事例

ここからは、従業員体験(EX)の向上に取り組む企業の事例を3つ紹介します。

Starbucks Corporation(スターバックスコーポレーション)

アメリカのStarbucks Corporation(スターバックスコーポレーション)はアリゾナ州立大学と提携し、オンラインの学士課程で学ぶ従業員の授業料が実質無料となる施策を実施しています。週20時間以上勤務している従業員は正社員・パートタイム関係なく、ビジネスを含む40以上の学部から好きなものを選ぶことが可能です。この制度を活用すれば、2年間の授業料がすべて払い戻しされます。

従業員の約70%は学士号を持っていないとされ、現在ほかの教育機関で学んでいる人はアリゾナ州立大学へ単位移行も可能です。また、従業員は学位取得後も会社に留まる義務はないとされています。「人をベースとした企業経営の方針」を示した例です。

Netflix(ネットフリックス)

「カルチャー」が注目されている企業の1つにNetflix(ネットフリックス)があります。同社の指針は以下の5つです。

  • 社員自身の意思決定を積極的に促す
  • 情報は、広く、オープンかつ丁寧に共有する
  • 率直かつ直接的なコミュニケーションをとる
  • 優れた人材でチームを構成し続ける
  • ルールをつくらない

同社は「プロセスより人を重視」という理念のもと、従業員がクリエイティブにかつ生産的に働ける環境を整備しています。また、「フリーダム&レスポンシビリティ (自由と責任)」という考え方が浸透しているのも特徴です。

例えば、出張や贈答品などの経費に関しては、Netflixにとって最大の利益になるよう行動するものは認められます。休暇日数に関してのルールはなく、リーダー自らが積極的に休暇を取って新しいアイデアを得ることを推奨しています。さらに、育児休暇方針として「子どもと自分の面倒をしっかり見るべし」を掲げていることも特徴的です。

スープストックトーキョー

「世の中の体温をあげる」を理念に掲げるスープストックトーキョーは、従業員体験(EX)向上のためにさまざまな取り組みを実施しています。会社に軸足を置きながら複業ができる「ピボットワーク制度」や、グループ会社内での複業をはじめ、多様な勤務ニーズを支援する「セレクト勤務制度」なども一例です。セレクト勤務制度は子育て中の社員だけでなく、起業や自己研鑽などに取り組む社員すべてを対象とするなど、従業員1人ひとりに自由な働き方の選択肢を用意しています。

また、仕事とプライベートの質を向上させるべく、年間の休日休暇を120日間と定める「生活価値拡充休暇」も実施。ほかにも、言葉にしてありがとうを伝える「賞賛カード」や産休・育休後も安心して働くための「ウェルカムバック研修」など、多様な取り組みが注目されています。

手軽に従業員満足度を計測できる「ES-Quick」

「ES-Quick」は、ES(従業員満足度)調査を簡単・手軽に行えるツールです。調査設計からアンケート運用支援、分析・レポートまでをワンストップでサポートしています。Webアンケートは約200問の中から最大60問を選ぶ選択式となっていて、設計の手間がかかりません。グラフ化されて可視化できるアウトプットは、企業の課題の改善に役立ちます。属性別の分析をはじめ、ポートフォリオ分析、フリーアンサーデータなどは、問題点の原因究明に有効です。

さらに詳しく調査をしたい企業向けには、従業員のエンゲージメントを把握できるeNPS℠サービスがおすすめです。eNPS℠を指標化し、状況に応じてコンサルタントが柔軟に設問をカスタマイズする「eNPS℠レポート」や、リアルタイムに状況を分析できるツール「eNPS℠ with NPX Pro」なども提供しています。

導入事例|製造業 様

ES-Quickを導入する以前、製造業様には以下のような課題がありました。

  • 従業員の社員像が見えにくく、効果的なアンケート結果が集まりにくい
  • 社員の離職率を下げるために、どの不満点が離職の原因になっているのかを知りたい
  • ES-Quick導入後は以下のような効果を実感されています。
  • 従業員それぞれの意識が変化し、チーム単位での業績がアップした
  • 改善点の優先順位が把握できたことにより、従業員のモチベーションがアップした
  • 定期的なアンケート調査を実施して業務改善のPCDAを確立でき、離職率の低下と業績アップにつながった

従業員体験(EX)の向上は企業成長に寄与する

本記事で紹介した従業員体験(EX)の向上に取り組む企業事例からもわかるように、従業員体験(EX)の向上は企業成長に寄与します。従業員体験(EX)を充実させることで従業員のモチベーションがアップし、ひいては顧客満足度の向上にもつながります。

従業員体験(EX)を向上させる施策にはさまざまな手法がありますが、まずは現状の把握や施策の効果を計測する環境整備をしなければなりません。従業員の満足度を効率的に調査したい企業におすすめなのが「ES-Quick」です。通常業務で忙しいなか、手間をかけずにES調査が可能なES-Quickの導入をぜひご検討ください。

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