2023/06/16

顧客満足度とNPS®

サービス・プロフィット・チェーン(SPC)とは?従業員満足度を企業の成長につなげる

この記事では、企業の成長に役立つサービス・プロフィット・チェーンという考え方の概要や実現までのプロセス、このモデルを活用した企業の事例、具体的な取り組み方などを総合的に解説します。カギとなる従業員満足度や顧客ロイヤルティにも焦点を当てていますので、ぜひご一読ください。

サービス・プロフィット・チェーン(SPC)の概要と重要性

企業の業績改善のために業務を見直し隠れた課題を分析することは、ビジネスの基本です。しかし、その際により優先すべき課題を絞り、効率的に改善を進めるのは容易なことではありません。そこで取り入れたいのが、今回この記事で取り上げるサービス・プロフィット・チェーンです。以下、その概要と重要性を解説します。

サービス・プロフィット・チェーンとは

サービス・プロフィット・チェーン(Service ProfitChain)とは、企業が従業員の満足度を高めることでサービスや製品の質が向上し、その結果、顧客の満足度も改善して、最終的に企業の収益が向上するという好ましい循環をつくるための考え方です。

始まりは1994年にサービス・マーケティングの先駆者であるへスケット教授(J.S.Heskett)とサッサー教授(W.E.Sasser, Jr.)らが論文『サービス・プロフィット・チェーンの実践法』において提唱した概念およびビジネスモデルで、これまでに海外でも日本でも実証研究がなされて論文も発表されています。

従業員満足度・顧客満足度・業績はそれぞれ関係している

サービス・プロフィット・チェーンにおけるこれまでの研究で、従業員満足度・顧客満足度・業績の3要素の間には明白な相関関係があることが分かっています。具体的には、従業員満足度の高い従業員は顧客に高品質のサービスを提供する→高品質のサービスを体験した顧客の満足度が上がる→顧客満足度が高まるとリピート率や購入単価が向上し、ポジティブな口コミが拡散される→企業の業績が向上する、という流れが成立しているということです。

そしてこの好循環を逆向きに考えれば、収益向上を達成するには従業員満足度の向上が必須であることが分かり、企業が採用すべきプロセスやアクションも明確になります。

サービス・プロフィット・チェーンの7つの段階

サービス・プロフィット・チェーンによる好循環を実現するには7つの段階を経る必要があります。そして7段階のプロセスを円環的に繰り返すことで安定した収益向上が実現しやすくなると考えられています。ここでは各段階の活動を具体的に解説します。

1|従業員へのサービス提供により従業員満足度を高める

長期的に収益力の高い企業経営を実現するには、まず従業員満足度を高めることが不可欠です。そこで第1段階では、企業内で組織から従業員に対するサービスを改善することによって従業員満足度を高めます。「従業員も顧客である」ということを念頭に置き、より良い就労条件や職場環境を提供します。

2|従業員満足度の向上により従業員ロイヤルティも高まる

第2段階は、従業員満足度の向上により従業員ロイヤルティが育まれていく段階です。従業員にとって快適な職場環境は、組織への信頼感や帰属意識を高めます。さらにそうした意識の高さが自分が所属するチームや組織に貢献したいという意欲につながり、組織全体の一体感も生まれやすくなります。

3|従業員ロイヤルティの向上により生産性が高まる

第3段階においては、高いレベルの従業員ロイヤルティが持続することにより生産性の向上を見込むことができます。組織のために役に立ちたいという貢献意欲、企業で働くモチベーションの高まりが、よりスピーディーな仕事や部署間のスムーズな連携など、従業員一人ひとりのパフォーマンスの向上につながり、企業全体の生産性が高まります。

4|生産性の向上によりサービス品質が高まる

第4段階になると、生産性の向上がサービス品質の改善につながります。生産性が向上して生まれた余裕により顧客体験の充実化を図ることが可能になるからです。製造であれば製品のアップデートや、接客においてはお客様に喜んでもらうための独自の施策など、より良いサービス提供が促進されていきます。

5|高いサービス品質により顧客満足度が高まる

第5段階では、サービス品質向上の良い影響が顧客満足度に及びます。企業の内部で積み上げられてきた付加価値が市場という外部に転移され、顧客の心理には「買ってよかった」という満足感や充実感、幸福感などポジティブな変化が生じます。こうして顧客満足度が高まれば、自ずと企業の収益向上も見込まれます。

6|顧客満足度の向上により顧客ロイヤルティが高まる

続く第6段階では、顧客ロイヤルティが向上します。サービスや製品に対して満足を感じると、顧客は「また利用したい」という気持ちになり、企業やブランドへの信頼も高まります。つまり前段階で実現した顧客満足度がリピーター獲得につながっていくのです。顧客満足度の生成が顧客ロイヤルティを育み、そして再び顧客満足度が向上する、この好循環が重要です。

7|利益を再投資し成長サイクルを生み出す

最後の第7段階では、第6段階までの過程で得られた利益を再び従業員満足度向上のために投資します。高い顧客ロイヤルティのおかげで得られた収益が現場で働く従業員の給与や福利厚生の改善に変換されることで第1段階へ戻り、従業員満足度がさらに向上します。そして顧客満足度と顧客ロイヤルティ、企業収益がさらに上がるという成長サイクルが回り始めます。

サービス・プロフィット・チェーンの取組事例

ここからは、サービス・プロフィット・チェーンを実現している企業3社の取組事例を紹介します。実際に成功している事例を参照することで、より具体的な施策がイメージしやすくなるためぜひ検討の材料にしてください。

星野リゾート

星野リゾートでは顧客満足度調査を日常的に行い、その結果を単にサービス改善に活かすだけではなく、従業員のモチベーションアップにつなげています。その背景には、調査結果をダイレクトに従業員に伝えることが、お客様から褒めていただく良い機会になるという考えがあります。

実際、顧客のポジティブな評価を知ることでスタッフの自信がつき、自然と笑顔が出たり発想も豊かになるという成果が出ているといいます。また、従業員満足度の調査も定期的に行い、年収や休暇制度といった企業側が改善すべき保障面の課題については数値目標を決めて達成に取り組んでいます。

スターバックス

心を動かす「スターバックス体験」を顧客に提供し、高い顧客ロイヤルティを誇るスターバックスは、従業員の満足度も高いことで知られています。新しく入った従業員の研修に80時間をかけて基本的な仕事内容だけではなく企業のミッション伝達をしっかり行うなど、社員一人ひとりに企業の目的を浸透させる取組みを行っています。

また「Our Mission and Values」という基本姿勢は共有しながらも、実はサービスマニュアルはなく「JUST SAYYES!」というポリシーのもとに従業員に権限を移譲し、能動的で質の高いサービスを促しています。

ザ・リッツ・カールトン

世界規模で展開するホテルブランドのザ・リッツ・カールトンでは、スタッフの継続したやる気が顧客の満足につながると考え、「信頼」と「成長」をキーワードにマネジメントを行っています。

定期的に行う従業員の満足度調査に加え、より細かな施策も実施。例えば、ある部署の仕事を他部署が応援した場合、応援された部署のスタッフは応援してくれたスタッフたちにお礼のカードを返します。このように従業員自身が行動を決定しフィードバックする、お互いに認め合う取組みを実施しています。

サービス・プロフィット・チェーンに取組むには予算の確保と継続力が必要

サービス・プロフィット・チェーンに取組むには、大前提として人材に投資する予算と、明確な成果が出るまで長期的な視点を持って実践し続ける継続力が重要になります。従業員満足度や従業員ロイヤルティを向上させるには、どうしても人件費や福利厚生などの支出は増加する傾向にあります。これらのコストは将来への投資だと捉えましょう。コストをかけた分スピーディな結果を期待してしまうのも当然ですが、実際には7つの段階を経て徐々に成果が現れてくるため、途中で大きな変化を感じられなくても粘り強く継続する努力が必要になります。

サービス・プロフィット・チェーンを実現するために有効な調査

サービス・プロフィット・チェーンを実現する方法として、まずは従業員と顧客について調査し、現状を適切に計測、分析しておくことが有効です。下記に代表的な3つの調査方法を解説しますので、自社に合った調査方法は何か、ぜひ検討してみてください。

従業員満足度の調査

従業員満足度の調査は、従業員がさまざまな側面でどれほど満足しているかを計測することで現状の課題を抽出し、組織や就労環境の改善に役立てることを目的に行われます。アンケート形式で実施され、企業側が把握したい内容に関連する質問を設定し、従業員に回答してもらった後に集計・分析を行います。一般的には下記に挙げるような項目の満足度を尋ね、各項目における課題を明確にします。

  • 仕事に関する項目
  • 職場に関する項目
  • 上司に関する項目
  • 会社風土に関する項目
  • 処遇に関する項目
  • 福利厚生に関する項目
  • 経営に関する項目
  • 総合的な項目

eNPSの調査

eNPSとは「Employee Net PromoterScore(エンプロイー・ネット・プロモーター・スコア)」の略称で、親しい知人や友人などに職場をどれくらい勧めたいかを尋ねて、「職場の推奨度」を測って数値化したものです。従業員の満足度だけでなく従業員のロイヤルティを計測できる指標として知られています。従業員満足度調査だけではロイヤルティ向上のための検討材料を見落としてしまう可能性があるため、サービス・プロフィット・チェーンを実現する上でより有効な調査方法として選ばれています。

NPSの調査

NPSとは「Net PromoterScore(ネットプロモータースコア)」の略称です。顧客満足度とは違い、従来は計測が難しかった「企業やブランドに対してどれくらい愛着や信頼があるか」という顧客ロイヤルティを数値化した指標で、顧客体験の評価や改善に活用されています。欧米では多くの公開企業が活用し、近年は日本でも顧客満足度に並ぶ指標として注目されています。NPS値を出すには、回答者全体に占める推奨者の割合(%)から、批判者の割合(%)を引きます。例えば10人のうち「9~10」の推奨者が3人、「0~6」の批判者が5人の場合、30-50でNPSは-20となります。業界ごとの平均数値も発表されているため、ベンチマークとしても活用可能です。

サービス・プロフィット・チェーンを実現するNTTコム オンラインのソリューションサービス

サービス・プロフィット・チェーンを実現するために選ばれている調査ツールの1つに、NTTコムが提供するソリューションサービスがあります。ここからは、その代表的サービスである「従業員満足度ソリューション」と「NPXPro」について紹介します。

従業員満足度の計測には「従業員満足度ソリューション」

NTTの「従業員満足度調査ソリューション(ES調査)」は、従業員満足度を調査して業績向上を促進するサービス。なかでも、簡単さ・手軽さ・わかりやすさを重視するなら「ES-Quick」がおすすめです。独自に設定された質問項目200問の中から最大60問を選ぶだけで調査が実施できます。結果がグラフなどで分かりやすく可視化される上に、早く・安く実施できることもメリットです。より柔軟な質問設計が必要な場合は、企業の状況に合わせてコンサルタントが設問を柔軟にカスタマイズする「eNPSレポート」もあります。

顧客ロイヤルティの計測には「NPX Pro」

顧客ロイヤルティを計測する場合は、アンケートの配信から、収集、分析、アクションまでの展開をサポートするクラウドサービス「NPXPro」がおすすめです。以下のようなメリットから業界を問わず多くの企業に選ばれています。

  • システム上で簡単にNPSを計測できる
  • 分析結果がリアルタイムで可視化される
  • 顧客のネガティブな声を検知し通知するアラート機能を搭載している

収益に影響を与えるような優先課題をタイムリーに捉えることが可能なため、顧客の離脱を積極的に防ぎ、顧客体験・顧客ロイヤルティの向上を強力にサポートしてくれます。

サービス・プロフィット・チェーンは企業の成長サイクルを生み出す

この記事では企業の収益を向上させ、成長サイクルを構築するサービス・プロフィット・チェーンについて解説しました。実現するためには、まずは最初のステップとして従業員満足度と顧客ロイヤルティを測り、課題を発見する必要があります。従業員満足度を測る場合は、各種サービスの中でも比較的早く低価格で調査を実施できる「ES-Quick」の導入を、顧客ロイヤルティを測る場合は「NPXPro」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

従業員満足度(ES)調査を簡単にはじめるならES-Quick

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